都市高速道路事業の透明性の確保
(1)  経営責任の明確化及び基本計画指示手続の透明性の確保
 我が国においては、戦後、社会経済活動を支える根幹施設である道路の整備が急務とされた。特に経済の中枢機能や人口が集中する首都圏、阪神圏では、厳しい財政事情の下で、急激に増加する道路需要に対応するため、道路整備特別措置法(昭和31年法律第7号)に基づく有料道路制度(財政投融資資金等の借入金で道路を建設し、利用者から徴収する料金による収入で借入金の元本及び利息を償還し、かつ、管理費用を賄い、償還期間経過時に有料道路を無料開放し、道路資産として道路管理者に引き継ぐ制度)を活用して自動車専用道路(以下「都市高速道路」という。)を整備することとされ、その建設、管理を総合的、効率的に行う主体として、国及び関係地方公共団体の出資により、昭和34年に首都高速道路公団(以下「首都公団」という。)が、37年に阪神高速道路公団(以下「阪神公団」という。)がそれぞれ設立された。
 首都圏、阪神圏での都市高速道路の整備は国の利害にも深くかかわることから、首都高速道路については内閣総理大臣が定める首都圏整備計画に基づき、また、阪神高速道路については近畿圏の将来の交通需要を踏まえ、それぞれ関係地方公共団体による都市計画決定等の手続が行われた後、首都高速道路公団法(昭和34年法律第 133号。以下「首都公団法」という。)第30条第1項及び阪神高速道路公団法(昭和37年法律第43号。以下「阪神公団法」という。)第30条第1項に基づき、建設大臣が、路線名、車線数、概算工事費等を内容とする都市高速道路の基本計画を定め、これを首都公団又は阪神公団に指示することとされている。両公団は、当該指示を受けて工事実施計画書を作成し、建設大臣の認可を受けて工事を実施することとされており、両公団は、都市高速道路の建設、管理の主体として、都市高速道路の建設、管理を行い、料金収入により建設、管理に要した資金を回収する経営責任を負うことになるにもかかわらず、採算の確保を図る上で重要な意思決定である都市高速道路の路線の決定に当たり、経営の観点から意見を述べる機会を有していない。
 また、都市高速道路の建設、管理に要した費用は、一部のものを除きすべて料金に反映されることになっている。
 一方、国及び地方公共団体は、建設資金コストの引下げ、料金負担の軽減等により都市高速道路の整備に資するため、首都公団法及び阪神公団法に基づき、毎年度、両公団に対し事業費の一定率に相当する額を出資しているが、その出資率は、各年度の予算措置によって定められることになっており、固定的なものではない。平成9年度末現在における両公団に対する出資金の累積額は、首都公団で 4,473億円、阪神公団で 3,593億円となっている。
 両公団による都市高速道路の建設、管理は、このような仕組みの 下に行われているが、政府は、「特殊法人等の整理合理化について」(平成9年12月26日閣議決定)により、事業資金を財政投融資資金に依存している特殊法人等については、財投機関債(原則として政府保証は行わない。)の発行を自由化し、自力での資金調達に努めるものとする閣議決定を行っており、公団の経営責任のより一層適切な遂行が求められている。
 今回、両公団における都市高速道路事業の実施状況等を調査した結果、次のような問題がみられた。
1.  両公団における都市高速道路の経営の現状をみると、次のとおり、厳しい状況となっている。
(i)  近年建設される都市高速道路は、環境対策のための地下構造の採用による工事費の増加や用地費の増加等により、建設費が増加しており、平成9年度に建設中の路線の1キロメートル当たりの建設費をみると、首都公団では昭和37年度から50年度に供用した路線の15.2倍、阪神公団では39年度から50年度に供用した路線の 7.0倍と大幅に増加している。このように建設費が増加する中で、両公団が建設する都市高速道路は逐次供用が行われており、営業路線に係る借入金額(以下「要償還額」という。)は、首都公団では、昭和62年度の1兆 6,887億円から平成9年度の3兆 9,343億円へと 2.3倍に、阪神公団では、62年度の 9,602億円から9年度の3兆 1,508億円へと 3.3倍に、それぞれ増大している。
 都市高速道路の1日当たりの平均通行台数の伸びは、事業の初期段階に比べ次第に鈍化しており、首都公団では、昭和62年度の約93万台から平成9年度の約 115万台へと1.24倍の伸びにとどまっており、阪神公団では、62年度の約74万台から、阪神・淡路大震災の影響もあり、9年度の約94万台へと1.27倍の伸びにとどまっている。
