1 採択審査の適正化等
(1) 採択審査の適正化
   

 補助金等(国の予算科目上の補助金、負担金、交付金、補給金、委託費の総称をいう。以下同じ。)は、一定の行政水準の維持、特定の施策の奨励等のための政策手段として重要な機能を担っている。補助金等の総額は、平成11年度予算で20兆387億円(一般会計予算の24.5パーセントに相当する規模)で、社会保障関係(補助金等の総額の45.7パーセント)、文教及び科学振興関係(同20.3パーセント)並びに公共事業関係(同20.7パーセント)がその大半を占めている。
 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号。以下「補助金等適正化法」という。)第6条第1項に基づき、各省庁は、補助事業等の目的及び内容が適正であるかどうか、金額の算定に誤りがないかどうか等を調査し、補助金等を交付すべきと認めたときは、速やかに補助金等の交付の決定をしなければならないとされている。このため、各省庁は、補助金等の交付に当たり、いかなる事業が補助金等の交付対象となり得るか(補助対象事業の範囲)、いかなる者が補助金等の交付客体となり得るか(資格要件)、補助金等の額はいかに算定されるのか(算定基準)などの補助要件等を定め、それに従って審査、確認を行うこととされている。
 また、各省庁が補助金等を交付するに当たって、補助事業者等(補助金等の交付の対象となる事務又は事業(以下「補助事業等」という。)を行う者をいう。以下同じ。)又は間接補助事業者等(国以外の者が相当の反対給付を受けないで交付する給付金で、補助金等を直接又は間接にその財源の全部又は一部とし、かつ、当該補助金等の交付の目的に従って交付するもの等(以下「間接補助金等」という。)の交付等の対象となる事務又は事業(以下「間接補助事業等」という。)を行う者をいう。以下同じ。)を採択する手続については、補助金等適正化法及び各補助金等の交付要綱に明確な定めはなく、各省庁では、補助金等ごとの各種通知、事務連絡等により定めている。その内容は、補助事業等又は間接補助事業等の実施を希望する民間団体が、事業の目的、内容、規模、費用等を記載した要望書等を作成し、都道府県を通じて各省庁に提出した後、各省庁が要望書等について都道府県からヒア リングを行う等の採択審査を行い、当該審査結果を踏まえて補助事業者等又は間接補助事業者等を採択するのが一般的となっている。

     
     今回、32都道府県内に所在する民間団体である漁業協同組合、更生保護法人、学校法人、社会福祉法人、医療法人、土地改良区、職業訓練法人、市街地再開発組合及び土地区画整理組合の計342団体に対し、平成6年度から9年度にかけて交付されている科学技術庁所管補助金(種子島周辺漁業対策事業費補助金)、法務省所管補助金(更生保護施設整備費補助金)、文部省所管補助金(私立大学等研究設備整備費等補助金、私立学校施設整備費補助金及び学校教育設備整備費等補助金)、厚生省所管補助金(医療施設等施設整備費補助金、保健衛生施設等施設整備費補助金、保健衛生施設等設備整備費補助金、社会福祉施設等施設整備費補助金及び社会福祉施設等設備整備費補助金)、農林水産省所管補助金(かんがい排水事業費補助、圃場整備事業費補助、諸土地改良事業費補助、農道整備事業費補助、農村総合整備事業費補助、農村地域環境整備事業費補助及び農地防災事業費補助)、労働省所管補助金(職業能力開発校設備整備費等補助金)及び建設省所管補助金・交付金(土地区画整理事業費補助、地方道路整備臨時交付金及び市街地再開発事業費補助)の7省庁21目の補助金及び交付金について、交付要綱等における補助要件の規定内容及び採択審査の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
   
1.
 交付要綱等において、施設の整備に要する費用のうち、補助対象となるものの範囲が明確にされていないため、同一の施設の整備に要する費用について、補助対象となっている場合となっていない場合があり、補助対象となるか否かの取扱いが区々となっている例がみられる(市街地再開発事業費補助)。
   
2.
 補助事業の採択に当たり、施設の利用見込みを的確に把握していないことから、採択後の利用率が低く、補助事業で整備した施設が効果的に利用されていない例がみられる(保健衛生施設等施設整備費補助金)。
   
3.
 補助事業の採択に当たり、施設の利用見込みを把握しているものの、施設規模の審査が把握結果に基づき適正に行われていないことから、整備した施設の規模が過大となり、利用率が低い例がみられる(医療施設等施設整備費補助金)。
   
