1 有料道路事業の透明性・採算性の確保
   政府は、第四次全国総合開発計画(昭和62年6月30日閣議決定)において、21世紀に向けた多極分散型の国土を形成するため、交通、情報・通信体系の整備と交流の機会づくりの拡大を目指す「交流ネットワーク構想」を推進する必要があるとし、これを実現するため、全国的な自動車交通網を構成する高規格幹線道路網については、高度交通サービスの全国的な普及、主要拠点間の連絡強化を目標とし、地方中枢・中核都市、地域の発展の核となる地方都市及びその周辺地域等からおおむね1時間程度で利用が可能となるよう、およそ1万4,000キロメートルで形成するとしている。また、新・全国総合開発計画(平成10年3月31日閣議決定)において、21世紀初頭の概成を目指し、高規格幹線道路網の整備を推進するとしている。
 また、建設省は、昭和62年6月30日の建設大臣決定により高規格幹線道路網を構成する路線を定め、さらに、道路整備緊急措置法(昭和33年法律第34号)に基づき策定される道路整備五箇年計画により高規格幹線道路網の5年間の整備目標延長を決定している。新道路整備五箇年計画(平成10年5月29日閣議決定)では、計画期間(平成10年度から14年度まで)中に既に供用されている区間を含め8,626キロメートル(新・全国総合開発計画における整備目標の62パーセント)の高規格幹線道路を供用するとしており、計画期間中の高規格幹線道路建設費として約15兆3,000億円を見込んでいる。
 高規格幹線道路網は、i )高速自動車国道(以下「高速道路」という。)、ii )高速道路予定路線に並行する機能代替道路(高速道路予定路線に並行する一般国道について、これを高速走行可能な自動車専用道路として整備することにより高速道路の機能を代替させることができる道路。整備目標はおおむね1,500キロメートル。以下「高速代替道路」という。)及びiii)一般国道の自動車専用道路(一般国道の自動車専用道路のうち建設大臣が高規格幹線道路として指定しているもの。整備目標は2,480キロメートル(本州四国連絡道路180キロメートルを含む。)。以下「道路網自専道」という。)の3種類の道路から構成されている。日本道路公団(以下「道路公団」という。)の有料道路の大半は、高速道路、高速代替道路及び道路網自専道であり、また、本州四国連絡橋公団(以下「本四公団」という。)の有料道路は、すべて道路網自専道となっている。
     
  (1) 高速道路事業の透明性・採算性の確保  
     高速道路は、国土開発幹線自動車道建設法(昭和32年法律第68号。以下「国幹道法」という。)及び高速自動車国道法(昭和32年法律第79号。以下「高速国道法」という。)の両法律に基づき定められている43路線(整備目標1万1,407キロメートル)と高速国道法に基づき定められている4路線(整備目標113キロメートル)の合計47路線で、整備目標は1万1,520キロメートルである。
 国土開発幹線自動車道の予定路線のうち建設を開始すべき路線について、その建設に関する基本計画が国幹道法第5条に基づき決定され、また、高速道路の予定路線のうち政令で指定した路線について、その新設に関する整備計画が高速国道法第5条に基づき定められている。
 道路は、一般に租税等を財源として国又は地方公共団体が建設・管理し、無料で供用されるものであるが、高速道路については、その整備の緊急性から、道路債券の発行及び借入金により調達した資金を用いて建設を行い、完成後一定期間通行料金を徴収し、これを借入金等の返済や利息及び管理費に充当する有料道路として整備されている。
 高速道路の新設、改築等は、高速国道法第6条に基づき、本来、建設大臣が行うものであるが、建設大臣は、高速道路の整備を総合的かつ効率的に行うため、道路整備特別措置法(昭和31年法律第7号。以下「特措法」という。)第2条の2に基づき、これを道路公団に行わせている(道路公団に対する施行命令)。道路公団は、特措法第2条の3に基づき、高速道路の新設又は改築に係る工事実施計画書について、建設大臣の認可を受けなければならないとされている。
 平成10年度末現在、基本計画決定延長が1万595キロメートル(整備目標の93パーセント)、整備計画決定延長が9,240キロメートル(同80パーセント)、施行命令延長が9,006キロメートル(同78パーセント)である。施行命令区間のうち、36路線6,453キロメートル(同56パーセント)が供用され、31路線2,553キロメートル(同22パーセント)が建設中あるいは未着手である。
       
    ア 償還計画の達成状況の明確化  
     
1.
 高速道路は、当初、それぞれの路線ごとに独立して料金額の設定や借入金の償還を行う路線別採算制が採られていたが、「高速自動車国道の料金制度について」(昭和47年3月24日道路審議会答申)を受け、昭和47年10月から高速道路全体の総費用(用地費、建設費、借入金利息及び管理費)を高速道路全体の総収入により賄い、通行料金を全国同一水準とする「全国プール制」が採用された。
     
2.
 高速道路事業の収支状況をみると、収支差益は、平成6年度で5,467億円、7年度で6,911億円、8年度で7,902億円、9年度で7,959億円、10年度で7,574億円を計上しており、この収支差益は借入金元本の返済に充てられている(以下、借入金元本の返済に充てられる収支差益を「償還準備金」という。)。
 また、供用中の高速道路の資産総額(道路価額)に対する償還準備金の占める割合(償還率)をみると、平成6年度22.6パーセント、7年度24.2パーセント、8年度26.1パーセント、9年度27.3パーセント、10年度28.8パーセントと推移している。
 一方、償還計画における未償還残高の計画額と実績額とを比較すると、平成6年度は実績額が計画額を211億円上回っていたが、7年度以降は実績額が計画額を下回っており、その差額は、7年度で4,119億円、8年度で4,642億円、9年度で7,479億円、10年度で1兆437億円となっており、現在のところ、全国プール制の下で償還は計画以上に進んでいる。
 なお、高速道路事業の収入には、料金収入のほかに政府補給金が含まれている。これは、借入金の利子のうち、利用者の負担分に限度を設け、市場金利の変動にかかわらず事業の長期的な償還見通しを立て計画的な業務運営を可能とするため、その限度を超える部分について政府補給金が交付されているものであり、平成10年度までの累計額は1兆2,808億円となっている。
       
       今回、高速道路事業の収支状況等を調査した結果、次のような状況がみられた。
     
1.
 道路公団では、整備計画決定延長8,942キロメートル(平成10年4月現在)のうち、平成8年度末現在で既に供用されている区間6,114キロメートル(68パーセント)については、32年度の計画平均断面交通量(以下「計画交通量」という。)を3万4,300台/日(平成8年度の実績平均断面交通量(以下「実績交通量」という。)は3万300台/日)としている。これに対し、平成8年度末現在で供用されていない区間2,828キロメートル(32パーセント)については1万4,200台/日、これら供用されていない区間のうち主要国幹道となる第二東海自動車道横浜名古屋線及び近畿自動車道名古屋神戸線を除く区間2,446キロメートル(27パーセント)については9,000台/日と算出している。
 また、平成9年12月に施行命令のあった31インターチェンジ区間342.1キロメートル(認可事業費2兆2,731億円)のうち、供用開始時(おおむね平成20年ごろ)の計画交通量が5,000台/日以下と試算しているものが14インターチェンジ区間197.3キロメートル(58パーセント、認可事業費9,701億円)に及ぶなど、交通量が少ない新規整備区間(路線)の整備も予定されている。
     
2.
 高速道路事業の採算性については、全国プール制を採用するに当たり、昭和47年3月24日の道路審議会答申においては、路線別の採算は、その路線がプール制に組み入れられた以後においても常にこれを明らかにし、償還状況の分析や適切な経営政策の樹立に資するとともに、不採算路線の安易な採択が行われないよう監視するための資料とすることを提言している。また、「高速自動車国道の整備と採算性の確保について」(昭和63年10月7日道路審議会答申)においては、追加された国土開発幹線自動車道の予定路線は、供用当初の交通量が比較的少ないものがあり、プール全体の採算が一層厳しくなると懸念されることから、長期的に採算性を確保するためには、路線別の経営状況を踏まえた各路線の適切な建設・管理の推進を行うことを提言している。
 このように、道路審議会において、路線別の採算を明らかにし、また、プール全体の償還状況を分析することの必要性が指摘されてきたところである。
 これを受けて、道路公団では、路線別の採算状況を明らかにするため、平成4年度決算分から路線別の収支状況を公表している。
 しかし、償還実績を償還計画に対応した形で明らかにしていないため、償還計画の達成状況の検証は、現状では困難となっている。今後は、交通量が少ない新規整備区間(路線)の整備も予定されていることからも、高速道路事業の採算状況について、より明らかにする必要がある。
 
    イ 暫定施工方式による高速道路の整備状況
       高速道路の予定路線については、基本計画において完成車線数を4車線以上と定めているが、「高速自動車国道の整備と採算性の確保についての中間答申」(昭和56年7月24日道路審議会答申)において、高速道路の中には、地域開発効果への期待が高い割には、建設当初において建設費が高くつき、交通量の当面の伸びも余り期待できず、その利用実態も当面は比較的地域性の強い道路の整備に当たっては、高速道路として必要な機能を確保できる範囲内で、極力、建設・維持管理費の節減を図る必要があるとしている。このため、採算性に大きな影響を与える建設の初期投資額を節減するための努力方策の一つとして、交通量に応じた暫定施工方式(用地は完成車線分で取得し、工事は暫定車線で施工)の採用を提言している。
 高速道路の暫定施工方式による整備については、整備計画にあらかじめ定めるケースと施行命令時に建設省道路局長から指示されるケースとがあるが、暫定施工の指示に際して、暫定施工することによる経済的効果が発現するまでの期間(経済年数)については示されていない。このため、道路公団では、「本線幾何構造設計要領」(昭和61年12月26日付け技交第23号担当理事通達)により、事業主体として暫定施工方式による建設を効率的に進めるため、段階的な建設が建設費の面から経済的に成立する条件を検証するための試みとして、独自に検証の方法を定めている。同要領においては、i )暫定車線で施工する場合と当初から完成車線の工事を行う場合との建設費の差額及びその差額に対し完成車線への拡幅工事のための追加投資までにかかる利息の合計額と完成車線への拡幅工事を行うための建設費とを比較し、前者が後者を上回り、暫定施工したことによる経済的効果が発現するまでの期間である「経済年数」と「暫定施工区間の完成車線建設後の総建設費」との間の関係式を示し、ii )暫定施工による当初建設費をできるだけ小さくし、その後に暫定施工区間を拡幅する場合、道路施設の付替工事等の付加工程を少なくするなど完成車線建設後の総建設費をできるだけ小さくするという暫定施工を行う上で考慮すべき設計思想を定めている。
 平成10年度末現在、暫定施工方式による工事実施計画の認可が行われている区間(暫定車線での供用開始区間を含む。)は104区間(29路線、整備延長2,772キロメートル)ある。平成9年12月及び10年12月の国土開発幹線自動車道建設審議会において審議され、建設大臣から道路公団に対して工事実施計画を認可した58区間(20路線、整備延長947.2キロメートル)についてみると、48区間(18路線、整備延長866.3キロメートル、区間全体の83パーセント、整備延長全体の92パーセント)が暫定施工方式による工事実施計画の認可となっており、近年、新規整備区間の整備は、暫定車線での施行が大半を占めている。
       
