政策評価に関する標準的ガイドライン
平 成 13 年  1 月  15 日
政策評価各府省連絡会議了承
[標準的ガイドラインの性格]
 政策評価に関する標準的ガイドライン(以下「ガイドライン」という。) は、全政府的に政策評価に取り組むために、各府省が政策評価に関する実施要領を策定するための標準的な指針を示すものである。
 また、ガイドラインにより、政策評価が何を目指して、どのような仕組みで、どのように実施されるのかが国民に明らかとなるものである。
[補足説明]
 ガイドラインは、標準的な指針を示したものであり、各府省がその説明責任(アカウンタビリティ)を果たし、国民本位で成果重視の行政運営を行うため、評価の目的や所掌する政策の特性等を踏まえた効果的な取組を妨げるものではない。
第1 政策評価の目的及び基本的枠組み
1 目 的
 政策評価を導入する主な目的は、次のとおりである。
(1)
国民に対する行政の説明責任(アカウンタビリティ)を徹底すること
(2)
国民本位の効率的で質の高い行政を実現すること
(3)
国民的視点に立った成果重視の行政への転換を図ること
[補足説明]
 主な目的ごとに具体的な意義を示せば、次のとおりである。
(1)
「国民に対する行政の説明責任(アカウンタビリティ)を徹底すること」
   政策評価の実施を通じて、行政と国民との間に見られる行政活動に関する情報の偏在を改善し、行政の透明性を確保することにより、国民に対する行政の説明責任(アカウンタビリティ)を徹底し、行政に対する国民の信頼性の向上を図る。
(2)
「国民本位の効率的で質の高い行政を実現すること」
   政策評価の実施を通じて、民間でできるものは民間に委ね、政府の行政活動の範囲について行政が関与する必要性がある分野に重点化・適正化を図るとの観点を徹底することにより、「行政サービスの利用者」としての国民が求める質の高い行政サービスを必要最小限の費用で提供する効果的・効率的な政策運営を実現する。
 また、政策評価の結果を企画立案やそれに基づく実施に反映させるとともに、政策評価の継続的な実施を通じて得られる知見を行政組織が学習・蓄積していくことにより、政策の質の向上及び行政の政策形成能力の向上が図られる。
(3)
「国民的視点に立った成果重視の行政への転換を図ること」
   政策評価の実施を通じて、政策の実施のためにどれだけの資源を投入したか(インプット)、あるいは、政策の実施によりどれだけのサービス等を提供したか(アウトプット)の上に、サービス等を提供した結果として国民に対して実際どのような成果がもたらされたか(アウトカム)ということを重視した行政運営を推進することにより、政策の有効性を高めていく。また、職員の意識改革を進め、手続面を過度に重視するのでなく、国民的な視点に立って成果を上げることを一層重視する行政運営に重点を置くことによって、国民にとって満足度の高い行政を実現する。
2 政策評価の基本的枠組み
(1) 「政策評価」の概念
 中央省庁等改革に伴い導入される「政策評価」とは、「国の行政機関が主体となり、政策の効果等に関し、測定又は分析し、一定の尺度に照らして客観的な判断を行うことにより、政策の企画立案やそれに基づく実施を的確に行うことに資する情報を提供すること」であり、 「企画立案 (plan)」、「実施 (do)」、「評価 (see)」を主要な要素とする政策の大きなマネジメント・サイクルの中にあって制度化されたシステムとして組み込まれ、実施されるものである。
[補足説明]
 ここでいう「政策評価」における「政策」とは、
(a)
 国の行政課題に対応するための特定の目的や目標を持ち、
(b)
 これらを実現するための手段として、予算、人員等の行政資源が組み合わされた行政活動(案の段階のものも含む。)が目的に照らしてある程度のまとまりになっており、
(c)
 行政活動の実施を通じて、一定の効果を国民生活や経済社会に及ぼすもの
 としてとらえることができる。
 このような政策の「評価」においては、
(a)
 政策の効果等に関する情報・データを収集し、合理的な手法を用いて測定又は分析すること、
(b)
 測定又は分析した結果について、政策の目的や目標などの一定の尺度に照らして検討し、客観的な判断を行うこと、
(c)
 政策の企画立案やそれに基づく実施を的確に行うことに資する情報を提供すること
 が必要になる。
 政策の評価は政策の決定そのものとは異なるものであり、評価結果を政策の企画立案に反映させることによって政策の決定につなげていくものである。
(2) 評価の対象範囲
 政策評価の対象としての政策は、多くの場合、「政策(狭義)」、「施策」及び「事務事業」と言われ用いられている次のような区分においてとらえることができる。
「政策(狭義)」: 特定の行政課題に対応するための基本的な方針の実現を目的とする行政活動の大きなまとまり。
「施策」: 上記の「基本的な方針」に基づく具体的な方針の実現を目的とする行政活動のまとまりであり、「政策(狭義)」を実現するための具体的な方策や対策ととらえられるもの。
「事務事業」: 上記の「具体的な方策や対策」を具現化するための個々の行政手段としての事務及び事業であり、行政活動の基礎的な単位となるもの。
 これらの「政策(狭義)」、「施策」及び「事務事業」は、一般に、相互に目的と手段の関係を保ちながら、全体として一つの体系を形成しているものととらえることができる。
  また、これらは、各府省設置法に定められた任務を達成するための行政活動として具体化されたものであり、国家行政組織法(昭和23年法律第120号)及び内閣府設置法(平成11年法律第89号)に基づき主任の大臣により分担管理されている。
[補足説明]
 上記のような三つの区分は相対的な性格を有するものである。現実の政策の態様は多様であり、施策が複数の階層から成る場合や事務事業に相当するものが存在しない場合、一つの施策や事務事業が複数の政策体系に属する場合など、必ずしも三つの区分に明確に分かれない場合もある。したがって、このような区分による政策のとらえ方は、政策評価の対象を理解するための一つの「理念型」ということができる。
  さらに、政策は社会経済情勢の変化などに応じて変動し得るものであり、その区分を固定的にとらえるべきものではない。
