(1) |
漁港整備事業に係る審査の厳正性・客観性・効率性の確保等
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ア |
漁港整備事業により整備された漁港施設の利用状況等
漁港の整備は、主として、1.漁港法(昭和25年法律第l37号)第17条第1項の漁港の整備計画(以下「国の漁港整備計画」という。)に基づき、防波堤、岸壁等の漁港施設の新築、増築、改築、補修又は除去、漁港の区域内の土地の欠壊防止等のために実施される漁港修築事業、2.漁港修築事業を実施する漁港以外の漁港であって、漁業情勢の推移に即応して弾力的に漁港施設の整備等を図るために実施される漁港改修事業及び3.毎年度の予算の範囲内で漁港施設の局部的な改良等を随時行うために実施される漁港局部改良事業の3事業により行われている。
また、これら3事業のほか、漁港漁村総合整備事業等を含めた漁港整備のための事業の全体計画(以下「漁港整備長期計画」という。)を農林水産事務次官依命通達により定めて、事業を総合的・計画的に実施することとされている(以下、漁港整備長期計画に基づき国の直轄、国の負担又は補助により実施される事業を「漁港整備事業」という。)。
漁港整備事業は、国の負担又は補助による場合は、通常、漁港管理者である都道府県又は市町村が、また、国の直轄事業による場合は北海道開発局長がそれぞれ事業主体となり行われている。各事業主体は、事業ごとに定められた実施要領等に基づき、原則として整備を予定する施設名、事業量等を記載した事業計画を作成し、これに基づき、事業を実施する年度ごとに、事業に要する国庫補助金・負担金の交付申請・交付決定の手続(直轄事業の場合を除く。)を経て行われている。
今回、第8次の漁港整備長期計画(計画期間は昭和63年度から平成5年度まで。以下「8次計画」という。)又は第9次の漁港整備長期計画(計画期間は平成6年度から13年度まで。以下「9次計画」という。)に基づき漁港修築事業又は漁港改修事業を実施している39都道府県の1,587港(平成10年度当初時点のもの)のうち、24道県の159港において、8次計画の開始年度である昭和63年度から9次計画の計画期間内の平成9年度までに整備された漁港施設の利用状況等を調査した結果、8道県14港の22施設について、整備目的の用途には全く利用されていないもの又は低利用となっているものがみられた。また、上記の159港のうち、漁港修築事業又は漁港改修事業により、平成10年度において整備中又は9次計画の計画期間内に整備を予定している122港において、事業計画等の内容を調査した結果、8道県10港の16施設について、現行の内容のままでは有効な利用が望めないものがみられた。
これらの状況が生じた原因についてみると、i)事業着手後の漁業情勢の不測の変化等に伴い生じたもので、未然に防ぐことは困難であったと思われるものも7港10施設みられるが、ii)事業計画等作成後の漁業情勢の不測の変化等に伴い、現時点においては計画作成時に想定した利用が見込めなくなっており、今後、事業の実施に当たっては、予算要求時における審査を的確に行う必要のあるものが6港10施設あり、さらに、iii)そもそも施設整備の根拠となった数値の推計等に問題があるもの等、事業主体における事業計画等の作成に適切さを欠いており、また、農林水産省の審査における事業計画等の内容の検討が不十分であったものが11港18施設みられ、中には、そもそも整備の必要性に疑問のあるものもみられた。
これらのうち、平成12年度以降に整備を予定しているものについては、整備の必要性等について再検討を行い、事業計画等の内容の見直しが必要なものについては、早急に事業計画等の変更を行うことが必要と認められる。 |
イ |
農林水産省における審査の実施状況等
漁港整備事業を実施するに当たっての農林水産省の審査は、事業の種類により異なるが、漁港修築事業及び漁港改修事業では、1.国の漁港整備計画及び漁港整備長期計画の策定に合わせ、都道府県からの整備要望(漁港の名称、大まかな事業量等事業計画の素案となるもの)を基に、漁港修築事業又は漁港改修事業の整備対象漁港を選定する審査(整備対象漁港の選定時の審査)、2.事業主体が作成した事業計画の妥当性等について確認・検証等を行う審査(事業計画の作成時の審査)、3.事業実施に係る予算要求に際し、平面図、写真等の資料を基に具体的な施設整備内容の妥当性等について確認・検証等を行う審査(事業実施に係る予算要求時の審査)が実施されている。
今回、農林水産省における漁港整備事業に係る審査の実施状況等を調査した結果、次のような状況がみられた。 |