 両公団においては、このような事業環境の著しい変化に照らし、要償還額の増加に対応するためには、公的負担を増加するとともに大幅な料金改定又は償還期間の延長が必要な状況となっており、平成5年度の料金改定(値上げ)認可申請の際には、200円の値上げが必要となるところを100円の値上げとし、償還期間を30年から40年に延長した。その後、経済の低迷等により、平成5年度の料金改定認可申請の際に策定した償還計画において5年度から8年度の間の予定料金収入の算定根拠とした通行台数の見通しをその実績が大きく下回ったため、この間の料金収入は、首都公団では 6.4パーセント(697億円)、阪神公団では阪神・淡路大震災の影響もあり18.5パーセント(1,310億円) 予定料金収入を下回る結果となっている。
(ii)  料金収入から借入金利息及び管理費を差し引いた残額である償還準備金繰入額の状況をみると、阪神公団においては、平成元年度の約 320億円から毎年度連続して減少し、6年度の料金改定にもかかわらず、6年度及び7年度には、阪神・淡路大震災の影響もあって約94億円及び約233億円の償還準備金の取崩しを行っている。また、平成8年度には約85億円、9年度には約87億円の償還準備金の繰入れにとどまっており、阪神公団における投入資金の回収は低い水準にある。
 首都公団においては、昭和63年度の約813億円から平成5年度の約476億円まで毎年度連続して減少し、6年度の料金改定により8年度の約847億円まで毎年度連続して増加したが、9年度には約 631億円と減少している。また、建設中の路線の建設仮勘定が平成9年度末現在で1兆 9,789億円に上っており、これらの路線が供用開始に伴い順次道路資産に振り替えられ、要償還額が増大することから、現行の料金等を前提にすると、投入資金の回収は今後困難さを増すことが予想される。
2.   国民や利用者の負担を伴う都市高速道路の整備を、採算を確保しつつ円滑に推進するためには、両公団が責任を持って経営努力を行うとともに、国民や利用者の理解の下に都市高速道路の建設の決定が行われることが重要である。しかしながら、両公団に対する建設大臣の基本計画の指示手続についてみると、次の状況がみられる。
(i)  両公団は、都市高速道路の建設、管理の主体として経営責任を果たすべきであるが、基本計画の指示に当たって、両公団が経営の観点から意見を述べる仕組みがない。このような仕組みを設けることによって、両公団が基本計画の遂行に関する経営責任を認識する契機となり、また、効率的な事業実施についてインセンティブを持ちやすくなることが期待される。
(ii)  建設省は、基本計画の指示に当たって、当該指示を行う路線及び既に基本計画の指示を行った路線を償還対象路線とし、各路線の事業費、通行台数、料金及び償還期間、公的負担等を仮定して採算に関する検討を行っている。しかしながら、採算に関する検討結果が公表され、検討結果に対する国民や利用者の意見が都市高速道路事業に反映される仕組みが設けられていない。
 
 したがって、建設省は、都市高速道路事業に係る首都公団及び阪神公団における経営責任をより一層明確にするとともに、基本計画指示手続の透明性の確保を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1.  基本計画の指示に当たり、首都公団及び阪神公団から経営の観点からの意見を聴取する仕組みを構築すること。
2.  首都公団及び阪神公団を施行者と予定して都市計画決定された都市高速道路については、基本計画の指示の前に、供用後の料金の見通し及びその検討において用いた国・地方公共団体の公的負担等の前提条件が公表され、これに対する国民や利用者の意見が都市高速道路事業に適切に反映される仕組みを構築すること。
(2)  経営管理の的確化
 首都公団及び阪神公団は、都市高速道路の建設、管理の主体として、都市高速道路の建設をできるだけ効率的に行うことにより要償還額の増加を抑えるとともに、投入資金を円滑に回収することにより、料金及び料金徴収期間の認可申請の際に策定する償還計画を達成する経営責任を課せられている。
