《違法駐車、交通渋滞のない街づくりのために》
都市内駐車場に関する行政監察
<改善措置状況の概要>

 

 実地調査時期  平成8年4月〜7月
 勧告(依命通知)年月日  平成9年3月27日
 勧告(依命通知)先  建設省
 回答年月日  平成10年4月10日
 その後の改善措置状況の回答年月日  平成11年4月20日

 

  【監察の背景事情等】
 近年のモータリゼーションの進展は、駐車場の需要を飛躍的に増大させ、駐車需要と駐車施設の供給量との不均衡により、都市内の商業業務地区を中心に路上駐車が多発(東京都・大阪府内の平成7年瞬間路上駐車約43万台)。
   
 国は、平成3年に駐車場法(昭和32年法律第 106号)を改正し、駐車場整備地区の対象区域の拡大、同地区内における駐車場整備計画の策定の義務付け、附置義務対象建築物の床面積下限の引き下げ等を行い、また、特定交通安全施設等整備事業等の補助制度の創設等の措置により駐車場整備を推進。しかし、需要に見合った駐車場の整備が十分進んでいない。
   
このような状況を踏まえ、都市内の駐車場を計画的かつ効率的に整備していく観点から、駐車場行政の改善に資するために調査を実施。

 

主な勧告(依命通知)事項
建設省が講じた改善措置状況
駐車場整備の計画化・効率化
(1) 駐車場の計画的かつ効率的な整備
(勧告)
 駐車場法の趣旨を踏まえ、駐車場整備地区の指定及び見直し並びに整備計画の策定及びその見直しを的確に実施した上で、駐車場整備を進めるよう指導すること。
(説明)
 市町村は、駐車場法に基づき、商業地域等で自動車交通が著しくふくそうする地区を駐車場整備地区として都市計画に定めることができ、当該地区について、駐車場整備計画を策定。
 建設省は、人口10万人以上の都市について駐車場整備地区の指定を促進する方針。
 駐車場整備地区の指定や、商業地域等の用途変更に応じた指定の見直しが的確に行われておらず、駐車場整備計画の策定も進んでいない。

 

 

→1.  駐車場整備地区の指定及び見直しについては、平成10年2月に文書により、適切に駐車場整備地区の指定又は見直しの実施に努めるよう地方公共団体に周知。
 さらに、「平成10年度街路事業担当者会議」(平成10年5月20日)及び「平成10年度全国交通安全・駐車場整備担当者会議」(平成10年10月22日)においても、地方公共団体に周知。
 【改善状況】
 ・  勧告後、整備地区の指定を行った都市:浦和市等4都市(その他9都市において「駐車場整備計画調査」を実施し、地区指定を準備中。)
(平10.9末現在、以下同じ。)
 ・  勧告後、整備地区の見直しを行った地区(指摘対象20地区):台東区等4市4地区
2.
 駐車場整備計画の策定及び見直しについては、都市局街路課長通達「駐車場法に基づく諸施策の円滑な実施について」(平成10年2月12日付け建設省都街発第5号)(以下「課長通達」という。)により、駐車場整備地区における速やかな駐車場整備計画の策定・公表及び同計画の的確な見直しを行うよう地方公共団体を指導。
 さらに、上記担当者会議においても、地方公共団体を指導。
 【改善状況】
 ・  勧告後、整備計画を策定した地区(指摘対象19地区):半田市等4市5地区
 ・  勧告後、整備計画の見直しを行った地区(指摘対象10地区):横浜市及び岡山市の2地区
(2) 附置義務制度を活用した効率的な駐車施設の整備
(勧告)
1.  駐車場整備地区指定都市等、附置義務条例制定の必要性が高い都市から順次、附置義務条例を制定するよう働き掛けること。
(説明)
 地方公共団体は、駐車場法第20条に基づき、駐車場整備地区内又は商業地域等において、延べ面積が 2,000m2以上の建築物の新増築に際し、条例(附置義務条例)により、床面積に応じた駐車施設の附置の義務付けが可能。
 建設省は、駐車場整備地区指定都市等駐車需要の高い都市を中心に条例制定を要請。
 附置義務条例の制定の進捗が不十分。