4.
 業務省力化設備整備に係る補助事業の採択に当たり、間接補助事業者の繰越金等の程度が判断要素の一つとされているものの、これによる自己負担能力を十分勘案した審査が行われていないため、採択・不採択の状況が、設備整備に当てることができる自己資金の程度からみて、区々となっている例がある(社会福祉施設等設備整備費補助金)。
   
5.
 交付要綱における施設の種類、施設基準が異なる施設を合築又は併設して整備する場合において、共用可能な施設設備を一つに集約して整備することが可能であることが明らかにされておらず、別個に整備するよう指導が行われていることから、同様な施設設備を重複整備し、一方が未利用となっている例がみられる(保健衛生施設等施設整備費補助金、保健衛生施設等設備整備費補助金)。
       
     したがって、厚生省及び建設省は、補助事業に係る採択審査の適正化を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
   
1.
 交付要綱等において、施設の整備に要する費用のうち、補助対象となるものの範囲を明確にすること(建設省:市街地再開発事業費補助)。
   
2.
 補助事業の採択に当たり、施設の利用見込みを的確に把握し、利用が十分に見込まれるものを採択するよう厳正な審査を行うこと(厚生省:保健衛生施設等施設整備費補助金)。
   
3.
 補助事業の採択に当たり、把握した利用見込みに基づき、施設規模の審査を適正に行うこと(厚生省:医療施設等施設整備費補助金)。
   
4.
 補助事業の採択に当たり、自己負担能力が判断要素の一つとされている場合には、これを十分勘案した審査を行うこと(厚生省:社会福祉施設等設備整備費補助金)。
   
5.
 施設を合築する場合や施設を併設する場合に、共用可能な施設設備を一つに集約して整備することが可能であることを明らかにし、これに基づき指導すること(厚生省:保健衛生施設等施設整備費補助金、保健衛生施設等設備整備費補助金)。
  (2)交付決定の適正化
     補助事業者等又は間接補助事業者等は、交付要綱等に定められた補助金等の算定方法・基準に基づいて補助金等の交付申請を行い、当該申請を受けた交付行政庁は、補助金等適正化法第6条第1項に基づき、金額の算定に誤りがないか等を審査し、交付決定を行うこととされている。
 この交付決定の審査については、国自らが行う場合と都道府県等が行う場合がある。今回調査した補助金・交付金にあっては、直接補助金である文部省所管補助金については、文部省が自ら行うこととなるが、その他はいずれも間接補助金等であり、都道府県等補助事業者等に対する交付決定の審査は各省庁が行い、間接補助事業者等である民間団体に対する交付決定の審査は補助事業者等である都道府県等が行うこととなっている。
     
     今回、科学技術庁、法務省、文部省、厚生省、農林水産省、労働省及び建設省所管の計21目の補助金・交付金について、補助事業等における交付決定の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
   
1.
 補助金の算定方法は、交付要綱等において定められているが、その細部が明確になっていないため、次のとおり、都道府県間において補助金の算定方法が区々となり、交付されている補助金額が異なっている例がみられる。
   
i )
 特定の構造仕様の施設を整備する補助事業において、補助基準額を算定するための基準単価の適用方法が交付要綱等で明確にされていないため、都道府県により基準単価の適用方法が区々となっており、それぞれで補助金額が異なっているものがある(社会福祉施設等施設整備費補助金)。
ii)
 補助基準額の算定に係る建築面積の算入範囲が交付要綱等で明確にされていないため、都道府県により建築面積の算入範囲が区々となっており、それぞれで補助金額が異なっているものがある(医療施設等施設整備費補助金)。
   
2.
 補助基準額に算入される工事事務費(設計監理料)の範囲について、交付要綱等の規定内容が明確にされておらず、二通りの解釈が可能となっている。このため、設計監理料の算入範囲を一定限度にとどめているものがある一方、設計監理料を全額補助対象経費に算入しているものがみられ、両者で補助金額が異なっている例がみられる(社会福祉施設等施設整備費補助金(大規模修繕等))。
       
     したがって、厚生省は、補助金の交付決定の適正化を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
   
1.
 交付要綱等において、補助単価の具体的な適用方法及び補助金の算定に必要な建築面積の算出方法に係る規定の整備を図ること(社会福祉施設等施設整備費補助金、医療施設等施設整備費補助金)。
   