       今回、暫定施工方式による高速道路の整備状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
 暫定施工区間について完成車線への拡幅工事を行う場合、暫定施工による建設費と完成車線への拡幅工事建設費との合計である総建設費は、当初から完成車線の施工を行った場合の建設費に比べて割高になるが、建設省は、暫定施工区間ごとの総建設費の節減の目安となる経済年数の算出及び総事業費でみた節減効果の検証を行っていない。
 前記要領に示されている暫定施工方式による建設費と経済年数の関係式を参考に、平成元年度以降に暫定車線から完成車線への拡幅工事が決定された9路線17区間(「緊急経済対策」(平成10年11月16日経済対策閣僚会議)に関連して拡幅工事が決定された区間を除く。)のうち、4路線5区間を抽出し、当庁が独自に試算したところ、調達金利が6パーセントから8パーセントと高水準であったことから、経済年数が4年から9年程度であり、いずれも経済年数を経過してから拡幅工事が行われている。しかしながら、経済年数は、調達金利、暫定施工による建設費と完成車線への拡幅工事による建設費の総建設費に占める割合のほか、施工条件、施工時期によって大きく異なることから、暫定施工方式の採用に当たっては、建設区間ごとに総建設費の節減の目安となる経済年数を算出し、当該経済年数を考慮することが、公団経営の採算性を確保する観点から重要と考えられる。
 したがって、建設省は、高速道路網の効率的な整備並びに道路公団の高速道路事業の透明性及び将来にわたっての安定的かつ確実な事業の採算性を確保する観点から、次の措置を講ずる必要がある。
     
1.
 償還計画の達成状況が検証できるよう道路公団を指導すること。
     
2.
 暫定施工方式により建設する区間の決定に当たっては、総建設費の節減の目安となる経済年数を算出し、これを考慮すること。
   
  (2) 一般有料道路事業等の透明性・採算性の確保
     道路公団及び本四公団は、特措法に基づき、建設大臣の事業許可(本四公団は事業認可)を受けて、一般国道や都道府県道等の新設又は改築を行い、通行料金を徴収し、料金収入を建設費、管理費、損失補てん引当金繰入、借入金利息等の費用に充てており、道路の建設に要した借入金については、おおむね30年(本州四国連絡道路は50年以内)で償還することとしている。
 道路公団の一般有料道路は、高規格幹線道路網を形成するi )高速代替道路、ii )道路網自専道及びiii)高規格幹線道路網に含まれない単独路線から成っている。また、本四公団の道路は、すべて道路網自専道となっている。
     
    ア 道路公団の一般有料道路
     
1.
 道路公団が営業する一般有料道路は、平成10年度末現在64道路(供用延長805.4キロメートル)で、その内訳は、高速代替道路が18道路(供用延長194.6キロメートル)、道路網自専道が12道路(供用延長142.8キロメートル)、単独路線が34道路(供用延長468.0キロメートル)となっている。また、建設中のものが、高速代替道路5道路、道路網自専道5道路及び単独路線6道路の計16道路(事業延長149.8キロメートル)ある。
     
2.
 一般有料道路は、道路ごとに独立して料金額の設定や借入金の償還を行う個別採算制が採られているが、特措法の特例として二以上の一般有料道路が近接して整備される場合には、一定の条件を満たす場合に限定して、一の道路として取り扱う「関連道路プール制」が平成10年度末現在3地域(千葉プール:千葉東金道路、京葉道路、横浜プール:第三京浜道路、横浜新道、横浜横須賀道路、姫路プール:姫路バイパス、太子竜野バイパス)で導入されている。
     
3.
 平成10年度末現在で供用中の一般有料道路の資産総額(貸借対照表上の道路資産4兆7,354億円から災害復旧等のための国費助成である資産見返勘定を控除した額)は4兆7,264億円(高速代替道路6,901億円、道路網自専道4,622億円及び単独路線3兆5,742億円)で、償還準備金1,471億円(高速代替道路マイナス712億円、道路網自専道マイナス715億円及び単独路線2,897億円)及び損失補てん引当金(毎年度の料金収入のうち、償還期間が40年の道路については20パーセント、償還期間が30年以内の道路については15パーセントを事業全体で留保し、将来の事情の変動等により生じる料金徴収期間満了時の未償還額に充当するためのもの)2,797億円を差し引くと、借入金残高は4兆2,997億円となる。また、平成6年度以降、高規格幹線道路を主体に21道路が新規供用(高速代替道路10道路、道路網自専道9道路及び単独路線2道路)され、資産総額は、6年度の2兆1,504億円から10年度には約2.2倍の4兆7,264億円となるなど、事業規模が拡大している。
     
4.
 料金等の収入から管理費、損失補てん引当金繰入、借入金利息等の費用を差し引いた収支差を事業全体でみると、平成6年度で73億円、7年度で132億円、8年度で169億円、9年度で678億円、10年度でマイナス277億円となっており、償還準備金残高は、6年度で826億円、7年度で956億円、8年度で1,087億円、9年度で1,765億円、10年度で1,471億円と、9年度までは毎年度の収支差益を償還準備金として積み立ててきたが、10年度は収支差損を補てんするため償還準備金を277億円取り崩している。
 また、損失補てん引当金は、供用中のすべての一般有料道路から、平成6年度で250億円、7年度で266億円、8年度で302億円、9年度で313億円、10年度で346億円の繰入れを行っており、10年度末現在の損失補てん引当金残高は2,797億円となっている。
     
5.
 供用中の一般有料道路の資産総額に対する償還準備金の占める割合をみると、平成6年度で3.8パーセント、7年度で3.8パーセント、8年度で4.0パーセント、9年度で3.8パーセント、10年度で3.1パーセントと9年度以降漸減しており、また、供用中の一般有料道路の資産総額に対する償還準備金及び損失補てん引当金の合算額の占める割合をみると、6年度で12.4パーセント、7年度で11.9パーセント、8年度で12.4パーセント、9年度で9.1パーセント、10年度で9.0パーセントと9年度以降漸減している。
 この要因としては、
     
i )
 平成9年12月に道路資産額1兆4,058億円(平成9年度末現在)の東京湾横断道路(以下「アクアライン」という。)が供用されるなど、資産総額に対する償還準備金の相対的な割合が圧縮されたこと、
ii )
 事業規模の拡大に伴い、総収入額及びその対前年度伸び率は、8年度で2,107億円及び14.7パーセント、9年度で2,742億円及び30.1パーセント、10年度で2,372億円及びマイナス13.5パーセントと9年度までは増加しているが、10年度は低調であること、
iii)
 一方、管理費、損失補てん引当金繰入、借入金利息等の費用総額及びその対前年度伸び率は、8年度で1,938億円及び13.7パーセント、9年度で2,064億円及び6.5パーセント、10年度で2,649億円及び28.4パーセントとなっており、10年度については総収入額の伸び率以上の伸び率となっていること等が挙げられる。
       
       今回、一般有料道路の採算状況等を調査した結果、次のような状況がみられた。
      (ア) 計画交通量と実績交通量の乖離
         特措法に基づく一般有料道路の新設又は改築の許可申請に当たっては、路線名及び工事の区間、工事予算、収支予算の明細、料金、料金の徴収期間等を記載した申請書を建設大臣に提出することとされている(特措法第3条第2項)。
 また、料金徴収期間内における各年度ごとの日平均交通量を推計した推定交通量(計画交通量)は、事業投資限度額、収支予算、料金の算出、料金徴収期間等を決定する根拠となるもので、推定交通量及びその算出の基礎を記載した書面を、工事計画書、料金算出の基礎を記載した書面等とともに許可申請の際に添付することとされており(道路整備特別措置法施行規則(昭和31年建設省令第18号)第2条第1項)、建設大臣は、これらの申請書類の妥当性を審査した上で許可の是非を決定することになっている。
 調査した供用中の58道路(プール道路は1プールを1道路とし、平成11年3月に供用開始した富津館山道路及び維持管理のための料金徴収が認められている関門トンネルを除く。)をみると、以下のような状況にある。
       
1.
 平成10年度の実績交通量が計画交通量を下回るものが、高速代替道路13道路、道路網自専道9道路及び単独路線20道路の計42道路(72パーセント)ある。このうち、i )平成10年度において収支差損が生じているもの(ただし、収支差損が生じている道路についても、別途、損失補てん引当金を繰り入れている。)が、高速代替道路10道路、道路網自専道3道路及び単独路線13道路の計26道路(62パーセント)、ii )収支差損は生じていないものの、これまで予定されていた料金収入が確保されなかったこと等から、10年度末現在の未償還残高の実績額が計画額より大きくなっているものが、高速代替道路1道路、道路網自専道1道路及び単独路線4道路の計6道路(14パーセント)ある。
2.
 平成10年度において収支差損が生じている26道路について、10年度の交通量及び収入額の計画に対する実績の比率をみると、交通量については、50パーセント未満のものが13道路、50パーセント以上70パーセント未満のものが10道路、収入額については、50パーセント未満のものが14道路、50パーセント以上70パーセント未満のものが8道路であるなど、いずれも実績が計画を著しく下回った実態となっている。また、道路別の収支率でみると、104から338(100円の収入を得るのに104円から338円の費用を要する。)で、管理費、損失補てん引当金繰入、借入金利息等の費用が料金収入の2倍以上(収支率200超)のものが7道路(12パーセント)ある。
3.
 高規格幹線道路網を形成する一般有料道路の整備に当たっては、利用者の利便と採算性を確保するため、高速道路等関連道路の道路管理者や合併施行における国等との整備時期及び供用時期の調整を十分行い、円滑なネットワーク化を進める必要がある。
 高速代替道路及び道路網自専道である一般有料道路計29道路(平成11年3月に供用開始した富津館山道路を除く。)のうち13道路(45パーセント)は、延伸部を含め供用開始から5年以内と開通後間もないことや、連続性のない先行的な部分供用又は他道路等への延伸ネットワークが建設中であることなど、高規格幹線道路網がネットワークとして連結していないことが実績交通量が低調な主な要因となり、不採算となっている。
 顕著な例として、高速代替道路である椎田道路、宇佐別府道路、延岡南道路及び隼人道路をみると、部分供用を前提とした平成10年度の計画交通量が1万1,000台/日から1万6,000台/日であるのに対し、実績交通量は5,000台/日から9,000台/日(計画交通量に対する比率は45パーセントから60パーセント)にとどまっている。これらの一般有料道路は、連結を予定されている高速道路がいまだ工事中又は工事未着工の状況にあり、両者の供用時期が異なることが大きな要因とみられることからも、高速道路等関連道路との整備時期及び供用時期の整合性の一層の確保が求められている。
         このように実績交通量が計画交通量を下回ると、予定されていた料金収入が確保し難いことから、計画どおりの収支差益が確保できず、計画的な借入金の償還が困難となる。したがって、予定される収入をもって償還期間内に償還が可能である事業投資限度額を適切に見積もるためにも、計画交通量の推計精度の向上が必要である。
 また、道路公団では、償還計画上の収入額の基礎となる計画交通量の算出根拠である他の道路からの自動車の転換率の算出式については、事業(事業変更)許可申請書において明らかにしているが、関連道路の整備等経年的な計画交通量の増減要因については明らかにしていない。
       
