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政策評価制度の法制化の基本的考え方 |
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法制化の背景 |
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今般導入される政策評価制度は、これまでの中央省庁等改革の議論の中でその枠組みについて様々な角度から検討が進められてきたものである。行政改革会議最終報告を踏まえ、中央省庁等改革基本法において中央省庁等改革の基本方針の一つとして政策評価機能の強化が掲げられ、内閣府設置法及び改正国家行政組織法においては、国の行政機関の組織構成原理の一つとして、政策の大きなマネジメント・サイクルの中における政策評価の位置付けが法制上明確にされるとともに、総務省設置法において政策評価制度における総務省の位置付け、機能が明確に規定されたほか、「中央省庁等改革の推進に関する方針」(中央省庁等改革推進本部決定)において、政策評価制度の基本的な枠組みが明らかにされた。
その後、平成13年1月の制度導入に向け、こうした基本的な考え方や枠組みを具体化していくための様々な準備作業が鋭意進められてきている。
政策評価制度導入に当たっての基本的な考え方の整理や政策評価の手法等については、総務庁において「政策評価の手法等に関する研究会」(座長:村松岐夫京都大学大学院法学研究科教授)が開催され、政策評価の基本的在り方、標準的な方式の導入や実施のあり方等についての研究が進められてきた。また、この研究会における研究成果をも踏まえ、全政府的な政策評価への取組の指針となるものとして「政策評価に関する標準的ガイドライン(案)」(以下「ガイドライン案」という。)が示され、平成13年1月には正式に決定される運びとなっている。さらに、各省庁においては、このガイドライン案に基づき、政策評価の実施に向けた検討作業が進められている。
この政策評価制度に関しては、中央省庁等改革関連法案の国会審議の際における附帯決議において、その実効性を高めるための法制化について早急に検討することとされており、また、各方面からも様々な意見、要望が表明されるなど、政策評価に対する国民各界各層の期待と関心は高く、こうした要請に的確に応え、制度導入の目的を実現していくため、制度導入に向けた準備作業と並行して、制度の法制化に向けた検討が進められてきたものである。
なお、平成12年12月1日に閣議決定された行政改革大綱においては、政策評価制度に関し、平成13年1月から導入される政策評価制度の円滑な実施とともに、政策評価制度の法制化と法案の国会提出が位置付けられているところである。
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(2) |
法制化の基本的考え方 |
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こうした経緯を踏まえると、今回の法制化は、今般導入される政策評価制度について、その実効性を高め、これに対する国民の信頼を一層向上させることにより制度導入の目的を的確に実現していくために行われるべきものであると考えられる。このためには、政策評価が政策全般について的確に実施され、その結果が的確に政策の企画立案に反映されること、また、こうした政府の活動が国民に的確に公表され、国民の側からも検証できることを本法制において担保することが必要である。
したがって、法制化に当たっては、政策評価制度の全政府的な取組の指針であるガイドライン案を基本としつつ、特に以下の3点に留意し、政策評価に関する各府省共通のルールを定めるものと位置付ける必要がある。
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(ア)
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政策評価の実施を法律上明確に義務付けるとともに、その着実な実施を図ること |
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(イ) |
政策評価の客観性を確保すること |
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(ウ) |
政策評価に関する一連の情報の公表を義務付けること |
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なお、政策評価制度は今般新たに導入されるものであり、また、政策評価の手法等については、確立している分野はまだ限られていること、具体的な評価の実施の在り方については、政策の性質等に応じて様々であることなどから、性急に成果を求めるあまり実行不可能な硬直的な制度とすることや過度に画一的な制度とすることは、かえって制度導入の趣旨に反し、結果として国民の期待に反するものとなるものであり、継続的かつ着実な取組により政策評価の定着と質の向上を図っていくための制度設計が必要であることにも留意が必要である。 |
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(3) |
法の目的 |
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ガイドライン案においては、政策評価制度導入の目的として、(ア)国民に対する説明責任(アカウンタビリティ)を徹底すること、(イ)国民本位で質の高い行政を実現すること、(ウ)国民的視点に立った成果重視の行政への転換を図ること、の3点が掲げられている。今回の法制化は、政策評価制度の実効性を高めるとともに、これに対する国民の信頼を一層向上させる観点から行うものであり、言い換えれば、政策評価制度導入の目的を的確に実現していくために行われるものである。このため、法律の目的としては、政策評価制度が目指すものとしてガイドライン案に掲げられている三つの目的を位置付けることが適当である。