 

 駐車場整備地区を指定している都市などの自動車交通のふくそうが著 しく駐車場整備の必要性が顕在化している都市においては、条例の制定に努めるよう文書により地方公共団体に要請。
 さらに、前述の担当者会議においても、地方公共団体に要請。
  【改善状況】
 
 駐車場整備地区指定都市のうち、勧告後、附置義務条例を制定した 都市:浦和市等3都市(その他5都市において制定準備中。)
(勧告)
2.  附置義務基準面積の引下げ、足切り制度の廃止及び荷捌き施設の附置の規定化を行っていない地方公共団体に対し、条例改正を行い、法改正等の趣旨に即したものとするよう働き掛けること。
(説明)
 平成3年の駐車場法改正により、附置義務制度の対象建築物の延べ面積(基準面積)を 3,000m2以上から 2,000m2以上に拡大。
 平成2年6月の標準駐車場条例の改正により、附置を義務付ける駐車施設の規模の算定に当たって、従来は基準面積を超える部分の床面積を対象としていたものを床面積全体を対象とすることに変更(「足切り制度」の廃止。)。
 平成6年1月の標準駐車場条例改正により、荷捌きのための駐車施設の附置義務規定を新設。
 平成3年の駐車場法改正等に即した附置義務条例の改正が行われておらず、駐車施設の附置の進捗が不十分。
 
 基準面積を引上げ:調査対象25市中15市(60%)
 足切り制度を廃止:調査対象25市中16市(64%)
 荷捌施設についての附置義務規定:柏市等4市
   

 

 附置義務基準面積の引下げ、足切り制度の廃止及び各都市の荷捌きの駐車需要等を勘案の上での荷捌き施設の附置の規定化について、文書により地方公共団体に要請。
 さらに、前述の担当者会議においても、地方公共団体に要請。
  【改善状況】
 
 勧告後、基準面積の引下げを行った都市(指摘対象10市):浦和市(その他1都市において引下げ準備中。)
 勧告後、足切り制度の廃止を行った都市(指摘対象9市):浦和市、草加市、大阪市(その他1都市において廃止準備中。)
 勧告後、荷捌施設の附置義務を規定した都市:福岡市等14都市(合計18都市)
既存駐車場の有効利用の促進
(勧告)
1.  駐車場案内システム導入の必要性の高い地区を対象に、導入のための調査を実施し、順次整備を行うよう指導すること。
(説明)
 建設省は、既存駐車場の場所、駐車場の満車、空車情報等を道路の主要箇所に表示する駐車場案内システムの整備に係る補助制度を昭和62年度に創設。
 駐車場案内システムの整備が進んでおらず、既存駐車場の有効活用が不十分。
 
 人口30万人以上都市の同システムの整備状況:64都市中23都市(36%)

 

 「街路事業担当者会議」(平成9年4月、平成10年5月)において、駐車場案内システムの整備の推進を図るよう地方公共団体を指導。
 また、「全国駐車場案内システム推進協議会」(平成9年10月、平成10年10月)及び「全国交通安全・駐車場整備担当者会議」(平成10年10月) において、駐車場案内システムについての現状、今後の方針等について地方公共団体等に周知。
 さらに、案内システムの整備の必要性が高い都市について、事業化に向け個別に調査・検討を行っているところであり、今後も駐車場案内システムの整備を促進。
  【改善状況】
 