2.
 補助対象となる工事事務費(設計監理料)の算入方法に係る交付要綱等の規定内容を明確なものにすること(社会福祉施設等施設整備費補助金(大規模修繕等))。
 
2 補助事業に係る契約の適正化
     国の行政機関が行う契約については、会計法(昭和22年法律第35号)に基づき、一般競争入札、指名競争入札及び随意契約の3種類の契約方式が定められている。これら契約方式の中では、一般競争入札方式の採用が原則とされているが、契約の性質又は目的により競争に加わるべき者が少数で一般競争に付す必要がない場合等においては指名競争入札に、契約の性質又は目的が競争を許さない場合等においては随意契約によるものとされている。この随意契約によることができる場合として、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)において、i)予定価格が250万円を超えない工事又は製造をさせるとき、ii)予定価格が160万円を超えない財産を買い入れるとき、iii)競争に付しても入札者がないとき又は再度の入札をしても落札者がないとき等とされている。
 また、地方公共団体が行う契約については、地方自治法(昭和22年法律第67号)に基づき、一般競争入札、指名競争入札又は随意契約の方式により締結するものとされている。地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)では、指名競争入札によることができる場合は、その性質又は目的により競争に加わるべき者の数が一般競争入札に付する必要がないと認められる程度に少数である契約をするとき等とされ、また、随意契約によることができる場合は、i)予定価格が250万円(都道府県及び指定都市の場合)又は130万円(市町村の場合)を超えない工事又は製造の請負、ii)予定価格が160万円(都道府県及び指定都市の場合)又は80万円(市町村の場合)を超えない財産の買入れ、iii)その性質又は目的が競争入札に適しない契約をするとき等とされている。
 一方、国庫補助事業に係る契約については、補助金等適正化法の趣旨、目的に沿って、公正かつ最適な価格によって行われることが重要である。
 契約の適正性、効率性及び透明性の確保を図るためには、競争原理の導入による契約の相手方及び契約金額の決定が重要である。このため、文部省、厚生省等においては、民間の補助事業者による契約手続について、各補助金交付要綱等において、「原則として、国又は地方公共団体の契約方法にならい、入札による競争により契約の相手方及び契約金額を決定すること」などと明記している。
 さらに、建設工事の契約等に係る手続については、「行政及び公務員に対する国民の信頼を回復するための新たな取組について」(平成8年12月19日事務次官等会議申合せ)に基づき、補助金等の再点検が実施され、その結果を踏まえ、関係省庁においては、契約手続が適正に執行されるよう関係都道府県等に対して指導を行うこととされている。
       
     今回、科学技術庁、法務省、文部省、厚生省、農林水産省、労働省及び建設省所管の計21目の補助金・交付金について、契約の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
   
1.
 交付要綱等に競争入札を原則とする等の規定を置いておらず、又は、指導が徹底していないことから、組合(市街地再開発組合、土地区画整理組合)におけるコンサルタント業務や工事に関する競争入札実施の範囲が限定されたものとなっているなどの例がみられる(市街地再開発事業費補助、土地区画整理事業費補助)。
   
2.
 交付要綱等に随意契約を行う場合に踏むべき適正な手続を定めていないことから、見積り合わせを行わずに随意契約を行っている例がみられる(職業能力開発校設備整備費等補助金)。
   
3.
 土地改良区の監事が役員となっている建設会社に工事を請け負わせているものや契約規程で定められている必要的記載事項が契約書に記載されていないものがみられ、補助対象団体の契約に係る規約・規程が遵守されていない例がある(かんがい排水事業費補助、農村総合整備事業費補助)。
       
     したがって、農林水産省、労働省及び建設省は、補助事業に係る契約の適正化を図るため、次の措置を講ずる必要がある。
   
1.
 交付要綱等に競争入札を原則とする等の規定を置くこと、又は、規定を遵守するよう指導を徹底することにより、競争性の確保を図ること(建設省:市街地再開発事業費補助、土地区画整理事業費補助)。
   
