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. 電波利用料財源により行われている電波監視施設の整備及び広報活動について、次のような状況がみられた。
i ) 電波監視システムのうち、遠隔方位測定設備及び遠隔受信設備は、混信・妨害の申告があった場合のほか、電波の監査及び調査においても稼働させるものであり、郵政省の定めた整備計画(平成5年度から13年度までの9か年を3期に分け整備)により、対象都市の人口を基礎に順次配備が進められている。具体的には、第2期整備計画の終了時点(平成10年度末現在)においては、大都市及び人口10万人以上の都市まで当該設備が整備されており、引き続き第3期(平成11年度から13年度まで)において人口5万人以上の都市を対象に当該設備を整備することとされている。第2期までの整備の結果、調査した地方電気通信監理局(以下「地方電監局」という。)管内全体では、管内の混信・妨害の申告件数の約7割に当たる地域が電波監視可能な状況となっている。また、当該設備の稼働実績をみると、その電波監視可能区域内における混信・妨害の申告件数が少なく、その使用が電波の監査及び調査に限られる場合においては、当該設備の稼働時間が低調となる傾向がみられる。
このような中で、第3期で整備を計画している遠隔方位測定設備及び遠隔受信設備についてみると、電波監視予定区域内において混信・妨害の申告件数が過去3年間ほとんどなかった都市に設置することとなっているものがある一方、第3期整備計画の対象となっていない人口5万人未満の都市の中には、過去3年間に混信・妨害の申告が行われているものがある。
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ii ) 電波監視用車両は、(郵政省が地方電監局の規模(管内の無線局数等)を基に定めた配備基準により配備されているが、当該配備基準は稼働の実績を勘案したものとはなっていないこと等から、配備された車両の稼働が低調な地方電監局がある。
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iii ) 各地方電監局では、近年広報経費の支出が増加してきているが、地方電監局の中には、広報活動の効果について特段の評価がなされないまま施策を実施しているものがみられる。
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. 郵政省は、一般財源と電波利用料財源との間で共通に実施される行政事務の経費(以下「共通経費」という。)について、両財源間での負担の適切化を図るため、その負担割合についての考え方を整理している。しかしながら、地方電監局等に対し、この考え方を通達等文書で明定し、指示していないこと等から、共通経費について電波利用料財源のみから支出している例等がみられる。
また、電波利用料財源から支出している事務経費の中には、事務の受益の内容等からみて、今後、一般財源と電波利用料財源との間で費用の按分を行う必要があると認められる例がある。
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3 |
. 技術試験事務は、無線設備の技術基準を制定するための前段階の作業として、技術データを取得し、分析するための事務であり、その実施により得られた成果については、技術基準として体現されることが求められている。しかしながら、郵政省が委託により実施し、平成9年度及び10年度に終了した案件(7件)の中には、得られた成果の技術基準化が遅れている例がみられる。この原因は、技術試験事務の着手後、当該技術基準に基づいたサービスを提供する予定であった事業者が事業計画等を見直し、サービス開始時期を遅らせたことが主なものと考えられるが、技術試験事務の対象テーマ選定の段階における上記計画の検討が必ずしも十分でなかったことも一因とみられる。
なお、郵政省では、平成11年度から、技術試験事務の終了案件について、部外有識者により構成される「電波利用料技術試験事務の評価に関する研究会」による、i)対象テーマの選定段階、ii)実施段階及びiii)行政への反映段階(技術基準への反映等)の各段階ごとの評価を受ける仕組みを導入し、その結果をフィードバックすることにより、今後の当該事務のより効率的な実施に努めている。しかし、当該事務が電波利用料を財源とし、予算規模も平成11年度で電波利用料財源の予算総額の約3分の1を占める額となってきており、対象テーマの適切な選定の重要性が更に高まってきていることを考慮すると、現在、郵政省が自ら行っている対象テーマの選定については、事後評価とそのフィードバックの仕組みを置くだけでは、事務執行上十分とは言えないと考えられる。
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4 |
. 郵政省は、電波利用料の負担者である免許人の理解と支持を得る観点から、これまで、様々な広報媒体を活用し、電波利用料制度の仕組み・目的、電波利用料で整備される施設の整備計画の概要等の情報の公開に努めてきている。しかし、当該制度が導入されてから6年を経過し、免許人の当該制度に対する関心が高まってきていることもあって、現時点で郵政省が公表していない電波利用料財源の具体的使途、料額の決定の仕組み等の情報の公開を求める意見・要望がみられるなど、当該制度に関する情報の公開に対する免許人の意向が変化してきている。このため、それに対応して、今後免許人のより一層の理解等を得る観点から、情報公開の一層の推進の必要性が高まっている。
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したがって、郵政省は、電波利用料制度の受益者負担の性格にかんがみ、電波利用料財源からの支出の合理化・適切化及び透明性の確保を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
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1 |
. 遠隔方位測定設備及び遠隔受信設備については、整備計画、地域等における混信・妨害の申告件数の実績を踏まえ、整備計画地域の見直しを行うとともに、今後の整備においては、新たな配備基準を策定し、これに基づき実施すること。また、電波監視用車両については、整備済車両の稼働実績を踏まえ、現行の配備基準について見直しを行い、これに基づき整備すること。
さらに、広報経費については、広報効果を評価し、その高いものに重点化すること。
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2 |
. 共通経費及び事務経費に係る一般財源と電波利用料財源との間の負担割合の考え方を明定し、これに基づいた運用を徹底すること。
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3 |
. 次期電波利用料の改定については、上記1.及び2.の措置を速やかに講じた上、その結果を踏まえて行うこと。
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4 |
. 技術試験事務の対象テーマの選定については、郵政省のみで評価・判断する現行の方式を改め、部外有識者による事前評価の仕組みを導入すること。
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5 |
. 電波利用料制度に関する情報の公開については、免許人の意見・要望を踏まえ、公開情報の一層の充実を図ること。
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