 勧告後、人口30万人以上都市64都市のうち駐車場案内システムの整備を行った都市:藤沢市等10都市(合計33都市)
(勧告)
2.  駐車場案内システム整備事業において、対象とする地域並びに参画する駐車場数及び収容台数に関し、標準的な指針を策定すること。また、案内板表示方式について標準仕様を定めること。
(説明)
 建設省は、駐車場案内システムの機能を十分に発揮させるために必要な事業対象地域並びに参画する駐車場数及び収容台数についての指針を未作成。このため、収容台数が10台以下の駐車場が参画しているものがあるなど、同システムの利用効率が低い状況。
 また、案内板表示方式が区々となっており、利用者から分かりにくいとの意見。
   

 

 学識経験者、地方公共団体等を構成員とする「駐車場案内システムの利用促進検討委員会」を設置(平成10年12月)し、既存システムの利用状況等必要な調査・検討を行っており、平成11年5月には案内システムの標準的な指針及び案内板表示方式の標準仕様を取りまとめ、地方公共団体に周知する予定。
駐車場法に基づく届出制度の合理化
(勧告)
1.  駐車場設置届時における設備・構造基準についての審査を廃止するよう指導すること。また、届出の対象となる路外駐車場の定義を明確にすること。
(説明)
 都市計画区域内に面積が 500m2以上の有料の路外駐車場を設置する者は、駐車場法に基づき、その位置、構造、規模、設備等について、あらかじめ都道府県知事等に届け出が必要。
 駐車場設置の届出は、位置、構造、規模、設備等の審査を行うものではないにもかかわらず、全ての都道府県・市が届出時にこれらの審査を行っているため、届出の受理までに長期(27日〜338日)を要している。
 届出の対象となる路外駐車場の定義(「一般公共の用に供されるもの」)が明確ではないため、百貨店等の駐車場の取扱いが地方公共団体によって区々。
 
 調査対象24機関中、全て届出対象としているもの3、全て届出対象外としているもの4、一部のみを対象としているもの17

 

1.

 駐車場法第12条に規定される路外駐車場の設置の届出は、行政手続法第37条の趣旨に則して、届出時における構造、規模、設備等についての審査を廃止するよう平成10年2月の課長通達により地方公共団体を指導。
 さらに、前述の担当者会議においても、課長通達により地方公共団体を指導。
 この結果、課長通達発出以降、地方公共団体は駐車場設置届の届出時における設備・構造基準についての審査を廃止。

2.  届出対象となる路外駐車場の定義については、平成10年2月の課長通達により次のとおり明確化し、地方公共団体を指導。
 さらに、前述の担当者会議においても、地方公共団体に通達の内容を周知徹底。
(参考)
   「一般公共の用に供する」とは、不特定多数の者の直接の利用に供するものをいう。従って、百貨店等の駐車場でも、当該建物の利用者のみの利用に限定し、厳密に一般の利用を排除している場合以外は届出が必要。
  【改善状況】
   届出対象となる駐車場の定義の明確化に伴い、調査対象全てが平成10年2月の課長通達により適切に届出事務を実施。
(勧告)
2.  市町村長への権限委任を促進し、無届け駐車場、構造・設備基準に不適合な駐車場の把握、指導を徹底すること。
(説明)
 駐車場の設置届の受理等については、地方自治法により都道府県知事から市町村長に権限委任が可能。
 設置届出の事務を行う都道府県の事務体制が整っていないため、無届け駐車場や構造・設備基準の適合状況の把握、駐車場管理者に対する指導が不十分。届出制度の実効を挙げるためには、市町村長への権限委任の促進が必要。
 
 市町村長への権限委任状況:調査した12都府県中7県において委任

 

 路外駐車場の届出制度の実効を挙げるため、市町村の体制が整備されたと判断した場合には、順次、事務委任を促進するよう平成10年2月の課長通達により地方公共団体を指導。
 さらに、前述の担当者会議においても、平成10年2月の課長通達により地方公共団体を指導。
  【改善状況】
 
 勧告後、市町村長へ権限委任を行った都府県(指摘対象5都府県):岐阜県、大阪府(合計9府県)