下水道等に関する行政評価・監視の勧告に伴う改善措置状況の概要

 

【調査の実施時期等】  実地調査時期:平成9年4月〜10年10月
 調査対象機関:総務省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、都道府県、市町村、関係団体
【勧告日及び勧告先】  平成10年10月6日、農林水産省、国土交通省及び環境省に対し勧告
【回 答 年 月 日】  農林水産省(平成11年9月6日)、国土交通省(平成11年11月16日)、環境省(平成11年10月1日)
【その後の改善措置
状況に係る回答年月日】
 農林水産省(平成13年6月15日)、国土交通省(平成13年6月14日)、環境省(平成13年6月11日)

【行政評価・監視の背景事情等】
 我が国における下水道等による汚水処理施設の整備は、公共投資基本計画(平成6年10月7日閣議了解)等に基づき、21世紀初頭までに同施設により衛生処理される人口の割合を9割を超える程度に引き上げるべく推進中。しかし、平成9年度末の汚水処理施設整備率は6割、特に中小市町村における汚水処理施設の整備が課題
 日本下水道事業団(昭和50年設立。認可法人)は、地方公共団体からの委託を受け、下水道の終末処理場等の根幹施設の建設等を行い、下水道の普及に寄与。しかし、同事業団設立後20年余りを経過し、大都市の下水道普及率が向上する一方、中小市町村の下水道整備は依然として低い水準にあるなど下水道をめぐる環境に変化が生じており、事業運営の見直し等が必要
 このような状況を踏まえ、地方公共団体における汚水処理施設の整備状況、日本下水道事業団における業務の実施状況等を調査


主 な 勧 告 事 項
関係府省が講じた改善措置状況
1 下水道等汚水処理施設の整備の効率化
(1)下水道等汚水処理施設整備事業間における調整の推進
(勧告)
1. 農業集落排水事業と合併処理浄化槽設置整備事業との対象区域についての調整を行うためのルールを策定すること。
(環境省(厚生省)、農林水産省)
(説明)
 下水道と農業集落排水施設等の調整ルールは設けられているが、農業集落排水施設と合併処理浄化槽との調整ルールはなく、事業を効率的に推進する上であい路
 農業集落排水事業の実施が確実な地区において、国庫補助事業により合併処理浄化槽が設置され、農業集落排水施設の供用に伴って財産処分制限期間内にこれに接続した例等あり。

(勧告)
 合併処理浄化槽設置整備事業により設置される合併処理浄化槽は、農業集落排水事業実施地区及び農業集落排水事業の実施が確実と見込まれる地区以外の区域において設置されるものであるというルールを策定し、以下の通達等を都道府県等に対し発出
【通達】
 「合併処理浄化槽設置整備事業における農業集落排水事業との調整等について」(平成11年1月19日付け厚生省生活衛生局水道環境部浄化槽対策室長通知)
 「農業集落排水施設の効率的な整備の推進について」(平成11年3月31日付け農林水産省構造改善局計画部事業計画課長及び建設部整備課長通知)
2. 集合処理方式と個別処理方式との統一的な経済比較が行えるようなマニュアルを作成すること。
(環境省(厚生省)、農林水産省、国土交通省)
(説明)
 汚水処理方式(集合処理、個別処理)の統一的な経済比較を行うために3省が作成しているマニュアル等の内容が区々
 合併処理浄化槽の標準的な設置経費、耐用年数に関する内容が関係省間で区々
 「汚水処理施設の整備等に係る関係省連絡会議」等において、汚水処理施設の建設費や維持管理費等について、3省間で考え方や内容を統一させるための必要な調整、検討を行った結果、「汚水処理施設の効率的な整備の推進について」(平成12年10月11日付け3省担当課長連名通知)を発出し、統一的な経済比較を行うための建設費等の統一を図り、各都道府県に周知
【統一例:5人槽の合併処理浄化槽の場合】
区 分 従    来 統一後
農林水産省 国土交通省 環境省(厚生省)
建 設 費 100万円/基 96万円/基 80万円/基 88.8万円/基
維持管理費 8万円/基・年 5.5万円/基・年 7.9万円/基・年 6.5万円/基・年
(勧告)
3. 連絡会議を早急に設置するなど3省連名通知の趣旨を徹底するよう都道府県及び市町村を指導すること。
(環境省(厚生省)、農林水産省、国土交通省)
(説明)
  連絡会議が未設置であるなど部局間の連絡調整体制が整っていない地方公共団体があり、効率的な汚水処理施設の整備に支障
・ 連絡会議が未設置:18都道府県中4都道府県
・ 連絡会議で調整未実施:14都道府県中4都道府県

