国立病院・療養所は、戦後、旧陸海軍病院などを引き継いで発足し、当時、国民病といわれた結核の治療など国民の医療の向上に大きく貢献してきた。しかし、医療内容の高度化・多様化や公私立病院の整備等による医療機関の量的な充足など医療環境が大きく変化する中で、国立病院・療養所は、広域を対照とする高度医療や他の医療機関が担うことが困難な専門医療等国立医療機関としてふさわしい役割を積極的はたすことが求められるようになった。
このため、厚生省は、「国立病院・療養所の再編成・合理化の基本指針」(昭和60年3月)、「国立病院・療養所の再編成計画」(昭和61年1月)を策定し、国立病院・療養所が、限られた経営資源を集中・集約し、国立医療機関にふさわしい役割を果たせるよう機能の質的強化を図るため、国立病院・療養所の統廃合及び経営移譲を進めてきた。また、平成8年11月には基本指針を改定し、再編成が終了していない対象施設については、12年度末までに廃止を含む対処方針を決定することとするとともに、対象となっていない施設についても、国立病院・療養所を取り巻く環境の変化等に対応し、その果たすべき役割を適切に遂行する観点から見直しを行い、対象施設として追加することを検討することとした。
さらに、中央省庁等改革基本法(平成10年法律第103号)においては、国立病院・療養所に関し、国の医療政策として行うこととされてきた医療について、真に国として担うべきものに特化することとし、かかる機能を担う機関以外の機関の民間もしくは地方公共団体への移譲、統合又は廃止を推進することとされた。
これらの方針に従い、厚生省は、平成11年3月、再編成計画の見直しを行い、新たな再編成対象施設の追加、統廃合対象施設の統合地の明確化、存続施設の付与機能の見直し等を行った。同年4月に閣議決定された「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本的計画」においても、見直し後の再編成計画に基づき、国立病院・療養所の再編成を一層促進することとされているところである。
一方、国立病院・療養所の経営状況は、平成5年度以降、事業計画方式の導入、経営管理指標の設定等経営改善方策の実施により好転してきているが、国立病院特別会計に占める一般会計からの繰入が9年度で1,802億円に達しており、施設整備等のための借入金残高も年々増加している。また、国立病院・療養所は、中央省庁等改革基本法及び上記基本的計画において、平成16年度に独立行政法人に移行するとされていることから、独立行政法人化に向けた基盤強化のためには、経営管理の徹底、職員配置の適正化及び業務委託の推進、会計・契約事務の適正化等、一層の経営の合理化・効率化を図ることが必要となっている。
この監察は、以上の状況を踏まえ、国立病院・療養所の経営の合理化・効率化、業務運営の適切化等について調査し、関係行政の改善に視するため実施したものである。
1 | 経営管理の徹底 | |
2 | 病院運営の効率化 | |
(1) | 職員配置の見直しと業務委託の推進 | |
(2) | 病床利用の効率化 | |
(3) | 政策医療に係る病棟運営の効率化 | |
(4) | 医療機器の整備・利用の効率化 | |
3 | 会計・契約事務の適正化 | |
4 | 経営・監査指導等の実効の確保 |