      (イ) 改善方策の必要性
       
1.
 供用中の単独路線29道路(維持管理のための料金徴収が認められている関門トンネルを除く。)をみると、20道路は実績交通量が計画交通量を下回っており、特に日光宇都宮道路等5道路(日光宇都宮道路、新利根川橋、西湘バイパス、東富士五湖道路及び西富士道路。平成10年度の計画交通量に対する実績交通量の比率は28パーセントから68パーセント)は、実績交通量が過去数年にわたり低調な水準のまま、あるいは逓減傾向となっている。
2.
 供用中の単独路線のうちアクアライン等開通後5年未満の道路及び道路の延伸事業等が計画されているものを除く20道路について、将来とも関連道路網の延伸はないものとして、また、過去5年間の償還準備金の積立額の平均実績額を基に、それが将来とも償還期間満了まで変わらないと仮定して、当庁が独自に今後の償還準備金の積立て見通しを推計したところ、
 
i )
 千葉プール、若戸大橋、姫路プール及び第二神明道路の4道路では、償還期間内に償還が完了する、
 
ii )
 小田原厚木道路、長崎バイパス、真鶴道路、豊川橋、箱根新道、碓氷バイパス及び境水道大橋の7道路(平成10年度末現在の道路資産総額約2,064億円)では、毎年度、償還準備金が積み上げられるものの、償還期間満了時において未償還額(償還率は道路により約6パーセントから約83パーセント)が残る、
 
iii)
 日光宇都宮道路、東富士五湖道路、西富士道路、八王子バイパス、掛川バイパス、藤枝バイパス、新利根川橋、磐田バイパス及び浜名バイパスの9道路(平成10年度末現在の道路資産総額約2,116億円)では、償還残年数内には償還準備金が積み上げられず、道路資産額を上回る未償還額が残る状況となっている。
         上記ii )及びiii)の道路については、償還期間満了時においてのみ損失補てん引当金から未償還額に相当する額が充当された上で、本来の道路管理者に移管され、無料道路として利用される仕組みとなっている。
 このため、道路公団の経営の健全性を確保するためには、上記iii)の9道路のように償還準備金を全く積み立てられず、営業を継続しても未償還額が拡大する特異な道路については、未償還額の拡大を早期に止めるための方策の検討が必要となっている。
 なお、道路公団では、平成7年度決算分から道路別の収支状況及び償還準備金の積立て状況を公表しているものの、現状では、道路別の償還率の計画と実績の対比が容易ではないなど、償還計画の達成状況は分かりづらいものとなっている。
         
       したがって、建設省は、一般有料道路の効率的な整備並びに道路公団の一般有料道路事業の透明性及び将来にわたっての安定的かつ確実な事業の採算性を確保する観点から、次の措置を講ずる必要がある。
     
1.
 事業(事業変更)許可申請に当たっては、償還計画上の収入額の基礎となる計画交通量の推計精度の向上を図り、適正な事業投資限度額を算出するとともに、関連道路の整備等経年的な計画交通量の増減要因を明確にするよう道路公団を指導すること。
     
2.
 営業を継続しても未償還額が拡大する道路については、収支改善のための方策を検討し、未償還額の拡大の抑制に努めるよう道路公団を指導するとともに、その支援策について検討すること。
 また、道路別の償還計画の達成状況について、計画と実績とを対比するなど、より分かりやすい情報提供を行うよう道路公団を指導すること。
     
    イ アクアライン
       アクアラインは、東京湾のほぼ中央を横断し、神奈川県川崎市と千葉県木更津市を結ぶ海底トンネル及び橋梁から成る延長15.1キロメートルの一般有料道路である。アクアラインは、首都圏中央連絡自動車道、東京外郭環状道路、首都高速道路湾岸線、東関東自動車道、京葉道路等と一体となって首都圏における広域的環状道路網を形成し、増加する交通需要を円滑に分散させ、都心部や周辺部の交通混雑の緩和と産業活動の向上、都市間の連絡強化と新しい都市圏形成によって首都圏の調和ある発展に寄与するものとして建設された。
 アクアラインの償還計画上の計画交通量については、事業の完成年度である平成9年度に工事の進ちょく状況及び事業を取り巻く情勢の変化等に対応して、原単位推計値(自動車1台当たりの平均積載量・乗車人員)、自動車走行台キロ(自動車の走行距離の総和)の伸び、関連道路網の整備予定などの見直しが行われ、昭和62年に事業許可された償還計画上の計画交通量(供用初年度3万3,000台/日、供用開始から20年後6万4,000台/日)を下方修正し、供用初年度約2万5,000台/日、供用開始から20年後約5万3,000台/日とした。利用の拡大と定着を図るため、基本料金を供用開始後5年間割り引く措置(例えば、普通車は4,900円のところを4,000円、大型車は8,100円のところを6,600円)を講じるとともに、償還計画の償還期間を30年から40年に延長することによって事業の採算性を確保することとした。
 しかし、長期の景気低迷を背景とした全国的な交通需要の落ち込み、通行料金が高いことによる料金抵抗と不況下における価格意識からくる割高感により、一般道路を始め競合路線である首都高速道路湾岸線、東関東自動車道及び京葉道路からアクアラインへの交通量の転換が少ないこと、また、房総半島における各種開発の遅延や規模の変更が行われたこと等事業環境が予想と大きく食い違ってきた。このような中、関係地方公共団体である千葉県から、既に実施している道路公団の一般有料道路である京葉道路と千葉東金道路との料金プール制を拡大し、償還期間の延長と公的助成の拡充により、京葉道路のサービス向上と併せて首都圏中央連絡自動車道の整備促進、料金引下げによるアクアラインの有効活用を図る必要があるという高速道路網の整備・活用の考え方が示された。これを踏まえ、道路公団では、平成11年9月に「千葉地域高速道路網検討会」を設置した。同検討会は、アクアラインを含む有料道路制度の活用のための施策、講じるべき具体的対策とその効果についての検討を行った結果、同年12月に次のような提言を行っている。
     
i )
 新たな千葉プール(京葉道路、千葉東金道路I期・II期・III期とアクアライン等)の形成
     
ii )
 公的負担による利用者の金利負担の軽減措置(利用者の料金で賄う利率を3パーセントまで軽減する措置)
     
iii)
 償還期間を50年以内に延長(現行の千葉プールは30年、アクアラインは40年)
     
iv)
 上記のような有料道路制度活用策を講じることで、京葉道路の機能改善、千葉東金道路III期の早期整備、アクアラインの料金調整(現行の片道普通車4,900円(供用開始後5年間は4,000円)を平成12年度から19年度まで3,000円、20年度から24年度まで4,000円、25年度以降4,900円)を実施
     
v)
 これらを前提として、アクアラインの計画交通量を見直し、平成14年度が1万2,000台/日、22年度が3万5,000台/日、32年度が4万1,000台/日と推計(現行の計画交通量は平成14年度が4万229台/日、22年度が4万6,488台/日、32年度が5万4,440台/日)
       また、事業完成後約1年を経過した時点において、事業の効果、環境への影響等の確認など事業の事後評価を行うため、道路公団が平成11年7月に設置した「東京湾アクアライン事業事後評価委員会」の中間報告(同年12月)では、アクアラインの利用低迷の要因分析を行った上で、今後の改善方策として、利用促進策を推進するほか、維持管理経費の節減など道路公団自身の経営努力の必要性を指摘している。
 
       今回、アクアライン事業の採算状況等を調査した結果、次のような状況がみられた。
     
1.
 アクアラインの供用開始後の実績交通量は、平成9年度で1万1,876台/日(計画交通量2万5,468台/日の47パーセント)、10年度で9,996台/日(計画交通量2万8,702台/日の35パーセント)、11年度(平成12年1月末現在)で9,651台/日(計画交通量3万1,581台/日の31パーセント)と、毎年度漸減し、償還計画上の収入額の基礎となる計画交通量を著しく下回る状況となるなど、償還計画どおりの収入を確保することはほぼ不可能となっている。
 また、道路公団では、償還計画上の収入額の基礎となる計画交通量の算出根拠である他の道路からの転換率等については明らかにしているが、関連道路の整備、開発事業等経年的な計画交通量の増減の要因については明らかにしていない。
 道路公団では、交通量の減少に対処するため、支出経費の節減のほか、アクアライン往復チケット及び回数券等割引商品の販売等種々の増収対策を講じているものの、効果は十分上がっていない。アクアラインの収入実績は、平成9年度で52億円(償還計画の44パーセント)、10年度で148億円(同32パーセント)と、償還計画と比較して大きく落ち込んでおり、10年度の収支差は、マイナス320億円と計画上の収支差(マイナス161億円)の約2倍に拡大し、その結果、同年度末現在の未償還残高は、1兆4,118億円と計画額1兆3,982億円を136億円上回り、交通量が低迷したまま推移すれば、償還の先行きは極めて厳しいものとなっている。
     
(注)  平成12年度予算において、公的負担による利用者の金利負担の軽減措置(利用者の料金で賄う利率を3パーセントまで軽減)及び償還期間の延長(既存の千葉プール(京葉道路、千葉東金道路)について30年を50年に、アクアライン及びアクアライン連絡道について40年を50年にそれぞれ延長)が措置されている。これを踏まえ、道路公団は、千葉地域高速道路網検討会の提言の内容に沿い、平成12年6月22日に既存の千葉プールにアクアライン、アクアライン連絡道及び新たに事業化する木更津と東金間を東京湾横断・木更津東金道路として加えた新たな千葉プールの形成、アクアラインの料金調整(料金値下げ)等の事業変更許可申請を行い、同年7月3日に許可を受けている。
     
2.
 アクアラインの交通管理、保全点検等の維持管理業務については、東京湾横断道路の建設に関する特別措置法(昭和61年法律第45号)に基づき、道路公団が東京湾横断道路株式会社と「管理に関する協定」を締結し、同社に業務委託しており、協定金額及び実施単価等については、毎年度「管理に関する細目 協定」を締結して決定している。
 道路公団では、利用の低迷により料金収入が大幅に落ち込んでいることから、現地の状況を踏まえ、路面清掃頻度の見直し、トンネル照明の低減等の実施により、管理経費について平成9年度で約5億円(償還計画上の管理費等の38パーセント)、10年度で約25億円(同47パーセント)をそれぞれ節減し、支出経費の縮減を行っているが、一層の経費節減を図る余地として以下の例がみられる。
       
i )
 道路公団は、巡回車による道路状況、交通状況、気象状況等の把握・通報や交通事故等の異常事態への対応等を行う交通管理業務を委託している(平成11年度協定額1億6,000万円)が、アクアラインが海ほたる(パーキングエリア)を挟んで川崎市側が海底トンネル(延長約10キロメートル)、木更津市側が橋梁(延長約5キロメートル)と特殊な構造となっているため、これらの道路特性と開通前の推計交通量を考慮して、1日10回の頻度で定期巡回を行うよう指示している。 この頻度は、道路公団が定める定期巡回頻度の目安では「5万台/日以上10万台/日未満」に該当するが、アクアラインの実績交通量(平成10年で1万682台/日)に対応する定期巡回頻度は、1日7回(目安の「2万台/日未満」に該当)であることから、木更津市側と川崎市側の両方から現場に急行できる体制を確保しつつ、開通後の利用実態、緊急時の対応状況を踏まえ巡回頻度を見直す余地がある。
 なお、我が国最長である関越自動車道関越トンネル(延長は上下線各約11キロメートル)では、平成10年の実績交通量1万8,780台/日に対して、道路特性を踏まえ、定期巡回頻度は1日8回(目安の「2万台/日以上3万台/日未満」に該当)である。
ii )
 アクアラインについては、構造の特殊性から、海底トンネル変位計測(縦断測量、浮き上がり沈下、内空断面変位、継目の弾性ワッシャー部変位)、立坑変位計測(立坑の変位、立坑の傾斜・不等沈下量)及び人工島(海ほたる)平坦部の地盤沈下量等の計測を行っているが、計測結果による変状の動向を見極めつつ、計測頻度を見直すとともに、計測データの安定が確認できたものについては計測の継続の適否も含めた検討が必要である。
     
 
       したがって、建設省は、道路公団に対し、アクアライン事業の透明性及び将来にわたっての安定的かつ確実な事業の採算性を確保する観点から、次の措置を講ずるよう指導する必要がある。
     
1.
 償還計画策定上の収入額の基礎となる計画交通量については、実績交通量の推移等を踏まえ、推計精度の向上を図ること。また、関連道路の整備等経年的な計画交通量の増減要因を明確にすること。
     
2.
 増収対策の実施並びに安全かつ円滑な交通を確保しつつ、道路特性、交通量等を踏まえた交通管理業務の巡回頻度及び現場の状況を踏まえた施設の計測頻度を見直し、維持管理経費の縮減対策を実施するなど、一層の経営努力を行うこと。
     
