〔監察の目的・背景事情等〕 |
○ |
本監察は、補助金等の執行の適正化及び透明性の確保並びに補助事業の適正かつ効果的な実施を図る観点から、民間団体等が実施する施設・設備の整備、工事契約等の事務を伴う事業に対する補助金等のうち交付件数の多いもの等について、採択審査の実施状況、補助事業に係る契約事務の執行状況、補助事業の実施に係る国・地方公共団体の監督・監査状況、補助金等の交付決定概況等の公表状況等を調査し、関係行政の改善に資するため実施 |
○ |
調査した補助金等のうち、文部省及び厚生省所管の補助金に係る不適正交付事例については、既に平成10年11月18日に勧告 (補助金等に関する行政監察の結果に基づく勧告(第1次)) |
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〔調査対象機関等〕 |
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調査対象機関: |
科学技術庁、法務省、文部省、厚生省、農林水産省、労働省、建設省、
都道府県、市町村、法人(更生保護法人、学校法人、社会福祉法人、医療法人、土地改良区、職業訓練法人、市街地再開発組合、土地区画整理組合)等 |
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○ |
調査対象補助金等 |
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7省庁21目 |
(科学技術庁(種子島周辺漁業対策事業費補助金)、法務省(更生保護施設整備費補助金)、文部省(私立学校施設整備費補助金等3補助金)、厚生省(社会福祉施設等施設整備費補助金等5補助金)、農林水産省(かんがい排水事業費補助等7補助金)、労働省(職業能力開発校設備整備費等補助金)、建設省(市街地再開発事業費補助等3補助金等) |
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〔勧告の概要〕 |
1 |
採択審査の適正化等 |
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(1) |
採択審査の適正化 |
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○ |
補助金交付要綱等において、施設の整備に要する費用のうち、補助対象となるものの範囲が明確でないため、自転車駐車場の整備に要する費用が、補助対象となるか否かにつき取扱いが区々となっている例あり(建設省:市街地再開発事業費補助、調査対象4か所) |
○ |
補助採択に当たり、施設の利用見込みを的確に把握していないことから、定員20人の生活訓練施設の入所者数が5人であるなど採択後の利用率が低く、補助事業で整備した施設が効果的に利用されていない例あり(厚生省:保健衛生施設等施設整備費補助金、調査対象18か所中5か所) |
○ |
補助採択に当たり、事業者の繰越金等の程度が判断要素の一つとされているものの、これによる自己負担能力を十分勘案した審査が行われていないため、採択・不採択の状況が、
事業を実施するための自己資金の程度からみて、区々となっている例あり(厚生省:社会福祉施設等設備整備費補助金(業務省力化設備整備)、調査対象8か所) |
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厚生省及び建設省は、補助事業に係る採択審査の適正化を図る観点から、次の措置を講ずることが必要
1. |
交付要綱等において、施設の整備に要する費用のうち、補助対象となるものの範囲を明確にすること。
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(建設省:市街地再開発事業費補助)
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2. |
補助事業の採択に当たり、施設の利用見込みを的確に把握し、利用が十分に見込まれるものを採択するよう厳正な審査を行うこと。
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(厚生省:保健衛生施設等施設整備費補助金)
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3. |
補助事業の採択に当たり、自己負担能力が判断要素の一つとされている場合には、これを十分勘案した審査を行うこと。
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(厚生省:社会福祉施設等施設整備費補助金)
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(2) |
交付決定の適正化 |
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○ |
補助金額の算定のための基準単価の適用方法が交付要綱等で明確にされていないため、都道府県により基準単価の適用が区々となっており、それぞれで補助金額が異なっている例あり(厚生省:社会福祉施設等施設整備費補助金、調査対象17か所) |
○ |
補助金額に算入される工事事務費(設計監理料)の範囲について、交付要綱等の規定内容が明確にされておらず、二通りの解釈が可能となっているため、設計監理料の算入範囲を一定限度にとどめているものがある一方、設計監理料を全額補助対象経費に算入しているものがみられ、両者で補助金額が異なっている例あり(厚生省:社会福祉施設等施設整備費補助金、調査対象4か所) |
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厚生省は、補助金の交付決定の適正化を図る観点から、次の措置を講ずることが必要
1. |
交付要綱等において、補助単価の具体的な適用方法に係る規定の整備を図ること。 |
2. |
補助対象となる工事事務費(設計監理料)の算入方法に係る交付要綱等の規定内容を明確なものにすること。 |
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(厚生省:社会福祉施設等施設整備費補助金)
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2 |
補助事業に係る契約の適正化 |
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○ |
交付要綱等に競争入札を原則とする等の規定を置いておらず、又は、指導が徹底していないことから、組合(市街地再開発組合、土地区画整理組合)におけるコンサルタント業務や工事に関する競争入札実施の範囲が限定されたものとなっているなどの例あり(建設省:市街地再開発事業費補助−調査対象46契約中11契約、土地区画整理事業費補助−調査対象90契約中5契約) |
○ |
広く市販されていない設備の購入等において認められている随意契約を行う場合に踏むべき適正な手続を交付要綱等に定めていないことから、見積り合わせを行わずに随意契約を行っている例あり(労働省:職業能力開発校設備整備費等補助金、調査対象25契約中9契約) |
○ |
土地改良区の監事が役員となっている建設会社に工事を請け負わせており補助対象団体がその規約・規程における契約先にかかわる定めを遵守していない例等あり(農林水産省:かんがい排水事業費補助・農村総合整備事業費補助、調査対象19改良区中2改良区) |