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1 |
. 農林水産省では、短期間に限られた体制の中で多くの事業内容を審査する必要がある。このような状況の下で、審査を効率的かつ客観的に行うためには審査マニュアルの整備が必要と考えられるが、これについては、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)に基づく審査の視点等がまとめられている程度であり、審査全般にわたる包括的なものは作成されていない。
前記アで述べたような整備目的の用途には全く利用されていない施設等の発生を未然に防止していくためには、整備対象施設の必要性、施設規模の妥当性等について、確認・検証等を行うためのポイントとなる事項やチェック事項を整理した上で、これらを盛り込んだ審査マニュアルを整備することが必要となっている。
さらに、事業主体に対しても、港勢の推移、既存施設の利用状況等を踏まえた適切な事業計画等の作成及び見直しを行うことができるように、留意すべき点等を周知することが必要であると認められる。 |
2 |
. 整備対象漁港の選定時の審査における審査の透明性、客観性を確保するために定めている選定基準についてみると、次のとおりとなっている。 |
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i |
漁港修築事業については、国の漁港整備計画における計画方針に基づき選定することとされており、これを受けた農林水産省の内規によって、事業規模要件(計画期間内の計画事業費が1漁港につき15億円を超えること。)を満たしているもののうち、原則として、i)利用漁船数又は陸揚金額が基準値(100隻程度以上又は2億円程度以上)以上の漁港又は整備の結果同程度の港勢への推移が確実に見込まれる漁港、ii)漁場の開発又は漁船の避難対策上特に整備が必要な漁港のいずれかに該当する漁港の中から、施設の不足度が高く事業効果の大きいもので緊急に整備する必要のあるものを選定することとされている。 |
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i |
i 漁港改修事業については、9次計画の整備方針に基づき選定することとされており、水産庁長官通達等により、事業規模要件(計画期間内の計画事業費が1漁港につき3億円を超え15億円以下であること。)を満たしているもののうち、原則として、i)利用漁船数又は陸揚金額が基準値(50隻程度以上又は1億円程度以上)以上の漁港又は整備の結果同程度の港勢への推移が確実に見込まれる漁港、ii)漁場の開発又は漁船の避難対策上特に整備が必要な漁港のいずれかに該当する漁港の中から、施設の不足度、整備の緊急性を考慮し、9次計画の基本目標を達成するために必要な漁港を選定することとされている。 |
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これらの選定基準に基づき、9次計画の策定時においては、事業主体からの整備要望漁港約1,700港から漁港修築事業の対象480港、漁港改修事業の対象 719港が選定されている。
しかし、選定基準における客観的な指標として、事業規模及び港勢に関し、具体的な数値が設けられているが、例えば、利用漁船数又は陸揚金額が基準値(漁港修築事業は100隻程度以上又は2億円程度以上、漁港改修事業は50隻程度以上又は1億円程度以上)以上の漁港についてみると、港勢が年々低下している中、最も新しい確定値が公表されている平成7年の港勢に照らしてみても、漁港修築事業については全漁港数(平成7年12月31日現在2,944港)の約54パーセント、漁港改修事業については約76パーセントの漁港が整備対象に該当することとなる等選定の決定的な指標とはなっていない。
このため、整備対象漁港の選定は、「施設の不足度」、「整備の緊急性」等の基準により決定されていると考えられるが、これらについては、いずれも客観的、定量的な基準とはなっていない。このことは、前記アで述べたように、整備目的の用途には全く利用されていない等の施設が発生する一因ともなっていると考えられる。
また、項目1(2)で後述するように、平成12年度から導入されている事前評価においては、事業効果について一層の貨幣化・定量化を図ることとされていることから、現行の選定基準についても、事業効果をより客観的、定量的に示すことが必要になるものと考えられる。 |
したがって、農林水産省は、漁港整備事業に係る審査の厳正性・客観性・効率性の確保等を図るため、次の措置を講ずる必要がある。 |
1 |
