指定法人等の指導監督に関する行政監察結果に基づく勧告
(要旨)

勧告日: 平成9年9月9日
勧告先: 総理府本府、国家公安委員会、科学技術庁、環境庁、国土庁、法務省、大蔵省、文部省、厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省、郵政省、労働省、建設省、自治省(16省庁)

【背景事情等】

 第3次行革審最終答申(H5.10.27) /行政の代行的な機能を果たしている公益法人の見直し
 与党行革プロジェクトチーム の「公益法人の運営等に関する提言」(H8.7.9)

 「公益法人に対する検査等の委託等に関する基準」等(H8.9.20 閣議決定)
 検査等の委託等の法令化、会計処理の適正化、自主的ディスクロージャー の推進等

【調査の概要】

○ 実地調査時期 平成8年8月〜11月
○ 調査対象機関 総理府ほか21省庁、11都道府県等、96指定法人等

【調査の視点】

指定法人等の全体像の解明
制度の透明化・運営の適正化

国民の信頼の確保
【指定事業】
 公共性が強い
  • 本来行政が直接実施すべき事業
  • 行政運営の一環としての法律事務
【推薦事業】
 公益性が高い
  • 主務官庁が国民に奨励するもの
※平成8年9月20日閣議決定の内容と並行して推進すべき改善措置を勧告(=改革の一層の推進)

【主な勧告事項等】

第1部 指定法人等の現状(実態)→

指定法人等の現状を初めて明らかにするもの

1 指定法人等の組織体制

(1) 指定法人等数

所管省庁別指定法人等数


(2) 年度別推移
   臨調最終答申(S58.3)を受け、指定法人の活用による検査等の民間委託が進んでいる。

指定法人の年度別指定件数


(3) 役員の現況
   指定法人等の役員は平均で24.9人、うち常勤役員は 2.2人、常勤役員のうち元公務員は0.8 人
(一般の公益法人に比べ、役員が多く、行政との人的つながりも密接な傾向)

1法人あたりの役員数


2 指定事業等の状況

(1) 指定事業等数
   指定事業等は実数で 316事業(指定事業221 、推薦事業95)
   事業の性格と根拠法令等の形式とは、密接に関連(公共性が強いほど上位法令に根拠)
(指定事業:法律を根拠 約80%、推薦事業:告示や通達等を根拠 約80%)

指定事業等数の根拠法令等・推進事業の根拠法令等


(2) 省庁別指定事業等数
   指定事業等の所管省庁は、15省庁(延べ327 事業)に及ぶ
   指定事業は、検査・検定、試験等に係る許認可等を多く所管する省庁に多い傾向
 ・ 厚生省45事業(19.5%) 、運輸省42事業(18.2%) 、通商産業省36事業(15.6%)
   推薦事業は、特定の技能を国民が取得することが所管行政上有益な省庁に多い傾向
 ・ 建設省25事業(26.0%) 、通商産業省13事業(13.5%) 、厚生省13事業(13.5%)

省庁別指定事業・許認可等件数の比較


(3) 指定法人等の業務類型
   指定法人
[検査・検定 185法人(18.4%) 、試験又は講習・養成 180法人 (17.9%)]

指定法人の業務類型


   推薦事業実施法人
<審査・証明 147法人(56.8%) >
推進事業実施法人の業務類型


(4) 補助金・委託費の状況
   国から補助金・委託費を受ける法人は2極分化の傾向
 国費を原資とした助成を行う法人は補助金等の割合が高い。
 検査・検定・試験などの手数料収入がある場合は補助金の割合は低い。

指定事業等支出額に占める補助金等の割合別法人数


第2部 個別指定法人等の在り方の見直し

   指定事業の導入に際する吟味が十分でなく、事業実績が皆無又は低調なもの(3事業)
   社会経済情勢の変化により、指定事業等の見直しが必要なもの(3事業)
   指定事業等のほとんどを委託し、指定法人等が実質的に事業を行っていないもの(2法人)
   指定事業等を利用して不適正な運営を行っているもの(3法人)

 <勧告要旨>
1)  指定事業等の創設に当たっては、その必要性について十分な吟味を行うこと。
2)  実績のない指定事業を廃止すること。
3)  指定事業を実質的に行っていない法人について、指定等を取り消すこと。
4)  指定法人等の不適正な事業運営を速やかに是正させること。