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農林水産省、労働省及び建設省は、補助事業に係る契約の適正化を図る観点から、次の措置を講ずることが必要
1. |
交付要綱等に競争入札を原則とする等の規定を置くこと、又は、規定を遵守するよう指導を徹底することにより、競争性の確保を図ること。 |
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(建設省:市街地再開発事業費補助、土地区画整理事業費補助)
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2. |
随意契約を行う場合においてよるべき契約の適正な手続を交付要綱等に明記すること。 |
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(労働省:職業能力開発校設備整備費等補助金)
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3. |
補助対象団体の契約に係る規約・規程を遵守するよう指導の強化を図ること。 |
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(農林水産省:かんがい排水事業費補助、農村総合整備事業費補助)
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3 |
事業実施後の監査の徹底 |
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| 補助事業により取得した財産については、補助金等適正化法第22条により、各省庁の承認を受けないで補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、担保に供することなどが禁止
各省庁は補助金等適正化法第23条第1項に基づき、また、都道府県等は条例・規則に基づき、各々必要がある場合には、補助事業者等に対して立入検査等(以下「補助金等監査」という。)を行うことが可能
また、都道府県等においては、法人・施設の設立・設置根拠法等に基づき、法人又は法人が設置する施設に対する監査・検査(以下「法人・施設監査」という。)をも実施
都道府県等においては、補助金等監査を担当する部門と法人・施設監査を担当する部門とは同一の部又は課となっているのが一般的 |
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○ |
都道府県等において定期的に行われている法人・施設監査の実施の際に、補助事業により整備された施設・設備の補助目的に沿った適正な使用の有無等の確認は実施されず
間接補助事業で整備した施設・設備に根抵当権を設定している例や補助金の交付の目的に反して使用している例あり(厚生省:保健衛生施設等施設整備費補助金及び保健衛生施設等設備整備費補助金−調査対象33か所中2か所、労働省:職業能力開発校設備整備費等補助金−調査対象9か所中2か所)
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厚生省及び労働省は、補助事業の適正な執行を確保する観点から、次の措置を講ずることが必要
・ |
都道府県等において、補助金等監査を担当する部又は課と法人・施設監査を担当する部又は課が同一の場合には、法人・施設監査の中で、補助事業で整備された施設・設備の補助目的に沿った適正な使用の有無等について適切な把握を行うよう都道府県等に要請すること。 |
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(厚生省:保健衛生施設等施設整備費補助金、保健衛生施設等設備整備費補助金 |
労働省:職業能力開発校設備整備費等補助金) |
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4 |
透明性の確保 |
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各省庁は、「行政及び公務員に対する国民の信頼を回復するための新たな取組について」(平成8年12月19日事務次官等会議申合せ)に基づき、補助金等の透明性を確保するため、補助金等の交付決定概況一覧の公表について申合せ
また、第51回補助金等適正化中央連絡会議(平成9年1月17日開催)において、補助金等の透明性を確保するための方策として、交付決定概況一覧の公表及び補助事業等実績報告書の公開、閲覧を例示 |
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○ |
調査した補助金の中には、交付決定概況一覧の公表や補助事業等実績報告の公開、閲覧を行っていない例あり |
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・
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交付決定概況一覧の公表を行っていないもの(法務省本省) |
・ |
補助事業等実績報告の公開、閲覧を行っていないもの(科学技術庁本庁、法務省本省、厚生省本省、労働省本省、建設省本省) |
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関係省庁は、補助金等の透明性の確保の観点から、次の措置を講ずることが必要
1. |
交付決定概況一覧の公表を行うこと。(法務省) |
2. |
補助事業等実績報告の公開、閲覧を行うこと。(科学技術庁、法務省、厚生省、労働省、建設省)
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5 |
不適正交付事例 |
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○ |
5省庁所管の13補助金等について当庁が調査した 202件のうち5件が、民間団体に不適正交付(5件合計不適正補助額約 320万円、うち国庫補助額約
243万円) |
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(例) |
実際に購入していない事務用品を購入したとする事実と異なる実績報告を実施。しかし、県において、現地確認等を行っているものの、その際、実際の事業内容と実績報告の内容との照合等が十分でなく、補助金の額の確定・支払を実施(要返還等補助額約
117万円、うち国庫補助額約 104万円) |
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農林水産省及び建設省は、補助金等の適正かつ効率的な執行を確保する観点から、次の措置を講ずることが必要
1. |
補助金等が不適正に交付されているものについては、補助金等の適正な執行を確保するため、早急に補助金等の返還等厳格かつ適正な対応措置を採ること。 |
2. |
補助金等の適正な執行を確保するため、審査を厳正かつ的確に行うとともに、補助事業者等である都道府県等に対し、交付要綱等で定められた交付内容等に則して審査を厳正かつ的確に実施するよう指導すること。
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