 評価に際しては、評価の対象となる政策がどのような目的の下に、どのような手段を用いて実施されるかという位置付けを明らかにすることにより、的確な評価を行うことが可能になる。このため、政策評価を実施する際には、評価対象に関する目的と手段の関係を明らかにする必要がある。
(3) 評価の実施主体
ア 各府省及び総務省
   各府省と総務省とがそれぞれ次のような役割を分担することによって、政府全体としての客観的かつ総合的な政策評価機能の充実強化を図るものとする。
(ア)
各府省の政策評価の在り方
   各府省は、国家行政組織法及び内閣府設置法に基づき、政策を企画立案し遂行する立場からその政策について自ら評価を実施する。
 また、その実施に当たっては、評価の実施体制、業務量、緊急性等を勘案しつつ、各年度ごとに次のような対象の中から実施するなど、重点的かつ計画的に行うものとする。
(a)
 新規に開始しようとするもの
(b)
 一定期間を経過して事業等が未着手又は未了のもの
(c)
 新規に開始した制度等で一定期間を経過したもの
(d)
 社会的状況の急激な変化等により見直しが必要とされるもの
(イ)
総務省の政策評価の在り方
   総務省は、総務省設置法(平成11年法律第91号)に基づき、政策を所掌する各府省とは異なる評価専担組織の立場から各府省の政策について、統一的若しくは総合的な評価を実施し、又は政策評価の客観的かつ厳格な実施を担保するための評価を実施する。
  具体的には次の政策について評価を実施するものとする。
(a)
 全政府的見地から府省横断的に評価を行う必要があるもの
(b)
 複数の府省にまたがる政策で総合的に推進するために評価する必要があるもの
(c)
 府省の評価状況を踏まえ、厳格な客観性を担保するために評価する必要があるもの
(d)
 その他、政策を所掌する府省からの要請に基づき、当該府省と連携して評価を行う必要があるもの
   また、その実施に当たっては、評価の実施体制、業務量、緊急性等を勘案しつつ、上記の(a)から(d)までに該当する政策の中から各年度ごとに評価対象を重点化するなど、計画的に実施するものとする。その際、府省の実施状況に留意するものとする。
(注)
 「総務省」という場合には、「評価の総合性及び厳格な客観性を担保するための評価を行う、評価の専担組織としての総務省」と、「一府省として自らその所掌する政策について評価を行う総務省」という両者の立場が含まれ得るが、ここでは前者の意味で用いており、以下、「総務省」という場合には、同様の意味で用いることとする。
[補足説明]
 政策評価については、各府省が所掌する政策について自ら評価を行うことが基本となる。各府省が自ら政策評価を行う意義としては、例えば次のようなことが挙げられる。
(a)
 対応すべき行政課題を最も把握しやすい立場にある各府省が自ら評価を行い、その結果を自ら企画立案やそれに基づく実施に反映させることで、実効ある改善・見直しが行われ、政策の質の向上が図られること。
(b)
 各府省は所掌する政策について最も詳しい情報・データを有しており、各府省が自ら評価を行うことによってこれらの情報等が整理され、評価結果等として公表されること。国民はこれらの情報を利用して行政活動の実態を把握することが可能となり、また、政策に対する理解や行政課題に対する認識を深めることにもつながること。
(c)
 各府省が政策評価を通じて得られる知見を学習・蓄積し、以後の政策の企画立案にいかしていくという過程を確立することによって、その政策形成能力が高まること。
 総務省は、各府省とは異なる評価専担組織の立場から、政策の実施状況に基づいた評価を中心として実施していくものとする。
 各府省及び総務省は、評価についてできる限り客観性及び透明性を確保するため、次のような点に留意する必要がある。
(a)
 必要に応じ、学識経験者、民間等の第三者等の活用を図ること(後述イ参照)
(b)
 可能な限り客観的な情報・データを用いて評価を行うよう努めること(後述第2の2(3)参照)
(c)
 評価の結論のみならず、可能な限り、用いたデータや仮定等の前提条件等に関する情報の公表に努めること(後述第2の5 ア参照)
イ 第三者等の活用の在り方
(ア)
各府省における第三者等の活用の基本的考え方
   各府省が評価を行うに当たって、次のような場合にあっては、必要に応じ学識経験者、民間等の第三者等の活用を図るものとする。
 高度の専門性や実践的な知見が必要な場合
 政策評価の実施に当たり客観性の確保、多様な意見の反映が強く求められる場合
   第三者等の活用に当たっては、評価の対象とする政策の性質、評価の内容等に応じて、次のような方法を採るものとする。
 学識経験者等からの意見聴取
 学識経験者等により構成される研究会等の開催
 外部研究機関等の活用
 審議会等の活用
(イ)
総務省の第三者機関
   総務省に置かれる政策評価・独立行政法人評価委員会は、民間有識者により構成し、次のような業務を実施することにより、総務省の政策評価の中立性及び公正性の確保に努めるものとする。
(a)
 総務大臣の諮問に応じて
 政策評価に関する基本的事項
 総務省が各府省の政策について行う統一的若しくは総合的な評価又は政策評価の客観的かつ厳格な実施を担保するための評価に関する重要事項(総務省が行う政策評価の計画、実施状況、主要な勧告等)
を調査審議すること
(b)
 上記に関し、総務大臣に意見を述べること
[補足説明]
各府省が第三者等を活用するに当たっては、次の点に留意する必要がある。
 専門知識の活用を期待するのか、チェック機能を期待するのか、また、どの程度の役割を期待するかなど、第三者の活用についての基本的な考え方をあらかじめ明確にしておくとともに、コスト等についても十分に勘案した上で効率的な実施にも配慮すること
 外部研究機関、コンサルタント等を活用する場合は、評価に用いる情報・データや前提条件、得られる結果などについて委託者である各府省が適切な説明を行い得るようにすること
 委託とする趣旨を踏まえて、外部研究機関等の専門調査研究機関としての地位を尊重すること
第2 政策評価の実施に当たっての基本的な考え方
1 評価の時点