 3省は、汚水処理施設の整備について、汚水処理施設整備事業間での調整が十分なされるよう、「汚水処理施設の整備に関する連絡調整について」(平成11年1月19日付け厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課長、農林水産省構造改善局計画部事業計画課長及び建設部整備課長、建設省都市局下水道部下水道企画課長及び公共下水道課長連名通知)を発出し、次のとおり都道府県及び市町村を指導
i) 地方公共団体においては、関係部局間で連絡会議を設置するなど、十分な連絡調整を図ること。
ii) 連絡会議の設置に当たっては、個別事業間の調整をその所掌業務とし、調整を行うこと。
 その後3省では、各種会議等において上記通知の趣旨を都道府県及び市町村に改めて周知

【個別事例の改善状況】
 連絡会議が未設置となっていた4都道府県は、すべて設置
 連絡会議を設置していたが個別事業間の調整を実施していなかった4都道府県は、勧告後、いずれも調整を実施

(2)下水道の効率的な整備の推進
(勧告)
1. 公共下水道等の計画策定段階における調査・検討を十分に行い、計画汚水量等の設計諸元の設定や終末処理場等の位置の選定等を適切に行うよう市町村に対する指導を徹底すること。
2. 公共下水道等の事業実施に際しては、管と終末処理場の整備時期の整合性の確保を図るよう都道府県及び市町村に対する指導を徹底すること。
(国土交通省)
(説明)
 下水道事業(公共下水道、流域下水道)には多額の事業費が投ぜられ、事業期間も長期に及ぶことから、事業主体は事業の計画、実施の各段階において事業の効率的な実施に努めることが必要
 下水道の事業計画策定段階で調査・検討が不十分、また、事業の実施段階で施設の施工時期の調整が不十分であったため、施設の遊休化等が生じているなど施設整備に効率性を欠くものあり。
 下水道事業の効率的な実施について、「下水道事業の効率的な整備の推進について」(平成10年12月22日付け建設省都市局下水道部下水道企画課長、公共下水道課長、流域下水道課長連名通達)を発出し、次のとおり地方公共団体に周知
i) 事業計画の策定段階においては、現地調査等を十分に行い、設計諸元の設定、終末処理場の位置及び管渠の敷設ルートの選定等を適切に検討すること。
ii) 下水道の事業実施に際しては、適切に投資効果を発現させるため、管渠と終末処理場の整備時期の整合性を確保すること。
 
 
 
 
 「平成11年度全国下水道主管課長会議(第1回:平成11年4月、第2回:平成11年10月)」等関係会議において、下水道の効率的な整備の推進を図るよう、上記通達の趣旨を地方公共団体に改めて周知
(3)農業集落排水施設の効率的な整備の推進
(勧告)
1. 大規模な汚水排出施設を事業計画において見込む場合、当該施設の設計計画の実現性を的確に見極めた上で、適正に計画処理対象人口を算定するよう市町村に対し指導するとともに、2. 農業集落排水事業採択後、工事着手までの間に他の汚水処理施設の整備の進展等周辺状況に変化が生じた場合、事業計画の見直しを的確に行うよう市町村を指導すること。
(農林水産省)
(説明)
 市町村は、施設が過大とならないよう計画処理対象人口等の設計諸元を適切に設定することが必要。また、整備した施設の有効活用を図るため、農業集落排水施設への接続促進対策を講ずることが重要
 事業の計画段階で施設規模を決定する計画処理対象人口の算定が不適切なため汚水処理施設の能力が過大になっているものや、事業採択後、工事着手までの間に下水道施設が近接して整備されたことから下水道として整備した方が効率的であったにもかかわらず、農業集落排水施設を整備したものあり。
(勧告)
3. 未接続農家等に対する同意の履行確保措置を講ずるよう市町村を指導するとともに、条例を制定する際の参考として、接続義務規定を盛り込んだモデルを市町村に対し示すなどの措置を講ずること。
(農林水産省)
(説明)
 供用開始後、水洗便所への改造が行われず未接続となっている農家等があるが、事業実施に当たりあらかじめ農家等から得ていた「同意」の履行確保措置を講じていないものや、条例に接続義務を明記していないものがあり、接続促進対策が不十分
 
 
 農業集落排水施設の効率的な整備を推進する観点から、「農業集落排水施設の効率的な整備の推進について」(平成11年3月31日付け農林水産省構造改善局計画部事業計画課長・建設部整備課長連名通知)を発出し、次のとおり市町村を指導
i) 大規模な汚水排出施設については、施設設計の段階において、当該施設の設置計画の実現性を的確に見極めた上で、計画処理対象人口を算定すること。
ii) 農業集落排水事業の採択後、工事着手までに長期を要し他の汚水処理施設の整備の進展等周辺状況に変化が生じた場合には、事業計画の見直しを的確に行うこと。
 「平成11年農村総合整備事業・農村集落排水事業第1回担当者会議」(平成11年4月)において、上記通知の趣旨を市町村に改めて周知
 