なお、これまでの中央省庁等改革の議論を踏まえると、今回の法制化は、政策評価を政策の「企画立案(plan)」、「実施(do)」、「評価(see)」という大きなマネジメント・サイクルの中に制度化されたシステムとして組み込み、実施することにより、効率的で質の高い行政及び成果重視の行政を推進し、さらに、評価結果等の公表を義務付けることにより、国民に対する説明責任を徹底するものであると考えることが適当である。
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2 |
政策評価の定義等 |
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本法制においては、中央省庁等改革に伴うこれまでの議論を踏まえ、政策評価の定義、政策評価の対象、及び政策評価の実施主体を明確にする必要がある。 |
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(1) |
政策評価の定義 |
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ガイドライン案においては、「政策評価」の概念について、「中央省庁等改革に伴い導入される「政策評価」とは、「国の行政機関が主体となり、政策の効果等に関し、測定又は分析し、一定の尺度に照らして客観的な判断を行うことにより、政策の企画立案やそれに基づく実施を的確に行うことに資する情報を提供すること」であり、「企画立案」、「実施」、「評価」を主要な要素とする政策の大きなマネジメント・サイクルの中にあって制度化されたシステムとして組み込まれ、実施されるものである。」とされており、また、政策評価を実施するに当たっての観点として、「必要性」、「効率性」、「有効性」等が挙げられている。
一方、国の行政機関においては、従前から、行政監督の一手段として行政の考査等が行われており(各府省組織令等において官房の所掌事務等として規定)、これは、業務の実施状況について、主として合規性、適正性、能率性等の観点から調査し評価を行うものである。また、中央省庁等改革に伴い、各府省の長から実施庁に委任された権限に係る事務(政策の実施に係る事務)について、各府省の長が、実施庁が達成すべき目標を設定し、その目標に対する実績を評価する仕組みが導入されることとなっており(中央省庁等改革基本法第16条第6項)、これも、行政の考査等の一つとして位置付けられている。さらに、総務省においては、政策評価とは明確に区分されるものとして、政策評価を除く行政評価・監視を行うこととされており(総務省設置法第4条第18号〜第20号)、ガイドライン案では、政策評価を除く行政評価・監視とは、「業務の実施状況について、主として合規性、適正性、効率性(能率性)等の観点から独自に評価・監視し、業務運営の改善を図るもの」であるとされている。
本法制においては、ガイドライン案における「政策評価」の概念の基本的要素を踏まえるとともに、政策評価と国の行政機関における行政の考査等や総務省における政策評価を除く行政評価・監視との切り分けを明確にするために、必要性、効率性、有効性等の評価の観点を含める形で、「政策評価」の定義として規定していくことが適当である。
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(2) |
政策評価の対象 |
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ガイドライン案においては、「政策評価」における「政策」とは、(ア)国の行政課題に対応するための特定の目的や目標を持ち、(イ)これらを実現するための手段として、予算、人員等の行政資源が組み合わされた行政活動(案の段階のものも含む。)が目的に照らしてある程度のまとまりになっており、(ウ)行政活動の実施を通じて、一定の効果を国民生活や経済社会に及ぼすものとしてとらえることができるとしている。また、政策評価の対象としての政策は、多くの場合、「政策(狭義)」、「施策」及び「事務事業」によってとらえることができるものであり、これらの「政策(狭義)」、「施策」及び「事務事業」は、一般に、相互に目的と手段の関係を保ちながら、全体として一つの体系を形成しているものととらえることができるとされている。
政策評価は、政策の特性や各々の分野における政策評価に対する要請などに応じて、政策体系を構成する政策の様々なレベルにおいて実施されるべきものと考えられることから、本法制においても、ガイドライン案にいう「政策(狭義)」、「施策」、「事務事業」が政策評価の対象となりうるものであることを踏まえる必要がある。
また、本法制において、ガイドライン案における「政策」のとらえ方を踏まえて、「政策」について、何らかの定義を置くことが適当であるかどうかについては、既存の法律における「政策」の概念と、本法制における「政策」の概念の異同について法文化する中で検証した上で判断する必要がある。
なお、本法制における政策には、上記の「政策」のとらえ方からみて、国の行政課題に対応するための特定の目的や目標を持つものとの位置付けにはなじまない個々の行政機関における会計や人事など組織である以上当然必要となる経常的な内部管理事務等は含まれないものと考えられる。
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(3) |