2.
 随意契約を行う場合においてよるべき契約の適正な手続を交付要綱等に明記すること(労働省:職業能力開発校設備整備費等補助金)。
   
3.
 補助対象団体の契約に係る規約・規程を遵守するよう指導の強化を図ること(農林水産省:かんがい排水事業費補助、農村総合整備事業費補助)。
       
3 事業実施後の監査の徹底
     補助事業等により取得した財産については、補助金等適正化法第22条に基づき、各省庁の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、担保に供することなどが禁止されている。
 これを担保するため、各省庁は、補助金等適正化法第23条第1項に基づき、必要がある場合に補助事業者等又は間接補助事業者等に対して立入検査等(以下「補助金等監査」という。)を行うことができることとされている。この補助金等監査については、補助事業等が完了し、当該補助事業等に係る額が確定された後においても実施できることとされている。
 補助金等監査権限は、直接補助金については都道府県に委任されているが、間接補助金等については委任されていない。しかし、間接補助金等の場合は、交付要綱等により、補助事業で整備した施設等の財産を補助目的以外に使用する場合の承認(以下「財産の使用制限に係る承認」という。)の権限が都道府県等に委任されている。
 一方、補助金等を受けて施設・設備の整備を行う法人や施設に対しては、当該法人・施設の設立・設置の根拠法等に基づき、当該根拠法等に定められてる施設・設備基準の遵守状況等についての監査・検査(以下「法人・施設監査」という。)が行われている。
 都道府県等においては、直接補助金に係る補助金等監査を担当する部門又は間接補助金に係る財産の使用制限に係る承認を担当する部門と法人・施設監査を担当する部門とは、同一の部又は課となっている場合が一般的である。
 また、前出の「行政及び公務員に対する国民の信頼を回復するための新たな取組について」においては、事務の適正化及び不祥事の発生防止等の観点から、各省庁において計画的な監査・考査を実施することとされている。
       
     今回、補助事業等に係る補助金等監査の実施状況について調査した結果、次のような状況がみられた。
   
1.
 今回調査した法人の中には、補助事業で整備した施設を補助金の交付目的以外に使用している例がみられる。
 しかし、当該補助事業に係る交付行政庁(文部省)の補助金等監査は、交付対象とされた法人の一部にとどまっており、都道府県による補助金等監査は行われていない。また、都道府県における法人・施設監査は定期的に行われているものの、補助金等監査を併せて行い得る機会として認識されておらず、法人・施設監査の実施の際に、併せて補助事業によって整備された施設・設備の補助目的に沿った適正な使用の有無等について確認することは行われていない(私立学校施設整備費補助金(私立高等学校産業教育施設整備費))。
   
2.
 今回調査した法人の中には、間接補助事業により整備した施設・設備に根抵当権を設定している例や補助金の交付の目的に反して使用している例がみられる。
 しかし、間接補助事業により施設・設備を整備した法人に対する補助金等監査が行われていない。また、都道府県等における法人・施設監査は定期的に行われているが、各都道府県等の条例・規則に基づく補助金等監査を併せて行い得る機会として認識されておらず、法人・施設監査の実施の際に、併せて補助事業によって整備された施設・設備の補助目的に沿った適正な使用の有無等について確認することは行われていない(保健衛生施設等施設整備費補助金、保健衛生施設等設備整備費補助金及び職業能力開発校設備整備費等補助金)。
       
     したがって、文部省、厚生省及び労働省は、補助事業の適正な執行を確保する観点から、次の措置を講ずる必要がある。
   
1.
 補助事業については、都道府県において、補助金等監査を行うこととされている部又は課が法人・施設監査を定期的に実施している場合には、法人・施設監査に併せ補助事業で整備された施設・設備の補助目的に沿った適正な使用の有無等の確認を行うなど、補助金等監査の効果的な実施を確保するよう都道府県に要請すること(文部省:私立学校施設整備費補助金(私立高等学校産業教育施設整備費))。
   
2.
 間接補助事業については、都道府県等において、交付要綱等で規定されている財産の使用制限に係る承認や都道府県等の条例・規則に基づく補助金等監査を担当する部又は課と法人・施設監査を担当する部又は課が同一の場合には、法人・施設監査の中で、補助事業で整備された施設・設備の補助目的に沿った適正な使用の有無等について適切な把握を行うよう都道府県等に要請すること(厚生省:保健衛生施設等施設整備費補助金及び保健衛生施設等設備整備費補助金、労働省:職業能力開発校設備整備費等補助金)。
 
4 透明性の確保
     各省庁は、前出の事務次官等会議申合せ「行政及び公務員に対する国民の信頼を回復するための新たな取組について」に基づき、各々の補助金等の実情に応じた透明性を確保するため、補助金等の交付決定の概況一覧を公表する等必要な措置を講じ、補助金等適正化中央連絡会議等の場を通じて情報連絡の強化を図ることとされてい る。
 また、上記申合せでは、各省庁において採られた透明性の確保に関する措置等のフォローアップについて、必要に応じ、行政監察機能を活用することとされている。
 第51回補助金等適正化中央連絡会議(平成9年1月17日開催)においては、上記申合せを踏まえ、1)施設についての交付決定の概況一覧を公表する、2)補助事業等実績報告書を公開、閲覧の対象とする等の実施方法を示している。
 また、第53回補助金等適正化中央連絡会議(平成10年3月27日開催)においては、交付決定概況一覧の内容については、補助金等の名称、交付決定先、交付決定金額、交付決定の対象となった事業等とされている。
 補助事業等実績報告書は、各補助金等の交付要綱に基づき、整備された内容、事業費、補助金額など補助事業等の成果を記載することとされており、その公開、閲覧は、各省庁が交付決定した補助事業等の実施結果を国民に開示する観点から重要となっている。
       