 
 
 
 
 
 
 上記平成11年3月31日付け課長通知において、未接続理由の実情把握など接続促進のための措置を積極的に講ずることについても市町村を指導
 上記担当者会議において、上記課長通知の趣旨を市町村に改めて周知また、農業集落排水施設への接続義務を盛り込んだ条例のモデルについては、「農業集落排水施設条例の事例集」を作成し、「地方農政局等整備課長会議」(平成12年1月)において、都道府県を通じた市町村への周知方を要請
(4)合併処理浄化槽設置整備事業の効率的な実施
(勧告)
 合併処理浄化槽設置整備事業の実施に当たり、人槽規模の決定が適正に行われるよう都道府県建築主務担当部局及び特定行政庁とただし書の運用基準の策定などにつき連絡・調整を図るよう都道府県及び市町村の浄化槽担当部局を指導すること。  
(環境省(厚生省))
(説明)
 合併処理浄化槽の処理対象人員(人槽規模)の決定:JIS基準。住宅の延べ面積を基に算定
 建築物の使用状況により実情に沿わない場合には処理対象人員の増減が可能(同基準ただし書)
 建築物の使用状況の実情に沿った人槽規模の合併処理浄化槽が設置され、補助金が効率的に使用されるよう、都道府県建築主務担当部局等において実情に沿ったJIS基準のただし書の運用基準の策定が必要
   
   
 「合併処理浄化槽設置整備事業等の効率的な実施について」(平成11年1月19日付け厚生省生活衛生局水道環境部浄化槽対策室長通知)を発出し、合併処理浄化槽設置整備事業等の実施に当たり、合併処理浄化槽の人槽規模の決定が適正に行われるよう、都道府県建築主務担当部局及び特定行政庁とただし書の運用基準の策定などにつき連絡・調整を図るよう都道府県及び市町村の浄化槽行政担当部局を指導

 平成12年3月17日付け官報をもって、日本工業規格「建築物の用途別による尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JIS A 3302-2000)」が公告・施行され、住宅に係る屎尿浄化槽の処理対象人員の算定式が改正されたことに関連して、浄化槽に係る維持管理及び国庫補助を所管する立場から、「屎尿浄化槽の処理対象人員の算定方式の改正について」(平成12年3月31日付け衛浄第19号厚生省浄化槽対策室長通知)を各都道府県浄化槽行政担当部局長あてに発出し、より実態に適合したただし書の運用基準の策定につき連絡・調整を図るよう周知・指導
 また、「平成11年度全国浄化槽行政担当係長会議」(平成12年3月17日)において、上記基準の改正の趣旨を説明し、同様にその趣旨を徹底

2 日本下水道事業団の業務の合理化及び効率化  平成10年10月30日、都市局長より日本下水道事業団理事長に対し、勧告の趣旨を勘案し適切に対処するよう文書により指導。個別の事項については、以下のとおり対処
(1)受託建設業務等の合理化及び効率化
(勧告)
1. 受託建設業務について、大都市においては新技術の導入や高度な技術力を伴う工事等に重点を置くとともに、地方公共団体の執行体制等を勘案の上、下水道事業に未着手であるなど優先して受託すべきものに重点を置くよう日本下水道事業団を指導すること。
(国土交通省)
(説明)
 日本下水道事業団は、地方公共団体における下水道技術者の不足に対処しつつ、拡大する下水道事業を適正に実施するため、終末処理場等の根幹施設の建設等を行う認可法人として、昭和50年に設立
 今後の下水道整備は、下水道普及率が全国平均を大きく下回る中小市町村での実施が課題であるなど、下水道を取り巻く環境の変化に適切に対応した業務の見直し等が必要
・地方公共団体の下水道担当技術職員数(全国)
  昭和50年度:1万4,507人⇒平成8年度:2万2,424人
・下水道普及率(全国)
  昭和50年度:23%⇒平成8年度:55%
 (人口10万人未満市町村26%)
下水道事業に従事する職員が多く下水道整備が進んでいる都道府県等から、受託の必要性を十分に調査せず継続して受託
(勧告)
2. 現行の管理諸費率の見直しを行うとともに、受託業務勘定の収支状況を勘案して管理諸費率の改定を検討する仕組みを整備するよう日本下水道事業団を指導すること。
(国土交通省)
(説明)
 日本下水道事業団は地方公共団体から下水道施設の建設工事等を受託する際、管理諸費として人件費、旅費等の経費を地方公共団体に負担させているが、その収入が実費を超えているにもかかわらず同事業団設立以来、管理諸費の算定率である管理諸費率の見直しは未実施
・ 受託業務勘定の当期利益金:14億9,200万円(平成8年度)
・ 年度末現在の利益剰余金:81億8,921万円(平成8年度)
・ 国土交通省所管の補助事業に係る地方公共団体の事務費率は2度の見直しが行われ、事務費(6億円規模の工事)は昭和50年度と比較して30%程度引下げ
 