    ウ 本州四国連絡道路
       本四公団は、本州と四国の連絡橋に係る有料の道路及び鉄道の建設及び管理を総合的かつ効率的に行うこと等により、本州と四国の間の交通の円滑化を図り、もって国土の均衡ある発展と国民経済の発達に資することを目的として、昭和45年7月に設置された。
 本四公団が建設・管理する有料道路は、瀬戸中央自動車道(児島・坂出ルート、延長37.3キロメートル、昭和63年4月全線供用開始)、神戸淡路鳴門自動車道(神戸・鳴門ルート、延長89.0キロメートル、平成10年4月全線供用開始)及び西瀬戸自動車道(尾道・今治ルート、延長59.4キロメートル、平成11年5月に一部島内区間を除き概成、供用開始(現在の供用延長46.6キロメートル))の3ルートであり、尾道・今治ルートの供用開始をもって3ルートは概成している。
 本四公団の供用中の有料道路に係る収支は、平成8年度が収入508億円に対して費用1,071億円で収支差がマイナス563億円、9年度が収入606億円に対して費用1,053億円で収支差がマイナス447億円、10年度が収入856億円に対して費用1,545億円で収支差がマイナス689億円となっている。また、平成10年度末現在の道路資産総額3兆5,325億円と欠損金累計額8,377億円を合計した借入金残高は4兆3,702億円となっており、公団経営は極めて厳しい状況に置かれている。このため、安全かつ円滑な交通の確保、道路機能の保全、利用促進、利用者サービスの充実、長大橋技術の継承・高度化等を行うとともに、適正な料金水準の下で、借入金の円滑な償還をいかに進めるかが公団事業における重要課題となっている。
 なお、現行の償還計画は、平成9年12月に変更(3ル−ト全体の建設及び維持管理に要する経費を合算して償還する3ル−ト料金プ−ル制)されたもので、償還計画期間は8年度から57年度までの50年間となっている。要償還額のピークは平成18年度の4兆7,158億円で、同年度に収支差がマイナスからプラスに転換し、57年度に償還が完了する計画となっているが、これは、23年度まで毎年度800億円(平成24年度は約188億円)、10年度から24年度までの累計額で1兆1,388億円(国7,592億円、地方公共団体3,796億円)の出資が行われることを前提としたものである。
         
       今回、本四公団における道路事業の採算状況等を調査した結果、次のような状況がみられた。
      (ア)  本四公団の償還計画は、児島・坂出ルートが供用された昭和63年度以降、未供用区間の新規供用に伴い平成3年11月及び9年12月の2回変更が行われたが、それぞれの計画とも、交通量の推計の前提となった経済予測に基づく輸送量見込み等が実績と違ったことなどから、計画交通量と実績交通量との間に乖離が生じている。
       
1.
 児島・坂出ルートにおける本州と四国間直通の計画交通量と実績交通量を比較すると、以下のとおりである。
       
 
i )
 昭和63年1月に変更した償還計画上の収入額の基礎となる計画交通量は、63年度が2万4,900台/日、平成元年度が2万6,040台/日、2年度が2万7,240台/日となっているのに対し、実績交通量は、それぞれ1万823台/日(計画交通量に対する比率43パーセント)、9,070台/日(同35パーセント)、9,809台/日(同36パーセント)にとどまるなど大幅な乖離が生じている。
 
ii )
 平成3年11月に変更した償還計画では、計画初年度である3年度の計画交通量を変更前の計画の計画交通量(2万8,410台/日)の約40パーセントにあたる1万1,370台/日に引き下げたことから、当該年度の実績交通量の計画交通量に対する比率は99パーセントとなったが、9年12月の償還計画変更の前年度である8年度では、計画交通量2万4,020台/日に対して実績交通量は1万5,211台/日(計画交通量に対する比率63パーセント)に落ち込んでいる。
 
iii)
 平成9年12月に変更した現行の償還計画では、償還期間を変更前の計画の33年から50年に延長し、9年度の計画交通量を変更前の計画の計画交通量(2万7,920台/日)の約57パーセントに当たる1万5,860台/日に再度大幅な引下げを行った結果、9年度の計画交通量に対する比率は102パーセントとなっている。しかし、平成10年度では計画交通量の1万7,390台/日に対して実績交通量は1万5,793台/日(計画交通量に対する比率91パーセント)、11年度では、計画交通量1万6,650台/日に対して11年12月末時点での実績交通量は1万5,471台/日(計画交通量に対する比率93パーセント)にとどまり、計画交通量を達成する見込みは引き続き厳しい状況にある。
       
2.
 神戸・鳴門ルートは、平成10年4月に全線供用開始されたが、明石海峡大橋は、10年度では計画交通量の3万30台/日に対して実績交通量は2万5,614台/日(計画交通量に対する比率85パーセント)、11年度では計画交通量の3万1,350台/日に対して11年12月末時点での実績交通量は2万3,054台/日(同74パーセント)となっている。また、大鳴門橋についても、10年度では計画交通量の2万4,100台/日に対して実績交通量は1万6,605台/日(同69パーセント)、11年度では計画交通量の2万5,220台/日に対して11年12月末時点での実績交通量は1万5,916台/日(同63パーセント)となっており、実績交通量が計画交通量に比べて低い水準にとどまっている。
3.
 3ルートを構成している各橋梁の交通量(橋上交通量)をみると、平成10年度では8大橋(明石海峡大橋、瀬戸大橋等)の合計の計画交通量の11万6,750台/日に対して実績交通量は10万955台/日(計画交通量に対する比率86パーセント)、11年度では11大橋(8大橋に加え尾道・今治ルートの新尾道大橋、多々羅大橋及び来島海峡大橋)の合計の計画交通量の16万3,650台/日に対して11年12月末時点での実績交通量は14万1,149台/日(同86パーセント)にとどまっている。
      (イ)  現行の償還計画(平成9年12月変更)上の収入額の基礎となる計画交通量は、第11次道路整備五箇年計画(計画期間は平成5年度から9年度まで)の策定に当たって建設省が推計した自動車走行台キロの将来予測に基づき算出されている。しかし、平成10年度に決定された新道路整備五箇年計画(計画期間は平成10年度から14年度まで)の自動車走行台キロの将来予測は、近年の経済活動の低迷等を背景として下方修正(平成22年度の予測走行台キロが、山陽ブロックで579億台キロから476億台キロ(マイナス18パーセント)に、四国ブロックで389億台キロから297億台キロ(マイナス24パーセント)に修正)されるなど、計画交通量の推計根拠が変動していることから、3ルートの利用状況が安定した早い時点で、利用実態を調査・分析し、これを踏まえた検証が必要となっている。また、これに合わせ、償還実績についても償還計画に対応した形で検証することが必要となっている。
 なお、本四公団では、3ルートの採算性について、概成後の平成11年度決算分からルート別の収支率の公表を予定しているものの、現状では、償還計画の達成状況については、償還計画と毎年度の決算をその都度照らしながら判断しなければならず、分かりづらい状況となっている。
      (ウ)  本四公団では、償還計画上の収支差を維持するため、道路公団との連携による周遊チケット、ジャパンフローラ2000前売入場券とのセットチケット等割引商品の販売などの増収対策を講ずるとともに維持管理費の縮減に努力してはいるものの、前述のとおり、実績交通量が計画交通量を大幅に下回り、予定した収入を確保できていない。償還計画の達成状況をみると、平成9年度の償還計画の改定の際に、10年度の計画交通量を前年度実績に基づき見直したため、10年度の収入実績額は償還計画上の計画額840億円に近い807億円(計画額の96パーセント)となり、支出についても維持管理費の縮減努力(清掃頻度の見直し等)によって計画額2,905億円に対し実績額は2,757億円(計画額の95パーセント)に抑制された結果、償還計画上の収支差マイナス2,064億円に対し実績額はマイナス1,950億円と、114億円の圧縮が図られている。しかし、平成11年度は、収入計画額を1,199億円、支出計画額を2,101億円として収支差をマイナス903億円と見込んでいるのに対して、11年度予算では、道路事業の収入額を844億円、支出額を1,927億円として収支差をマイナス1,083億円と見込んでおり、予算ベースでは、償還計画で予定した収支差のマイナス額が約180億円増大することになり、引き続き収入減を補うための増収対策を講ずるとともに、業務の合理化、効率化等に努める必要がある(項目2「業務の合理化・効率化等」を参照)。
 
       したがって、建設省は、本四公団に対し、道路事業の透明性及び将来にわたっての安定的かつ確実な事業の採算性を確保する観点から、次の措置を講ずるよう指導する必要がある。
     
1.
 償還計画上の収入額の基礎となる計画交通量及び償還計画の達成状況を検証し、償還が確実に図られるよう改善方策を検討すること。また、償還計画の達成状況について、計画と実績を対比するなど、より分かりやすい情報提供を行うこと。
     
2.
 増収対策を講ずるとともに、業務の合理化・効率化等に努めるなど、一層の経営努力を行うこと。
         
  (3) 情報公開の促進
     道路公団は、平成10年8月策定の「中期業務計画」(計画期間は平成10年度から14年度まで)において、今後の道路整備に当たっては将来の採算見通しを、財務状況については計画と実績の対比を、国民に分かりやすく説明するとしている。また、建設省道路局長に対する高速自動車国道の新たな整備計画(案)に対する公団意見 (平成10年12月18日総裁名)等では、引き続き定期的に償還状況について情報開示するとしている。さらに、「特殊法人等の整理合理化について」(平成9年12月26日閣議決定)において、道路公団については、財投機関債を発行し、自力での資金調達の拡大を図ることとされている。財投機関債は、民間金融市場において個別に発行する政府保証のない公募債券であるため、その発行に伴い、格付けの取得及びディスクロージャー等を通じた市場評価が行われ、公団経営の効率化を進める効果が期待できるが、その円滑な発行と調達金利の適正な評価を得るためには、公団事業に係る経営情報の一層の公開が求められている。
 また、本四公団は、平成11年4月策定の「中期業務計画」(計画期間は平成11年度から14年度まで)において、適正な料金水準の下で有利子負債を抑制し計画的な償還を図るために、国及び地元地方公共団体の出資金(償還対象)を充てることとし、出資団体の負担の年度間の平準化のため、24年度まで出資が継続される計画になっていることから、償還の仕組みや本州四国連絡道路の整備効果等について、利用者等に対しより一層十分な説明を行い、出資金についての理解を得ることにより、採算性の確保に努めるとしている。
         
     今回、道路公団及び本四公団の道路事業に係る経営情報の公開状況等を調査した結果、次のような状況がみられた。
   
1.
 道路公団の高速道路事業については、公団決算資料(財務諸表、事業報告書、附属明細書及び決算報告書)、道路公団の年報等で事業全体の償還準備金、償還率並びに毎年度の路線別収入、管理費等費用及び収支率を公表しているほか、中期業務計画の中で計画期間満了時(平成14年度)の償還率等の目標数値を設定し、当該数値を公表している。
 しかし、項目11)のとおり、平成9年12月に施行命令のあった31インターチェンジ区間のうち、供用開始時(おおむね平成20年ごろ)の計画交通量が5,000台/日以下と試算されたものが14インターチェンジ区間に及ぶなど、交通量が少ない新規整備道路(路線)の整備も予定されていることから、償還計画の達成状況等の経営情報の公表が一層重要となっているが、償還実績を償還計画に対応した形で明らかにしていない。
   
