1 | 国の資格制度 |
(1) | 資格審査事務の在り方の見直し、適正化 |
(2) | 資格要件、資格審査方法等の見直し、適正化 |
ア | 資格要件等の見直し | ||||||
資格制度において、資格者となり得る要件(以下「資格要件」という。)は、各資格の根拠法令等に規定されており、その設定状況をみると、試験合格、講習修了、一定の実務経験や年齢を必要とするなど多様なものとなっている。 また、試験合格や講習修了が必要とされている場合は、さらに、試験、講習を受けるための要件(以下「受験(受講)資格」という。)が法令等において規定されている。 特に試験は、資格者の知識・技能等を評価する合理的な方法として、280資格のうち159資格で採用されており、このうち受験資格が設けられていないものは46資格で、残り113資格においては、学歴(58資格)、実務経験(75資格)、年齢(30資格)などの受験資格が設けられている。また、講習は、131資格において行われており、このうち受講資格が設けられていないものは43資格で、残り88資格においては、学歴(44資格)、実務経験(61資格)、年齢(2資格)などの受講資格が設けられている。 |
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今回、これらの資格要件及び受験(受講)資格の設定状況について調査した結果、合理的な設定となっていないものなど、次のような状況がみられた。 | |||||||
1.
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資格要件が、類似する資格間で均衡を失しており、また、受験資格として、一定の学歴を設定する必要性が乏しいもの(2資格) | ||||||
2.
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資格要件又は受験資格として一定の実務経験を有することとされているが、i)法律に定められた資格要件以外に、法律の委任によらず、省令により別途の要件(実務経験)が付加されているもの(1資格)、ii)その代替措置として行われる講習を修了する方法も認められているが、当該講習の実施内容からみて、実務経験等について見直しが必要なもの(1資格)、iii)必要とされる実務経験年数が同種の資格間で異なっているもの(1資格)、iv)実務経験年数が過度に長期となっているもの(3資格) | ||||||
3.
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一定の資格を有する者の中から管理監督者たる資格者を選任することとされているものについて、選任する際の要件ではなく、選任の対象となる資格者の資格要件又は受験資格として実務経験が設けられているもの(8資格) | ||||||
4.
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同一の資格において、下位資格の取得方法によって上位資格の取得方法が異なり、上位資格の資格取得機会が制約されているもの(1資格) | ||||||
5.
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一の資格に複数の試験区分が設けられており、各試験の水準は、一定以上の学歴及び実務経験年数によって習得し得る程度の知識等とされているが、受験資格に年齢制限を設けているものと設けていないものがあり、また、同一水準の試験でも年齢制限を設けているものと設けていないものがあり、各受験資格が相違するもの(1資格) | ||||||
6.
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受験資格として、一定の資格者の下での実務補習、業務補助等を求めることにより、資格取得機会が必要以上に制限されるおそれのあるもの(2資格) | ||||||
7.
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公務員として特定の業務に一定期間従事した者に対して、所管の大臣等の認定により資格が付与される、又は資格取得のための試験(講習)の全部又は一部が免除される制度(以下「公務員特例制度」という。)において、その根拠及び認定基準が法令上明確となっていないものや、所管省庁において公務員特例制度により認定した者の数が明らかになっていないもの(6資格) | ||||||
したがって、関係省庁は、資格要件及び受験(受講)資格について、資格取得機会の拡大及び行政事務の合理化の観点から、次の措置を講じる必要がある。 | |||||||
1.
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受験(受講)資格として、一定の学歴を必要としているものについては、高度で専門的な知識や技術・経験を要するために特別の教育・訓練を必要とするものなど合理的な理由のあるものを除き、原則として廃止するよう検討すること。 | ||||||
(大蔵省、文部省、厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省、郵政省、労働省、建設省、自治省) | |||||||
2.
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資格要件又は受験(受講)資格として、一定の実務経験、実務補習、年齢等を必要としているものについて、明確で合理的な理由のないもの、必要以上に資格取得機会を制限するおそれのあるものなどについては、廃止又は実務経験年数の短縮化等について検討すること。 また、法律に定められた資格要件以外に、法律の委任によらず、省令により別途の要件を定めているものについては、その要件を廃止すること。 |
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(金融再生委員会、経済企画庁、科学技術庁、環境庁、国土庁、大蔵省、文部省、厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省、郵政省、労働省、建設省、自治省) | |||||||
また、関係省庁は、公務員特例制度の運営の適正化、透明化を図る観点から、次の措置を講じる必要がある。 | |||||||
1.
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公務員特例制度の根拠及び認定基準については、法令で明確に定めること。(法務省) | ||||||
2.
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公務員特例制度により試験(講習)の全部又は一部が免除された者の数については、一般の受験者等と同様、その数を明確にし、公表すること。(法務省、大蔵省、厚生省、労働省) | ||||||
イ | 資格審査の実施方法等の見直し、試験問題等の公表の推進 | ||||||
資格制度においては、資格者に求められる知識、技能等を評価する、又は修得させるための試験、講習等が行われており、これらの実施内容・方法については、各資格制度の根拠法令、実施主体の実施要領等により定められている。 今回、試験、講習の実施内容・方法、資格の付与方法について調査した結果、次のような状況がみられた。 |
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1.
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資格者として固有の業務がない、又は受験希望者が少ないなどのため、試験が全く実施されていない、又は継続して休止されているもの(2資格) | ||||||
2.
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数種類の出題内容の試験問題が繰り返し使用されているなど試験が形骸化しているもの(1資格) | ||||||
3.
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試験の実施主体は異なるものの、それぞれ一の試験機関に委託して同一の学科試験が実施されているが、実技試験の受験地が学科試験の合格地に限定されているもの(1資格) | ||||||
4.
