「政策評価制度の法制化に関する研究会報告」の概要

 

 「政策評価制度の法制化に関する研究会」(座長:工藤敦夫元内閣法制局長官)は、総務庁長官の研究会として、政策評価制度の法制化に関する基本的な考え方や枠組み等政策評価法制に関する検討を行うことを目的に、平成12年9月の初会合以来、9回にわたり開催。
 本報告は、これまでの研究会における議論を整理し、取りまとめたものであり、政策評価制度に関する法制として整備すべき枠組みの方向を示したもの。

 

 法制化の基本的考え方
  (1)  基本的考え方
   
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 今回の法制化は、行政改革会議最終報告における指摘を踏まえ、政策評価を政策の大きなマネジメント・サイクルの中に制度化されたシステムとして組み込み、実施するものとして全政府的に導入される政策評価制度について、衆参両院の特別委員会における附帯決議、総理からの指示、さらには各方面からの要請を踏まえ、その実効性を高めるとともに、これに対する国民の信頼を一層向上させる観点から行うもの。
   
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  したがって、法制化に当たっては、「政策評価に関する標準的ガイドライン(案)」を基本としつつ、特に以下の3点に留意し、各行政機関の政策全般を対象とした政策評価制度の共通ルールを定めるものと位置付ける必要。
      (ア)  政策評価の実施を法律上明確に義務付けるとともに、その着実な実施を図ること
      (イ)  政策評価の客観性を確保すること
      (ウ)  政策評価に関する一連の情報の公表を義務付けること
   
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 なお、政策評価制度が新たに導入されるものであり、評価手法等が確立している分野はまだ限られていること等から、過度に画一的な制度とすることは適当でなく、継続的かつ着実な取組により政策評価の定着と質の向上を図っていく制度設計が必要。
  (2)  法の目的
     法律の目的として、政策評価制度が目指すものである以下の3つの目的を位置付けることが適当。
    (ア)  国民に対する説明責任を徹底すること
    (イ)  国民本位で質の高い行政を実現すること
    (ウ)  国民的視点に立った成果重視の行政への転換を図ること
         
 政策評価の定義等
  (1)  定義
     政策評価とは、(i)政策の企画立案に反映させることを目的に行われるものであること、(ii)必要性、効率性、有効性等の観点から政策の効果を予測、測定、分析することにより評価を行うものであること、という考え方を基本に規定していくことが適当。
  (2)  実施主体
     本法制における政策評価の実施主体としては、内閣の統轄の下に政策の企画立案を担当する各府省等とすることが適当。
         
 政策評価の実施
(1)  政策評価の実施の義務付け
   
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 各行政機関に、その政策全般について政策評価の実施を明確に義務付けることが適当。
   
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 なお、政策評価を効果的・効率的に実施していくため、重点的かつ計画的な取組が可能となる仕組みとすること、段階的な取組が可能となる仕組みとすることが適当。
  (2)  事前評価
   
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 国民生活や社会経済に与える影響が特に大きいもの、多額の財政支出を伴うもので、いったん開始すると中止が困難となるもの等、事前評価の実施が強く求められる事業として、公共事業、研究開発、ODAについて、事前評価の確実な実施が担保されるような仕組みとすることが適当。しかしながら、これらの分野には規模の小さいもの等もあり、すべての事業に義務付けることが適当であるかについては引き続き検討が必要。いずれにせよ、具体的な規定の在り方については法文化の中で検討していく必要。
   
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 上記以外のものについては、事前評価の努力義務を規定することが適当。
  (3)  事後評価
   
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 政策全般について事後評価の実施を的確に推進していくことが可能となる仕組みとすることが適当。その際、個々の政策の具体的な評価の実施の在り方については、各行政機関が実施計画(後述)を策定しそれに基づき実施していく仕組みとすることが適当。
   
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 社会経済情勢の変化等により政策の見直しが必要な場合、一定期間を経過して事業等が未着手・未了であるものについても事後評価を実施すべきものと位置付けることが適当(現行の公共事業の再評価システムはこれに該当)。
  (4)  第三者等の活用
     政策評価の過程において、評価の客観性確保のために特に必要と認める場合にあっては、第三者の専門的知見やチェック機能等を活用することを義務付けることが適当。
         
 評価書の作成・公表
   政策評価の結果について、書面(評価書)の作成・公表を義務付けることが適当。この評価書には、評価結果を外部からも検証できるよう、評価の過程を含めた情報も記載されている必要。
 なお、国民にわかりやすい形での公表も求められ、評価書の概要を作成、公表することも必要と考えられる。
         
 政策評価の結果の政策・予算への反映
  (1)  評価結果の政策の企画立案への反映
   
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 政策評価の結果を予算要求、制度の新設・改廃等の政策の企画立案へ適時適切に反映させること、そのために必要な措置を講ずることを規定することが適当。
   
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 評価結果の政策の企画立案への反映状況についての公表を義務付けることが適当。
  (2)  評価結果の予算への反映
     財政当局は、予算編成に当たり、政策評価の結果の適切な活用を図るよう努める趣旨の規定の整備を図ることが適当。評価結果と予算との関係については、予算の政府案決定を様々な要素を含めた総合判断により行う中で、重要な判断材料として評価結果を活用していくとの位置付けが適当。
         
 公表方法等
  (1)  公表方法
     評価結果(評価書)、評価結果の政策の企画立案への反映状況等について、国民にとって容易に入手できる方法で、かつ、速やかに分かりやすい形で公表する旨の規定を置くことが適当。
  (2)  国民からの意見の受け付け
     各行政機関が政策評価に関する外部からの意見・要望を受け付ける窓口を整備することを規定することが適当。
  (3)  国会への報告
     政府全体の評価結果及び政策への反映状況について取りまとめたものについて、国会へ報告することを規定することが適当。
         
 政策評価の基本方針、実施方針及び実施計画の策定・公表
 
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 各行政機関がそれぞれ政策評価への取組を推進するための指針となる基本方針を策定・公表することを規定することが適当。また、この基本方針に基づき、各行政機関がそれぞれ実施方針を策定・公表することを規定することが適当。
 
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 各行政機関における政策評価の効果的・効率的な実施のため、事後評価についての中期的な実施計画及び当該年度の具体的な実施計画を策定・公表することを規定することが適当。
         
 総務省の役割等
   政策評価の総合性や厳格な客観性を担保するために総務省が果たす役割等については、総務省設置法で必要な規定が手当てされているが、本法制が政策評価に関する一般法としての位置付けとなることから、本法制にこれらを位置付けることが適当。
         
 政策評価の質の向上を図るための措置等
   政策評価の質の向上等を図るため、評価手法の調査研究、政策評価を担当する人材の養成・確保、各行政機関間の情報の共有化、政策評価に関する所在情報の整備について、政府の責務として規定することが適当。

 


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