政策評価の実施主体 |
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政策評価は、「企画立案」、「実施」、「評価」を主要な要素とする政策の大きなマネジメント・サイクルの中にあって制度化されたシステムとして組み込まれ実施されるものであり、内閣府(内閣補助事務としての企画立案や総合調整を行う場合を除く。)や国家行政組織法に規定する国の行政機関については、内閣府設置法や改正国家行政組織法において「内閣の統轄の下に、その政策について、自ら評価し、企画及び立案を行い、(後略)」との規定が置かれ、内閣の統轄の下に、政策のマネジメント・サイクルの中で政策評価を実施していくことが法制上明確に位置付けられているものであることから、本法制においても、政策評価の実施主体として位置付けることが適当である。
なお、これらの機関において、更に庁、委員会、特別の機関、地方支分部局等を独立の実施単位として位置付けるかどうかについては、個々の機関の職務権限の独立性等を踏まえつつ、今後、法文化にあたって検討していく必要がある。
また、その他の行政機関等については、以下の理由により、本法制における政策評価の実施主体としては位置付けないものと整理することが適当である。 |
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<内閣に置かれる機関等> |
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内閣に置かれる機関、内閣府(内閣補助事務としての企画立案や総合調整を行う場合に限る。)は、内閣の重要政策に関する基本的な方針等に関する企画立案や総合調整を行う機関であり、それらの方針等に基づく政策については、内閣の統轄の下にある行政機関において分担管理されることとなることから、中央省庁等改革の経過においては、政策評価の実施主体とは位置付けられていないものである。本法制においても、これまでの議論を踏まえ、これらの機関については、政策評価の実施主体としては位置付けないものと整理することが適当である。 |
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<人事院> |
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人事院は、内閣の所轄の下に、人事行政の中立・公正の確保及び職員の利益の保護等に関する事務をつかさどる機関であり、中央省庁等改革の経過においては、その事務の独立性の観点から政策評価の実施主体とは位置付けられてこなかったものである。本法制においても、人事院が国の行政機構の中で各府省とは異なる位置付けがなされていることを踏まえ、同院については、政策評価の実施主体としては位置付けないものと整理することが適当である。 |
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<会計検査院> |
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会計検査院は、内閣から独立した憲法上の機関として、国の収入支出の決算の検査を行う外、法律に定める会計の検査を行っており、中央省庁等改革の経過においては、政策評価の実施主体とは位置付けられてこなかったものである。本法制においても、会計検査院が内閣に対し独立の地位を有する憲法上の機関であることを踏まえ、同院については、政策評価の実施主体としては位置付けないものと整理することが適当である。
なお、会計検査院の機能について、行政改革会議最終報告においては、「評価は、政府部内のそれとともに、政府の部外からもなされることが重要である。国会におけるその機能が期待されることは当然であるが、会計検査院の果たす役割への期待も大きい。この見地から、国の収入・支出の検査、会計経理の適正化という観点を主体として遂行されてきた同院の機能は、今後、国の施策や事務・事業の効果、効率性、合理性といった観点からの評価も重視していく必要がある。このために、同院の機能の充実強化を図るべきである。」とされており、また、同時期に会計検査院法が改正され、「会計検査院は、正確性、合規性、経済性、効率性及び有効性の観点その他会計検査上必要な観点から検査を行うものとする。」と明記された。
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<国の行政活動の一端を担っている法人> |
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国の行政活動の一端を担う独立行政法人や特殊法人等については、国の政策のマネジメント・サイクルの中で主として実施部門に属するものであることから、本法制においては、国の行政機関が実施主体となる政策評価の対象とはなるが、独立行政法人や特殊法人等自体は政策評価の実施主体とはならないものと整理することが適当である。
なお、このこととは別に、独立行政法人や特殊法人等については、それぞれ実施部門にあるものとして自ら評価に取り組む責務について、本法制で規定することも考えられる。しかしながら、独立行政法人については、その業務の実績に関して主務省に置かれる評価委員会が評価を行う仕組みが、既に独立行政法人通則法により整備されており、本法制においてそのような責務について規定する必要はないものと考えられ、また特殊法人等については、今般の行政改革大綱において、既に事業、業務運営等についての経営評価の実施が位置付けられていること、及び、特殊法人等の性格等に応じ個々の特殊法人等について別途の詳細な検討を要する課題であると考えられることから、今回の法制化に当たり、そのような責務の規定について併せて検討することにはなじまないものと考える。