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同一資格に係る同等の試験間で、学科試験合格者に対する免除措置のあるものとないものとになっているもの(1資格) | ||||||
5.
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試験全部免除者の技能検定は、随時、申請により行うこととされているが、申請受付時期を限定しているもの(1資格) | ||||||
6.
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試験会場が遠隔地にあり受験者に不便が生じているもの(10資格) | ||||||
7.
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受験定員を設けているため、受験できない者が生じているもの(1資格) | ||||||
8.
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試験において、特定の講習の修了者に対してのみ、試験の一部を免除する措置が講じられており、そのため一般の受験者との間で異なる取扱いとなっているもの(1資格) | ||||||
9.
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複数科目による試験が実施され、中には難易度が高い試験となっているものもあるが、再受験の際、既合格科目の免除措置が採られていないため、一度にすべての試験科目に合格しなければならないもの(6資格) | ||||||
10.
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同種の資格又は類似する資格の間で共通する試験科目について、試験科目の免除措置が採られていないもの(3資格) | ||||||
11.
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他の資格を有する者が受験する際に、当該資格者の知識・技能等に関連する試験科目について、免除措置が採られていないもの(1資格) | ||||||
12.
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関連する資格に係る各講習を一体的に実施できることとなっているが、講習実施者への周知等が十分ではないなどのため、一体的な講習が行われていないもの(2資格) | ||||||
13.
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国が指定するカリキュラムが実務の要請等に即していないため、養成施設において、指定カリキュラムの内容どおりの養成が行われていないもの又は困難となっているもの(2資格) | ||||||
14.
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試験合格等以外に特段の免許要件又は登録要件がないにもかかわらず、試験合格証等の交付のほか、別途の申請手続により、免許証(免状)又は登録証の交付を必要としているもの(4資格) | ||||||
15.
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免許申請において、障害者であること等を欠格事由としているが、その審査基準が明らかになっていないもの(7資格) | ||||||
また、試験が行われている 159資格について、試験問題の事後公表及び合否基準の公表の状況をみると、積極的に試験問題の事後公表を行っていないものが44資格(27.7パーセント)、合否基準の公表を行っていないものが 112資格(70.4パーセント)みられる。 | |||||||
したがって、関係省庁は、資格審査事務の適切な実施、公平性・透明性の確保及び受験者の負担軽減の観点から、次の措置を講じる必要がある。 | |||||||
1.
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試験が未実施となっている資格については、その必要性について検討し、その結果に基づき資格を廃止する、又は試験を実施すること。また、試験が継続して休止されている資格については、今後も受験希望者数の増加が見込めない場合には試験の統廃合を行うこと。(運輸省、労働省) | ||||||
2.
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試験の内容等が形骸化しているものについては、試験の廃止を含めた見直しを行うこと。(運輸省) | ||||||
3.
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受験者のニーズ等に対応して、受験定員、受験地、試験免除措置の適用及び受験申請の受付時期について見直しを行い、受験機会の拡大に努めること。(通商産業省、運輸省、労働省、建設省) | ||||||
4.
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試験において、特定の講習の修了者に対してのみ、試験の一部免除措置が採られているものについては、当該講習の見直しなど、公平な資格取得の機会を確保する観点から検討を行うこと。(建設省) | ||||||
5.
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資格者に求められる知識・技能等の評価を損なわない限りにおいて、再受験における既合格科目や同種の資格又は類似する資格若しくは既に取得されている他の資格の間で共通する試験科目等についての免除措置の積極的な導入等について検討すること。(厚生省、通商産業省、運輸省) | ||||||
6.
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関連する資格に係る各講習が一体的に実施することができるものについては、受講者のニーズ等を踏まえ、適当な場合は一体的な講習が実施されるよう講習実施者に周知すること。(労働省) | ||||||
7.
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養成施設のカリキュラムが実務の要請等に即していないものについては、カリキュラムの見直しを行い、実効あるものとすること。(厚生省、建設省) | ||||||
8.
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試験合格証等の交付のほか、別途、免許証(免状)又は登録証の交付申請を必要とするもので、試験合格等以外に特段の免許要件又は登録要件が設けられていないものについては、免許・登録の手続を廃止し、試験合格証等の交付による資格付与に移行することとし、免許証(免状)・登録証の交付が必要な場合には、試験合格証等の交付とこれらの交付を一元化することにより、別途の申請手続を不要とすること。(厚生省、通商産業省) | ||||||
9.
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障害者であること等を欠格事由としているもので、その審査基準が明らかになっていないものについては、必要以上に就業機会を制限することのないよう、審査基準の明確化を図ること。(労働省) | ||||||
10.