2.
 道路公団の一般有料道路事業については、道路公団の年報等で道路別収支率、償還準備金等を公表している。一方、道路別借入金の償還見通しについては、項目12)アで既述のとおり、当庁独自の試算では、償還準備金が積み上げられず、道路資産額を上回る未償還額が残ると推定されるものや、毎年度、償還準備金は積み上げられるものの、償還期間満了時において未償還額が残ると推定されるものが、単独路線の半数以上を占めるなど、極めて厳しい状況もみられる。
 しかし、平成7年度決算分から道路別の収支状況や償還準備金の積立て状況を公表しているものの、現状では、道路別の償還率の計画と実績の対比が容易ではないなど、償還計画の達成状況については分かりづらい状況となっている。
   
3.
 本四公団の道路事業については、公団決算資料(財務諸表、事業報告書、附属明細書、決算報告書等)で、道路事業全体の借入金残高、供用道路全体の料金収入、管理費等の費用及び当期損失金を公表している。また、項目1(2)ウのとおり、3ルートは料金プール制であること、これまでそれぞれのルートが部分的に開通してきたことから、ルート別の収支率については算出・公表されていなかったが、3ルート概成後の平成11年度決算分から、ルート別の収支率の公表を予定している。平成11年度の公団予算では、償還計画上の11年度予定収支差額マイナス903億円を約200億円上回るマイナス1,100億円と見込むなど、公団経営は、引き続き厳しい採算状況が予想されており、経営情報の公表の促進が求められている。しかし、現状では、償還計画の達成状況については、償還計画と毎年度の決算をその都度照らしながら判断しなければならず、分かりづらい状況となっている。
         
       したがって、建設省は、道路公団及び本四公団に対し、経営情報の公開の促進等により公団経営の一層の透明性を確保する観点から、次の措置を講ずるよう指導する必要がある。
     
1.
 道路公団は、高速道路の償還計画の達成状況について公表すること。
     
2.
 道路公団の一般有料道路及び本四公団の有料道路については、償還計画の達成状況についてより分かりやすく公表すること。
2 業務の合理化・効率化等
  (1) 業務委託経費の節減
     道路公団は、平成6年の高速道路料金の改定時に、44年までの料金徴収期間内に料金所の入口自動化、集中工事方式の採用や維持管理業務の機械化等に伴う委託業務の合理化をより一層推進すること等により、管理費を年間約205億円(総額約8,000億円)節減する目標額を設定した。また、平成6年10月には、公団内に外部有識者を構成員とする経営改善委員会を設置し、公団事業の運営等に係る改善意見を取りまとめ、これに基づき、事業執行の効率化や経費節減、サービスの向上等事業運営全般にわたり、経営の合理化・活性化を一層推進することとしている。
 また、本四公団は、3ルートの概成により本格的な管理段階を迎えたが、項目1(2)ウのとおり、ルート別(橋梁別)の実績交通量は計画交通量を大幅に下回っており、償還計画上の収入予定額を確保することが困難な状況にある。また、償還計画を達成するためには管理費の節減が経営上重要な課題であるとし、毎年度、年度当初に認可予算に対する節減目標を定め、管理費の縮減に努力しており、平成9年8月の料金及び料金徴収期間の変更申請に当っては、海峡部橋梁の塗装塗り替えサイクルの延伸技術の開発、料金所入口の自動化、長大橋点検・道路巡回点検の合理化、舗装補修サイクルの延伸等により、年間約22億円の節減を図るとの目標を設定し、管理費の節減に努めている。
 さらに、道路公団及び本四公団では、政府の公共工事コスト縮減対策に関する行動指針(平成9年4月策定)に基づき、「公共工事コスト縮減対策に関する行動計画」を策定し、計画期間内(平成9年度から11年度まで)に、8年度の標準的な管理コストに対して少なくとも5パーセント以上の縮減を図ることとしている。
         
     今回、道路公団及び本四公団の維持管理業務のうち、交通管理業務、維持修繕業務及び料金収受業務に係る委託の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
   
1.
 道路公団は、交通管理業務について、巡回車による定期又は臨時の道路巡回を実施し、道路状況等の把握と通報を行うとともに、異常事態の処理等に当たる要員を交通管理基地ごとに配置している。
 道路公団では、同公団が定める頻度の定期巡回を行い、かつ、緊急出動及び安全な交通を確保するための諸活動を行い、さらに、報告書作成等の内務処理時間を確保するために必要となる「総要員数」を一定の算式により算出しているが、巡回車への乗務体制を昼夜共に2人1組とすることを原則としている。このため、道路公団では、一定の算式により算出された総要員数を確保し、かつ、原則として昼夜共に偶数配置を維持できる要員数を「当該交通管理基地に必要な総要員数」として契約条件に示すとともに委託人件費の積算の根拠としている。
 巡回ダイヤ表に基づく定期巡回の巡回間隔及び巡回体制については、直営班(公団職員)と委託班(委託会社の職員)が業務を分担して実施している交通管理基地では、夜間、直営班1班と委託班2班を配置している例がみられるが、直営班1班と委託班1班がより効率的に定期巡回を行うこと等により、必ずしも委託班を2班(4人)配置しなくても、緊急出動等の体制を維持することが可能であり、委託経費の縮減を図る余地がみられる。
   
2.
 道路公団は、維持修繕業務である路面清掃について、清掃頻度を決定する主要因の一つである日平均交通量を5段階(ランク)に区分し、各段階別に清掃種類ごとの標準的な清掃頻度の目安を示した基準を策定(昭和56年4月)している。また、平成3年11月には、清掃経費を節減する観点から、上記日平均交通量の区分の見直し(下限の5,000台未満を1万台未満に、上限の5万台以上を7万台以上に、それぞれ1段階引上げ)を行っているが、これは飽くまでも標準的な清掃頻度であり、交通量、大型車混入率、道路の特性(産業道路、観光道路、塵埃量)、現地条件等を勘案し、清掃頻度を増減できることとしている。これを受け、各支社及び管理局は、管理事務所が管轄する路線の管理区間単位に、清掃頻度の目安を示した基準を参考に道路の地域特性とコスト縮減の観点等を加味し、当該路線の管理区間における清掃頻度を清掃種類ごとに決定し、路面清掃に係る契約を締結している。
 本社が示している清掃頻度の目安を示した基準では、清掃専用車(高速スウィーパー)を使用しての機械による路面清掃(路面清掃A)については、日平均交通量が2万5,000台未満の場合は3週間に2回、2万5,000台以上の場合は1週間に1回と清掃頻度に差を設けているのに対し、作業員とトラックによる路面清掃(路面清掃C)については、1万台以上から5万台未満までの場合は区分を設けず、一律1週間に3回の清掃頻度としている。しかし、管理事務所が管理する高速道路の140管理区間における日平均交通量を調査した結果、1万台以上から5万台未満が86区間(全区間の61.4パーセント)を占めており、このうち、1万台以上2万5,000台未満が50区間、2万5,000台以上5万台未満が36区間となっている。また、調査した3管理局管内の平成10年度における路面清掃Cの清掃頻度の設定状況は、日平均交通量が1万台以上5万台未満に該当する35管理区間のうち、1万台以上2万5,000台未満の区間が18区間あり、そのうち9区間で上記の基準(1週間に3回、年間で156回)の2分の1以下の清掃頻度としている一方で、上記の基準どおりの頻度としている区間がある。また、管理事務所間において同じ清掃頻度であってもごみの収集重量に2倍以上の開きがあり、路線の特性、周辺状況等の違いがあるとしても、ごみの内容を把握・分析することなどにより、合理的な清掃頻度を検討する余地がある。
   
3.
 道路公団は、各料金所における収受員の業務状況を指導・監督するため、現場代理人に1日1回以上管轄の料金所を巡回することを義務付けており、これに必要な巡回車(平成11年度155台)を購入・維持するための経費を減価償却費として積算している。道路公団では、積算に際しての想定購入車両(4ドアセダン)の排気量を高速安定走行に適する必要があるとして2,000ccクラスとしているが、近年車両の走行性能は著しく向上しており、想定購入車両の排気量を見直す余地がある。
   
4.
 本四公団では、本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法(昭和56年法律第72号)第23条及び「本州四国連絡橋の建設に伴う港湾運送事業に関する対策の基本方針」(昭和58年5月30日本州四国連絡橋雇用対策中央協議会)等に基づく離職者に対する雇用支援策の一環として、離職者を雇用している民間会社に料金収受業務を委託している。本四公団は、委託に当たり、これら民間会社(以下「料金収受会社」という。)は料金収受業務の受注経験がないことから、料金所での料金収受とその結果について関係証拠書類との照合を行う第一次審査業務を「料金収受実施業務」として料金収受会社に委託し、第一次審査結果について審査を行い本四公団に報告する第二次審査業務及び料金収受業務に従事する収受員等の教育訓練、指導・監督を行う業務を「料金収受管理等業務」として財団法人本州四国連絡道路管理協会(以下「本四協会」という。)に委託している。本四公団は、料金収受実施業務の実施体制として、事務長、収受長及び収受員を、料金収受管理等業務の実施体制として、現場代理人及び料金所長を配置することとしている。さらに、道路公団が管理する高速道路との相互乗り入れに伴う通行料金の一体徴収を行っている料金所にあっては、本四公団分と道路公団分とを仕分けして事務処理することによる業務量の増加に対処するため、特定の料金所に、現場代理人を補助する現場代理人補助者及び料金所長を補助する事務長(いずれも本四協会の職員)を別途配置できることとし、平成10年度には、現場代理人補助者を4料金所に各1人、事務長を7料金所に1人ないし2人配置している。
 しかし、本四公団は、現場代理人補助者等について明確な配置基準を策定しておらず、道路公団が通行量の多い特定の料金所における業務量の増加に対処するために策定している主任及び複数事務長の配置基準(日平均出入交通量、収受員総数等)に照らしてみた場合、別途要員を配置するまでの業務量があるか否か疑問のある料金所が認められる。
 また、本四公団では、料金収受業務の経験がないことを理由として、料金収受会社には料金収受実施業務のみを委託してきた。しかしながら、料金収受会社8社のうち6社は10年以上の受託実績を有し、現場業務に従事する収受員のかなめとして各料金所に配置されている料金収受会社の事務長は、本四協会の職員である料金所長の補助者として例外的ではあるが、料金所長が不在の場合、料金所長の事務代行を行ってきているなど、これら6社の料金収受業務の処理能力等は向上していると考えられることから、料金収受実施業務のみを委託している料金収受会社の処理能力等を点検しつつ、料金収受管理等業務と料金収受実施業務の委託の在り方を検討する余地がある。
         
     したがって、建設省は、道路公団及び本四公団に対し、より効率的な業務の実施、委託経費の積算見直し等により管理コストの一層の節減を図る観点から、次の措置を講ずるよう指導する必要がある。
   
1.
 道路公団は、交通管理業務について、より効率的な要員配置となるよう巡回体制を見直すこと。
   
2.
 道路公団は、維持修繕業務である作業員とトラックによる路面清掃について、清掃頻度を決定する目安として示している日平均交通量に基づく基準の見直しを行うとともに、清掃頻度の決定に際して、ごみの発生量及びその内容を把握・分析するなどにより、より合理的な清掃頻度の設定に努めること。
   
3.
 道路公団は、現場代理人が料金所の巡回に使用する巡回車の積算上の排気量基準を見直すこと。
   
4.
 本四公団は、料金収受業務について、現場代理人補助者及び事務長の配置基準を明確にすること。また、料金収受管理等業務と料金収受実施業務の委託の在り方を検討すること。
   