 政策評価には、評価を行う時点によって、基本的には事前及び事後の評価があり、政策の性質によっては途中(中間)の評価がある。
 実際にどの時点での評価を行うかについては、評価の目的、評価対象の性質等に応じて、具体的に判断するものとする。

[補足説明]
それぞれの時点における評価を行う意義は、次のとおりである。
「事前の評価」:
 政策の実施前の時点における評価については、政策の採択や実施の可否を検討したり、複数の政策代替案の中から適切な政策を選択する上で有用な情報を提供できる。
「事後の評価」:
 政策を一定期間実施した後や政策の実施の終了後の時点における評価については、政策の効果に関し、実際の情報・データなどを用いて実証的に評価を行うことができる。政策の改善・見直しや新たな政策の企画立案及びそれに基づく実施に反映させるための情報を提供できる。
「途中の評価」:
 ある程度継続する政策の実施途上における評価については、政策の進捗状況や達成状況を把握することによって政策の的確・着実な実施の推進のための情報や、社会経済情勢の変化を踏まえた改善・見直しのための判断情報を提供できる。
後述3の「評価の方式及び実施の考え方」においては、評価の方式ごとに評価を行う時点について一定の考え方が示されており、評価の時点については、どのような評価方式を採用するかとも関連して判断されることとなる。
2  評価の観点、一般基準等
 政策評価は、当該政策の目的や目標に照らして行うものであり、各府省及び総務省は、次のような観点及び評価の一般基準を基本としつつ、評価の目的、評価対象の性質等に応じて適切な観点等を選択し、総合的に評価するものとする。
(1) 評価の観点
   実際に政策評価を実施するに当たっての観点としては、「必要性」、「効率性」、「有効性」があり、政策の性質によっては、「公平性」の観点がある。また、これらの観点からの評価を踏まえた「優先性」の観点がある。
(2) 評価の観点別の一般基準
(ア)
「必要性」の観点
 政策の目的が、国民や社会のニーズに照らして妥当か、上位の目的に照らして妥当か。
 行政関与の在り方から見て行政が担う必要があるか。
(イ)
「効率性」の観点
 投入された資源量に見合った効果が得られるか、又は実際に得られているか。
 必要な効果がより少ない資源量で得られるものが他にないか。
 同一の資源量でより大きな効果が得られるものが他にないか。
(ウ)
「有効性」の観点
  政策の実施により、期待される効果が得られるか、又は実際に得られているか。
(エ)
「公平性」の観点
 政策の目的に照らして、政策の効果の受益や費用の負担が公平に分配されるか、又は実際に分配されているか。
(オ)
「優先性」の観点
 他の政策よりも優先的に実施すべきか。
   各府省及び総務省は、実際に政策評価を実施するに当たって、上記の一般基準を踏まえ、評価基準の具体化を図るものとする。
(3) 評価手法
   各府省及び総務省は、評価に要するコスト等も勘案の上、評価の目的、評価対象の性質等に応じた適用可能で合理的な評価手法により政策評価を実施するものとする。その際、次のような点を踏まえるものとする。
(ア)  政策評価の実施に当たっては、まずは定量的な評価手法の開発を進めるよう努め、可能な限り具体的な指標・数値による定量的な評価手法を用いるよう努めること
(イ)  定量的な評価手法の適用が困難である場合又は客観性の確保に結び付かない場合などにおいては、定性的な評価手法を適用するものとし、その際、可能な限り、客観的な情報・データや事実に基づくものとしたり、評価において第三者等を活用するなどにより、評価の客観性の確保に留意すること
[補足説明]
 評価手法の中には、情報・データの収集、評価の実施に膨大なコストや事務負担を要するものがある。政策評価の実施のためには一定のコスト等は避けられない一方、分析精度は高いが、コスト等も大きいような評価手法を画一的に適用することは効率的ではない。
 また、評価手法の中には、分析精度や適用範囲等について技術的な限界があるものもある。高度な分析精度を求めるあまり、定量的な評価手法の適用を過度に求めることは効率的でなく、諸外国にまま見られるように、政策評価への取組の円滑な展開を妨げるおそれもある。このため、(1)どのような情報を求めて評価を行うか、(2)どの程度の分析精度が必要か、(3)評価のためにどの程度の時間やコスト等をかけるべきかなどについても事前に検討した上で、適切な評価手法を選択することが必要である。
 初めから高度かつ厳密な評価手法の画一的な適用を求めるより、簡易な評価手法であっても、その有用性が認められている評価手法をまず定着させ、徐々に評価手法の高度化を図ることによって評価の質を高めていくという取組が重要である。
 評価手法を選択する場合には、事後的に評価結果が検証可能かといった点についても留意する。
3 評価の方式及び実施の考え方
(1) 評価の方式
 各府省は、以下の標準的な三つの評価の方式を踏まえつつ、所掌する政策の特性や各々の分野における政策評価に対する要請などに応じて、適切な評価の方式を採用し、実施するものとする。
  その際、三つの標準的な評価方式の主要な要素を組み合わせた一貫した仕組みにより評価を行うなど、実態に即した取組が可能なものとする。
[補足説明]
 各府省が実施する政策評価の方式については、画一的なものとする必要はないものの、ある程度標準的なものとすることにより、全政府的な運用を確保する必要がある。
  このため、評価方式については、政策評価に対して何が要請されているかということを踏まえ、どのような内容の評価を行うことが適切かの観点から、三つの評価の方式を標準的なものとして挙げた。
 評価方式については、それぞれの方式の持つ長所や特性などを十分に認識した上で合目的的に導入することにより、政策評価に期待される役割が十分に果たされ、評価の効率的な実施が確保される必要がある。
  また、その導入に当たっては、的確な実施の確保の観点から、試行も含め、段階的かつ計画的に進めることができるものとする。
(2) 事業評価
ア 方式の概要等
(ア)
基本的性格
   事前の時点で評価を行い、途中や事後の時点での検証を行うことにより、行政活動の採否、選択等に資する情報を提供することを主眼とする。
(イ)
評価の対象
   事務事業が中心となるものと考えられるが、所掌する政策の性質等に応じ必要があればおおむね施策としてとらえられる行政活動のまとまりについても対象とする(以下「事業等」という。)。
(ウ)
評価の時点
   事前の時点で評価を行い、途中や事後の時点で検証を行う。
(エ)
評価の内容
   評価の内容は、主として次のようなものとする。ただし、評価の目的、評価対象の性質等によっては該当しないものもある。
  a 事前の時点における評価
 
