健康保険遠隔地被保険者証の交付に係る被扶養者の要件緩和(概要)

《行政苦情救済推進会議の検討結果を踏まえたあっせん》

あっせん日: 平成11年1月28日
あっせん先: 厚生省

 総務庁行政監察局は、下記の行政相談を受け、行政苦情救済推進会議(座長:茂串 俊)に諮り、その意見を踏まえて、平成11年1月28日、厚生省に対し、改善を図るようあっせん。
 行政相談の申出要旨は、遠隔地の精神薄弱者更生施設に入所している姉を扶養する弟から、「姉の健康保険遠隔地被保険者証の交付を新潟県内の社会保険事務所に申請したところ、当初は、弟妹の場合であれば交付できるが、兄姉の場合は被扶養者の要件として生計維持のほかに同一世帯に属していることが必要であり、遠隔地の施設に入所しているのであれば、被扶養者の要件を満たしていることにならず、同被保険者証は交付できないと断られた。兄姉と弟妹で被扶養者の要件が異なっていることは納得できない。兄姉についても弟妹と同様の取扱いとしてほしい。」というもの(行政相談委員受付)。
 なお、本件と同趣旨の申出は沖縄県にもあり、両県における対応をみると、新潟県では被扶養者の施設入所について、当初は別居にあたるとの判断であったが、その後、これを一時的な別居状態にあるものとし、同一世帯要件を満たしているとして、同被保険者証を交付しているのに対し、沖縄県ではいかなる理由があっても施設入所の場合は別居と判断し、同一世帯要件を満たさないものとして交付していない。
 当庁のあっせんの内容は、行政苦情救済推進会議の意見を踏まえ、健康保険遠隔地被保険者証の交付に係る同一世帯要件に弾力的な運用を図り、その取扱いが統一的になされるよう必要な措置を講ずるとともに、各都道府県に対し適切な運用を指導するよう検討を求めるもの。

資 料

 健康保険法による被扶養者の要件及び範囲(第1条第2項)
被扶養者の要件 被扶養者の範囲
主として被保険者により生計を維持する者(第1号) 被保険者の直系尊属、配偶者(内縁関係の者も含む)、子、孫及び弟妹
被保険者と同一の世帯に属し主として被保険者により生計を維持する者(第2号) 被保険者の三親等内の親族(兄姉、伯叔父母、甥姪等)
被保険者の内縁の配偶者の父母及び子
 
 「同一世帯に属する」解釈(厚生省)
 厚生省では、「被扶養者となるためには、被保険者の直系尊属、配偶者、子、孫及び弟妹以外の者は、被保険者と同一の世帯に属していることを必要としているが、いかなる場合も別居していたら、被扶養者となれないか、また被扶養者の資格がなくなるかという点について、被保険者が工事現場へ出張した場合とか、あるいは入院した場合は、現実には別居であるが、なお住居を共にしていると解し、被扶養者になる取扱いがされているが、被保険者以外の者については、別居していたら他にいかなる事情があるとにかかわらず被扶養者となれない。」との解釈を示している。
 
 兄姉と弟妹で被扶養者の取扱いに違いがある背景
 兄弟姉妹間での取扱いの違いは、昭和48年の法改正により生じた。それ以前は、被保険者の弟妹及び孫も兄姉同様、被保険者と主たる生計維持のほかに同一世帯に属していることが必要とされていたが、勉学のために別居しなければならないような場合、被扶養者になれないという不合理な面があり、改善が強く要望されていた。そこで、同改正において、弟妹については、同一世帯要件が除かれ生計維持関係があれば、被保険者と別居していても差し支えないということになった。
 
 兄姉について同一世帯要件が設けられている理由(厚生省)
 被扶養者の範囲は、社会通念に照らせば直系尊属、配偶者、子の他に、特別な事情のある弟妹及び孫までであると考えられるとともに、これら以外の者である兄姉等三親等内の親族の者は、労働能力を有し、通常は業務に就き、報酬を得ていると考えられ、生計を被保険者により維持されているとは一般に考えられない場合が相当あると予測される。
 したがって、三親等内の親族を被扶養者として認定するに際しては、保険財政の安定を図る観点からも、生計維持要件を特に厳格に判定する必要があり、その審査を効率的に行い得るようにするため、同一世帯要件を付加している。