[総合評価] | |||
1 国の金属鉱業政策と金属鉱業事業団の位置付け | |||
国は、鉱物資源の安定供給の確保のため、探鉱調査、鉱山開発のための各種の助成制度、金属鉱業等鉱害対策特別措置法(昭和48年法律第26号)に基づく鉱害防止事業基金制度等を設け、金属鉱業事業団を通じ、実施している。 金属鉱業事業団の事業内容は、1)金属鉱物資源の探鉱促進のための地質構造調査、探鉱に必要な資金の供給、調査用船舶・施設の貸付け等、2)希少金属鉱産物の備蓄、3)鉱害防止のための鉱害防止事業基金の管理等となっている。 金属鉱業事業団がこれらの事業を実施するために必要な資金は、地質構造調査については大半が国からの委託費及び補助金により、海外探鉱資金出融資及び海外開発資金債務保証については政府出資金により賄われている。また、国内探鉱資金融資の原資の大半、希少金属鉱産物の備蓄資金調達のための金属鉱業債券の引受けには、財政投融資資金が投入されている。 金属鉱業事業団の資産の総額は829億円(平成8年度末現在)であり、その内訳をみると、探鉱資金融資等の投融資資産が250億円、希少金属備蓄等の事業資産が355億円、鉱害防止関係の基金・積立金資産が55億円などとなっている。 |
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2 金属鉱物資源の探鉱促進 | |||
(1) | 地質構造調査の実施状況とその成果 | ||
金属鉱業事業団は、平成8年度までに総額504億円の公的資金(委託費、補助金)を受け入れ、国内52地域、海外81地域で地質構造調査を実施してきた。 これにより、国内7地域の9鉱山、海外7地域の7鉱山が商業的生産に移行しているが、これらの鉱山のうち統計的に産出量が把握可能な鉱山の平成8年度における産出量をみると、国内4地域・4鉱山の国内産出量に占める割合は、鉛90.7パーセント、亜鉛70.1パーセント、金73.7パーセント、また、海外2地域・2鉱山の本邦法人海外産出量に占める割合は、鉛37.7パーセント、亜鉛32.7パーセントなどとなっており、地質構造調査は一定の成果を上げている。 |
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(2) | 探鉱資金融資業務等融資部門の運営状況 | ||
探鉱資金融資業務等融資部門においては、事業収入(国内探鉱資金融資、海外探鉱資金出融資、調査用船舶・施設の貸付けなどによる。)で国内探鉱資金融資の原資の大半を占める財政投融資借入金の利息などの事業費用は賄っているが、一般管理費の全体を賄うまでには至っていない。また、近年、事業収入は、事業規模の縮小に伴って減少している。 一方、金属鉱業事業団は、平成8年度において、約137億円の手元資金(資金の支出を伴わない減価償却費等の内部留保資金)を保有している。これらの手元資金の運用益(事業外収入)により事業収入では賄えていない一般管理費の不足を補っているが、近年、市中金利が低下する中で、事業外収入は急速に減少しており、平成4年度からは、毎年度、当期損失が発生している。 これらの手元資金の中には、事業規模が縮小してきた結果、その一部の減額又は取崩し(減価償却費、貸倒引当金等)が可能であり、他の事業資金に充当可能な資金的余剰(余裕金)が約37億円含まれている。 他方、金属鉱業事業団では、国内探鉱資金融資の原資の大半を財政投融資資金から調達している。平成8年度末現在の財政投融資資金借入残高は32億円となっているが、一方で上述のように調達コストがかからない余裕金が手元資金の約3割を占めており、また、財政投融資資金借入金利が手元資金の運用利回りよりも高いものとなっていることからみて、手元資金の有効活用の余地は大きい。このような状況を踏まえ、金属鉱業事業団では、平成10年度、11年度は財政投融資資金からの調達に代え、手元資金で融資を行っている。 今後とも、この余裕金について事業資金への充当を図るなど、手元資金の効率的な運用を図ることが課題である。 |
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3 希少金属鉱産物の備蓄 | |||
希少金属鉱産物は、我が国の産業に必須であり、かつ、供給構造が極めて脆弱であることから、金属鉱業事業団が国家備蓄(クロム、タングステン、モリブデン、ニッケル、コバルト、マンガン、バナジウムの7鉱種)を行っている。 平成8年度までに530億円の購入費等が投入され、32.8日分の備蓄が達成されている。しかし、国家備蓄目標42日分については、当面、新規の積み増しを見送る旨が平成9年12月26日に閣議決定され、9年度以降の新規積み増しが見送られている。 今後、毎年度、これまでの備蓄分に係る金属鉱業債券の利息に13億円、倉庫管理費等に2億円の計15億円の公的資金の継続的投入が不可避的な状況となっている。仮に備蓄目標42日分を達成する場合には、残る9.2日分の購入費85億円が必要となるほか、毎年度、金属鉱業債券の利息等に1.7億円の公的資金の上積みが必要と見込まれる。 |
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4 鉱害防止事業基金の管理 | |||
本基金は、使用を終了した鉱業施設の坑廃水処理事業費を永続的に賄うため、鉱業権者から拠出金を徴収して積み立てているものである。金属鉱業事業団は本基金の運用を行っており、坑廃水処理事業を行う指定鉱害防止事業機関(財団法人資源環境センター)に対して、本基金の運用益の範囲内で当該事業費を支払うこととされ、指定鉱害防止事業機関が当該事業を行う範囲内で鉱業権者の鉱害防止義務は免除されることとなる。 各鉱業権者からの拠出額は、それを年5パーセント程度で運用することによって、各鉱業施設の坑廃水処理事業に必要な費用の財源を得ることができる額(年間処理費の20倍程度)とされ、これによって必要な毎年の事業費が生み出される仕組みとなっている。 |
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(注) | 平成8年度末現在の基金残高は約23億円となっており、最終的には19年度までに約172億円の基金造成が予定されている。 | ||
しかし、本基金の運用利回りは、近年の低金利の状況もあって、5パーセントには遠く及んでおらず、運用益によって必要な事業のすべてを実施することは困難となっている。 このような状況を踏まえ、通商産業省では、平成10年7月に本基金の運用規制を緩和(運用先の拡大)しており、これを受けて、金属鉱業事業団は、大口定期での運用を主体としていた資産運用構成の見直しを行うこととしている。 今後、本基金の運用成績の向上に努めるとともに、その状況等を踏まえつつ本基金による安定的な坑廃水処理事業の在り方の検討が必要である。 |