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資格者に求められる知識・技能等に対する評価の内容・レベルを明確にし、その透明化を図り、客観性を確保するため、試験問題の事後公表及び合否基準の公表を推進すること。
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ウ | 試験等手数料の適正化 | ||||||
資格制度における試験、講習、登録等の資格審査事務に係る経費については、その応益に対する費用負担の適正化を図ることとし、受験者等から試験手数料、講習手数料、登録手数料等を徴収し、補てんするものとなっている。また、資格審査事務の国から公益法人等への委託等により、これらの試験等手数料については、委託等法人が直接、徴収、収納するものが大半となってきている。 委託等事務又は推薦等事務を行う公益法人の試験等手数料については、公益法人の指導監督等に関する閣議決定において、1)対価を伴う公益事業については、事業の収支の均衡を図り、当該法人の健全な運営に必要な額以上の利益を生じないようにすること、2)委託等事務に係る手数料は委託等を行う官庁が決定すること及び3)推薦等事務に係る手数料は当該公益法人が過大な収益を得るようなものでないこととされている。 また、当庁の指定法人等行政監察結果に基づく勧告においては、委託等事務又は推薦等事務に係る手数料の設定・見直しについて、「手数料等の設定・見直しの基本的事項(積算方法、改訂方法など)を定めた基準を策定し公表するとともに、政省令料金及び認可料金について、業務量の推移、収支状況等を勘案し、的確な見直しを行うこと」を指摘している。 |
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今回、 280資格制度における試験等の501手数料について調査した結果、次のような状況がみられた。 手数料の決定方法をみると、国が政省令で定めているものが 246手数料(49.1パーセント)、事務実施団体からの申請に基づき、所管官庁が認可又は承認するものが85手数料(17.0パーセント)となっている。また、事務実施団体が独自に決定しているものが74手数料(14.8パーセント)となっており、この中には、所管省庁が決定することとされている委託等事務に係る手数料を実施団体が独自に決定しているものが52手数料(10.4パーセント)ある。 また、試験等手数料の設定・見直しの状況をみると、次のとおり、不適切となっているものが 253手数料みられた。 |
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1.
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明確な積算根拠に基づかず、手数料の額を設定しているもの | ||||||
2.
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手数料収入の超過により相当額の剰余金が生じているにもかかわらず、更に手数料を増額改定しているもの又は手数料の額を据え置いているもの (政省令で定める41手数料、認可・承認に係る4手数料) |
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3.
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実際には支出されていない経費の算入又は経費の過大な積算により、手数料の額を算出・設定しているもの (政省令で定める26手数料、認可・承認に係る1手数料) |
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4.
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受験(受講)者を過少に見込むなど的確な積算を行わずに手数料の額を算出・設定しているもの (政省令で定める25手数料、認可・承認に係る4手数料) |
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5.
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手数料の見直しを行った結果、算出額が現行額を下回ったにもかかわらず、手数料額を据え置いているもの (政省令で定める1手数料) |
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6.
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手数料の算出額と設定額に齟齬があるもの (政省令で定める4手数料、認可・承認に係る6手数料) |
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7.
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委託等法人が実施しているにもかかわらず、国等が直接事務を実施するものとして手数料の額を算出・設定しているもの (政省令で定める6手数料) |
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8.
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試験の免除措置により、一部の試験等を受験する者が大半であるにもかかわらず、これを勘案して手数料の額を算出・設定していないもの (政省令で定める3手数料) |
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9.
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受験(受講)者数や実施内容等が異なる試験(講習)の手数料を同額に設定しているもの又は登録審査に要する時間が異なる資格の登録手数料を同額に設定しているもの (政省令で定める21手数料、認可・承認に係る3手数料) |
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10.
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認可又は承認に係る手数料について、その審査基準が定められていないもの (認可・承認に係る16手数料) |
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11.
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委託等法人の会員企業の従業者とそれ以外の者の間で手数料の額に格差を設けているもの (認可・承認に係る6手数料) |
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12.
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認可を受けた手数料と異なる手数料又は他の経費を加えて手数料を徴収しているもの (政省令で定める1手数料、認可・承認に係る2手数料) |
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したがって、関係省庁は、試験等手数料の適正化及び透明化をる観点から、次の措置を講じる必要がある。 | |||||||
1.
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個別に指摘している手数料の設定・見直しが不適切になっているものについては、速やかに改善のための措置を講じること。
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2.
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委託等法人が独自に手数料を決定することとしているものについては、公益法人の指導監督等に関する閣議決定及びその趣旨に沿って所管官庁が決定すること。また、推薦等法人が決定する手数料については、過大な収益を得るようなものではないことを、所管官庁において十分確認すること。
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3.
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手数料の設定・見直しについては、指定法人等行政監察結果に基づく勧告において措置することとされている「手数料等の設定・見直しの基本的事項(積算方法、改訂方法など)を定めた基準を策定し公表するとともに、政省令料金及び認可料金について、業務量の推移、収支状況等を勘案し、的確な見直しを行うこと」の徹底を図るとともに、政省令で定めるもの及び認可・承認するものについては、事務実施団体における経費を基に設定する場合、過大な経費の算定による積算を防止し、健全な事務運営に必要な額以上の利益が生じないよう、具体的な審査基準を策定し、その適切な運用を図ること。
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エ | 申請手続等の簡素化 | ||||||
「申請負担軽減対策」(平成9年2月10日閣議決定)においては、行政庁に対する申請等に係る国民の負担を軽減することがきわめて重要であり、情報通信技術の飛躍的な発展をも踏まえ、許認可や補助金等に係る申請、届出又は諸種の統計調査等に際しての国民の負担の大幅な軽減を図るため、各省庁は、今世紀中に申請等に伴う国民の負担感を半減することを目標として、申請等に伴う手続の簡素化対策等に取り組むこととされている。 | |||||||
今回、資格制度に係る各種申請、届出、報告等について調査した結果、次のとおり、申請手続等の簡素化を図る余地のあるものがみられた。 | |||||||
1.
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免許申請等に際して、他の申請書類等で確認可能な事項について、別途書類を提出させているもの(12資格) | ||||||
2.
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免許申請等に際して、法令に規定がない、又は内容が形式的なものにとどまる書類を提出させているもの(6資格) | ||||||
3.
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受験申請に際して、受験資格等の審査に必要のない書類を提出させているもの(6資格) | ||||||
4.
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登録事項として必要不可欠とはいえない事項を登録させているもの(7資格) | ||||||
5.
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受験申請に際して、類似する資格では提出が不要とされているなど、必ずしも必要でない書類を提出させているもの(2資格) | ||||||
6.
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他の届出又は報告により把握可能な事項を、届出又は報告をさせているもの(42資格) | ||||||
7.
