補助金等に関する行政監察結果(第1次)(要旨)

勧告日:平成10年11月18日
勧告先:文部省、厚生省

〔監察の目的・背景事情等〕

 補助金等に関する行政監察は、補助金等の執行の適正化及び透明性の確保並びに補助事業の適正かつ効果的な実施を図る観点から、民間団体が実施する施設・設備の整備、工事契約等の事務を伴う事業等に対する補助金等について、補助金等の交付事務の実施状況、補助事業の実施状況等を調査し、関係行政の改善に資するため実施。今般、平成10年4月から調査を実施した文部省及び厚生省所管の補助金の中に、不適正交付事例がみられたことから、関係機関に対し、早急に返還等の措置と今後の再発防止策を講ずるよう求める必要があるため、補助金等に関する行政監察結果の第1次として勧告。
 
(参 考)
  • 調査対象補助金名 (目細・メニューベース:19補助金)
    文部省: 私立大学等研究設備整備費等補助金、私立学校施設整備費補助金(私立幼稚園施設整備費、私立高等学校産業教育施設整備費)、学校教育設備整備費等補助金(高等学校産業教育設備整備費)
    厚生省: 医療施設等施設整備費補助金(医療施設近代化施設整備事業、看護婦宿舎施設整備事業、看護婦勤務環境改善施設整備事業)、保健衛生施設等施設・設備整備費補助金(精神障害者生活訓練施設、精神障害者ショートステイ施設、精神障害者通所授産施設)、社会福祉施設等施設・設備整備費補助金(身体障害者更生援護施設、精神薄弱者援護施設、児童福祉施設)
  • 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)では、補助金等の交付の対象となる事務・事業に係る遂行義務、補助金等の返還等を規定。
対象機関等: 文部省、厚生省、都道府県(24)、市町村(9)、法人(学校法人75、医療法人81、社会福祉法人101)等
担当部局: 行政監察局、管区行政監察局(7)、四国行政監察支局、行政監察事務所(16)

〔調査結果の概要〕

 文部省及び厚生省所管の19補助金について当庁が調査した511件のうち21件が、民間団体に不適正交付(21件合計不適正補助額約6,949万円、うち国庫補助額は約4,547万円)(別表参照)。
  文部省所管: 127件中4件(約230万円、全額国庫補助)
  厚生省所管: 384件中17件(約6,718万円、うち国庫補助額は約4,316万円)
1.  民間団体(補助事業者・間接補助事業者)が事実と異なる交付申請や実績報告を提出。
 しかし、文部省、厚生省、都道府県等が、i)申請時若しくは額の確定時における書類の徴求や現地調査が不十分、又はii)容易に事実と異なる報告であることが発見できたにもかかわらず、審査時の書類の照合・点検が不十分。このため、補助金が不適正に交付。
 交付申請・実績報告時の提出書類の明確化、区分経理の実施の義務化、現地調査の拡充、留意すべき審査の基準・視点等の明確化が重要であるが、交付要綱等の中で、これらが不明確。
例1:  交付決定されている金額と異なる金額で設備を購入していたにもかかわらず、補助事業者 (民間団体)が交付決定額と同額の事実と異なる実績報告を実施。しかし、行政庁において、書類の徴求・現地調査を十分に実施しないまま、補助金の額の確定・支払を実施。(要返還等補助額1,075千円(うち国庫補助額1,075千円))
例2:  補助対象工事が補助対象年度内に竣(しゅん)工していないにもかかわらず、間接補助事業者(民間団体)及び補助事業者(市)は当該工事を補助対象年度内に竣工したとする事実と異なる実績報告を実施。しかし、行政庁において、書類の徴求・現地調査を十分に実施しないまま、補助金の額の確定・支払を実施。(要返還等補助額45,120千円 (うち国庫補助額30,080千円))
例3:  間接補助事業者(民間団体)が、補助対象経費や面積の算定を誤って交付申請・実績報告を実施。しかし、行政庁において、提出書類の照合・点検を十分に実施しないまま、補助金の額の確定・支払を実施。(要返還等補助額2,572千円 (うち国庫補助額1,286千円))
2.  厚生省が、補助事業の内容・条件、補助対象経費の範囲・算定方法等について、i)それぞれの交付要綱等の中で細部について明確に定めていないこと、ii)解釈・運用を誤ったことから、補助事業者(都道府県等)又は間接補助事業者(民間団体)が不適切な交付申請・実績報告を実施。このため、補助金が不適正に交付。
例:  公益事業補助(助成)を受けているにもかかわらず、間接補助事業者(民間団体)がこれと重複して補助金の交付申請・実績報告を実施。国庫補助事業に係る補助金額と公益事業補助(助成) 金額との合計が実支出額を上回る部分がある場合には、これを補助の対象とすることは適当ではないが、行政庁において、修正要求等を行わないまま、交付申請・実績報告どおりに補助金の額の確定・支払を実施。(要返還等補助額3,080千円 (うち国庫補助額2,054千円))

<勧告要旨>

 文部省及び厚生省は、補助金等の適正かつ効率的な執行を確保する観点から、次の措置を講ずることが必要。
  1.  補助金が不適正に交付されているものについては、補助金の適正な執行を確保するため、早急に補助金の返還等厳格かつ適正な対応措置を採ること。
  2.  今後、類似の不適正交付事例の発生を未然に防止し、補助金等の適正かつ効率的な執行を確保するため、i)交付申請・実績報告時の提出書類の明確化、補助事業とその他との区分経理の実施の義務化、現地調査の拡充、審査の基準・視点等の明確化、ii)補助事業の内容・条件、補助対象経費の範囲・算定方法等の明確化を図るよう交付要綱等を改正すること。
  3.  補助金等の適正な執行を確保するため、交付申請・実績報告の審査等を厳正かつ的確に行うとともに、事務委任先又は補助事業者である都道府県等に対し、交付要綱等で定められた交付内容等に則して審査等を厳正かつ的確に実施するよう指導すること。