  (2) 競争性導入の促進
   

 道路公団及び本四公団における契約は、「日本道路公団会計規程」(昭和31年12月27日付け道路公団規程第24号)第69条第1項及び「本州四国連絡橋公団会計規程」(昭和46年5月31日付け本四公団規程昭和46年第7号)第61条第1項に基づき、競争入札に付すことが原則とされている。また、その特例として、日本道路公団会計規程第70条及び「日本道路公団工事等契約事務処理要領」(昭和52年3月30日付け道路公団達第8号)第25条並びに本州四国連絡橋公団会計規程第61条第4項及び第5項に基づき、1)契約の性質又は目的が競争を許さないとき、2)災害の応急復旧等緊急を要する場合で競争に付する暇がないとき、3)競争に付することが不利と認められるとき、4)予定価格が少額なときその他両公団の事業運営上特に必要があるときは、随意契約により契約を締結することができるとされている。
 政府は、「特殊法人等の整理合理化について」(平成9年12月26日閣議決定)において、特殊法人等が、公益法人、株式会社等に業務を発注する場合、独占的契約を禁止し、小規模案件、緊急案件等を除き、競争入札とすることとしている。また、個別特殊法人等の整理合理化事項として、道路公団については、建設、維持修繕及び料金収受の業務に関して、小規模案件、緊急案件等を除き、競争入札とすることを、本四公団については、建設及び維持修繕の業務に関して、小規模案件、緊急案件等を除き、競争入札とすることを決定し、契約に際して一層の競争性の発揮を求めている。
 さらに、道路公団では、平成8年11月29日の建設大臣の口頭指示(道路公団自身も経営改革に向けた総点検をすべしとの要旨)に対する報告「日本道路公団及びその関連法人の改革について」(平成9年3月27日)において、道路公団の関連法人である財団法人道路施設協会が出資している関連会社については、1)関連会社が行っている維持修繕、料金収受等の維持管理業務について、新たに競争入札を導入するとともに委託費等の見直しを行うことにより管理コストの節減に資すること、2)関連会社を再編・整理し、協会持株を段階的に処分することを明記している。
 なお、本四公団については、本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法第23条及び本州四国連絡橋の建設に伴う港湾運送事業に関する対策の基本方針等に基づき、本四公団が外部委託する維持管理業務のうち、道路維持作業、料金収受実施業務等については、本州四国連絡橋の供用に伴い航路廃止等を余儀なくされた一般旅客定期航路事業及び港湾運送事業からの離職者に対する雇用支援策の一環として、これら離職者を雇用する民間会社と随意契約を行っている。
 前記閣議決定等を踏まえて、道路公団は、契約における競争性・透明性の一層の向上を図る観点から、高速道路等の維持修繕業務、保全点検業務及び料金収受業務等の維持管理業務について、平成9年度から順次公募型指名競争入札を導入している。契約額が250万円以上の契約に占める随意契約の割合は減少傾向にあり、平成10年度では、契約件数の17.6パーセント、契約金額の14.9パーセントとなっている。
 なお、道路公団が料金収受等の維持管理業務を委託していた民間会社のうち、財団法人道路施設協会(平成10年10月1日付けで財団法人道路サービス機構に名称変更するとともに、10年7月1日付けで設立許可を受けた財団法人ハイウェイ交流センターと10年10月1日から業務を分担)が平成9年度末現在において出資を行っていた52社(延べ契約業者数は67社)については、協会持株が順次処分されたことに伴い、11年12月現在、同協会との出資関係はなくなっている。
 一方、本四公団では、平成10年度以降、年間を通じて発生する交通事故の復旧工事、小規模修繕工事及び緊急工事については、これを集約して「道路修繕工事」として段階的に競争入札を導入するなどの措置を講じているものの、3ルートの概成により建設段階から管理段階に移行し、競争入札に付すべき大規模工事が少なくなってきたことから、契約額が250万円以上の契約に占める随意契約の割合は、平成10年度では、契約件数の49.2パーセント、契約金額の38.3パーセントとなっている。

       
     今回、道路公団及び本四公団において随意契約により委託を行っている維持管理業務の実施状況等を調査した結果、次のような状況がみられた。
   
1.
 次の業務については、随意契約とする理由が認められないもの、あるいは、条件整備を行えば随意契約の相手方以外でも実施可能なものであり、競争入札を導入する余地がある。
   
i )
 道路公団の支社、管理局等ブロック機関単位で契約を行っている業務のうち、交通統計等作成業務(交通量データ、事故データ、渋滞データ等を各々集計し、事故の詳細分析や渋滞要因の集計解析を行う業務)については11ブロック機関中6ブロック機関において、また、職員宿舎等点検業務(職員宿舎等の建物及び設備の点検調査、補修方法の検討、軽微な不良箇所等の補修作業を行う業務)については14ブロック機関中7ブロック機関において、それぞれ指名競争入札としており、他のブロック機関において随意契約としなければならない合理的な理由はない。
ii )
 道路公団の本社が契約を行っている業務のうち、料金収受機械等技術管理業務(料金収受機械のシミュレーション装置を利用する等による障害解析、障害の再発又は未然防止のための研究等を行う業務)、道路公団及び本四公団の支社又は管理局単位に契約を行っている業務のうち、料金収受機械等保守整備業務(料金収受機械等の保守整備を行う業務)については、両公団共通の独自仕様である料金収受機械等の磁気情報の読取技術の機密を保持しなければならないとして随意契約を行っている。 しかし、業務の内容からみて、これら業務の実施が可能な専門業者は複数おり、磁気情報の読取技術を秘匿する技術上の問題を解決すれば、競争入札の導入は可能とみられる。
iii)
 道路公団の支社又は管理局単位で契約を行っている業務のうち、通行券検札業務(公団職員の指示を受けて、不正通行の防止と不正通行者の取締りに係る補助業務)については、不正通行者の摘発等を最終目的とする業務の特殊性から安全性、隠密性、機動性等が求められるとして随意契約を行っている。しかし、業務の内容からみて実施可能な専門業者は複数おり、特記仕様書等での安全教育訓練の義務付けや業務実施上の留意事項を周知徹底することで競争入札の導入は可能とみられる。
iv)
 道路公団の支社及び本四公団の本社が契約を行っている業務のうち、計数管理業務(コンピュータシステムに蓄積された料金収受等のデータを統計的に処理する業務)については、使用しているコンピュータシステムが特殊な仕様で汎用性に欠けるとして、同一業者と随意契約を行っている。しかし、コンピュータのソフト技術は飛躍的に進歩しており、汎用性を持ったコンピュータシステムが開発されれば、競争入札の導入は可能とみられる。
   
2.
 本四公団では、同公団が管理する有料道路には、橋長1,000メートルを超える長大橋が9橋あり、これらの長大橋に係る補修塗装工事、吊橋のケーブル補修工事等の維持修繕工事については、耐久性に影響を及ぼす施工上の専門技術性に加えて、長大橋下を航行する船舶に対する安全対策、長大橋部での気象変動への対処、施工管理上の品質管理等、専門的知識、経験、技術力が要求されるとして、同一業者と随意契約を行っている。しかし、平成10年度及び11年度に随意契約が行われた主な維持修繕工事の実施状況をみると、i )工事に必要な諸手続の実施、ii )施工計画の立案及び計画書の作成、iii)施工管理及び品質管理、iv)材料、出来形の社内検査、v)安全管理・教育の実施等の工事管理に係る業務は随意契約を行った業者が担当し、現場工事については、各分野の専門業者に下請に出している。本四公団では、管理コストを縮減する観点から、維持修繕サイクルの延伸を重要課題に掲げ、そのための技術開発に取り組むとともに、維持修繕工事に際しては高度な品質管理と最新の施工技術を持った専門業者による施工が必要であるとしているが、i )品質管理上の問題が少ないと考えられる工場作業のウエイトが比較的高い工事、ii )施工に際して技術的なノウハウのウエイトが低いと考えられる工事については、競争入札の導入が可能と考えられる。また、施工方法の確立など試験工事を伴う工事については、施工方法が確立し技術が一般化した時点で段階的に競争入札を導入することが可能と考えられる。
       
     したがって、建設省は、道路公団及び本四公団に対し、維持管理業務に係る委託契約の競争性・透明性を確保する観点から、次の措置を講ずるよう指導する必要がある。
   
1.
 維持管理業務のうち、随意契約により業務委託等を実施している業務について、i )道路公団は、そのすべての業務(交通統計等作成業務、職員宿舎等点検業務、料金収受機械等技術管理業務、料金収受機械等保守整備業務、通行券検札業務及び計数管理業務)について、ii )本四公団は、料金収受機械等保守整備業務及び計数管理業務について、競争入札への移行を早期に図ること。
   
2.
 本四公団は、長大橋の特殊性を理由として随意契約を行っている維持修繕工事の工事内容を精査し、競争入札の導入が可能なものについて順次競争入札への移行を検討すること。
   
  (3) 組織・要員の合理化
  ア 組織・体制の見直し
      (ア) 道路公団
         道路公団の組織は、平成11年度末現在、14部室から成る本社組織、7支社、3建設局及び4管理局から成る地方組織、支社等の下部機関として77工事事務所、8技術事務所及び99管理事務所の現場組織のほか、試験・研究業務を担当する試験研究所及び公団職員に対する研修業務等を担当する総合研修所から構成されている。
 道路公団の組織について、政府は、「特殊法人等の整理合理化について」(平成9年12月26日閣議決定)において、建設局・管理局の統合により執行体制を効率化し、今後の事業拡大に当たっても、組織の増加は極力抑制すると決定している。
 また、道路公団では、平成8年度以降、順次建設局と管理局を統合・改組し、支社化を進めるとともに、10年度には本社組織の再編、部課の削減や2建設局の統合を図っているほか、管理事務所等の現場組織については、7年度期首現在の200事務所(調査事務所1、工事事務所88及び管理事務所111)を11年度期首現在185事務所(工事事務所78、技術事務所7及び管理事務所100)とするなど、組織・体制の合理化を進めている。
         
         今回、現場組織である管理事務所及び営業所、試験研究所を調査した結果、次のような状況がみられた。
        a 管理事務所
       
   管理事務所は、供用中の高速道路、一般有料道路の維持修繕、料金徴収等の管理業務を行う現場組織である。
 道路公団は、平成8年3月に「道路の管理を行う現場組織配置計画」(以下「配置計画」という。)を策定し、整備計画が策定されている高速道路区間等に配置する管理事務所の名称、設置場所、管理区間、管理延長等を定めている。また、管理事務所の設置基準として、担当する道路及び地域の特性に留意しつつ、i )担当範囲は管内の最遠地まで1時間程度で到達できること、ii )管理延長はおおむね100キロメートルとし、横断道等の交通僅少路線では可能な限り150キロメートルまで延伸すること、iii)設置場所は可能な限り地域行政の中心地付近のインターチェンジとすること等を定めている。
 道路公団では、配置計画に基づき、平成8年2月から11年4月までの間に、11管理事務所を廃止し隣接の管理事務所に統合しているが、統廃合された11管理事務所の平均管理延長は約50キロメートル(最長73.2キロメートル、最短20.6キロメートル)で、廃止前年度の管内日平均出入交通量の平均は約3万4,000台(最大8万3,194台、最小2,157台)となっている。今回、配置基準の一つである1管理事務所当たりの管理延長と統廃合された管理事務所の管理延長及び日平均出入交通量の平均を目安として、現在設置されている99管理事務所の状況をみると、以下の管理事務所については、道路及び地域の特性に留意しつつ、配置の見直しを検討する余地がある。
       
 
1.
 小松管理事務所の管理延長44.3キロメートル及び10年度の日平均出入交通量2万4,066台は、統廃合管理事務所の平均よりも低い。また、小松管理事務所に隣接する金沢管理所の管理延長60.1キロメートル及び日平均出入交通量6万792台、金沢管理所に隣接する富山管理事務所の管理延長60.6キロメートル及び日平均出入交通量3万6,878台は、いずれも管理延長でみると統廃合管理事務所の平均を約10キロメートル上回っているが、富山管理事務所の日平均出入交通量は統廃合管理事務所の平均と同程度である。
 
