漁港に関する行政監察結果(要旨)

 

勧告日 平成12年6月6日
勧告先 農林水産省
実施時期 平成10年4月〜12年5月

 

 

 

[監察の背景事情等]
   漁港の整備は、昭和26年度を初年度とし、累次の漁港整備長期計画等に基づき実施
現在は平成6年度から13年度までを計画期間とする第9次漁港整備長期計画(計画事業費3兆円) 
   国の負担又は補助による場合は漁港管理者である都道府県又は市町村が、国の直轄事業による場合は北海道開発局長が事業主体となって、防波堤、岸壁、航路等の漁港施設の新築、改築等を実施
   
 漁港数: 2,937港(平成11年末現在)
   
 主な事業: 漁港修築事業(計画事業費が1漁港につき15億円を超えるもの)
        漁港改修事業(計画事業費が1漁港につき3億円を超え、15億円以下のもの)
   漁業をめぐる情勢は、国際的規制の強化等による漁獲量の減少、漁業就業者の減少・高齢化、 漁船数の減少等大きく変化。一方、水産物の自給率の低下に伴い、つくり育てる漁業の振興等による水産物の安定供給の確保が課題
 今後の漁港の整備については、これらの状況に対応したより重点的、効果的、効率的な事業の実施に努めることが必要。また、公共事業の一つとして、中央省庁等改革基本法等において、 効率的な執行及び透明性の確保の観点から、事業効果等の適切な評価が求められている。
   本監察は、このような状況を踏まえ、漁港の整備状況、事業評価の実施状況等を調査し、関係行政の改善に資するため実施
   調査対象機関: 農林水産省、北海道開発庁、都道府県(24)、市町村、関係団体等
   担 当 部 局: 行政監察局、管区行政監察局(5) 、四国行政監察支局、行政監察事務所(16)

 

[主な勧告事項]
 漁港整備事業に係る審査の厳正性・客観性・効率性の確保等
  ・ 農林水産省では、整備対象漁港の選定時、事業計画の作成時及び事業実施に係る予算要求時にそれぞれ審査を実施
   整備した漁港施設に整備目的の用途には全く利用されていないもの等あり
    <24道県 159港における漁港修築事業又は漁港改修事業を調査>
     整備目的の用途には全く利用されていないもの又は低利用のもの→8道県14港22施設
   整備中又は整備予定の漁港施設に現行の計画内容のままでは有効な利用が望めないものあり。
    <上記 159港のうち、現在整備中又は整備予定の漁港の事業計画等の内容を調査>
     現行の計画内容のままでは有効な利用が望めないもの→8道県10港16施設
   これらの原因としては、施設整備の根拠となった数値の推計に問題があるなど、事業主体における事業計画の作成に適切さを欠いており、また、農林水産省の審査における計画内容の検討が不十分(11港18施設)等
   審査のポイントやチェック事項を盛り込んだ包括的な審査マニュアルは未整備
   整備対象漁港の選定に係る基準をより客観的、定量的なものに見直す余地あり。
   
 漁港修築事業及び漁港改修事業の整備対象漁港の選定は、「施設の不足度」、「整備の緊急性」等の基準により決定
   
 しかし、これらはいずれも客観的、定量的な基準とはなっておらず、整備目的の用途には全く利用されない又は低利用の施設が発生する一因にも。
 
<勧告要旨>
1.  審査のポイントやチェック事項を盛り込んだ包括的な審査マニュアルを整備するとともに、事業主体に対し、事業計画の作成時、事業化時に留意しなければならない事項等について周知徹底を図ること。
2.  整備対象漁港の選定基準について、次期漁港整備計画の策定に合わせ、より客観的、定量的なものとなるよう見直すこと。

 

 漁港整備事業に係る評価機能の充実
   漁港整備事業に係る評価については、総理指示に基づき再評価を10年度から実施(10年度、北海道開発局が3港、10県と24市町村が計42港)
  事前評価は、12年度に実施される事業から本格的に実施。事後評価は、11年度から試行的に実施し、その結果を踏まえて本格的に実施予定
   再評価が適切に実施されているとは言えない状況あり。
   
 実施要件の一つである「漁業情勢について著しい変化がみられる場合」に該当する漁港は9港あるが、うち、4港は再評価の対象とはされていない。
   
 漁業情勢の「著しい変化」の判断基準については、現行の基準(※)に該当するもの以外であっても再評価の対象とすべき場合あり。
     
 現行の基準: 漁業生産量・生産額及び利用漁船数の3事項すべてが漁港整備長期計画の基準年の数値と比較して3年連続して2割以上下回っている場合
   農林水産省では漁港整備事業の総体を評価する仕組みなく、全国的な指標等の把握は一部 (※)行われているが、整備による漁港の諸機能の変化、経済効果等を多面的、総合的にとらえた評価は未実施
     
 例えば、「係船岸充足率」=必要な岸壁延長に対する使用可能な岸壁延長の割合
 
<勧告要旨>
1.  再評価の実施要件についてより具体化・明確化を図るとともに、漁港整備を取り巻く諸条件の変化に適切に対応できるよう再評価の対象の見直しを行うこと。
2.  漁港整備事業総体の事業効果等について、総合的な評価・分析を実施すること。

 

 港勢の的確な把握等
   農林水産省は、漁港の利用状況等の実態を明らかにし、漁港行政及び漁港整備事業の実施の基礎資料とするため、港勢調査を毎年実施
 港勢の的確な把握は、港勢整備事業に係る審査及び事業評価を客観的かつ適切に実施するためにも重要
   164港における平成8年の港勢調査をみると、調査結果が港勢の実態を表す内容となっていないものが24港で32例
 この原因は、把握すべき数値について、農林水産省が定めた実施要領の記述が分かりにくい ものとなっていたり、実態を把握できる資料がない場合における推計方法が具体的に示されて いないこと等
   調査時点(毎年12月末現在)から調査結果の刊行までに約2年半と長期
 この原因は、調査依頼が遅い、利活用されていない調査事項を設定、調査票の記載ミス チェックの電算化が不十分等
 
<勧告要旨>
1.  港勢調査に係る指示のより一層の明確化等を図るとともに、その周知徹底を図ること。
2.  港勢調査結果の取りまとめ・公表の早期化を図ること。

 

[その他の勧告事項]
   漁港管理の適正化