市街化調整区域内の有料老人ホームの設置に係る開発許可の弾力化(概要)
《行政苦情救済推進会議の検討結果を踏まえたあっせん》

あっせん日:平成10年6月26日
あっせん先:建設省

 総務庁行政監察局は、下記の行政相談を受け、行政苦情救済推進会議(座長:茂串 俊)に諮り、その意見を踏まえて、平成10年6月26日、建設省に対し、改善を図るようあっせん。
 行政相談の申出要旨は、「市街化調整区域内で有料老人ホームを建設するには、都市計画法に基づく開発許可を受けなければならないが、公的金融機関の融資を受けて建設することが許可の要件とされている。しかし、営利法人を経営する私が建設を予定している施設は、施設規模が融資条件に満たないため融資が受けられないので、公的融資を受けなくても開発許可が受けられるようにしてほしい。」というもの。
(注)延べ床面積 2,000m2以上の融資条件に対し、建設予定の施設は 700m2
 当庁のあっせん内容は、市街化調整区域内における有料老人ホーム設置の開発許可について、公的融資制度の対象とならないものについても、開発許可の審査の対象とすることを妨げないものであることを都道府県等に対して明確に示すよう求めるもの。

[参 考]

  1.  有料老人ホーム施設数(平成9年7月1日):286施設(うち、営利法人:157施設)
  2.  建設省は、通達により、公的融資を受けて建設される等の要件に適合する有料老人ホームについては、開発許可の審査の対象として差し支えない旨都道府県等を指導。このことに関して、建設省は、公的融資は絶対的要件ではないとしているが、この趣旨が徹底されていないことから、多くの都道府県等では、公的融資を受けて建設されるものであることを開発許可の審査対象の要件としている。

資  料

 有料老人ホームの設置状況(各年7月1日現在)
 営利法人を対象とする有料老人ホームに係る公的融資制度の融資条件
融資機関名 施設の類型 融 資 条 件
日本開発銀行 健康型 施設の延べ床面積が、 2,000m2以上のもの
社会福祉・医療事業団 介護型 要介護老人の入居が定員の20%以上予定されるもの等

(注) 営利法人(健康型)に対する融資制度は平成9年度限りで廃止。

 有料老人ホームの設置に係る開発行為の許可手続
有料老人ホームの設置に係る開発行為の許可手続
 市街化調整区域内における開発行為の許可に関する建設省通達
「市街化調整区域における開発許可制度の運用について」(抜粋)
(昭和61年、建設省建設経済局長通知)
 
 次に掲げる事例についても、57年通達記一の(2)のイの趣旨を踏まえつつ、やむを得ない事情が認められ、周辺の土地利用に支障を及ぼさない限り積極的に法第29条又は────の規定による許可が相当か否かの審査の対象として差し支えないこと
(注)  57年通達記一の(2)のイ:「地域の特性等を総合的に勘案し、地域の実情に沿った円滑な制度の運用を図ること」等を内容とする昭和57年、建設省計画局長通知。
 第29条:開発行為の許可
(4)  老人福祉法(昭和38年法律第133 号)第29条第1項に規定する有料老人ホームのうち、設置及び運営が国の定める基準に適合する優良なものであって、その立地がやむを得ないと認められるもの。
「市街化調整区域における開発許可制度の運用について」(抜粋)
(昭和61年、建設省建設経済局宅地開発課民間宅地指導室長通知)
 
 局長通達の(4)の「設置及び運営が国の基準に適合する優良なもの」とは、当該有料老人ホームの設置及び運営が厚生省の策定する有料老人ホームの設置運営指針における基準に適合しており、かつ、年金福祉事業団等の公的融資を受けて建設されるものであること
 市街化調整区域内の有料老人ホームの建設に関する開発許可制度の運用状況
 調査対象76都道府県等のうち、市街化調整区域内の有料老人ホームの建設を許可対象として取り扱っている71団体における運用状況(平成9年12月、建設省調査結果)
  1.  公的融資を受けないものに対する開発許可の運用
    •  公的融資を受けないものは開発許可をしないとしているもの:44団体(62.0%)
    •  公的融資を受けなくても事業遂行の確実性があると見込まれるものについては、開発許可をする場合があるとしているもの:21団体(29.6%)
    •  その他:6団体(8.4 %)
  2.  開発許可実績
    • 開発許可件数:24施設(15団体)
      うち、公的融資を受けていないもの:5施設(2団体)