2.
 糸魚川管理事務所の管理延長59.5キロメートルは、統廃合管理事務所の平均を約10キロメートル上回っているが、10年度の日平均出入交通量5,850台は、統廃合管理事務所の平均を大きく下回っている。また、糸魚川管理事務所に隣接する上越管理事務所の管理延長55.4キロメートル及び日平均出入交通量2万319台、上越管理事務所に隣接する長岡管理事務所の管理延長52.3キロメートル及び日平均出入交通量2万7,912台は、統廃合管理事務所の管理延長の平均とほぼ同じであるが、日平均出入交通量の平均は下回っている。
 
3.
 延岡南道路管理事務所の管理延長3.7キロメートル及び10年度の日平均出入交通量5,028台は、統廃合管理事務所の平均を大きく下回り、管理事務所の規模としては小規模である。道路公団では、管理する延岡南道路(高速代替道路である一般有料道路)が飛び地であり、緊急時の即応体制の確保等が困難であるとの理由から、現地に管理事務所を設置している。しかし、同一支社管内で飛び地である八木山バイパスを管理する久留米管理事務所八木山バイパス営業所の管理延長13.3キロメートル及び10年度の日平均出入交通量8,816台を下回っている。また、全国的にみれば、飛び地であっても管理事務所ではなく営業所を設置している例もある。
        b 営業所
   営業所は、「日本道路公団組織規程」(平成10年6月30日付け道路公団規程第12号)に基づき、管理事務所の事務の一部を処理するため、必要な地に置くこととされている。平成11年度末現在、20管理事務所に27営業所が置かれている。このうち、栗東管理事務所湖西道路営業所及び久留米管理事務所八木山バイパス営業所についてみると、以下のとおり管理事務所の直接管理を検討する余地がある。
 
1.
 一般有料道路である湖西道路の管理業務を分掌する湖西道路営業所及び一般有料道路である八木山バイパスの管理業務を分掌する八木山バイパス営業所は、当初、管理事務所として設置されたものである。その後、隣接の管理事務所への統合に伴い、管理事務所としては廃止したものの、当該道路が高速道路ネットワークに接続せず飛び地に位置し、到達所要時間等からみて、緊急時の即応体制の確保を図る必要があること、委託の料金収受業務に対する監督上の必要性があること等を理由として、両営業所(湖西道路営業所:所長1人、八木山バイパス営業所:所長1人及び維持機械作業職員1人)を置いたものである。
 しかし、管理事務所からの到達所要時間は、アクセス道路の改善等によって従前より短縮されており、湖西道路営業所が40分程度(距離約37キロメートル)、八木山バイパス営業所が50分程度(距離約50キロメートル)となり、道路公団が定めている管理事務所の設置基準(最遠地まで1時間程度)からみると、管理事務所の直接管理の範囲内とみられる。
 
2.
 両営業所の主要業務は、委託している料金収受業務の料金収受結果の二次審査(1日1回)等委託事業者に対する指導・監督業務、緊急時の初期対応等の道路管理業務及び苦情処理であり、八木山バイパス営業所では、このほか車両の管理業務を担当している。
 しかし、料金収受結果の二次審査等委託事業者に対する指導・監督業務は、管理事務所からの到達所要時間からみて管理事務所での対応が可能とみられ、また、修繕等の作業を要する苦情処理や車両の管理業務については、管理事務所による対応で支障はないものとみられる。
c 試験研究所
   試験研究所は、2部9研究室及び3課から成る本所組織(東京都町田市)と下部機関である環境緑化センター(滋賀県石部町)から構成されているが、以下のとおり一部研究室について見直しの余地がある。
 
1.
 環境緑化センターは、近年、環境保全に係る研究・技術開発が高速道路の建設・管理においても緊急の課題となっていることを踏まえ、従来、草花、つた等の生産供給を主な業務としていた緑化試験場を平成11年7月1日に名称変更し、従前、試験研究所緑化研究室で実施していたフィールド実験等の実証的研究機能を同センターに移行したものであり、現在、自然環境保全、緑化に関する実験・調査・研究業務を重点的に実施している。
 
2.
 ところが、緑化研究室は、環境緑化センターが置かれた現在にあっても、試験条件等を変えずに継続する必要がある研究途上の重要課題があること、関連の研究機関等との連携・調整を図る上での利便性を確保する必要があることから、本所に引き続き存置されている。
 しかし、i )環境緑化センターへの名称変更の目的は、将来的に同センターを道路公団の環境緑化業務の総合基地として位置付けるものであること、ii )同センターにおいては、フィールド実験施設等が整備されつつあること、さらに、iii)関連の研究機関との調整業務等については、本所の調整部門に移行させることも可能であることから、緑化研究室の業務は、今後、同センター及び本所調整部門に引き継ぐ余地がある。
       
      (イ) 本四公団
         政府は、「特殊法人の整理合理化について」(平成7年2月24日閣議決定)及び「特殊法人等の整理合理化について」(平成9年12月26日閣議決定)の二度の閣議決定において、本四公団の組織・要員について、本州と四国を結ぶ3ルートが概成した時点において、1)現行の組織を大幅に縮小すること、2)要員を大幅に削減すること、3)長大橋技術の継承・高度化を図ることを目的として管理を主たる業務とする体制に移行することとしている。
 本四公団では、前記閣議決定に基づき、
       
i )
 本社については、平成11年度に部相当職を8部2室1役体制から5部1センター2室1役体制に、課相当職を30課11役体制から27課11役体制に縮小、
       
ii )
 第一管理局(神戸市)については、神戸・鳴門ルートが全線供用開始した10年度に建設局から管理局に名称変更するとともに、4部1室体制を3部2室体制に変更し、11年度には2部2室体制に縮小、
       
iii)
 第二管理局(岡山市)については、10年度に4部1室体制から2部1室体制に縮小、iv)第三管理局(尾道市)については、尾道・今治ルートが概 成した11年度に建設局から管理局に名称変更するとともに、4部体制から3部1室体制に変更、v)工事事務所については、8年度の5事務所を神戸・鳴門ルートの開通及び尾道・今治ルートの概成により11年度までに全廃、
       
iv)
 第三管理局(尾道市)については、尾道・今治ルートが概成した11年度に建設局から管理局に名称変更するとともに、4部体制から3部1室体制に変更、
       
v)
 工事事務所については、8年度の5事務所を神戸・鳴門ルートの開通及び尾道・今治ルートの概成により11年度までに全廃、
       
vi)
 管理事務所等については、8年度の6管理事務所体制を管理延長の延伸による2管理事務所の増設と2管理事務所の管理支所化により、11年度に6管理事務所2管理支所体制に変更
          等組織・体制の改編・合理化を図ってきた。
           
 今回、本四公団の組織・体制を調査した結果、次のような状況がみられた。
       
1.
 本四公団では、本社の下に、ルート別に管理局を設置し、各ルートの本州側と四国側に管理事務所を置く管理体制をとっている。
 これは、i )3ルートは長大橋を主体としており管理すべき構造物が多いこと、ii )各ルートが物理的に離れていること、iii)海峡部あるいは島しょ間を連絡している道路であることから、通行止めとなる際には地域の経済・社会、安全面に多大な影響を及ぼすなど、非常時には迅速な対応が要求されることを理由としている。
 このため、本四公団の管理局の平均管理延長は約58キロメートルとなっているが、地域ブロックごとに置かれている道路公団の支社又は管理局の平均管理延長(約660キロメートル)と比較すると、10分の1以下と短い距離となっている。
       
2.
 本四公団の交通管制業務は、各管理局に交通管制室を設置して実施されており、道路公団と同様に集中監視による遠隔操作が行われている。
 地域ブロックごとに置かれている道路公団の支社等の交通管制室の平均管理延長が約605キロメートルであるのに対し、本四公団では、海峡部あるいは島しょ間を長大橋により連絡している道路という特殊事情があることから、管理局(ルート)ごとに交通管制室を設置しており、その平均管理延長は約58キロメートルと、道路公団の交通管制室の平均管理延長の10分の1以下と短いものとなっている。
 なお、道路公団が管理するアクアライン(東京湾をトンネル延長約10キロメートルと橋梁延長約5キロメートルにより横断する一般有料道路)については、その管理事務所から77キロメートル離れた埼玉県岩槻市において、東京第二管理局にある交通管制室が他の一般有料道路や高速道路と併せた約610キロメートルを集中管理している状況にある。
         本四公団にあっては、建設から管理を主たる業務とする体制に組織の改編・合理化を進めてきたが、今後は、管理体制についても合理化を進めていく必要がある。
           
         したがって、建設省は、道路公団及び本四公団に対し、次の措置を講ずるよう指導する必要がある。
       
1.
 指摘した管理事務所については、担当道路及び地域の特性に留意しつつ、配置の見直しを検討すること。
       
(道路公団)
       
2.
 飛び地の一般有料道路の料金徴収等の管理業務を行っている営業所のうち、管理事務所から当該道路までの到達所要時間が1時間に満たないものについては、道路及び地域の特性に留意しつつ、管理事務所の直接管理を検討すること。
       
(道路公団)
       
3.
 試験研究所の環境保全・緑化対策業務の一元化に向けて、同研究所緑化研究室については、今後、廃止を検討すること。
       
(道路公団)
       
4.
 本社・管理局・管理事務所を通じた機能分担の在り方を含め、現行の管理体制の合理化を検討すること。
         
(本四公団)
    イ 要員管理の適正化
      (ア) 道路公団
         道路公団の定員については、日本道路公団法(昭和31年法律第6号)第22条に基づき、道路公団からの総事業量に応じた増員等の申請を建設大臣が認可する仕組みとなっている。建設大臣が認可した予算定員は、平成9年度の8,884人をピークに、10年度で8,873人(対前年度11人減)、11年度で8,857人(対前年度16人減)と若干数減少している。平成11年度の予算定員の内訳は、本社(試験研究所及び総合研修所を含む。)538人(6.1パーセント)、各支社の建設部門及び建設局(工事事務所及び技術事務所を含む。)3,202人(36.1パーセント)、各支社の管理部門及び管理局(管理事務所を含む。)5,117人(57.8パーセント)である。また、職員の職種は、「日本道路公団の職種に関する規程」(昭和42年6月26日付け道路公団規程第27号)に基づき、事務職、土木職等7種類に区分された一般職と料金収受職、交通管理職等7種類に区分された現業職から成っている。
 道路公団の平成11年度期首現在の高速道路の管理延長は6,453キロメートル、また、建設大臣から受けている高速道路建設の施行命令延長は9,006キロメートル、さらに、現在実施している高速道路の新設・改築区間の延長は3,258キロメートルであり、これらはいずれも過去最長の延長距離となっている。しかし、要員については、「特殊法人等の整理合理化について」(平成9年12月26日閣議決定)において、今後の事業拡大に当たっても、増加は極力抑制することとされており、引き続き増員抑制と要員の効率的な配置が求められている。
         
         今回、管理事務所の要員配置及び現業業務の体制を調査した結果、次のような状況がみられた。
        a 管理事務所の要員配置の比較
           管理事務所は、高速道路等の維持管理を担当している。管理事務所では、その業務を総務、営業(料金徴収業務の実施、審査等)、管理(道路管理、交通管理等)、工務、維持、改良及び施設に区分し、各々の業務区分ごとに職務の長としての助役を置き、各助役の下に係員を配置している。平成10年度末現在、100管理事務所(金沢管理所を含む。)が設置されており、2,895人(平成11年3月1日現在)の職員が配置されている。
 道路公団は、管理事務所の要員配置に当たっては、高速道路の新規供用に伴う管理業務量の増加等個々の管理事務所の事情を考慮した上で、現行体制での業務処理能力、当該年度の事業予算上の新規増員状況を勘案し、増員措置の必要性を判断するとしている。今回、10支社・管理局の19管理事務所について、業務区分別に配置要員1人当たりの主要業務の指標延べ15事項(数値は平成10年度実績)を抽出して比較すると、以下のように、管理事務所間の配置要員1人当たりの業務指標に不均衡が生じている状況や、管理、工務、維持、改良及び施設の各業務で抽出した業務指標すべてが平均以下となる管理事務所がみられる状況となっている。
         