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行政上活用する機会が少ない事項について、届出をさせているもの(2資格) | ||||||
8.
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電子申請等により印鑑の使用が減少しているにもかかわらず、提出書類に押印する印鑑の印影をあらかじめ届出をさせているもの(1資格) | ||||||
9.
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免許証の交付手続において、交付を受ける者からの申請の要否等が交付機関により区々となっているもの(2資格) | ||||||
10.
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指定養成施設に、軽微な変更事項についても承認を求めているもの(1資格) | ||||||
11.
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免許申請等に際して、本人確認等のために戸籍謄(抄)本を提出させているが、住民票の写しの提出等で代替する余地があるもの(33資格) | ||||||
したがって、関係省庁は、資格制度に係る申請手続等について、申請者の負担軽減を図る観点から、指摘した事項について、次の措置を講じる必要がある。 | |||||||
1.
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申請書類等及びその記載事項については、資格審査に真に必要な最小限のものとし、その範囲(内容)を法令において明確に定めること。また、法令に定めのない申請書類等については、提出を求めることのないよう指導又は助言すること。
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||||||
2.
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届出・報告が重複して行われているもの又は行政上活用する機会が少ないものについては、廃止等の見直しを図ること。(大蔵省、厚生省、労働省) | ||||||
3.
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免許証の交付手続等の取扱いにおいて、申請手続が不要であることの徹底や郵送による交付の推進を図ること。(運輸省) | ||||||
4.
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指定養成施設に係る変更申請については、それを必要としない事項を拡大するとともに、変更申請が必要な場合でも認可、承認等から届出、報告等に緩和すること。(運輸省) | ||||||
5.
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本人確認等のために戸籍謄(抄)本を提出させているものについては、プライバシー保護の観点から、住民票の写しの提出等による代替に努めること。(科学技術庁、環境庁、厚生省、通商産業省) | ||||||
(3) | 資格者業務の範囲、競争制限的制約等の見直し | ||||||
ア | 資格者の業務範囲等の見直し | ||||||
資格制度については、第2臨調最終答申において、「資格制度は一度新設されると多くの関係者の利害関係が形成されるため、新設当時の背景事情が変化しても廃止はほとんど行われず、増加の一途をたどっている。このため、資格制度の新設に際しては、これを抑制する基本方針の下にその必要性について厳格な審査を行うとともに、既存の制度の見直しも積極的に行う」ことが指摘され、臨時行政改革推進審議会の「公的規制の緩和等に関する答申」(昭和63年12月1日)においても同趣旨の指摘が行われている。 しかし、近年において、法令等に基づく資格制度の創設は抑制傾向にあるものの、上記答申に沿った既存制度の見直しは必ずしも十分ではない。 |
|||||||
今回、資格者の業務範囲、業務内容、資格制度の根拠等について調査した結果、次のとおり、資格制度の見直しの余地のあるものがみられた。 | |||||||
1.
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資格者の業務範囲が限定されているため、資格に対する社会的需要が乏しいもの(1資格) | ||||||
2.
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資格制度の創設当時と背景事情が変化したことなどから、当時に比べ資格者が行う業務内容の有用性が乏しくなっているもの(1資格) | ||||||
3.
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資格者が行い得る行為が限定されているため、その有用性が十分活用されていないもの(1資格) | ||||||
4.
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国民の利便を図る上で、資格者の業務に関連・付随して他資格の業務の一部を行うことが必要となっているもの(1資格) | ||||||
5.
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特殊法人が、自らの業務に関係する資格の審査事務を制度創設以来一貫して実施しているものについて、i)その社会的評価が既に定着しているもの(8資格)、ii)その法令上の根拠、実施基準等が明らかでなく、また、資格審査の方法、資格者の業務内容等が民間の技能審査事業による資格と類似しているもの(1資格) | ||||||
したがって、関係省庁は、既存の資格制度について、社会経済情勢の変化、社会的需要の変化等に対応した整理合理化を図る観点から、次の措置を講じる必要がある。 | |||||||
1.
|
資格者の業務範囲が限定されているため、資格に対する社会的需要が乏しいものについては、その必要性を早急に検討し、資格制度の抜本的見直しを行うこと。(運輸省) | ||||||
2.
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創設時と背景事情が変化し、資格者が行う業務内容の有用性が乏しくなっているものについては、資格者業務の今日的在り方について検討を行うこと。(厚生省) | ||||||
3.
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資格者の業務範囲が限定されているため、その有用性が十分活用されていないもの又は資格者の業務に関連・付随して他資格の業務の一部を行うことが必要なものについては、社会的要求及び資格者等の業務実態を踏まえ、関連する他資格の業務との調整を図り、資格者の業務範囲の拡大を検討すること。また、これらの改善について一定の結論が得られたものについては、実施に向けた具体的措置を早急に講じること。(厚生省、運輸省) | ||||||
4.
