高度医療の保険適用病院に係る届出要件の緩和(概要)

《行政苦情救済推進会議の検討結果を踏まえたあっせん》

あっせん日: 平成10年9月9日
あっせん先: 厚生省

 総務庁行政監察局は、下記の行政相談を受け、行政苦情救済推進会議(座長:茂串俊 元内閣法制局長官)に諮り、その意見を踏まえて、平成10年9月9日、厚生省に対し、改善を図るようあっせん。
 
 行政相談の申出要旨は、「当大学医学部付属病院では、補助人工心臓等の高度医療に保険適用を認めてもらうため県に届出を行ったところ、診療科名(第一内科、第二外科)が受理要件とされている標榜診療科名(医療法に定める「循環器科」及び「心臓血管外科」)と異なることを理由に届出は受理されなかった。しかし、都道府県の中には、実質的に当該医療に必要な専門技術や診療体制があれば届出を受理しているところがあると聞いているので、全国的にこのような取扱いができるようにしてほしい。」というもの。
 
 当庁のあっせん内容は、医療法に定める診療科名を標榜していない病院であっても、それぞれの高度医療に必要な専門技術や診療体制等が確保されていると認められるものについては、保険適用ができる措置を求めるもの。このことにより、高度医療の保険適用病院が増え、患者に対し医療サービスの確保等が図られることが期待される。

資 料
 補助人工心臓等の高度医療を保険診療で行うための保険医療機関による都道府県知事への届出
 保険医療機関が、補助人工心臓、人工内耳埋込術等以下3に掲げる14種類の高度医療を保険算定により行うためには、都道府県知事への施設基準に係る届出(注参照)を行う必要がある。なお、健康保険法(大正11年法律第70号)第44条第1項第1号に規定する特定承認保険医療機関として高度先進医療で当該療法の承認を都道府県知事から受けている保険医療機関は、届出を要しない。
(注)「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(平成6年厚生省告示第54号)に基づく医科診療報酬点数表の中で、以下3に掲げる14種類の高度医療について、「別に厚生大臣が定める施設基準に適合しているものとして都道府県知事に届け出た保険医療機関において行われる場合に算定する。」と注記されている。
 補助人工心臓等の高度医療を保険算定するための「厚生大臣の定める施設基準」
(平成6年厚生省告示第61号)[抜粋]

(1)  病院であること。
(2)  当該療養を行うにつき十分な専用施設を有していること。
(3)  当該療養を行うにつき必要な医師(電磁波温熱療法に係る場合にあっては、医師又は歯科医師)及び看護婦が配置されていること。
(4)  緊急事態に対応するための体制その他当該療養につき必要な体制が整備されていること。
 都道府県知事への施設基準に係る届出によって保険算定できる高度医療(14種類)

高度医療の種類 保険適用開始 診療報酬点数
  1. 人工内耳埋込術
  2. 補助人工心臓
     
  3. 体外衝撃波腎・尿管結石破砕術
  4. 体外衝撃波胆石破砕術
  5. 人工膵臓
  6. 埋込型除細動器移植術
  7. 埋込型除細動器交換術
  8. 経皮的冠動脈形成術
    (高速回転式経皮経営アテレクトミーカテーテルによるもの)
  9. 生体部分肝移植
  10. ペースメーカー移植術
  11. 大動脈バルーンパンピング法
    (IABP法)
  12. 経皮的冠動脈形成術
  13. 経皮的冠動脈血栓切除術
  14. 経皮的冠動脈ステント留置術
平成6年4月
  〃   
 
  〃   
  〃   
  〃   
平成8年4月
  〃   
平成10年4月
      
平成10年4月
  〃   
  〃   
      
  〃   
  〃   
  〃   
24,900点
(初日) 30,000点
(2日以降)5,000点
20,600点
20,600点
5,000点
13,600点
5,300点
17,100点
            
53,000点
14,500点
(初日)  8,360点
(2日以降)3,200点
17,100点
17,100点
17,200点
(注) 保険医療機関に係る療養に要する費用の額は、1点の単価が10円とされている。

 「厚生大臣の定める施設基準に係る届出に関する取扱いについて」(平成8年3月8日付け保険発第23号厚生省保険局医療課長通知)の一部改正(平成10年3月16日付け保険発第30号厚生省保険局医療課長通知)
 標記通知の受理要領の中で、医療法に定める診療科名(循環器科、心臓血管外科)の標榜が受理要件となっている高度医療は、次のとおりである。
(1)  補助人工心臓(心臓血管外科)
(2)  埋込型除細動器移植術(循環器科及び心臓血管外科)
(3)  埋込型除細動器交換術(循環器科及び心臓血管外科)
(4)  経皮的冠動脈形成術(高速回転式経皮経営アテレクトミーカテーテルによるもの)
             (循環器科及び心臓血管外科)
(5)  経皮的冠動脈形成術(心臓血管外科)
(6)  経皮的冠動脈血栓切除術(心臓血管外科)
(7)  経皮的冠動脈ステント留置術(心臓血管外科)

[参考例:補助人工心臓の施設基準の場合]

  1.  心臓血管外科を標榜している病院である。
  2.  開心手術が年間50例以上ある。
  3.  心臓血管外科の常勤医師数が5名以上で、このうち2名以上は心臓血管外科の経験を5年以上有しており、1名は少なくとも1例以上の補助人工心臓の経験を有する。
  4.  当該手術を行う為に必要な次に掲げる検査等が当該保険医療機関内で常時実施できるよう必要な機器を備えている。
     ア 血液学的検査
     イ 生化学的検査
     ウ 画像診断
  5.  平成6年3月31日現在、高度先進医療で当該療法の承認を受けている特定承認保険医療機関にあっては、当該施設基準を満たすものとみなし、届出は要しない。
 施設基準の届出に関する当庁の調査結果(平成9年12月〜10年3月)
(1)  国立大学医学部附属病院(20病院を抽出調査)
 診療科名を届出要件とされている標榜診療科名(循環器科、心臓血管外科)としていない病院(13病院)のうち、
  1.  実施体制に問題がないとして届出が受理されたもの(10病院)
  2.  診療科名が受理要件とされている標榜診療科名と異なることを理由に届出が受理されなかったもの(3病院)
(2)  都道府県(21都道府県を抽出調査)
 6都府県(宮城県、東京都、千葉県、茨城県、大阪府、徳島県)では、厚生省通達に基づく受理要件(循環器科、心臓血管外科の標榜)に適合しない病院からの届出は受理しないとしている。
 15道県(山形県、山梨県、愛知県等)では、実質的に当該医療に必要な専門技術や診療体制等が確保されているため現行の診療科名のままで、届出の標榜診療科欄に例えば「第一外科(心臓血管外科)」と括弧書きで厚生省通達に示された診療科名を記入させることなどにより、届出を受理することとしている。
(3)  公立・私立大学医学部附属病院
 上記(2)に掲げる6都府県管内にある公立・私立大学医学部附属病院の中には、受理要件である診療科名を標榜していないため、保険適用への対応に苦慮しているところがある。(大阪市立大学医学部附属病院等)