国立大学附属病院に関する行政監察結果に基づく勧告

平成11年5月

総務庁


前書き

 国立大学又はその医学部及び歯学部並びに附置研究所に附属する病院 (以下「国立大学附属病院」という。)は、国立学校設置法施行規則 (昭和39年文部省令第11号)に基づき教育研究施設として設置され、i)医学部・歯学部学生の臨床実習教育、卒業後(医師免許取得後)の臨床研修、看護婦、薬剤師、臨床検査技師等の実習・研修等を行う教育機能、ii)難治性疾患の原因解明、新しい診断法・治療法の研究開発等の臨床医学の研究等を行う研究機能、iii)地域の中核的医療機関として高度の医療を提供するなどの医療機能を果たしており、平成11年3月末現在で42大学に60病院が設置されている。
 国立大学附属病院については、文部省の21世紀医学・医療懇談会の「21世紀に向けた大学病院の在り方について」(平成9年7月の第3次報告)の中で、今後「教育病院」として、従来の教育、研究及び医療の機能に加えて、広く医療人に対する研修・実習の機能を充実させていく必要があるとされている。
 国立大学附属病院の管理運営に係る平成9年度の決算規模は 7,405億円であり、そのうち、一般会計からの受入額は 1,554億円に上っている。
 また、病棟建設等のための借入金の残高は、年々増加している。さらに、平成9年度の国立大学附属病院の収支率(病院収入を病院支出で除したもの。ただし、施設整備費及び医学部と病院を兼務している教授等の人件費を除く。)は、平均87.5パーセントとなっており、国立大学附属病院の経営改善を積極的に推進していくことが課題となっている。
 国立大学附属病院の経営改善を具体的に進めていくためには、国立大学附属病院が明確な経営意識を持って病院運営を行っていくことが最も重要であり、そのためには、国立大学附属病院がその経営実態を的確に把握・分析・評価するための仕組み等の整備、経営改善を推進していくための経営管理体制の整備等が必要となっている。
 また、医療従事者の配置の適正化、業務の外部委託の推進、病床利用率の向上等の経営の合理化・効率化を更に推進するとともに、医薬分業の推進、病院経営に係る事務手続の簡素化等の医療関係業務の運営の改善が必要となっている。
 このほか、診療待ち時間の短縮化等による患者サービスの充実が求められている。
 この監察は、このような状況を踏まえ、国立大学附属病院における経営管理、医療関係業務、患者サービス等の実施状況を調査し、関係行政の改善に資するために実施したものである。


目次

 経営管理の推進
(1)  経営改善の推進
(2)  経営管理体制の整備
(3)  分院の見直し
 経営の合理化・効率化の推進
(1)  医療従事者の適正配置
(2)  業務の外部委託の推進とその適正化
(3)  病院運営の改善による収入確保
 医療関係業務運営の改善
(1)  医薬分業の推進
(2)  契約事務担当職員の配置の適正化
(3)  病院経営に係る事務手続の簡素化等
 患者サービス等の充実
(1)  診療待ち時間の短縮化
(2)  ボランティアの受入れの推進
(3)  インフォームド・コンセントの充実