 また、近年の両公団における経営状況をみると、建設費の増加、新規交通量の伸びの鈍化等の事業環境の変化の下で、阪神公団においては投入資金の回収は低い水準にある。首都公団においても、現在建設中の路線の供用開始に伴う要償還額の増大により、現行の料金及び償還期間並びに公的負担を前提にする限り、投入資金の回収は今後困難さを増すことが予想される状況にあり、両公団は、より一層的確な経営管理を行うことが求められている。
 さらに、「特殊法人等の整理合理化について」において、事業資金を財政投融資資金に依存している特殊法人等については、財投機関債(原則として政府保証は行わない。) の発行を自由化し、自力での資金調達に努めるものとするとされており、両公団の経営管理の的確化が必要となっている。的確な経営管理を行うためには、明確な経営目標の設定とその達成状況の的確な把握に基づいて経営執行に関する意思決定が行われることが必要であり、また、「昭和62年度に講ずべき措置を中心とする行政改革の実施方針について」(昭和61年12月30日閣議決定)に記された法人の重要な意思決定を行う役員会の制度化を引き続き推進するとともに、役員の分担する業務と責任の明確化を図ることが必要である。両公団においては、役員会が設置されるとともに、理事等の各役員が分担管理する部門が定められている。
 今回、両公団の経営組織における経営管理の状況を調査した結果、次のような問題がみられた。
1.  両公団は、償還計画を達成する経営責任を課せられており、その達成は公団経営の中心的な課題であることから、償還計画の達成状況を適切に評価するとともに、計画達成のために中期的な視点から計画的な取組を行う必要がある。
 償還計画の達成状況の評価に当たっては、決算の結果、経営成績を表示するものとして公表が義務付けられている損益計算書上の償還準備金繰入額及びその累計である貸借対照表上の償還準備金額が償還計画を達成する上で過不足があるか否かの観点から評価することが必要である。しかしながら、償還計画と損益計算書とでは本来その作成目的が異なっているため、償還計画の収入には損益計算書の収益にない借入金及び出資金が含まれており、また、償還計画の支出には損益計算書の費用にない建設費、建設中の道路に係る借入金利息及び人件費が含まれているなど、償還計画の収入・支出の構成は、損益計算書の収益・費用の構成と相違しているため、損益計算書上の収益と費用の差である償還準備金繰入額等を償還計画上の収支差(償還金)と直ちに対比し、評価することはできないものとなっている。このため、償還計画に基づき、償還準備金繰入額等と対比し得る新たな定量的な中期的経営目標を定めるとともに、これを毎年度の予算等に反映させることが必要となっている。
2.  このような状況の下で、両公団の理事等の各役員が分担管理する各部門についても、それぞれ果たさなければならない具体的な遂行目標がなく、その達成状況を適切に評価することは困難なものとなっている。
 
 したがって、建設省は、首都公団及び阪神公団に対して、経営管理の的確化を図る観点から、次の措置を講ずるよう指導する必要がある。
1.  償還計画に基づき、定量的な中期的経営目標を定めるとともに、これを毎年度の予算等に反映させること。また、毎年度の決算の結果表示される償還準備金繰入額及び償還準備金額については、償還計画を達成する上で過不足があるか否かについて適切に評価し得るものとすること。
2.  定量的な中期的経営目標に基づき、各役員が分担管理する各部門ごとの遂行目標を設定し、その達成状況を適切に評価すること。
(3)  監事監査の充実
 特殊法人の監事監査については、その重要性にかんがみ、「特殊法人等の監事監査の徹底等について」(昭和54年12月26日付け閣審第 109号内閣官房副長官通達)において、監事の職務権限の明確化等の監事監査の強化方策が指示されている。また、行政管理庁(現在の総務庁)は、昭和58年11月の「特殊法人に関する調査−監事監査機能−」の結果に基づき、監事監査を充実強化する観点から、監事の主務大臣への直接意見提出権等の規定の整備、監査結果報告書の作成、監事監査結果の主務大臣への報告等を内容とする指摘を行った。さらに、昭和61年6月の臨時行政改革推進審議会答申では、58年3月の臨時行政調査会の最終答申も踏まえ、監事の主務大臣等に対する監査結果に基づく意見の提出、財務諸表への監事意見の添付等監事監査の充実強化が提言されている。このように、特殊法人の監事監査については、特殊法人における重要な役割にかんがみ、その円滑な実施を担保するため、所要の充実強化が図られてきている。