 
 
 受託建設業務については、下水道事業の緊急性や執行体制等を勘案の上、特に下水道事業に未着手の市町村など中小市町村の委託要請に積極的にこたえていくよう指導しており、日本下水道事業団では、近年では技術者の不足している人口5万人未満の市町村からの受託が、平成12年度において78.8%(平成8年度:74.1%)を占めている。
 下水道整備の進んだ大都市及び都道府県については、そのニーズをくみ、「包括固定化担体を用いた窒素除去技術(ペガサス)」等日本下水道事業団が開発・評価した新技術の導入や高度な技術力を伴う工事等に重点を置いて委託要請にこたえていくよう指導
 また、日本下水道事業団においては、特に小規模市町村において効率的な受託建設業務の執行を図るため、コスト縮減(小規模処理場の標準化等)等を積極的に実施
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 受託建設業務に係る管理諸費率については、勧告の趣旨を踏まえ、管理諸費率の見直しを行うよう指導するとともに、管理諸費率の改定を検討する仕組みを整備するよう指導
 日本下水道事業団においては、この指導を受け、管理諸費率の見直し等について検討するため、同事業団内に「受託業務検討委員会」を設置(平成12年1月)し、適正な管理諸費率の在り方について検討中
(2)下水汚泥広域処理事業の見直し
(勧告)
 近畿圏で実施されている下水汚泥広域処理事業が事業構想に沿って収益事業として成り立つよう早急に経営の改善計画を策定するとともに、新規の施設整備については経営の改善計画を策定するまでの間は厳に抑制すること。
 また、下水汚泥広域処理事業の基本構想調査等については、近畿圏における同事業が収益事業として成り立つ見通しを得てから実施すること。
(国土交通省)
(説明)
 下水汚泥広域処理事業は、2以上の地方公共団体の下水汚泥を広域的に処理することにより、低料金で処理し、かつ、採算の確保を目的に昭和61年度から日本下水道事業団直営の収益事業として実施。現在、近畿圏(4か所)で実施中
 汚泥処理に要した実際のコストに見合う料金設定が困難な上、汚泥利用建設資材等の売却収入がほとんどないこと等から、維持管理に要する経常費用や借入金の支払利息を賄うだけの収入の確保が極めて困難な状況
・ 汚泥利用建設資材等の売却収入は8万円(平成8年度)、施設稼働率は約7割(4施設中2施設)
・ 毎年度、欠損金が発生(平成8年度で34億円。累計で236億円)
 今後、全体計画どおりに事業を進めるためには、当初の計画の1.7倍の投資が必要。これに係る金利負担と欠損金の補てんとを行いつつ、事業目的どおり低料金で処理し、かつ、採算を確保することは厳しい状況
 
 
 
 下水汚泥広域処理事業については、早急に経営の改善計画を策定し、同事業の収支の改善を図るよう指導しているところであるが、日本下水道事業団においては、平成11年8月に「下水汚泥広域処理事業経営改善計画」を策定
 これに基づき、同事業団は、同事業の要請をする地方公共団体を新規拡大することにより下水汚泥量の増加を図るとともに、設備機器の耐用年数の見直しや、汚泥量に対応した新規の施設整備の繰延べを行い、さらに、炉の効率的利用等による維持管理費のコスト縮減を行うこと等による収支改善に取組中
 また、下水汚泥広域処理事業の基本構想調査等については、同事業が収益事業として成り立つ見通しを得た上で実施するよう指導しており、日本下水道事業団においては、上記のとおり経営改善計画を策定し収支改善に取り組んでいるところであり、既に同事業を実施している近畿圏以外の地域では、基本構想調査等を実施していない。
(注)「基本構想調査等」とは、基本構想調査(下水汚泥広域処理事業の実施を想定している地域について、下水汚泥の処理・処分の現況や見通し、同事業の実施範囲や実施時期等を調査し、基本的な構想を取りまとめるための調査)及び基本調査(下水汚泥広域処理事業の対象となる地域について、汚泥の処理・処分方法、施設計画、財政計画等の基本的な事項の検討を行うための調査)をいう。