女性労働に関する行政監察の勧告に伴う改善措置状況の概要

 

【調査の実施時期等】  
 1 実地調査時期 :  平成8年4月〜6月
 2 調査対象機関 :  労働省、都道府県、市町村、事業者、事業者団体等
   
【勧告日及び勧告先】  平成8年12月13日、労働省に対し勧告
   
【回答年月日】  平成9年9月22日
   
【その後の改善措置
 状況の回答年月日】
 平成11年7月8日
  【監察の背景事情】

 社会経済情勢の変化、女性の職業意識の高まり等を背景に女性雇用者が増加

 女性雇用者数
昭50
55
60
平2
 7
1,167 万人
1,354
1,548
1,834
2,048
( 100)
(116.0)
(132.6)
(157.2)
(175.5)
 女性の職業意識(総理府の世論調査)
昭59
平7
  「子供ができたら職業をやめ、大きくなったら再び職業をもつ方がよい」
 45.3%
 39.8%
  「子供ができても、ずっと職業を続ける方がよい」
20.1 
 32.5 
   
 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律(昭和47年法律第113 号、以下「均等法」という。)の実効性の確保が不十分であるとの指摘が各方面からあり、その見直しが重要な課題
   
 この監察は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保、女性労働者の労働条件の改善等を促進する観点から、均等法の施行状況、女子労働基準の適用状況、職業生活と家庭生活との両立支援対策の実施状況等について調査し、関係行政の改善に資するために実施

 

主な勧告事項等
関係省庁が講じた改善措置
均等法及び女子労働基準の見直し等
(勧告)

 募集・採用及び配置・昇進に係る均等法上の努力義務規定について、より実効性のあるものとする方向での見直しを行うとともに、労働基準法(昭和22年法律第49号)における母性保護規定を除く女子労働基準について、解消する方向で検討すること。
 また、「片面的な規制」について、男女の実質的な機会均等を確保する見地から合理的な理由がある場合を除き、これを解消する方向で検討すること。      

(説明)
 努力義務とされていることもあって、男性のみの募集・配置等がある。
 男性のみの募集がある企業
 高卒技術系33.8%、短大等卒技術系26.7%、大学卒技術系12.6%、高卒事務・営業系10.8%、短大等卒事務・営業系2.0 %、大卒事務・営業系9.8 %
 男性のみ配置している職種又は部署がある企業:62.8%
 企業における昇進の考え方:男女公平に昇進74.9%、 女性は一定レベル以上の昇進なし7.1 %
 女子労働基準が女性労働者の能力発揮、活用の上で支障
 女子労働基準による規制を理由とする男性のみ募集・配置がある企業:募集16.9%、配置28.9%  
 配置している女性労働者を活用する上でも支障があるとする企業:35.1%
 「片面的な規制」が、事実上、女性を補助的・定型的業務に固定化
 女性のみの募集がある企業:
  (募集区分)高卒事務・営業系43.1%、短大卒事務・営業系28.7%
  (募集職種)一般事務職48.1%、顧客等へのサービス職20.4%
 女性のみ配置している職種又は部署がある企業:28.0%
 先進諸外国では、法律で性による差別的取扱いを禁止。
1979年の女子差別撤廃条約の採択を契機に女性保護規定は廃止。
女性のみの募集、採用が全面的に認められる「片面的な規制」の国はない。
 均等法、労働基準法等関係法律を平成9年の第140 回通常国会において改正し、 以下のような所要の措置を講じた。
     
 均等法及び女子労働基準の見直し等については、以下のとおり措置した。
  1.  募集、採用、配置及び昇進に関する女性労働者に対する差別についての努力義務規定を禁止規定とする。
  2.  女性労働者に係る時間外・休日労働及び深夜業の規制を解消する。
  3.  「女性のみ」又は「女性優遇」の措置を原則として禁止する。
    (平成11年4月より施行)
セク・ハラ防止対策の実施状況
(勧告)

 セク・ハラ防止対策について、法的整備やガイドラインの策定を含め、その有効な方策の検討を進めること。 

(説明)
 セク・ハラ問題に関し、企業と女性労働者の意識との間にギャップがある企業ではセク・ハラが発生した場合、その処理に苦慮
   セク・ハラ防止対策がない企業:92.5%(うち、その必要性を感じていないとする企業74.7%)
   性に関する不快な経験がある女性労働者:労働省調査で23.5%、連合調査で62.7%
   今後、対応の必要性を認めている企業では、ガイドライン等の作成を要望
 婦人少年室へのセク・ハラの苦情・相談は急増(調査した12室:平5年104 件→平7年 203件)
 セク・ハラに該当するか否かの判断基準及びセク・ハラ問題への援助等に係る法的権限が明確になっておらず、婦人少年室の対応困難
 先進諸外国では、労働関係法等によりセク・ハラを規制する国が増加
アメリカ: ガイドライン策定(1980年)→公民権法違反
ドイツ : 第2次男女同権法にセク・ハラの定義、使用者の責任等を規定(1994年)
     
     
→○  セク・ハラ防止対策については、以下のとおり措置した。
 企業におけるセク・ハラ防止のための事業主の配慮義務を盛り込むとともに、事業主が配慮すべき具体的な措置の内容については、国が指針を策定する。
(平成11年4月より施行)
 これを受けて、平成10年3月13日に「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上配慮すべき事項についての指針」(平成10年労働省告示第20号)を策定
セク・ハラに係る事業主の配慮義務の具体的な措置内容
1.  事業主のセク・ハラ防止方針の明確化及びその周知・啓発
2.  相談・苦情への対応
3.  職場においてセク・ハラが生じた場合の迅速かつ適切な対応
   平成10年5月に、上記指針の内容と解説を掲載したパンフレットを20万部作成し、女性少年室が開催する集団説明会、セク・ハラセミナー等を通じて企業に配布し、周知を図った。

 

 

均等法における紛争解決機能の充実
(勧告)
 調停委員会について、開始要件を見直すなど、その有効活用を図る方策を検討すること。
(説明)
  調停委員会の開始要件が限定的(当事者双方の同意が必要等)であり、調停申請11事案のうち調停が実施されたものは1事案のみ
 公益事案(運輸、郵便、電気通信事業等)の労働関係調整法に基づく労働委員会調停は、当事者一方からの申請で調停を開始
     
     
 紛争解決機能の充実については、以下のとおり措置した。
  1.  調停制度について、紛争の当時者の一方からの申請により調停ができるようにする。
  2.  調停申請を理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止する。
(平成11年4月より施行)