     今回、科学技術庁、法務省、文部省、厚生省、農林水産省、労働省及び建設省所管の計21目の補助金・交付金について、補助金等の透明性の確保のための措置の実施状況等を調査した結果、次のとおり、交付決定概況一覧の公表や補助事業等実績報告の公開、閲覧が不十分となっているものがみられた。
   
1.
 本省庁において、交付決定概況一覧の公表を行っていない例がある(法務省)。
   
2.
 本省庁において、補助事業等実績報告の公開、閲覧を行っていない例がある(科学技術庁、法務省、厚生省、労働省及び建設省)。
       
     したがって、関係省庁は、補助金等の透明性の確保の観点から、次の措置を講ずる必要がある。
   
1.
 交付決定概況一覧の公表を行うこと(法務省)。
   
2.
 補助事業等実績報告の公開、閲覧を行うこと(科学技術庁、法務省、厚生省、労働省及び建設省)。
 
5 不適正交付事例
     補助金等適正化法は、補助金等のうち、補助金、負担金、利子補給金及び給付金の一部について、交付の申請、決定等に関する事項その他補助金等に係る予算の執行に関する基本的事項を規定することにより、補助金等の交付の不正な申請及び補助金等の不正な使用の防止その他補助金等に係る予算の執行並びに補助金等の交付の決定の適正化を図ることを目的として、昭和30年に制定されている。この法律には、補助事業等及び間接補助事業等に係る遂行義務、補助金等の返還、不正受給等に対する罰則等も規定されている。
       
     今回、調査した7省庁21目の補助金・交付金のうち、土地改良区、市街地再開発組合、土地区画整理組合、漁業協同組合等、更生保護法人及び職業訓練法人の計85法人に対し交付されている科学技術庁所管補助金(種子島周辺漁業対策事業費補助金)6件(国庫補助額約3億円)、法務省所管補助金(更生保護施設整備費補助金)5件(国庫補助額約3億円)、農林水産省所管補助金(かんがい排水事業費補助、圃場整備事業費補助、諸土地改良事業費補助、農道整備事業費補助、農村総合整備事業費補助、農村地域環境整備事業費補助及び農地防災事業費補助)87件(国庫補助額約83億円)、労働省所管補助金(職業能力開発校設備整備費等補助金)23件(国庫補助額約1億円)及び建設省所管補助金・交付金(土地区画整理事業費補助、地方道路整備臨時交付金及び市街地再開発事業費補助)81件(国庫補助額約242億円)の計202件(国庫補助額約332億円)について、その交付、使用の状況等を調査した結果、間接補助事業者等である民間団体が、i)事実と異なる実績報告を行っているもの、ii)補助対象外の経費を含めて実績報告を行っているものがみられた。
 また、この実績報告を受けた補助事業者等である都道府県等が、現地確認等による実際の事業内容と実績報告の内容との照合等を十分に行っていないことから、事実と異なる実績報告のとおりに、又は補助対象外経費を含む実績報告のとおりに補助金等の交付決定、額の確定及び支払が行われている。
 このため、農林水産省所管補助金で4件(約258万円、うち国庫補助額約210万円)、建設省所管補助金等で1件(約61万円、うち国庫補助額約33万円)の計5件(約320万円、うち国庫補助額約243万円)が不適正な交付となっている。
     
     したがって、農林水産省及び建設省は、補助金等の適正かつ効率的な執行を確保する観点から、次の措置を講ずる必要がある。
   
1.
 補助金等が不適正に交付されているものについては、補助金等の適正な執行を確保するため、早急に補助金等の返還等厳格かつ適正な対応措置を採ること。
   
2.
 補助金等の適正な執行を確保するため、審査を厳正かつ的確に行うとともに、補助事業者等である都道府県等に対し、交付要綱等で定められた交付内容等に則して審査を厳正かつ的確に実施するよう指導すること。