(a)
 事業等の目的が国民や社会のニーズに照らして妥当か、上位の目的に照らして妥当か、行政関与の在り方からみて行政が担う必要があるかについて検討する。
 
(b)
 事業等の実施により、費用に見合った効果が得られるかについて検討する。このため、可能な限り、予測される効果やそのために必要となる費用を推計・測定し、それらを比較する。その際、効果については、受益の帰属する範囲や対象を極力特定し、可能であれば定量化する。また、費用については、事業等に係る直接的な支出のみならず、事業等により付随的に発生するそれ以外の費用(例えば社会費用等)についても含めることを検討する。
 
(c)
 上位の目的の実現のために必要な効果が得られるかについて検討する。
 
(d)
 その他必要に応じて、より効率的で質の高い代替案がないか、事業等の目的に照らし、その効果の受益や費用の負担が公平に分配されるか、他の事業等よりも優先的に実施する必要があるかについて検討する。
  b 途中や事後の時点における検証
   次の(a)及び(b)の把握により、課題等が認められるものを基本とし、必要に応じ、途中や事後の時点で、事前の時点で行った評価内容を踏まえて検証を行う。
 
(a)
 途中の時点で、事業等の実施予定に対する進捗状況、目的等の実現状況について把握する。
 
(b)
 事後の時点で、事業等の目的等の実現状況について把握する。
イ 実施の考え方
 事業評価の実施に当たっては、次のような取組を行うものとする。
(ア)
 既に評価に関する一定の取組がなされている公共事業、研究開発及びODA事業について、既存の評価の取組を踏まえつつ、評価内容の充実、評価の透明性の向上など評価の取組の一層の改善・充実を図る。
(イ)
 規制については、「規制緩和推進3か年計画(再改定)」(平成12年3月31日閣議決定)の趣旨を踏まえつつ、評価に必要な情報・データの収集を進め、可能なものから順次評価に取り組む。
(ウ)
 上記(ア)に該当するもの以外の国の補助事業については、分野ごとに適用可能な評価手法等に関する研究・開発を進めるとともに、評価の実施について検討する。
(エ)
 上記(ア)、(イ)及び(ウ)の行政分野等以外については、新規に開始しようとする事業等について上記(ウ)の補助事業と同様に評価に関する取組の検討を行う。
[補足説明]
(方式の概要等)
 政策の企画立案や実施に当たっては、幾つかの選択肢の中から選ぶことが求められることがあり、特に事業等については、個々の具体的な選択が必要となる場合が多い。その際、国民生活や社会経済に与える影響が大きいものや多額の財政支出を伴うものなどについては、事前の時点で、あらかじめ期待される効果やそれらに要する費用などを分析・検討することにより、選択を合理的なものとすることが求められる。
 既に実施されている事業等については、今後継続して実施すべきか否か、改善・見直しが必要かなどの情報を得ることを主眼として、途中や事後の時点において、必要に応じ、事前の時点における評価に準じた内容の評価を行う。
(実施の考え方)
 事業評価の実施に当たっては、評価手法等が確立している分野がまだ限られていること、技術的に難しい分野があることなどから、分野別に段階的な導入を進めることとしたものである。
 規制の評価については、規制の便益や費用を推計したり、その帰属先を把握することなどから取り組み、規制の評価に関する知識や技能の蓄積を図る。また、規制の評価手法等に関するケース・スタディ等の調査研究を進めたり、試行的な評価を実施するとともに、「規制緩和推進3か年計画(再改定)」を踏まえて、規制の評価の仕組みの在り方について早急に検討する。
 国の補助事業については、評価に必要な情報・データの収集を行い、可能なものから試行的に評価を行い、評価の仕組みを順次構築する。
 上記イに掲げた行政分野等以外についても、国民生活や社会経済に与える影響が大きいものや多額の財政支出を伴うものなど、評価の必要性が高いものを優先した積極的な取組が求められる。その際、具体的にどこまで実施するかについては、評価にかかるコスト等も勘案して検討することが重要である。
 事業等の実施主体が国以外である場合には、評価の目的や内容、実施方法等について明らかにし、当該実施主体である地方公共団体や民間企業などの理解と協力を得て、的確な評価を行うよう努める必要がある。
(3) 実績評価
ア 方式の概要等
(ア)
基本的性格 
   行政の幅広い分野において、あらかじめ達成すべき目標を設定し、それに対する実績を測定しその達成度を評価することにより、政策の達成度合いについての情報を提供することを主眼とする。
(イ)
評価の対象
   共通の目的を有する行政活動の一定のまとまり(おおむね施策程度のまとまりに相当すると考えられる。以下「施策等」という。)を対象とする。その際、各府省の主要な施策等に関し幅広く対象とする。
(ウ)
評価の時点
   あらかじめ目標を設定し、定期的・継続的にその目標に対する実績を測定する。目標期間終了時に当該期間全体における達成度を評価する。
(エ)
評価の内容等
   評価の内容等は、主として次のようなものとする。
(a)
 主要な施策等に関し、国民に対して「いつまでに何についてどのようなことを実現するのか」を分かりやすく示す、成果(アウトカム)に着目した目標(以下「基本目標」という。)を設定する。
  具体的な達成水準を示すことが困難な基本目標については、これに関連した測定可能な指標を用いて、それぞれの指標ごとに達成水準を示す具体的な目標(以下「達成目標」という。)を設定する。達成目標は、可能な限り客観的に達成度を測定できるような定量的又は定性的な指標を用いて示すこととする。
  なお、目標や指標については、対象となる施策等の性質等に応じて適切に設定するものとする。
(b)
 目標については、定期的・継続的に実績を測定し、必要に応じて、随時、関係する施策等の改善・見直し又は目標自体の見直しを行う。
(c)
 目標期間が終了した時点で、目標期間全体における取組や目標に対する最終的な実績等を総括し、目標がどの程度達成されたかについて評価し、必要に応じて、施策等や次の目標期間の目標設定の在り方について見直しを行う。
(d)
 目標の設定、実績の測定、目標期間終了時の評価については、それぞれの段階でその結果等を公表する。
イ 実施の考え方
   各府省は、実績評価の実施に当たり、優先分野とその他の分野とに区分し、それぞれ試行を含めた段階的な導入を図り、数年を経て本格的な実施に移行することができるものとする。
[補足説明]
(方式の概要等)
 行政は、自らの活動の現状や将来の展望を国民に積極的に明らかにし、説明責任を徹底していくことが求められる。そのためには、行政が政策の実施を通じて実現しようとしていることをあらかじめ国民に対して説明するとともに、その達成度を定期的・継続的に把握し、実現された成果を具体的にかつ分かりやすく示していくことが重要である。
 また、行政活動の効果を常に点検し、不断の見直しや改善を行うことにより、政策の質の向上を図っていくことが求められている。そのためには、目標の達成度に関する情報を適時的確に把握し、達成度が十分でないものについては早い段階で必要な措置を講ずるなど、政策運営に適切に反映させていくことが重要である。
 評価の対象については、所掌する政策の性質等に応じ、おおむね事務事業としてとらえられるものについても対象とすることができる。