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<地方公共団体> |
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本法制における政策評価は、国が自らの政策について行う評価であることから、地方公共団体はその実施主体とはならないものである。
なお、地方公共団体が自らの政策について評価を行いこれを公表することも、住民に対する説明責任や行政の効率化の観点から重要であることから、本法制において、政策評価制度の導入に取り組むことを地方公共団体の責務として規定することも考えられる。
しかしながら、各地方公共団体の政策評価について、本法制における政策評価制度を「標準形」として一律にこれと同様の取組を求めることは、地方公共団体の自主性や独自性を考慮すると必ずしも適当ではなく、また既に地方公共団体の間で独自の取組も始まっていることから、本法制においては地方公共団体の責務についての規定は盛り込まないこととすることが適当である。
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3 |
政策評価の実施 |
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政策評価制度の実効性を高め、これに対する国民の信頼を一層向上させるためには、本法制において政策評価の実施主体として位置付ける行政機関(以下「各行政機関」という。)における政策評価の的確な実施を推進することが必要である。このため本法制においては、各行政機関に政策評価の実施を明確に義務付けるとともに、政策評価を効率的かつ効果的に実施していくための仕組みを整備する必要がある。 |
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政策評価の実施の義務付け |
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およそ評価を前提としない政策の企画立案やその効果を点検しなくともよい政策の実施はないと考えられるところ、政策評価は、政策の大きなマネジメント・サイクルの中にあって制度化されたシステムとして組み込まれ実施されるものであることから、本法制においては、各行政機関に、その政策全般について、政策評価の実施を明確に義務付けることが適当である。
また、政策評価は、政策の決定の前に行うか決定後に行うかで大別することができるものであり、政策が決定される前の時点における評価(以下「事前評価」という。)と政策が実施段階に移行してからの評価(以下「事後評価」という。)では、その意義、評価に対する要請、評価の困難性等が異なることから、両者を分けて整理することが適当である。
なお、各行政機関に政策評価の実施を義務付けるに際しては、政策評価を効率的かつ効果的に実施していくために、重点的かつ計画的な取組が可能となる仕組みとすることが適当である。また、政策評価制度が中央省庁等改革に伴い新たに導入される制度であり、現段階では、すべての政策分野において評価の実施方法について十分な知見が蓄積されているとはいえず、政策評価に必要なデータの整備や評価手法の研究・開発等が必要な分野もあることから、段階的な取組が可能となる仕組みとすることが適当である。
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ア |
事前評価 |
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ガイドライン案においては、事前評価は、新規に開始しようとする政策について、その採択や実施の可否を検討したり、複数の政策代替案の中から適切な政策を選択する際に有効なものであり、政策の効果を予測して評価するものとされている。
事前評価については、これまで新規に開始しようとする事業等のうち、国民生活や社会経済に与える影響が特に大きいものや多額の財政支出を伴うもので、いったん開始すると中止が困難となったり、途中で見直しを行ったのでは著しく非効率になるものについて、その実施が強く求められてきた。本法制においては、このような事業等について、事前評価の実施を義務付けていくことが適当である。
また、上記以外の新規政策についても、的確な意思決定を行うためには、事前評価が実施されることが望ましいが、一方、事前の段階では、政策の効果について実績を基に評価を行うことができず、推計等に基づく効果の予測が必要となることから、事前評価を適切かつ円滑に実施するためには、評価に関する一定の取組を通じて評価の手法がある程度確立していることが必要となる。このため、現状においては、一律に事前の評価を義務付けることは困難であると考えられる。
したがって、本法制においては、事前評価について義務付けを行うものと努力義務を課すものとに区分して規定することが適当である。 |
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<事前評価の義務付け> |
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事前評価の実施が強く求められている事業等としては、現段階では、公共事業、研究開発、ODA事業を挙げることができ、特に公共事業については、平成12年8月の与党合意において、公共事業の評価システムも含めた法制化が求められている。また、これらの分野においては、現実にも、政府としての明確な方針の下に、評価に関する一定の取組が既に行われている。