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資格制度創設以来一貫して特殊法人が資格審査事務を実施している資格のうち、i)既に社会的評価が定着しているものについては、国の資格制度から特殊法人自らの資格制度への移行を検討すること、ii)法令上の根拠、実施基準等が明らかでないものについては、当該制度の設置、事務の実施主体や内容・基準を法律又はこれに基づく政省令において明確に定めること。また、業務内容等が類似する資格については、重複取得者の状況、試験内容の異同、受験者負担の程度等を勘案し、一の資格者が他の資格を取得しようとする場合には一部試験(講習)科目の免除措置の導入について検討すること。(経済企画庁、農林水産省、通商産業省) | ||||||
イ | 開業資格に係る競争制限的制約の見直し | ||||||
業務独占資格は、一定の規制を課すことにより、資格者の提供するサービスの質や安全性・信頼性を担保するものとなっているが、過度の規制は、資格者に対する社会的需要に対応できず、かえってサービスの質の低下を招いたり、業務を依頼する者の利便を損なうおそれがある。 | |||||||
今回、業務独占資格のうち、国民生活に密接に関連しているいわゆる「開業資格」と称される司法書士、土地家屋調査士、税理士、公認会計士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士及び行政書士の8資格制度に関して、資格者の開業及び業務活動に係る規制等の状況について調査した結果、次のような状況がみられた。 | |||||||
1.
|
事務所の設置に関する規制 | ||||||
事務所の設置については、資格が個人に対して与えられているものであり、一人の資格者が複数の事務所を設けることができることとすると、当該資格者による十分な対応ができず、無資格者により業務が実施されるおそれがあるとして、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士及び行政書士については各根拠となる法律又は法律に基づく省令により、また、弁理士については当該資格者団体の会則により、2以上の事務所を設けてはならないこととされている。 一方、公認会計士については、事務所の設置数は制限されておらず、また、海事代理士については、事務所を管轄する地方運輸局長の許可を得ることにより2以上の事務所を設置することができることとされている。 なお、税理士については、昭和55年の税理士法(昭和26年法律第 237号)の一部改正前においては、国税庁長官の許可により事務所の複数設置が認められており、この許可により現在も事務所を複数設置している例がある。 |
|||||||
2.
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補助者に関する規制 | ||||||
司法書士、土地家屋調査士については、それぞれ司法書士法施行規則(昭和53年法務省令第55号)、土地家屋調査士法施行規則(昭和54年法務省令第53号)により、その業務の補助をさせるため補助者を置くことができることとされ、一定人数以上の補助者を置く場合には、法務局長等の許可が必要とされていた。また、補助者を置いた場合や補助者に異動があった場合には、所属する司法書士会又は土地家屋調査士会を経由して法務局長等に届け出なければならないこととされていた。 このうち、補助者の人数制限については、公正・有効な競争の確保や合理性の観点から見直しが行われ、平成10年4月に上記の各省令が改正(平成10年10月1日施行)され撤廃された。しかし、補助者を置いた場合や補助者に異動があった場合には、所属する司法書士会又は土地家屋調査士会に届け出ること、届出を受けた司法書士会又は土地家屋調査士会はその旨を法務局長等に通知することとされた。 また、行政書士については、行政書士法施行規則(昭和26年総理府令第5号)により、特に必要がある場合に限り、その事務に関して補助者を置くことができることとされ、補助者を置いた場合や補助者に異動があった場合には、所属する行政書士会に届け出ることとされている。 しかし、これら3資格制度においては、いずれも法令上、補助者に関する明確な定義がなく、当庁の調査結果では、資格者の法定の業務に直接関連のない業務のみに従事する者を補助者として届け出ている例もみられた。 一方、税理士については、税理士法により、税理士業務を行うため使用人その他の従業者を使用するときは、税理士業務の適正な遂行に欠けるところのないよう監督しなければならないこととされているが、使用人等に関する人数制限、届出等の規制は設けられておらず、公認会計士、社会保険労務士、弁理士及び海事代理士については、法令上、使用人等に関する規定は設けられていない。 |
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3.
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報酬に関する規制 | ||||||
資格者業務を行うことにより収受できる報酬の基準等については、司法書士、土地家屋調査士、税理士、公認会計士及び社会保険労務士については、各根拠となる法律により、各資格者団体の会則で規定することとされ、これらの会則は、それぞれ主務大臣等の認可を受けなければならないこととされている。 しかし、加入が義務付けられている資格者団体の会則において報酬の基準等が定められると、各資格者の受ける報酬額が一律化し、資格者間の競争が促進されず、結果的に提供されるサービスの低下を招くおそれがある。このため、公正取引委員会は、土地家屋調査士会が会則に定める報酬額について、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)第8条第1項第1号に違反するおそれがある旨を日本土地家屋調査士会連合会に対し警告(平成9年10月9日)したほか、日本司法書士会連合会及び日本行政書士会連合会に対しても、報酬規定等についてはあくまでも基準額として適切に運用するよう要請(平成10年9月)した経緯がある。 なお、行政書士の報酬については、平成11年7月の行政書士法(昭和26年法律第4号)の一部改正により、日本行政書士会連合会及び行政書士会の会則から、行政書士の受ける報酬に関する規定が除外されたほか、弁理士についても、本年4月に弁理士の受ける謝金に関する規定を日本弁理士会の会則に記載すべき事項から除外する弁理士法(大正10年法律第 100号)の改正が行われた。 一方、海事代理士については、資格者団体への加入は義務付けられておらず、会則に報酬の基準を定めるものとはなっていない。 |
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4.
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広告に関する規制 | ||||||
資格者が業務を行うに当たって、専門とする分野や取扱実績等を適切にアピールすることは、資格者間の競争が促進されるとともに、業務を依頼する者にとって資格者を選択する際の利便につながる。 しかし、公認会計士については、公認会計士法(昭和23年法律第103号)により、称号及び専門とする業務を除くほか、その技能又は経験に関する広告をしてはならないとされ、社会保険労務士及び弁理士については、各資格者団体の会則において、品位を損ない、若しくはその良識を疑われるような広告・宣伝を行ってはならないとする規定を設けて、自主規制が行われている。 また、司法書士、土地家屋調査士、税理士、海事代理士及び行政書士については、各根拠法令において広告に関する明文の規定はない。しかし、公正取引委員会は、「専門職業(司法書士・行政書士)の広告規制等に関する実態調査報告書」(平成10年9月)において、司法書士及び行政書士について、資格者の品位の保持又は不当不正な顧客誘致行為の禁止を根拠として広告・宣伝の自主規制が行われているが、一部において広告媒体、回数、記載項目等について一律に厳格な規制が行われていることに対し、行き過ぎた規制であり、早急に見直し、改善すべきである旨を指摘している。 |
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5.