. 審査のポイントやチェック事項等を盛り込んだ包括的な審査マニュアルを整備するとともに、事業主体に対し、事業計画の作成時、事業化時等に留意しなければならない事項等について周知徹底を図ること。
また、今回当庁が指摘した今後整備が予定されている漁港施設については、事業主体に対し、整備の必要性等について再検討を行い、事業計画等の内容の見直しが必要なものについては、早急に事業計画等の変更を行うよう指導すること。 |
2 |
. 整備対象漁港の選定基準について、事前評価の推進状況を踏まえつつ、次期漁港整備長期計画の策定に合わせ、より客観的、定量的なものとなるよう見直すこと。 |
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(2) |
漁港整備事業に係る評価機能の充実 |
農林水産省では、漁港整備事業に係る事業評価については、平成9年12月の「物流効率化による経済構造改革特別枠」に関する関係閣僚会合における国の公共事業を対象とした再評価システムの導入についての内閣総理大臣からの指示を受け、10年3月に水産関係公共事業の再評価実施要領を、また、同年6月には、再評価の実施対象の範囲等を定めた漁港漁村整備事業の再評価実施要領を策定し、再評価の実施主体となる北海道開発局、都道府県及び市町村に通知している。
さらに、平成11年8月に、上記の再評価の実施も含め、事前評価から事後評価までの一貫した事業評価の実施要領となる水産関係公共事業の事業評価実施要領を策定し、事業主体に通知している。この事業評価実施要領では、事前評価については、平成12年度に実施される事業から適用し、事後評価については、試行的に農林水産省が11年度から実施し、その結果を踏まえ、本格的に実施することとされている。
今回、漁港整備事業に係る事業評価の実施状況等について調査した結果、次のような状況がみられた。 |
ア |
事業主体における再評価の実施状況等 漁港整備事業に係る再評価の実施時期・実施要件については、漁港漁村整備事業の再評価実施要領において、次のいずれかに該当する場合とされている。 |
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1 |
. 漁港修築事業及び漁港改修事業については、前計画等から引き続き事業を実施するものについて国の漁港整備計画の変更時 |
2 |
. その他の事業については、事業採択後5年を経過したものについて5年ごと |
3 |
. 上記1.及び2.に該当する場合のほか、次のいずれかに該当する場合 |
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i |
) 事業計画の作成時に基礎とした漁業情勢、漁港施設の利用状況、漁業集落の概況と生活環境施設の現状等の指標について著しい変化がみられる場合 |
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i |
i) 予期しなかった設計条件等の変化により、現計画を達成させるために必要な経費が著しく増減する場合 |
このうち、前述の3.i)の漁業情勢の「著しい変化」の解釈について、農林水産省は、別途、漁業生産量、漁業生産額及び利用漁船数の3事項すべてについて、現行の漁港整備長期計画の策定基準年の数値と比較して3年連続して2割以上下回っている場合(以下「漁業情勢の解釈」という。)である旨を事業主体に連絡している。
再評価は、平成10年度から実施されているところであるが、事業主体における10年度の再評価の実施状況をみると、北海道開発局では3港について、また、都道府県及び市町村では、10県及び24市町村が計42港について、それぞれ再評価を実施している。
しかし、9次計画に基づき漁港修築事業(479港)又は漁港改修事業(706港)を実施している1,185港(平成8年度末現在)について、平成5年から8年までの港勢に関するデータを基に、漁業情勢の解釈に該当する漁港の有無及び該当漁港における再評価の実施状況を調査した結果、該当する漁港は9港あるが、そのうち4港については、再評価の対象とはされていない状況がみられた。
再評価は事業主体が自主的に取り組むこととされてはいるが、これらの漁港について再評価を実施しなかった原因・理由についてみると、再評価の実施要件そのものが分かりにくいことなどによるものとみられる。
また、再評価は、漁港修築事業等の事業単位で行われるものであり、個々の施設ごとに行われるものではないが、項目1(1)で指摘した整備目的の用途には全く利用されていない等の漁港施設又は現行の事業計画等の内容のままでは有効な利用が望めない漁港施設において、これらを整備する上でその根拠とした事項等を漁業情勢の解釈との関係でみると、次のとおりとなっている。 |