ガイドライン案においても、事前評価を中心とした評価の方式である「事業評価」を実施する対象としてこれら三つの分野が掲げられており、これらについては、「既存の評価の取組を踏まえつつ、評価内容の充実、評価の透明性の向上など評価の取組の一層の改善・充実を図る」こととされている。
したがって、本法制においては、これらの三分野における事業等について、事前評価の確実な実施が担保されるような仕組みとすることが適当である。なお、これらの分野には、規模の小さなものや意思決定の際の裁量の幅が狭いものなども含まれていることから、すべての事業等について事前評価を義務付けることが適当かどうかについては、事業等の与える影響の程度、評価に要するコスト、事前評価の結果が意思決定に寄与する度合い等の面を勘案しながら、引き続き検討が必要である。
いずれにせよ、具体的な規定の在り方については法文化する中で検討していく必要がある。
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<事前評価の努力義務> |
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ガイドライン案においては、上記以外の新規に開始しようとする事業等についても、事前評価を中心とした方式である事業評価の対象と位置付けられているものの、その実施に当たっては、可能なものから順次評価を行うもの、当面は評価の実施について検討を進めるものなど、段階的な導入を進めることとされている。
このため、本法制においては、事前評価の義務付けを行うもの以外のものについて、事前評価の実施に努めることとすることが適当である。
なお、これらのうち、社会経済情勢の変化等により事前評価の確実な実施が必要と認められるものが生じた場合については、公共事業等の三分野と同様の義務付けを行うことができるような仕組みを検討することも必要である。
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イ |
事後評価 |
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ガイドライン案においては、事後評価は、政策の改善・見直しや新たな政策の企画立案の際に有効なものであり、政策の効果について、実際の情報・データなどを用いて実証的に評価を行うものとされている。
事後評価については、行政改革会議最終報告において「従来、わが国の行政においては、法律の制定や予算の獲得等に重点が置かれ、その効果やその後の社会経済情勢の変化に基づき政策を積極的に見直すといった評価機能は軽視されがちであった。」、「政策は実施段階で常にその効果が点検され、不断の見直しや改善が加えられていくことが重要」であるとされているなど、その必要性・重要性が強調されており、本法制においても、政策全般について事後評価の実施を的確に推進していくことが可能となる仕組みとすることが適当である。
その際、政策をどのような範囲でとらえ、いつ、どのように評価を行うかといった個々の政策の具体的な評価の実施の在り方については、画一的な義務付けを行うのではなく、当該政策の企画立案を行う立場にあって、それぞれの政策の特性等を詳細に把握しており、かつ、問題点の所在、企画立案との関係等、評価の優先度等について的確に判断できると考えられる各行政機関が、自ら決定し、重点的・計画的に評価を実施していくことが効果的・効率的な評価を行う上で最も適切であると考えられる。また、政策評価に必要なデータの整備や評価手法の研究・開発等が必要な分野については、各行政機関において段階的な取組を行うことが適切であると考えられる。
これらのことから、本法制においては、それぞれの政策の具体的な評価の実施のあり方については、各行政機関がそれぞれ評価の実施計画を策定しそれに基づき実施していく仕組みとすることが適当である。
また、政策の前提となる諸条件の変化等社会経済情勢の変化等により政策の見直しが必要とされるものや一定期間を経過して事業等が未着手又は未了であるものについては政策評価を実施する必要性が高いことから、事後評価を実施すべきものと位置付けることが適当と考える(公共事業の再評価システムはこのような場合に該当するものである。)。
なお、事前評価には一定の制約があること(政策が決定される前の時点における評価であるため、政策の効果を予測して実施するものであり、本質的に将来予測の不確実性を伴うことが避けられず、情報・データの入手とその信頼性の確保が困難なものとなったり、政策が決定される前の限られた時間内に評価結果を出すことが求められること)から、事後評価は、事前評価の妥当性を何らかの形で検証するものであることが必要である。また、事前評価を検証した結果については、以後の事前評価の際に活用することにより、事前評価の精度を高めていくことが重要である。
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(2) |
評価手法 |
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政策評価の手法は、政策の効果を測定(予測)・分析し、効果を的確に把握するための重要なツールであり、政策評価を実施する上で重要な要素となるものである。
ガイドライン案においても、「各府省及び総務省は、評価に要するコスト等も勘案の上、評価の目的、評価対象の性質等に応じた適用可能で合理的な評価手法により政策評価を実施するものとする」とされており、その際、「まずは定量的な評価手法の開発を進めるよう努め、可能な限り具体的な指標・数値による定量的な評価手法を用いるよう努めること」とされている。
したがって、評価手法については、本法制において、政策評価を実施するに当たり、合理的な評価手法を適用すること及び定量的な評価手法の適用に努めるべきことを規定することが適当である。