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事務所の法人化に関する規制 | ||||||
司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、海事代理士及び行政書士については、事務所の法人化について、各根拠法令に明文の規定はなく、これまでその設置の例がみられない。 しかし、当庁の調査結果では、調査した各資格者及び資格者団体から、複数の同一資格者又は異なる資格者による法人化の要望があったほか、実際に複数の同一資格者が共同して業務を実施している実態もみられた。 一方、公認会計士については、公認会計士法により監査法人の設立が認められており、また、弁理士については、平成12年4月に弁理士が共同して設立する特許業務法人の設立を規定する弁理士法の改正が行われた。 |
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したがって、関係省庁は、開業資格者の自由な事業活動の展開及び多様なサービスの提供を図るため、競争制限的な運用のおそれがある事務所の設置、補助者、報酬及び広告に関する規制については、廃止を含めて見直しを行うとともに、複数資格者等による事務所の法人化に向けた検討を行う必要がある。
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2 | 民間技能審査事業認定制度 |
(1) | 認定制度の在り方の見直し | ||||||
民間団体等が行っている技能審査事業について、それが社会的に推奨すべきと認められる場合に、当該団体の申請に基づき、各省庁が認定を行う民間技能審査事業認定制度(以下「事業認定制度」という。)が設けられている。当該制度については、第2臨調最終答申等において、民間の技能審査事業に対する社会的評価は、本来実施団体の自己努力によって得るのが原則であり、事業認定制度の新設及び運用に当たっては、国が関与してまでも社会的に奨励する必要があるか否かの判断を厳格に行うとともに、社会的評価を得て定着した事業については逐次認定を外し、実施団体の自主性の発揮を促すことなどが提言されている。 しかし、事業認定制度及びこれに基づく認定事業の数は増加傾向にあり、平成12年4月1日現在、11省庁において26制度 173事業となっており、その大半は各省庁が所管する公益法人が行う技能審査事業を認定するものとなっている。 一方、公益法人の指導監督等に関する閣議決定の検査等の委託等の基準においては、各省庁が公益法人が独自に行っている技能審査事業を認定する必要がある場合、その透明化を図るため、1)当該認定が法律又はこれに基づく政令(当面の間、法律に基づく省令を含む。)に基づくものであること、2)認定された技能審査事業及びこれを行う公益法人は法令によって指定されていることなどの要件を満たすこととされている。また、これらの要件が満たされていないものについては、行政が関与していると認識されるような表現を公益法人が使用することを禁止することなどとされ、各省庁は、これに即して必要な措置を平成12年度末までに行うこととされている。 現在、各省庁では、「行政委託型法人等の総点検の推進について」(平成10年12月4日公益法人等の指導監督等に関する関係閣僚会議幹事会申合せ)に基づき、公益法人を中心に、その的確な見直しを図る等の観点から、認定事業についても総点検を実施している。 |
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今回、11省庁における事業認定制度の運営、見直し等の状況を調査した結果、次のような状況がみられた。 | |||||||
ア | 事業認定制度を設けている法令等の根拠は、省令によるものが4制度、告示によるものが19制度、内規によるものが3制度となっている。これらの制度については、いずれの所管省庁においても、事業認定制度の目的に照らし社会的に奨励する必要があるか否かを判断する明確な基準を有していない。また、一定期間ごとに事業認定の更新を行う仕組みとなっている制度を所管する省庁の中には、引き続き認定する必要性等について、十分な見直しが行われていないところがある。 | ||||||
イ | 認定事業の中には、そもそも国が奨励すべきものとして認定する必要性に欠けるもの、認定に当たっての審査・方法が不適切なもの、事業が実施されていない、又は資格者が少数にとどまっているもの等がある。 | ||||||
1.
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技能審査の対象者が限定されている中で、複数の省がそれぞれ類似する技能審査事業を創設し、所管の公益法人又は地方公共団体に事業を実施させており(6事業)、当該地方公共団体の中には、認定事業のほかに、別途、類似する独自の技能審査事業を実施しているもの(2事業) | ||||||
2.
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国が積極的に活用を図っている法令等に基づく資格と同種の資格を認定事業により付与しているが、その有用性が乏しいもの(1事業) | ||||||
3.
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技能審査の主な受験者が認定事業実施団体に関連する特定の団体・企業の従業員となっており、受験者数が年々減少してきている等のもの(6事業) | ||||||
4.
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技能審査事業が実施されていないまま団体の事業認定を行い、事業の実施内容・方法が確定せず、事業実施が遅れたもの(1事業) | ||||||
5.
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事業認定申請に際し所管の公益法人による意見書の添付を求めているが、意見書の内容が形式的であり添付させる必要性が乏しいもの(1事業) | ||||||
6.
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事業実施体制の不備等により、認定どおりに事業を実施していないもの又は事業の実施状況を把握していないもの(2事業) | ||||||
7.
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資格取得希望者が少なく、認定を受けた事業を全く実施していない、若しくは事業の一部しか実施していないもの又は新規の資格者数等が減少してきているもの(49事業) | ||||||
8.
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大臣による事業認定であることを担当局長が重ねて証明しているもの(1制度) | ||||||
したがって、関係省庁は、事業認定制度について、透明かつ適切な運営を確保する観点から、次の措置を講じる必要がある。 | |||||||
1.
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事業認定制度の根拠及び認定に当たっての審査基準等の基本的事項については、法律又は政省令で明確に定めること。
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2.