 基本目標及び達成目標のイメージ例は、次のとおりである。

  <図:基本目標及び達成目標のイメージ例>
  基本目標及び達成目標のイメージ例
 基本目標の達成期間については、施策等の成果の発現までには一定の期間が必要であることから、中期的な期間、一般的には5年程度とすることが基本となるものと考えられる。一方、施策等の性質等によって、成果が短期間で現れるものや、長期間を要するものもあり、具体的な目標期間の設定に当たっては、施策等の性質に応じて適切な期間を設定することとする。
 基本目標については、アウトカムに着目した目標の設定が困難であったり、適切でない場合には、アウトプットに着目した目標に替えることができる。
 達成目標については、可能な限り定量的な指標を用いることが望ましい。その際、施策等の性質に応じて、アウトカムに着目した指標やアウトプットに着目した指標を適切に用いることが必要である。
  また、施策等の性質によって指標の定量化が困難であったり、適切でない場合には、定性的な指標を用いることとする。
 基本目標に対して具体的な達成目標の設定がなし得ない場合においては、基本目標を達成するためにどのような活動をどの程度実施したかという実績を具体的に説明するといった代替的な措置を講ずることができるものとする。
 目標や指標を設定し公表するに当たっては、目標設定の考え方、基本目標と達成目標との関係、目標を達成する手段、費用等について可能な範囲で明らかにする。
 成果に着目した目標は、その達成が一般に行政機関が必ずしも統制できない外部要因の影響を受けることを排除できず、達成の度合いを全面的に行政機関に帰するとすることは困難である。このため、成果に着目した目標を設定した場合には、目標達成に影響を及ぼす可能性がある外部要因についても、可能な限りあらかじめ明らかにすることとする。
 目標や指標の設定に当たっては、指標の測定のための情報・データの入手が過重な負担を生ずることのないように、あらかじめその入手方法について検討しておく必要がある。
(実施の考え方)

 「実績評価」については、各府省において経験のない新たな方式であること、評価手法に関する知見の蓄積も少ないこと、米国や英国においても「実績評価」のような評価方式の導入に当たっては、目標や指標の設定の難しさ等を勘案し一定の試行を行うなど全面導入には数年間をかけていることから、特に試行的実施を含め、段階的かつ計画的に導入する必要性が高いものと考えられ、その方法としては、次のような手順が考えられる。

