新エネルギー・産業技術総合開発機構の財務調査結果の概要

財務の構造
通知日:平成12年10月25日
通知先:通商産業省

事業の概要

 機構は石油代替エネルギーの技術開発及び石炭鉱業の合理化等の業務を行う法人として、昭和55年に設立。 昭和63年に産業技術研究開発業務が追加等
 石炭鉱業構造調整事業は、石炭産業の合理化のため国内炭鉱の整備等を実施

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財務の概要

 技術開発事業の資産総額は2,270億円。石炭鉱業構造調整事業の資産総額は1,480億円


事業内容とその課題

石油代替エネルギー技術開発事業


石炭液化技術開発 技術面では確立の見通し。しかし、経済面での見通しは立たず
新エネルギーに係る技術開発 コスト低減に一定の成果。しかし、既存エネルギーより割高

1.  石炭の液化技術開発は、石油に代替する燃料油の製造が目的。これまで約2,400億円を投入
液化油収率(投入石炭と液化油間の重量比)は58%を達成。しかし、コスト比較では見通し立たず(産業技術審議会(H11.12)
原油価格(12.7ドル/バレル(H10)) 液化油製造コスト(55〜44ドル/バレル(H9))
※H12上期26.2ドル/バレル   ※H11年12月48〜39ドル/バレル
今後、精製技術を確立し、平成13年度で終了予定

2.  新エネルギー技術開発については、これまで54テーマを実施し、約3,900億円を投入
コスト低減に一定の成果。しかし、既存エネルギーと比べると割高
供給実績は増加しているものの供給目標量に比べ相当の開き

発電コストの推移等 (単位:円/kwh、万kw)
エネルギー名 発電コストの推移 既存エネルギーとの比較 供給量の推移 供給目標量
太陽光発電 314(H5)→81(H11) 家庭用電力料金の約3倍 0.9(H2)→9.1(H9) 500(H22)
風力発電 26(H1)→19(〃) 火力発電単価の約2倍 0.3(〃)→2.2(〃) 30(〃)
燃料電池 67(H3)→28(〃) 火力発電単価の約3.5倍 0.9(〃)→1.2(〃) 220(〃)
※家庭用電力料金:約25円/kwh、火力発電単価:約8円/kwh

開発計画において、開発段階に応じたコストダウン等の実用化に向けての開発目標が明確にされておらず
平成9、10年度実施の技術評価結果

(ポイント)
 石炭液化技術開発は、技術面ではほぼ確立するもコスト面から商用化には至っていない
 新エネルギーの技術開発については、供給目標量の達成に向け、開発の段階に対応した具体的目標を適切に設定する等の方策を講じた上で実施することが必要

産業技術研究開発事業


1.  新規産業の創出を目的とした研究開発として約2,400億円、社会的要請からの実用化を図ることを目的とした医療・福祉機器等の研究開発に約860億円など、全体としてこれまで約3,600億円を投入

2.  新規産業の創出を目的とした研究開発は102件中67件(うち33件が先導的な調査研究)が終了
先導的調査研究を除く34件のうち、産業界への波及が期待されるもの23件
しかし、波及効果は具体には不明

(ポイント)
 多額の公的資金が投入されており、国民に対する説明責任を果たす観点から、研究開発の成果がいかに新規産業の創出に結びついているかを明らかにしていくことが必要

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石炭鉱業構造調整事業


 9 次にわたる石炭政策に応じた資金供給を行い、石炭産業の合理化の推進等に寄与
平成13 年度で完了

1. 炭鉱集約化政策(S40年代(1次〜5次))
石炭鉱山整理促進交付金の交付により合理化の推進に寄与
交付総額:1,900億円、昭和40年代までの閉山生産量は全体の85%
2. 生産維持政策(S50 年代(6次〜7次))
補助金の交付等によりS50年代において一定の生産量を確保
補助金等総額:3,400億円、貸付総額:7,500億円
エネルギー表1 エネルギー表2
3.
生産規模縮小政策(S61年以降(8次〜9次)) 貸付(H4から)により新分野開拓に実績
    ※新分野開拓資金貸付総額:180億円、新分野開拓事業による雇用実績1,387人(H4〜10)

4.
貸付総額は1兆8,250億円。損失処理はこれまでほとんどなし、貸付残高は1,011億円
 ※ 経営改善資金:7,500億円、近代化資金:2,990億円、新分野開拓資金:180億円、その他:7,580億円
  閉山に伴いリスク管理債権が発生  →  661億円(貸付残高の65%)
破綻先債権(回収が困難な債権):334億円 + 貸出条件緩和債権(元本の返済を猶予):326億