1.
 営業業務(1人から4人配置。ただし、料金収受担当の現業職を除く。)では、配置要員1人当たりの「日平均出入交通量」の19管理事務所の平均5万9,748台に対し、平均の2分の1以下のものが3管理事務所(郡山1万9,700台、岐阜1万1,467台及び彦根1万3,667台)、平均の2倍以上のものが2管理事務所(所沢14万7,177台及び桑名12万7,550台)ある。また、岐阜管理事務所及び彦根管理事務所については、配置要員1人当たりの「料金所委託人員数」でみても、平均(88人)の2分の1以下である。
2.
 管理業務(1人から6人配置。ただし、交通管理担当の現業職を除く。)では、主要業務指標として抽出した配置要員1人当たりの「休憩施設数」(平均2.1か所)、「交通管理業務総人員」(平均8.2人)及び「管理担当延長」(平均22.7キロメートル)のすべてが平均の2分の1以下のものが1管理事務所(加須)、そのすべてが平均の2倍以上のものが6管理事務所(郡山、岐阜、多治見、久居、福山及び松山)ある。
 なお、抽出したすべての業務指標で平均以下のものが5管理事務所(札幌、仙台、所沢、名古屋及び久留米)ある。
3.
 工務・維持・改良業務(3業務の合計で5人から15人配置)では、主要業務指標からみて極端な格差は生じていないが、抽出した配置要員1人当たりの「管理担当延長」、「調査・工事等件数」及び「維持改良費等予算額」のすべてが平均以下のものが4管理事務所(所沢、加須、多治見及び久留米)ある。また、施設業務(3人から8人配置。ただし、施設制御管理担当の現業職を除く。)では、主要業務指標として抽出した配置要員1人当たりの「管理担当延長」、「連絡等施設数」、「車両保有台数」及び「施設予算額」のすべてが平均以下のものが2管理事務所(加須及び久留米)ある。
        b 現業職員
           道路公団は、料金収受、交通管理、維持機械作業、自動車運転、設備保守、タイプ及び電話交換の7職種の現業職員を配置しているが、外部委託により実施することが可能な業務については、業務運営の効率化を図る観点から、逐次委託を推進することとしている。現業職員の総数は、平成7年度末現在の1,014人が10年度末現在では730人となっており、3年間で284人の削減が行われている。現業職員の削減は、定年退職等離職者の不補充(227人減)、直営業務の外部委託等に伴う事務職への職種変更(53人減)等により行っているが、外部委託の推進状況等をみると、以下のような状況がみられる。
          1. 料金収受職
         
   料金収受業務の大半は既に外部委託(平成10年度末現在の委託収受員数1万3,781人、直営収受員数116人)されており、直営収受員の配置先は4料金所(京浜管理事務所横浜新道営業所、羽島管理事務所一宮営業所、栗東管理事務所栗東営業所及び吹田管理事務所西宮営業所)のみで、このうち2料金所(栗東営業所及び西宮営業所)では、直営収受員は料金収受業務の一部(料金徴収業務又は入口発券業務)を担当している。また、平成7年度以降に職種変更した料金収受職57人のうち、事務職への職種変更者は26人(46パーセント)となっている。
          2. 交通管理職
         
   交通管理職は、管理事務所で道路パトロール等の交通管理業務に従事する職員と支社等の交通管制室で交通管制業務に従事する職員がおり、平成10年度末現在で交通管理業務に119人(委託従事者数は2,386人)、交通管制業務に146人(委託従事者数は64人)が配置されている。
         
 
i )
 交通管理業務は、道路パトロール業務と車両制限令(昭和36年政令第265号)違反の車両(過積載等)の高速道路への乗り入れ防止等の指導・取締りを行う車両制限令取締隊に分かれている。このうち、道路パトロール業務については、緊急時には支社等の交通管制室又は管理事務所の管理助役等が指示を行い、これに基づく即応体制をとることとされており、全面的に外部委託が可能な業務である。平成10年度末現在の実施体制は、7支社等では全面委託されており、4支社等(北陸支社、九州支社、名古屋管理局及び大阪管理局)が直営と委託の併用となっている。
 
ii )
 交通管制業務は、支社等の交通管制室で行う道路状況の把握、非常電話への対応及び道路パトロール車への指令等の伝達を行う業務であり、円滑な交通の流れの確保、交通事故への対応等重要な業務であるが、道路公団では、交通管制室には一般職の管制司令を交替制で常時1人配置しており、直営、委託を問わず、各通信管理員(4人体制)は管制司令の指示に基づき指令等の伝達や関係機関との連絡を行うものであることから、平成9年度から外部委託を開始している。平成10年度末現在の実施体制は、全面委託が3支社等(北海道支社、四国支社及び東京第三管理局)、直営と委託の併用が2支社(東北支社及び中国支社)、直営が6支社等(北陸支社、九州支社、東京第一管理局、東京第二管理局、名古屋管理局及び大阪管理局)という状況にある。
 なお、平成7年度以降、交通管理職から他の職種に変更した140人のうち、事務職への職種変更者は60人(43パーセント)となっている。
          3. 維持機械作業職
             維持機械作業職は、管理事務所が保有する道路維持機械・車両の管理要員として1管理事務所当たり1人から4人が施設助役等の下に配置されている。職員数は、平成10年度末現在218人であるが、7年度以降3人が増員されている。増員分の要員については、他の職種からの職種変更者が充てられており、職種変更する者のうち、維持機械作業職を職種変更先とする者が最も多くなっている(平成7年4月から11年4月までの間の現業職の職種変更228人のうち、維持機械作業職への変更96人、事務職への変更86人)。
 道路維持機械・車両の管理業務は、機械整備等の専門性を要するとの理由から、すべて直営で実施されている。しかし、維持機械作業職が担当する業務の内容は、i )車両整備計画の作成、ii )車両検査関係予算の執行・管理、iii)車両・機械の日常点検・整備の実施、監督、iv)委託業者への車両貸与事務、v)緊急車両等の公安委員会への指定申請手続、vi)簡易な部品交換等である。このうち、車両検査関係予算の執行・管理に関しては、直営で実施する必要性は認められるものの、i )車両・機械の日常点検は、貸与を受けた委託業者が実施するものであり、修理・整備は専門業者の履行状況を確認することでチェックは可能であること、ii )車両貸与の事務手続、緊急車両等の指定申請手続等については、特段の専門性を要しないこと等から、道路維持機械・車両の管理業務のすべてについて直営でなければ実施できないものではない。
         

4. 設備保守職

             設備保守職は、支社、管理局、管理事務所の施設制御室(全国31施設)において、道路設備である電気、機械、通信等の機器の運転監視(コントロールパネルの監視、情報収集及び施設の遠隔制御)を担当する施設の制御管理員として配置されている。職員数は、平成10年度末現在69人であり、7年度以降、12人が削減されている。
 平成10年度末現在の実施体制は、トンネル等級がAA(道路公団が延長・交通量から防災対策上最重要とした施設)となっているトンネル等を管理する施設制御室を含め22施設を全面委託(委託従事者数は205人)、4施設を直営と委託の併用、5施設を直営としている。制御管理員は、トンネル内での防災機器の起動等重要業務を担っているが、道路公団は、非常用施設の起動等については、直営、委託を問わず、施設助役等の判断・指示に基づく即応体制をとることとしており、残る直営管理についても外部委託とすることが可能である。
      (イ) 本四公団
         本四公団の要員については、「特殊法人の整理合理化について」(平成7年2月24日閣議決定)を受けて、平成13年度を目途に8年度末定員722人の約3分の1に当たる240人の大規模な削減をすることにより、13年度末定員を482人とすることとされている。
 要員の削減は、新規採用の停止、退職不補充、国等からの出向職員の後補充の抑制、国、地方公共団体、特殊法人、公益法人等への就職あっせんなどによる方法が採られており、既に平成9年度及び10年度の2年間で50人の削減を実施し、また、11年度において63人の削減を行っているが、今後、12年度及び13年度の2年間で127人の削減を行う必要があり、その着実な実施が求められている。
         
         したがって、建設省は、道路公団及び本四公団に対し、次の措置を講ずるよう指導する必要がある。
       
1.
 管理事務所等現場組織について、数値化が可能な業務指標に数値化が困難なその他考慮すべき要因を加味した要員配置基準を策定し、これらを踏まえた要員配置とすること。
       
(道路公団)
       
2.
 現業職のうち、料金収受職、交通管理職、設備保守職等の職員が従事する業務については、引き続き、外部委託を進め、維持機械作業職の職員が従事する業務については、外部委託の導入を含め、その執行体制の見直しを検討し、現業職員の計画的な縮減を行うこと。
         
(道路公団)
       
3.
閣議決定(平成7年2月24日)に基づく要員の削減を着実に実施すること。
         
(本四公団)
  (4) 利用者サービスの促進
     建設省は、道路管理者が道路標識を設置する場合の具体的な基準として「道路標識設置基準」(昭和61年11月1日付け都街発第32号・道企発第50号建設省都市局長・道路局長連名通達)を定め、道路標識の設置に当たっては、各種標識の機能を十分考慮の上一貫した情報提供がなされるよう体系的に整備するものとし、設置場所の選定に際しては、道路利用者の行動特性に配慮すること、標識の視認性が妨げられないこと等に留意すべきことを道路管理者に通知している。これを受けて、道路公団では、道路標識設置の実務的手引である「標識設置要領」(昭和63年4月27日付け技交第16号担当理事通達)を策定している。
 また、道路公団は、高速道路等における高速での連続走行による疲労と緊張を解きほぐし、運転者の生理的要求を満たし、あるいは自動車に対する給油等を行うための休憩施設(サービスエリア及びパーキングエリア)の計画及び設計に際して必要な一般的技術的基準並びに計画設計の手法と指針を示す「休憩施設設計要領」(昭和61年12月26日付け技交第23号担当理事通達)を策定している。
         
     今回、道路公団が管理している高速道路等における道路標識の設置・維持管理状況、サービスエリア及びパーキングエリア内のサービス提供施設の設置・維持管理状況等を調査した結果、次のような状況がみられた。
   
1.
 インターチェンジ入口の予告標識については、道路標識設置基準の趣旨からみて、進入のための進路変更のタイミングを失することのないよう設置位置等について配慮する必要があるが、インターチェンジがあることの予告標識がなく、入口直前に案内標識のみが設置されている例や予告標識の記載内容が不十分な例がある。
   
2.
 設置年度が古い休憩施設の中には、身体障害者用駐車場の駐車マスの幅が現行の設置基準に照らし狭い例、スロープの手すりがない例がある。
   
3.
 施設利用者の安全性、自動二輪車の利用者の利便性に配慮し、平成7年度以降、休憩施設における自動二輪車の専用駐車場の設置を進めているが、自動二輪車の専用駐車場がないものがある。
       
     したがって、建設省は、道路公団に対し、道路利用者の利便性を確保する観点から、次の措置を講ずるよう指導する必要がある。
   
1.
 インターチェンジ入口の予告標識の設置位置及び記載内容を点検し、その改善を図ること。
   
2.
 身体障害者用駐車場の適切な駐車マスの幅の確保及びスロープの手すりの整備など、障害者等への弱者対策をより一層促進すること。
   
3.
 自動二輪車の専用駐車場については、今後も利用実態を踏まえながら整備を進めること。