<図: 実績評価の段階的導入のイメージ例>
優先的に実施する分野
その他の分野
実績評価段階的導入のイメージ例、優先的に実地する分野
実績評価段階的導入のイメージ例、その他の分野
(4) 総合評価
ア 方式の概要等
(ア)
基本的性格
   特定のテーマを設定し、様々な角度から掘り下げて総合的に評価を行い、政策の効果を明らかにするとともに、問題点の解決に資する多様な情報を提供することを主眼とする。
(イ)
評価の対象
   特定の行政課題に関連する行政活動のまとまり(おおむね政策(狭義)や施策ととらえられる行政活動のまとまりに相当すると考えられる。以下「政策・施策」という。)を対象とする。
(ウ)
評価の時点
   政策・施策の導入から一定期間を経過した時点を中心とする。
(エ)
評価の内容
   評価の内容は、主として次のようなものとする。なお、評価のテーマや評価対象の性質等によって評価の内容は一定のものではなく、必ずしもすべての内容が該当するものではない。
(a)
 政策・施策の効果の発現状況を様々な角度から具体的に明らかにする。その際、政策・施策の直接的効果や因果関係、場合によっては、外部要因の影響についても掘り下げた分析を行い、さらに、必要に応じ波及効果(副次的効果)の発生状況及びその発生のプロセスなどについても分析する。
(b)
 (a)を踏まえ、政策・施策に係る問題点を把握するとともに、その原因を分析する。
(c)
 政策・施策の目的が依然として妥当性を有しているかについて検討する。また、必要に応じて、行政関与の在り方からみて行政が担う必要があるかなどについても検討する。
(d)
 必要に応じて、政策・施策の効果とそのために必要な費用(マイナスの効果や間接費用を含む。)を比較・検討する。また、国民にとってより効率的で質の高い代替案はないかについて検討する。
(e)
 関連する政策・施策との間で、整合性が確保されているかについて検討する。
(f)
 場合によっては、他の政策・施策よりも優先的に実施する必要があるかについても検討する。
イ 実施の考え方
   総合評価については、時々の課題に対応して、評価の実施体制、業務量、緊急性等を勘案しつつ、テーマを選択し、重点的に実施するものとする。その実施に当たって重点的に採り上げるものとしては、例えば、次のようなものが挙げられる。
(a)
 社会経済情勢の変化により改善・見直しが必要とされるもの
(b)
 国民からの評価に対するニーズが高く、緊急に採り上げて実施することが要請されるもの 
(c)
 社会経済や国民生活に与える影響が大きいもので開始から一定期間が経過したもの 
(d)
 従来の政策・施策を見直して、新たな政策展開を図ろうとするもの
(e)
 評価を実施してから長期間が経過したもの
[補足説明]
(方式の概要等)
 行政が国民のニーズや社会経済情勢に的確に対応するためには、政策・施策の効果を具体的に明らかにするとともに、行政として対応を求められる問題点やその原因などを分析し、その解決に資する情報を提供することにより、的確な改善・見直しにつなげていくことが必要である。特に、これまでの取組を見直し、新たな政策展開を行おうとする際には、このような評価が求められる。
 実際に総合評価を行う際の具体的な対象は、設定した評価のテーマによって変わってくるものであり、柔軟にとらえられるべきものである。例えば、政策自体の在り方にもかかわるテーマを設定して評価する場合には、政策から施策、必要に応じて事務事業までを評価することになることが考えられる。また、政策を実現する具体的手段である施策に焦点を当てたテーマを設定して評価する場合には、施策を中心として必要に応じて事務事業までを評価することになることが考えられる。なお、分野横断的なテーマを設定して複数の施策を対象として評価する場合も考えられる。
 総合評価は、政策・施策の実施前の時点においても、必要に応じ、評価を行うことがあり得る。その際、類似の総合評価の結果を参考にしたり、他の評価方式の評価により蓄積された情報・データを用いることも考えられる。
 各府省が総合評価を行うに当たり、府省の任務やそれと一体不可分な根幹的な基本方針などの目的については、これに照らして評価を行う尺度としてとらえられるのが通常であり、それ自体を取り上げて評価を行うことは一般に困難であると考えられる。
(実施の考え方)
 総合評価については、その計画、情報・データの収集の準備なども含め、各テーマの評価に要する期間が長く、コストもある程度大きくなることが予想され、毎年実施できる評価の件数には限りがあることから、選択的かつ重点的に実施することとしたものである。
 総合評価を実施する機会としては、次のようなものが想定される。
(a)
 実績評価において、目標の妥当性の検討や目標に対する実績の評価の際に、掘り下げた総合的な評価が必要と判断された場合
(b)
 法律の見直し条項による制度の見直しや、期限が到来した時限法のその後の対応の検討を行う場合
(c)
 各種中長期計画の策定や改定を行う場合
   また、審議会等における政策・施策の改善・見直しに係る審議・検討を総合評価として位置付けることができる。その場合には、専門的な見地から必要な調査・分析を行い、評価結果を公表するなどの手続を踏むことが必要である。
 総合評価と事業評価との関係については、例えば、総合評価において、事業評価の事前の評価結果、途中や事後の検証結果を活用したり、総合評価の中で、事業評価の事前評価、又は途中若しくは事後の検証を実施することが考えられる。
 総合評価については、その習熟に時間を要することも考えられることから、一定の試行を経るなど具体的な評価の実践の中で、徐々にその質の向上を図ることが考えられる。