1 |
. 漁港施設の整備については、必ずしも「漁業生産量」、「漁業生産額」及び「利用漁船数」の3事項すべてが常に事業計画等の作成の際の根拠にされているわけではない。例えば、岸壁については「利用漁船数」を根拠に整備が行われていることから、当該施設の整備が漁港修築事業等の主要な施設整備である場合は、前記3事項のうちの1事項のみに変化があった場合でも再評価の対象とすべき場合がある。 |
2 |
. 整備対象となっている漁港施設によっては、漁業者数、市場関係者数等が根拠となっており、当該施設の整備が漁港修築事業等の主要な施設整備である場合は、前記3事項以外の事項で再評価の対象とすべき場合がある。 |
3 |
. 震災等の自然災害の発生により情勢が変化した場合のように、「3年連続して2割以上下回っている場合」でなく、その時点で再評価の対象とすべき場合がある。 |
このほか、遠洋漁業等に係る大型漁船の減船計画などにより、あらかじめ利用漁船数の減少を客観的に見通すことが可能であり、再評価の対象とすべき場合もある。
このため、これらの場合についても、再評価の対象となるよう現行の実施要件の3.の対象を幅広くとらえることが必要と認められる。 |
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イ |
農林水産省における漁港整備事業総体の事業効果等についての評価の実施状況
前述のとおり、事業主体による個々の漁港整備については、今後、本格的に事業評価が実施されることとなっているが、漁港整備事業総体を評価する仕組みは設けられていない。
これまで、農林水産省では、漁港整備長期計画との関係では、漁港整備の整備目標として係船岸充足率(必要とされる岸壁延長に対する現在使用可能な岸壁延長の割合)を、漁港整備長期計画が終了した段階においては、係船岸充足率の達成状況、計画事業費に対する進ちょく率をそれぞれ算定している。また、漁港整備事業のこれまでの実績として、漁港ごとの施設数、施設規模・能力と主な漁港施設の全国的なストック(防波堤、岸壁等の総延長、漁港施設用地の総面積)を把握している。
しかし、これらを漁港整備長期計画の評価又はこれまで漁港整備事業を実施してきた結果についての評価としてみると、整備を実施したことによる漁港の諸機能の変化、経済効果等を多面的、総合的にとらえた評価とはなっていない。
なお、行政改革会議最終報告、中央省庁等改革基本法(平成10年法律第103号)等においても、国の事業に対する政策評価機能の充実強化が求められている。 |
したがって、農林水産省は、漁港整備事業に係る評価機能の充実を図るとともに、今後の事業への反映を図るため、次の措置を講ずる必要がある。 |
1 |
. 再評価の実施要件についてより具体化・明確化を図るとともに、漁港整備を取り巻く諸条件の変化に適切に対応できるよう再評価の対象の見直しを行うこと。 |
2 |
. 漁港整備事業総体の事業効果等について、総合的な評価・分析を実施すること。 |
(3) |
港勢の的確な把握等 |
漁港整備事業に係る審査及び事業評価を客観的かつ適切に実施するためには、漁港の現況や利用状況等が的確に把握され、把握されたデータ等が適時、適切に活用される必要がある。
漁港の現況や利用状況等については、漁港法第26条に基づき、漁港管理者は、漁港の発展のために必要な統計資料の作成を行うものとされている。農林水産省は、この統計資料の作成に関し、漁港の利用状況等の実態を明らかにし、漁港行政及び漁港整備事業等の実施に必要な基礎資料とするとの目的の下に、昭和38年から、漁港の港勢調査実施要領(以下「調査実施要領」という。)により、漁港の港勢に関する調査(以下「港勢調査」という。)を毎年実施している。
また、漁港管理者は、漁港法第36条の2に基づき、その管理する漁港ごとに漁港台帳を調製することが義務付けられており、漁港の沿革、漁港施設の規模、能力等の現況、漁港施設の整備に要した事業費等漁港に関する情報を記載することとされている。
今回、港勢調査の実施状況等について調査した結果、次のような状況がみられた。 |
1 |
. 24道県内の164港における平成8年の港勢調査の実施状況についてみると、次のとおり港勢の実態を的確に表した内容となっていないものが24港で32例みられた。 |
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i |
) 調査担当者の誤解により、調査表に調査実施要領の指示と異なる数値が記載されていたもの(9例) |