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(3) |
第三者の活用 |
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ガイドライン案においては、各府省が自ら行う政策評価について、(ア)高度の専門性や実践的な知見が必要な場合、(イ)政策評価の実施に当たり客観性の確保や多様な意見の反映が強く求められるような場合に、必要に応じて学識経験者、民間等の第三者の活用を図るものとされている。
本法制においては、政策評価の過程で各行政機関が評価の客観性確保のために特に必要と認める場合にあっては、第三者の専門的知見やチェック機能等を活用することを、各行政機関に対し義務付けることが適当である。
その際、評価の客観性確保のための第三者の活用方法については、評価の対象とする政策の性質や評価の内容等に応じて、学識経験者からの個別の意見聴取や研究会、外部研究機関への委託による調査等、様々なものが考えられ、必要となるコスト等も含めて勘案する必要があることを踏まえて、法文化を検討する必要がある。
なお、第三者の活用に関しては、その一環として各行政機関に審議会等を新たに設置することについて本法制において規定すべきとの指摘があるが、中央省庁等改革においては審議会等の整理合理化が図られていることや、客観性確保を目的とする行政内部の機関としては、二次評価を行う総務省がその役割を担っていることから、このための各行政機関への審議会等の新設には慎重な検討が必要である。
また、各行政機関とは異なる立場から政策評価を実施するために、第三者を評価の実施主体にするため各行政機関に第三者機関を設置すべきとの指摘があるが、政策評価制度は、各行政機関が自らその政策について評価を行うものであること、及び、既に各行政機関とは異なる立場から評価を行う機関としては、行政内部に総務省、外部には会計検査院があることから、各行政機関に評価の実施主体としての第三者機関を設けることは本制度になじまないものと考える。
さらに、総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会の機能強化を図り、各行政機関に対して直接調査、勧告等ができるようにすべきとの指摘があるが、このことについては政府の全政策に関して特定の機関に権限が集中することを懸念する意見もあることに留意する必要がある。
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(4) |
資料提供等の協力 |
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現在、各行政機関は政策の企画立案(政策の評価も含め)を行うにあたり、必要に応じて情報・データを関係行政機関、関係地方公共団体その他の関係者から収集しているが、この際、特に必要とする場合には各個別法で調査権や資料要求権等の強い権限が手当てされており、それ以外の場合においては、通常の事務執行を通じて、若しくは相手方の任意の協力による提供等を通じて情報収集を行っている。またこれとは別に、補助事業については「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」において報告徴収の権限が別途規定され、必要な情報を収集することができるようになっている。
今後本法制の下で各行政機関が政策評価を実施していくに当たっては、政策の効果等に関して各種の情報・データが新たに必要となると考えられるが、現段階においては、政策評価の実施方法等に関する蓄積が少なく、どの程度の情報収集等がどこまで必要なのかについて必ずしも明瞭とはなっていない。
このため、各行政機関における政策評価のための情報収集について、相手方に受忍義務を課すような強い権限が必要か否かを現段階において判断することは早計であると考えるが、既存の情報収集手段を活用しながら、その他必要に応じて、関係行政機関、関係地方公共団体、その他の関係者に対して協力を求め、資料提供等を受けるための何らかの仕組みは必要とも考えられところであり、この点の本法制における取扱いについては、既存の法制における資料提出要求等の仕組みとの権衡等も考慮し、法文化する中で引き続き検討していく必要がある。
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7 |
政策評価の基本方針、実施方針及び実施計画の策定及び公表 |
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政策評価制度の実効性を高めるとともに、これに対する国民の信頼を一層向上させるためには、各行政機関における本法制を受けた政策評価への取組について、ある程度標準的なものとすることにより、制度の全政府的な運用を確保するとともに、政策評価の効果的・効率的な実施を確保することが必要である。
平成13年1月から導入される政策評価制度の枠組みにおいては、「政策評価に関する標準的ガイドライン」を指針として、各行政機関において「実施要領」及び「各年度の政策評価の計画的な実施に係る具体的な運営の方針」を策定する仕組みとなっており、このような仕組みを本法制に位置付けることが適当である。
具体的には、政府全体の基本方針に基づき、各行政機関において、政策評価への取組方法を実施方針(ガイドライン案における「実施要領」を想定)として策定し、さらに、事後評価の具体的な進め方を実施計画(ガイドライン案における「運営の方針」を想定)として策定することが適当である。
また、政府全体及び各行政機関において政策評価をどのように進めていくかについては、国民に対して明らかにする必要があるため、本法制においては、上記の基本方針、実施方針及び実施計画を策定した際には、速やかに公表することとすることが適当である。