4 評価結果の政策への反映
 各府省は、政策評価の結果が、予算要求(定員を含む。)、法令等による制度の新設・改廃、各種中長期計画の策定といった企画立案作業において、重要な情報として活用され、当該企画立案作業に適時的確に反映されるよう、それぞれの実情に応じ、例えば、政策評価担当組織による政策評価結果の取りまとめ、当該政策の企画立案部門への通知、政策への反映状況(評価結果に基づく措置状況(内容、時期、今後の予定等))に関する報告の徴収などの仕組みを設けるものとする。
 総務省は、次のような措置を講ずることにより、総務省が実施する政策評価の結果が各府省の政策に適時的確に反映されるようにするものとする。
(a)
 政策評価の終了後、速やかに、評価した政策の概要、評価結果を取りまとめ、関係する府省に通知する。その際、必要があると認められる場合には総務大臣から関係する府省の大臣に勧告する。
(b)
 勧告の後、関係する府省に対し、政策評価の結果の政策への反映状況(講じられた措置の内容、時期等又は講じられていない場合その理由と今後の予定等)について適期に報告を求める。
  また、通知を行ったものについては、府省が何らかの措置を講じた場合に、必要に応じ、関係する府省に対し資料の提出及び説明を求める。
(c)
 政策評価の結果、勧告事項のうち特に必要があると認められる場合には、内閣総理大臣に対し、意見を具申するものとする。
 予算への反映について、各府省は、評価結果を踏まえて、政策の改善・見直しに関して検討を行い、その結果を予算要求の段階等で適切に反映するよう努めるものとする。また、財政当局は、予算編成の過程において、政策評価の結果の適切な活用を図るよう努めるものとする。
5 評価結果等の公表
 各府省及び総務省は、政策評価の実施要領、計画的な実施に係る具体的な運営の方針のほか、次のような事項を評価の過程を含めて可能な限り具体的に公表するものとする。
(ア)
評価結果
 対象とした政策の目的・目標、具体的内容、実現手段(関連する予算額等を含む。)、成果・実績等
 評価の際に使用した仮定等の前提条件、評価手法・指標、データ
 評価の過程で聴取した学識経験者、民間等の意見等
 評価の結論
(イ)
評価結果の政策の企画立案への反映状況 
評価結果に基づく措置状況(内容、時期、今後の予定等)
 各府省及び総務省は、上記アについて、国民にとって容易に入手できる方法で、かつ、速やかに分かりやすい形で公表を行うものとする。
 公表は、報道発表、インターネットのホームページへの掲載(所在情報を含む。)、窓口での配布などで行うものとする。
 総務省は、政府全体の評価結果及び政策への反映状況などについて、毎年度取りまとめ公表するものとする。
 各府省及び総務省は、政策評価に関する外部からの意見・要望を受け付ける窓口を明確化するなどの仕組みの整備を図るものとする。
[補足説明]
 中央省庁等改革基本法(平成10年法律第103号)第29条第3号においては、政策評価に関する情報の公開を進めること、評価結果の政策への反映について国民に説明する責任があることが規定され、政策評価に関する情報の公表は、政策評価制度の仕組みの中で極めて重要な位置を占めている。こうした観点から、上記の公表により、評価結果を外部からも検証できるようにしておくことが重要である。
 政策評価においては、公表することにより国及び公共の安全を害する情報や個人のプライバシー、企業秘密に関する情報などを含む場合もあり得る。このような情報の取扱いについては、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(平成11年法律第42号)の考え方に基づき適切に対応する。
第3 各府省の政策評価
1 実施体制・組織
(1)
 各府省の政策評価担当組織は、例えば次のような役割を担うことにより、府省の政策評価の厳正かつ客観的な実施を確保するものとする。
 
 実施要領及び運営の方針の策定など所管行政の政策評価に関する基本的事項の企画及び立案
 
 政策所管部局等の政策の評価
 
 政策所管部局等が行う政策評価の支援(評価手法に関する知見の提供等)、必要な助言
 
 府省における評価状況の取りまとめや公表など政策評価の総括
 
 政策評価を担うことができる人材の養成・確保の推進
   また、政策所管部局等は、政策評価担当組織の総括の下に評価を実施し、又は評価に参画する。
(2)
 職務権限が独立しているものなど独立性の高い外局等にあっては、府省の内部部局のほかに当該外局等に政策評価を担当する組織を置くことができる。その場合においては、当該外局等において政策評価を自律的に実施することができるものとする。
[補足説明]
 政策評価の実施体制については、政策評価担当組織と政策所管部局等との役割分担の下で、各府省の実情に応じ、府省を挙げて取り組む体制を整備するものとする。
 その際、評価に利用できる資源には限界があることから、できる限り府省として実効性が上がるようにするとともに、政策評価担当組織と政策所管部局等との間に相互牽制と補完が働くように留意する必要がある。
 政策評価担当組織は、上記例示に係る政策所管部局等の政策の評価を行う場合には、府省内の政策の横断的な評価や複数の部局にまたがる政策の評価など政策所管部局等では困難と考えられる評価を行うことが期待される。
 上記の人材養成の推進については、研修等の実施が重要な手段となると考えられるが、その際、職員の意識の改革を併せて浸透させていく内容となるよう努める必要がある。

2 政策評価の実施要領の作成等
(1)
 各府省は、体系的かつ継続的な政策評価の実施を確保するため、政策評価の基本的な手続、手順等を規定した実施要領を策定するものとする。
 実施要領は、前述の第1、第2及び第3の1に沿って、次のような事項について定めることを基本とする。
 