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認定事業及びその実施団体は法律又は政省令で指定することとし、その際、当該認定の必要性について、対外的に説明責任(アカウンタビリティ)を果たし得るよう客観的で厳格な判断を行うこと。
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3.
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現に認定している事業については、行政委託型法人等の総点検結果も踏まえ、真に国が奨励すべき事業として認定を行う必要があるか否かを検討し、認定の取消しを含めた見直しを図ること。
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4.
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認定に当たっての事業実施団体の事業遂行能力等に関する審査は、具体的な審査基準により、厳格かつ適正に行うこと。(文部省、労働省、建設省) | ||||||
5.
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認定事業については、国民から過大な評価を招くおそれのある証明行為は廃止すること。(労働省) | ||||||
(2) | 認定事業の運営の適正化 | ||||
ア | 会計処理の適正化 |
認定事業が適正かつ継続的に実施されるには、所管省庁において、事業の実施状況、財務・会計の状況等を把握することが必要であり、各省庁は、認定事業の実施団体から各事業実施年度ごとに、認定事業に係る業務報告書類(事業計画書、収支予算書、事業報告書、収支決算書等)を徴収することとしている。 公益法人の指導監督等に関する閣議決定においては、対価を伴う公益事業については、収入、支出の均衡を図り、当該法人の健全な運営に必要な額以上の利益を生じないようにすることとされている。 また、指定法人等行政監察結果に基づく勧告においては、「指定事業等の会計処理の基本的事項(区分経理の方法、剰余金の基準・取扱方法など)を定めた基準を策定し公表するとともに、指定法人等に対しその徹底を図ること」及び「手数料等の設定・見直しの基本的事項(積算方法、改訂方法など)を定めた基準を策定し公表するとともに、政省令料金及び認可料金について、業務量の推移、収支状況等を勘案し、的確な見直しを行うこと」を指摘している。 |
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今回、事業認定制度所管省庁における業務報告書類の徴収等の状況及び事業実施団体における財務・会計処理の状況を調査した結果、次のような状況がみられた。 | |||||||
(ア) | 認定事業が適正かつ継続的に実施されていることを明らかにするためには、当該事業の収支状況が明確にされなければならず、認定事業実施団体が認定事業以外の事業を行っている場合(複数の認定事業を実施している場合を含む。)には、認定事業とその他の事業とが区分して経理されることが必要である。 しかし、平成9年度に認定事業を実施している121団体の167事業についてみると、認定事業に係る収支が明確に区分されているものは34団体の36事業(事業数の25.7パーセント)となっており、認定事業に係る支出について共通管理費等を除く直接経費のみを区分するなど一部区分して経理されているものが41団体の47事業(同28.1パーセント)、認定事業以外の事業と認定事業を一括して経理するなどにより区分して経理されていないものが46団体の84事業(同50.3パーセント)となっている。 |
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(イ) | 認定事業に係る剰余金等の処理、試験等手数料の設定及び会計の監査体制について、次のとおり、不適切となっているものがある。 | ||||||
1.
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認定事業から生じた剰余金を他の会計に繰入処理しているもの(2団体3事業) | ||||||
2.
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認定事業から生じた剰余金を積立金等として留保しているが、その使途が明確でなく、積立限度額等の資産管理に関する規定や具体的計画が策定されていないもの(11団体16事業) | ||||||
3.
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認定事業に係る試験問題集の販売等収益事業を行っているが、i)他の事業と区分して経理されておらず、当該収支の状況が不明となっているものや、ii)当該収益を専ら他の収益事業の赤字補てんに充当しているもの(4団体5事業) | ||||||
4.
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試験等手数料が明確な積算根拠に基づいて設定されておらず(54事業)、この中には、試験手数料の改定を行わないまま認定事業により生じた剰余金を基本財産に多額の繰入れを行っているもの(1団体2事業) | ||||||
5.
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会計処理等の監査を行う常勤監事に職員を兼務で選任しているもの(1団体) | ||||||
(ウ) | 各事業認定制度の根拠法令等において、認定事業に係る業務報告書類の徴収規定が定められていないものが26制度のうち3制度ある。また、徴収規定が定められている23制度のうち、徴収した業務報告書類について、認定事業の実施状況及び財務・会計状況を的確に審査する基準・方法が所管省庁において定められていないものが22制度ある。 認定事業実施団体への立入検査については、26制度のいずれにおいても、各根拠法令等に実施権限は規定されておらず、所管の公益法人に対する全般的な指導監督として行うものなどとなっている。また、平成5年度から9年度の立入検査実績についてみると、立入検査が全く行われていないものが85団体、126事業ある。 |
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したがって、関係省庁は、認定事業の適切かつ健全な運営を確保する観点から、次の措置を講じる必要がある。 | |||||||
1.
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個別に指摘している認定事業に係る会計処理及び手数料の設定等が不適切なものについては、速やかに改善のための措置を講じること。
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2.
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認定事業の会計処理及び手数料の設定・見直しについては、指定法人等行政監察結果に基づく勧告において措置することとされている「指定事業等の会計処理の基本的事項(区分経理の方法、剰余金の基準・取扱方法など)を定めた基準を策定し公表するとともに、指定法人等に対しその徹底を図ること」及び「手数料等の設定・見直しの基本的事項(積算方法、改訂方法など)を定めた基準を策定し公表するとともに、政省令料金及び認可料金について、業務量の推移、収支状況等を勘案し、的確な見直しを行うこと」について速やかに具体的な改善措置を講じるとともに、認定事業に係る各種の引当資産については、その必要性を十分精査した上で、認定事業実施団体が留保できる限度額を設定し、認定事業実施団体に対し、その資産管理に関する規定の整備や具体的計画を策定するよう指導し、適切な運用を図ること。
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3.