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(1) |
政府全体における政策評価の基本方針 |
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政策評価制度は、各行政機関がその政策について自ら評価を行うことを基本とした仕組みとなっているが、全政府的な共通の制度として運営されるものとするため、各行政機関における政策評価への取組について、政府全体である程度標準的なものとするための措置を講ずる必要がある。このため、政策評価に関し、政府全体における基本的な方針を策定し、それに基づいて各行政機関がそれぞれの取組を確立するという仕組みとすることが適当である。平成13年1月から導入される政策評価制度の枠組みでも、全政府的レベルで標準的ガイドラインが策定され、それを指針として各府省が政策評価に関する実施要領を策定することとなっている。
したがって、本法制においては、各行政機関がそれぞれ政策評価への取組を推進するための指針となる政策評価に関する基本方針を策定・公表する仕組みとすることが適当である。 |
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(2) |
各行政機関における政策評価の実施方針 |
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前述のとおり、各行政機関における政策評価への取組については、ある程度標準的なものとするための措置を講ずることが必要であるが、各行政機関が所掌する政策は極めて多様であることを考えると、各行政機関における政策評価への具体的な取組の画一化まで行うことは適当でない。各行政機関において政策評価にどのように取り組んでいくかについては、政策の企画立案を行う立場にあり、政策の特性等を最も詳細に把握している各行政機関が、政府全体の基本方針に基づき、所掌する政策の特性等に応じて自ら具体化する仕組みとすることが適当である。
そこで、本法制においては、政府全体における基本方針に基づき、各行政機関がそれぞれ当該機関における政策評価への取組方法を実施方針として策定し、公表する仕組みとすることが適当である。
実施方針においては、当該行政機関が、どのように政策評価に取り組んでいくかを明らかにする必要がある。そのため、具体的には、 |
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(ア) |
どのような実施体制で政策評価に取り組むか |
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(イ) |
どのような方法で事前評価及び事後評価を実施するか(評価の観点、手法、ガイドライン案で提示された評価の方式等) |
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(ウ) |
どのように評価の客観性を確保するか(第三者の活用等) |
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(エ) |
評価した結果をどのように取り扱うか(結果の公表、政策の企画立案への反映等) |
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等について規定することが考えられる。 |
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(3) |
各行政機関における政策評価の実施計画 |
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政策全般について実施する事後評価については、その効果的・効率的な実施のため、政府全体における政策評価の基本方針及び各行政機関における実施方針に基づき、各行政機関において具体的な実施計画を策定する仕組みとすることが適当である。
実施計画においては、政策評価の計画的な実施を確保するため、中期的な見通しを立てるとともに、各年度において1年間当該機関がどのように政策評価を展開するかについても明らかにする必要がある。また、試行的実施から始めて段階的に評価に取り組んでいく必要がある分野については、そのスケジュール等についても明らかにする必要がある。このような要請に応えるため、本法制においては、計画期間自体は、例えば5年程度の中期的なものとし、政策評価を行う政策分野を掲げる一方、年度ごとに計画を具体化するため、毎年度改定していく仕組みとすることが適当である。
実施計画に盛り込む事項としては、次のようなものが考えられる。 |
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(ア)
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政策評価の対象となる政策分野(=当該機関が所掌する政策分野) |
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(イ) |
当該年度において政策評価を実施する政策及びその実施方法(評価の方式、評価基準等) |
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(ウ) |
試行的実施から段階的に評価に取り組む場合の実施スケジュール |
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その際、大きな制度改正を伴うような政策の企画立案の際には政策評価の実施が求められるが、そのようなものについて、政策評価を確実に実施することが実施計画の中で明らかになるようにすることも必要である。 |