i |
i) 漁港の利用状況の実態を十分に把握できる資料等がないために、独自の推計方法に基づいて調査表を作成しているが、その推計方法等に改善の余地があるもの(19例) |
i |
ii) 現在の調査内容自体が漁港の利用実態等を的確に把握できるものとなっていないもの(4例) |
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このような状況が発生したのは、調査実施要領の記述及び調査表の作成方法が分かりにくいものとなっていたり、各調査項目の趣旨・目的が明らかになっていないことや、漁港の利用状況の実態を十分に把握できる資料等がない場合における推計方法を農林水産省が具体的に示していないこと等が原因となっている面があるものと考えられる。 |
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2 |
. 現状では、漁港整備事業に係る審査等に当たって港勢調査結果を利活用できるようになるのは、調査期日(毎年12月31日)から約1年半経過後であり、港勢調査結果を掲載した「漁港の港勢集」の刊行・公表時期は、調査期日から約2年半も経過している。
しかし、次のとおり、港勢調査の実施・取りまとめ・集計期間の短縮化を図る余地がみられた。 |
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i |
) 調査期日が毎年12月31日に固定されているにもかかわらず、都道府県に対する調査依頼は翌年の4月に行われており、調査依頼そのものを早期化する余地がある。 |
i |
i) 農林水産省への調査結果の提出期限は7か月後を目途としているが、実際にはこれを超える場合もみられる。このように長期を要するのは、調査事項の中に、「漁港の港勢集」に掲載されず、特段の利活用もされていないものや、過去のデータで農林水産省において電算入力していることから記載を省略できるものが含まれていることが一因と考えられる。このため、これらを見直し、調査事項を簡素化することにより、調査に要する期間の短縮化を図る余地がある。 |
i |
ii) 港勢調査の事務処理に当たり、都道府県の協力を得て磁気媒体で調査結果が提出されている例がある。その一方で、磁気媒体以外の調査表用紙等で提出された漁港については、調査結果を農林水産省がコンピューターに入力するのに、外注で約1か月を要している。
しかし、これらの入力事務については、磁気媒体を一層活用することにより短縮化が可能とみられる。 |
i |
v) 農林水産省は、調査結果の取りまとめに当たって、調査表の記載ミスのチェックを行っている。しかし、コンピューターを活用したデータエラーのチェックについては、基礎的な計算違いのチェックを行っている程度であり、前年の数値と大きく乖離しているものなどのリストアップとその確認、審査については、担当者2人が全国約3,000の漁港の調査表を手作業によりチェックしている。また、検出した記載ミス等については、都道府県等に照会、確認を行っていることもあり、これらの作業に約2か月を要している。しかし、コンピューターにエラーチェック機能を持たせ、それを有効に活用することにより迅速化が可能とみられる。 |
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3 |
. 漁港台帳に記載されている情報は、港勢調査結果とあいまって、漁港整備事業に係る審査等に際しての既存施設の整備状況等を確認するための有用な資料となるものである。しかし、漁港台帳が作成されて以来、これまでに漁港整備事業で整備された施設の情報は40年分以上となり、また、この間に漁港数が増加(昭和35年の2,733港から平成11年には2,937港に増加)したこともあって、農林水産省が保有する情報が膨大化する一方で、漁港台帳の電子情報化が行われていないことから、検索、内容の確認に時間を要する等その利活用に支障が生じている状況がみられる。 |
したがって、農林水産省は、港勢の的確な把握・分析等により、漁港整備事業の効果的・効率的実施に資する観点から、次の措置を講ずる必要がある。 |
1 |
. 港勢調査のより適切な実施のため、港勢調査に係る指示のより一層の明確化等を図るとともに、その周知徹底を図ること。 |
2 |
. 港勢調査の着手の早期化、調査事項の簡素化、港勢調査に係る事務の電算化等を推進することにより、港勢調査結果の取りまとめ・公表の早期化を図ること。 |
3 |
. 漁港台帳記載事項のうち審査等に有用な情報の電子化を推進し、港勢調査結果と併せて漁港関係情報のデータベース化を図ること。 |