(a)
 評価の目的等
 
(b)
 評価の実施体制
 
(c)
 評価の観点、一般基準等
 
(d)
 評価の方式
 
(e)
 評価結果の政策への反映
 
(f)
 評価結果等の公表
 
(g)
 政策評価に関する外部からの意見・要望等を受け付ける窓口
[補足説明]
 実施要領は、新府省発足後、速やかに策定する。
 評価の方式については、次のような事項を規定する。
 評価対象、時点、実施主体、主な内容
 段階的かつ計画的に実施する場合は、その手順
(2)  各府省は、実施要領を踏まえ、各年度の政策評価の計画的な実施に係る具体的な運営の方針を定めるものとする。
 当該方針にかかわらず、政策評価を行う緊要性の高いものについては、機動的に対応するものとする。
[補足説明]
 運営の方針は、実施要領の策定後、速やかに策定する。また、必要に応じ、見直すものとする。
 実施要領に、各年度の政策評価の計画的な実施に係る具体的な運営の方針が含まれている場合には、運営の方針を作成する必要はないものとする。
第4 総務省の政策評価
1 総務省の役割
 総務省行政評価局は、政策を所掌する各府省とは異なる評価専担組織の立場から、各府省の政策について、統一的若しくは総合的な評価を行い、又は政策評価の客観的かつ厳格な実施を担保するための評価を行う(具体的には、第1の2(3)ア(イ)の(a)から(d)のとおり。)ほか、府省と連携しつつ、ガイドラインの見直し、政府全体の評価結果及び政策への反映状況等の取りまとめ・公表、「政策評価各府省連絡会議」の開催等の事務を行う。
2 政策評価の実施要領の作成等
(1)  総務省は、体系的かつ継続的な政策評価の実施を確保するため、総務省の政策評価の基本的な手続、手順等を規定した実施要領を策定するものとする。
 実施要領に規定する事項は、前述の第1、第2及び第4の1に沿って、第3の2(1)に掲げる事項に準じたものとする。
(2)  総務省は、実施要領を踏まえ、各年度の政策評価の計画的な実施に係る具体的な運営の方針を定めるものとする。
 当該方針にかかわらず、政策評価を行う緊要性の高いものについては、機動的に対応するものとする。また、この方針において、総務省設置法第4条第19号に基づく政策評価に関連した特殊法人の業務の実施状況に関する調査等運営に係る重要事項についての取扱方針を記載する。
[補足説明]
 実施要領は、新府省発足後、速やかに策定する。
 運営の方針は、実施要領の策定後、速やかに策定する。また、必要に応じ、見直すものとする。
3 行政評価・監視との関係
 政策評価と政策評価を除く行政評価・監視とは、明確に区分されるものとし、その運営に当たっては、作業の重複を避けるなど効率的な運営に配慮し、それぞれの機能が充分に果たされるように工夫するものとする。
 政策評価機能を除いた行政評価・監視機能は、各行政機関の業務の実施状況について、主として合規性、適正性、効率性(能率性)等の観点から独自に評価・監視し、業務運営の改善を図るものであり、特に、国民からの苦情、事故・災害、不祥事件等を契機として、早急に改善を要するものについて機動的に実施するものとする。
[補足説明]
 政策評価機能を除いた行政評価・監視機能における「効率性」の観点は、政策の執行面における効率性、すなわち、政策を所与のものとして必要な業務量等をより少ない予算・人員で実施することができないか、無駄な支出をやめることができないかといった「能率」の概念に近いものである。
第5 そ の 他
(1) 政策評価関係部門の連携
 総務省は、政策評価担当組織相互間の連携を密にし、政策評価制度の円滑かつ効率的な実施を図るとともに、政策評価の取組を促進し、評価の質の向上を図るため、次のような事項について連絡・協議することを目的として、各府省の政策評価担当組織の長等により構成される「政策評価各府省連絡会議」を開催するものとする。
 政策評価の実施に関する調査研究
 ガイドラインの見直し
 今後の評価の取組に当たって参考となる各府省、諸外国の事例の紹介
 政策評価を実施するに当たって参考となる手引書や情報の提供・交換
 その他政策評価に関する重要事項
[補足説明]
 「手引書」は、評価を実際に行うに当たっての手順、留意点等をまとめたものとする。
(2) 人材の養成・確保
 総務省は、各府省の協力を得て、各府省及び総務省の政策評価を担当する人材を養成・確保するため、次のような方策を推進するものとする。
 評価の分野における官民交流
 政策評価担当職員の人事交流
 行政内外からの有能な人材を養成・確保する仕組み
 政策評価担当職員に対する体系的かつ継続的な研修の実施
 上記の方策を推進するに当たっては、(1)の「政策評価各府省連絡会議」を活用するものとする。
[補足説明]
 人材の養成・確保に関しては、総務省行政評価局を始めとする政策評価部門において「一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律」(平成12年法律第125号)を活用した公認会計士等の専門的・実務的な知識を有する者の採用の促進が考えられる。また、政策評価担当組織の専門化の促進のため、退職公務員をその再任用を含め積極的に活用することなども考えられる。
 政策評価制度の理解を含め職員の意識の改革を進めるため、周知活動を実施することが重要であると考えられる。
(3) 政策評価に関する所在情報の整備
 総務省は、各府省の協力を得て、各府省の評価結果等評価に関する情報の所在情報を国民が一元的、かつ、容易に検索できるクリアリング・ハウス機能の充実を図るものとする。
(4) 評価手法の調査研究
 各府省及び総務省は、それぞれの評価の実施の必要に応じた評価手法の調査研究を進めるものとする。
[補足説明]
 政策評価の質を高めるためには、評価手法の開発を進めていく必要があるが、全く新たな評価手法の開発は容易ではなく、当面は既存の評価手法をいかに適切に適用するか等の工夫を行うことなどが中心となる。現状では、評価手法を用いた結果の誤差の程度など評価手法の信頼性や精度についての情報が不足しており、このような課題について、外国における実施例を含めて調査研究を行い、その情報の提供に努めることが必要である。
  また、類似事業間における評価指標や評価手法の共通化について調査研究を行うことも重要である。
  さらに、評価手法の開発に当たっては、理論と実務の両面からのアプローチが必要であり、各府省及び総務省が、外部研究機関の協力も得ながら開発を進めるものとする。
(5) ガイドライン等の見直し
 政策評価制度は新たに導入される制度であり、実施の過程を通じてその改善・発展が図られることとなる。したがって、総務省及び各府省は、政策評価の実施状況、評価手法の研究開発の動向等を踏まえ、必要に応じガイドラインや実施要領を見直し、改定するものとする。



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