9 |
政策評価の質の向上を図るための措置等 |
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政策評価を実施していくに当たっては、継続的に政策評価の質を高め、政策評価の円滑かつ着実な実施を図るための取組や、国民が広く政策評価に関する情報を入手することを容易にし国民に対する説明責任を徹底していくための取組を政府の責務として進めていく必要がある。 |
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(1) |
評価手法の調査研究 |
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評価手法がある程度確立している分野は限られており、政策評価の質の向上を図るために、定量的な手法をはじめとした、評価手法の調査研究を継続的に進めていく必要がある。
ガイドライン案においても、この点に関して、 |
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現状では、評価手法を用いた結果の誤差の程度など評価手法の信頼性や精度についての情報が不足しており、このような課題について、外国における実施例を含めて調査研究を行い、その情報の提供に努めることが必要 |
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類似事業間における評価指標や評価手法の共通化について調査研究を行うことも重要 |
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● |
評価手法の開発に当たっては、理論と実務の両面からのアプローチが必要であり、各府省及び総務省が、外部研究機関の協力も得ながら開発を進めることも重要 |
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との指摘がなされている。また、事前評価を中心とした方式である事業評価の実施に当たっては、評価手法が確立している分野がまだ限られていること、技術的に難しい分野があることなどから、分野別に段階的な導入を進めることとされており、その内容として、すぐに評価を実施できないものについては、評価手法に関する調査研究等を進めていくこととされている。
本法制においては、政府の責務として、各行政機関相互の連携の下で評価手法の調査研究に努めるよう規定することが適当である。 |
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(2) |
人材の養成及び確保 |
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政策評価の質の向上を図るためには、評価手法の調査研究を進めるとともに、政策評価を担当する人材の養成及び確保を図っていくことが重要である。ガイドライン案ではこの点に関して、総務省は、各府省の協力を得て、政策評価を担当する人材を養成・確保するため、 |
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評価の分野における官民交流 |
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政策評価担当職員の人事交流 |
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行政内外からの有能な人材を養成・確保する仕組み |
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政策評価担当職員に対する体系的かつ継続的な研修の実施 |
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等の方策を推進するものとする、としている。
本法制においては、これらの方策の推進に取り組むことを政府の責務として規定することが適当である。 |
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(3) |
情報の共有化の推進 |
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各行政機関が政策評価を行うに際し、評価の対象とする政策の性質や評価の内容等によっては、用いるデータや手法が共通する場合がある。政策評価の円滑な実施と質の向上のためには、個々の行政機関が政策評価や評価手法の研究を通じて集めた情報・データが、各行政機関の間で共有され、活用されることが重要である。
そのため、本法制においては、政府の責務として、政策評価に関する情報・データの行政機関間での流通を促進するために必要な措置を講じることについて規定することが適当である。
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(4) |
所在情報の整備 |
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国民に対する説明責任の徹底を図るためには、国民が評価に関する情報を広く容易に入手できるような環境を整備することも重要である。この点に関してガイドライン案においては、総務省は、各行政機関の協力を得て、各行政機関の評価結果等評価に関する情報の所在情報を国民が一元的、かつ、容易に検索できるクリアリング・ハウス機能の充実を図るものとする、とされている。
本法制においては、政策評価に関する所在情報の整備に取り組むことを、政府の責務として規定することが適当である。 |