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認定事業の実施状況及び財務・会計状況を的確に把握するため、認定事業実施団体から、必要な業務報告書類を適宜徴収できる規定を設けるとともに、徴収した業務報告書類について、具体的な審査基準・方法を策定して適切に審査するほか、必要に応じて実地指導を行い得る仕組みを整備すること。
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イ | 資格審査の基準・実施方法等の見直し、試験問題等の公表の推進 |
認定事業は、所管省庁が社会的に奨励するものとして、国が関与して認定するものであり、認定事業の実施方法等については、行政として一定の責任が生じるものである。 認定事業実施団体は、技能審査・証明を受けようとする者の資格、技能審査・証明の実施方法等についての実施要領を定め、事業認定申請時に提出するとともに、これを変更する場合も承認を受けるなど所管省庁の指導の下に事業を実施している。 |
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今回、認定事業173事業について、技能審査・証明事業の実施方法等を調査した結果、次のような状況がみられた。 | |||||||
(ア) | 試験を実施している172事業のうち149事業(86.6パーセント)において、学歴(33事業)、実務経験(54事業)、年齢(8事業)などの受験資格が設けられており、これらの中には、学部学科を問わず、大学、短期大学、高等学校等の最終卒業学校に応じて実務経験年数を設定しているもの(6事業)がある。 また、講習を実施している94事業のうち91事業(96.8パーセント)においても、学歴(3事業)、実務経験(5事業)、年齢(86事業)などの受講資格が設けられている。 |
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(イ) | 合格者等の登録・証明に有効期間を設けているものが 108事業( 173事業のうちの62.4パーセント)あり、このうち84事業は、各事業の特性にかかわらず、同種の他の認定事業に合わせて有効期間を設けたものとなっている。中には、認定以前に実施していた技能審査・証明事業では有効期間が設けられていなかったが、事業認定に際し、有効期間が設けられたもの(4事業)がある。また、有効期間を設けているものの中には、更新手数料の支払のみで登録の更新が可能となっているもの(2事業)や登録・証明の更新要件として講習の受講を義務付けているが、更新講習を計画的かつ適切に実施していないもの(1事業)がある。 | ||||||
(ウ) | 技能審査・証明の実施方法等が、次のとおり、不適切なものや、技能審査・証明を受けようとする者の負担軽減が図られていないものなどがある。 | ||||||
1.
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技能審査に等級区分があることをあらかじめ受験者に明示しないまま、試験を実施しているもの(1事業) | ||||||
2.
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登録の更新のための講習を事業実施団体の関係団体にゆだねて実施しているが、事業実施団体は、講習に関する統一的実施基準を定めておらず、関係団体が独自に実施するものとなっているため、講習が同一の内容・レベルで行われていないもの(67事業) | ||||||
3.
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講習の受講者数を制限しているものや試験委員の確保が困難であるとして試験開催地を全国で一か所に限定しているもの(2事業) | ||||||
4.
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技能審査として行われる試験の受験資格は、国の法令に基づく資格の取得を前提としているが、当該法令資格の試験科目と重複する試験科目の問題を出題しているもの(1事業) | ||||||
5.
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数次にわたる試験、学科と実技に区分した試験、複数科目による学科試験を実施しているもので、科目別合格制の導入等により、再受験において既合格科目(試験)の受験を免除する措置が採られていないもの(14事業) | ||||||
6.
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試験結果の上位一定割合の者を合格とするものや試験結果と実務経験等を勘案して合否を決定しているもの(2事業) | ||||||
7.
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積極的に試験問題の事後公表を行っていないもの(73事業)や合否基準の公表を行っていないもの(47事業) | ||||||
したがって、関係省庁は、事業認定制度に基づく技能審査・証明事業の適切な実施、公平性・透明性の確保及び技能審査・証明を受けようとする者の負担軽減の観点から、認定事業実施団体に対し、次の措置を講じるよう指導する必要がある。 | |||||||
1.
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受験(受講)資格として一定の学歴を必要としているものについては、高度で専門的な知識や技術・経験を要するために特別の教育・訓練を必要とするものなど合理的な理由のあるものを除き、原則として廃止するよう検討すること。また、受験(受講)資格として、一定の実務経験、年齢等を必要としているものについても、明確で合理的な理由のあるものを除き、原則として廃止するよう検討すること。
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2.
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登録・証明に有効期間を設けることが形骸化しているものや更新が適切に行われていないものについては、有効期間を原則として廃止することとし、有効期間の更新を目的に実施されている講習等については任意受講等への移行を図ること。
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3.
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等級区分を明示しないまま、技能審査の一部のみを実施しているものについては、等級の廃止を含めた見直しを行うこと。(労働省) | ||||||
4.
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講習が同一の内容・レベルで行われていない技能審査については、当該講習に関する統一的実施基準を定め、これに基づき適切に講習を実施すること。(文部省) | ||||||
5.
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受験(受講)者のニーズ等に対応して、受験地、受講定員について見直し、受験(受講)機会の拡大に努めること。(厚生省、労働省) | ||||||
6.
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国の法令に基づく資格者であることを受験資格としているものについては、当該資格を改めて審査することがないよう試験の科目及び出題内容を見直すこと。(運輸省) | ||||||
7.
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技能審査で求められる知識・技能の評価を損なわない限りにおいて、再受験における既合格科目等の試験免除措置の積極的な導入等について検討すること。
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8.
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技能審査で求められる知識、技能に対する評価の内容・レベルを明確にし、その透明化を図り、客観性を確保するため、試験問題の事後公表及び合否基準の公表を推進すること。
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