第3部 指定制度等改革の基本方策

 1 指定法人等に関する基準の確立

(1) 指定等及び指導監督に関する基準の整備

   指定法人等の中には、事業運営の基盤が整っていないものがみられる
・ 財政基盤が弱体 ・ 必要な資格者や職員が不足
・ 施設・設備の未整備 ・ 役員構成に偏り
   指定等の審査や指定法人等の指導監督に関する基準の整備が不十分
 指定等の審査に当たり、個別法令の指定等の要件の規定そのもの(=抽象的内容)を判断基準とする主務官庁が大半(約87%) (ex. 的確に遂行する能力があること)
 定期報告を徴するにもかかわらず、これら主務官庁は指導監督の基準を策定せず。
 立入検査を行う主務官庁のうち、その実施基準を策定しているのは、わずか 4.7%
   基準の整備の遅れもあって、指定等の審査や法人に対する指導監督は不十分
 指定法人等の公共性を特に意識した審査は行われていない(約81%)
 立入検査を実施していない主務官庁は49%に達している(平成5〜7年度)

 <勧告要旨>
1)  指定等及び指定法人等の指導監督の個別具体的な基準( 財政基盤、資格・能力、職員数、施設・設備、役員構成、委託等に関するもの)を策定し公表すること。
2)  指定等の審査を的確に行うとともに、指定法人等に対する立入検査を定期的に実施するなど指導監督を徹底すること。

(2) 財務に関する基準の整備

   指定事業等を区分して経理する基準が整備されておらず、事業収支が不明確
 区分経理規定がない指定事業等(約70%)、事業収支が不明確な法人(約67%)
   多額の剰余金を生じている指定事業等がみられ、その処理方法も不適切
 多額の剰余金のある法人(7法人) / 剰余金を指定事業等以外に繰入れ等(6法人)
   手数料の見直しに実費を反映する仕組みとなっておらず、剰余金が発生(5法人)
   指定事業等の財務に関する基準は、ほとんど整備されていない
 会計処理の基本的事項(区分経理の方法、剰余金の基準・取扱い方法等)を定めた基準を策定している主務官庁なし
 手数料の設定・見直しの基本的事項(積算方法、改訂方法等)を定めた基準を策定しているのは85主務官庁中1官庁

 <勧告要旨>
1)  指定事業等の会計処理の基本的事項を定めた基準を策定し公表するとともに、指定法人等に対しその徹底を図ること。
2)  手数料等の設定・見直しの基本的事項を定めた基準を策定し公表すること。

 2 指定制度等に対する国民の信頼の確保

(1) 指定法人等の範囲の明確化

   総理府の「指定法人調査」は必ずしも正確でなく、「行政代行的行為等に関する状況調査」も、行政委託型法人等の実態を網羅的に把握する観点からは十分といえない

 <勧告要旨>
 本調査結果に即して、的確な実態把握を推進すること。

(2) 制度の透明性の確保

   行政委託型事業等の法令上の位置付けの明確化はあまり進んでいない
   これら事業の適正な運営確保のための規定の整備も進んでおらず、制度的に不透明

 <勧告要旨>
 平成12年度末に向けて進められる行政委託型事業等に関する法令の整備に合わせ、事業の運営上基本的な事項(立入検査、区分経理の実施、事業計画書・収支予算書・事業報告書・収支決算書の徴収、指定等の取消し等)について、規定を整備すること。

(3) 指定法人等のディスクロージャー

   事業報告書、計算書類(貸借対照表、収支計算書、正味財産増減計算書)の公開に関する規定は、ほとんど未整備(96.4% )
   作成した書類のディスクロージャーが不十分(公開は2割強)
   一方、公開に支障はないとする法人は多く(88.9% )、支障ありとする理由も不合理

 <勧告要旨>
 指定法人等の業務及び財務を明らかにする書類(事業報告書、貸借対照表、収支計算書及び正味財産増減計算書)の作成及び公開を指導するとともに関係規定の整備を行うこと。

 3 総点検の仕組みの整備
   行政委託型法人等の運営に問題がみられる(実績低調、丸投げ、多額の剰余金など)
   政府一丸となり改善に取組むには、毎年度の点検と結果公表の実施が効果的

 <勧告要旨>
1)  行政委託型法人等の総点検を定期的に実施し、必要な改善を行うこと。
2)  総点検の実施計画及び点検結果を「公益法人に関する年次報告」(仮称)において、毎年度公表すること。


(参考)閣議決定(平成8年9月20日)と勧告の対比



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