 首都公団及び阪神公団の監事は、首都公団法第19条第4項及び阪神公団法第19条第4項に基づき、公団の業務を監査することとされており、また、首都公団法第19条第5項及び阪神公団法第19条第5項に基づき、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、理事長又は建設大臣に意見を提出することができるとされている。

 今回、両公団における監事監査の実施状況を調査した結果、次のような問題がみられた。
 両公団は、都市高速道路の建設、管理を総合的、効率的に行うこととされており、その建設に財政投融資資金等の公的資金が充てられていることから、両公団の運営を監査する監事の責任は重大である。また、監事は理事長と同様に建設大臣によって任命されることから監査の結果に基づく意見の提出は理事長と対等の立場で行われており、監事は必要があると認めるときは、理事長又は建設大臣に意見を提出することができるとされている。このようなことから、首都公団及び阪神公団の監事は、業務執行の適法性及び正確性の観点のみからではなく、経営の妥当性についてより高い見地から監査を実施する権限と責任を有していると認められる。
 監事が経営の妥当性の観点から監査を的確に実施するためには、昭和54年12月の内閣官房副長官通達等に基づき、各特殊法人において、監事監査の実施に際して従うべき具体的方法として定められた監事監査実施基準において、業務の合理化、組織・要員の合理化等経営の妥当性について監査を実施するための具体的な基準を定めることが重要である。
 しかしながら、首都公団の監事監査実施基準には、これらの具体的基準が定められていない。また、首都公団における平成6年度以降の監事監査の実施状況をみると、項目2から4に述べるとおり、業務の合理化及び契約の適切化並びに組織・要員の合理化の観点から指摘を行う余地があるにもかかわらず、適法性及び正確性の観点からの指摘を中心に行われており、経営の妥当性に関する指摘は十分行われていない。
 また、阪神公団の監事監査実施基準には、経営の妥当性について監査を実施するための具体的な基準が定められているが、平成6年度以降の監事監査の実施状況をみると、首都公団と同様、適法性及び正確性の観点からの指摘を中心に行われており、経営の妥当性に関する指摘は十分行われていない。

 したがって、建設省は、首都公団の監事に対し、監事監査実施基準に業務の合理化、組織・要員の合理化等経営の妥当性について監査を実施するための具体的な基準を盛り込むよう指導するとともに、首都公団及び阪神公団の監事に対し、経営の妥当性の観点から監査を充実するよう指導する必要がある。

 業務の合理化
(1)  外部委託の推進
 首都公団及び阪神公団は、料金収受業務、交通管理業務、用地取得業務や交通管制業務の補助業務等について、外部委託を逐次推進するとともに、コンピュータの導入等により業務の機械化・合理化を推進してきているが、「特殊法人等の整理合理化について」においても、組織及び事業の抜本的な見直しにより建設費及び管理費の節減等を図ることが求められている。
 今回、両公団における業務の実施状況を調査した結果、次のような問題がみられた。
1.  両公団は、用地取得業務のうち、権利者との交渉、契約等の現場的業務を行うため、出先機関である建設局、建設部、保全部等に、首都公団は77人、阪神公団は48人の要員を配置している。
 両公団は、用地取得業務は基幹的業務であり、かつ、高度の交渉技術と知識・経験を必要とするとして、公団職員が実施することを原則としている。しかし、必要な要員数を配置することが困難であって、かつ、受託先の確保のめどが立っている場合には、大規模工場、公共施設等が存在せず、業務遂行上の困難性が比較的低いと認められる区間について、建設局、建設部等(以下「建設部局」という。)が行う用地取得業務のうち、権利者との交渉業務及び物件調査等の交渉業務に付随する業務(以下「交渉等業務」という。)を外部委託することとしている。このような考え方に基づき、首都公団は、建設中の5路線のうち中央環状新宿線及び大宮線の一部の区間、また、阪神公団は、建設中の10路線のうち大阪泉北線及び神戸山手線の一部の区間については交渉等業務の外部委託を行っている。しかしながら、交渉等業務の外部委託が行われていない区間及び路線においても、業務遂行上の困難性が低いと認められる案件から交渉等業務の外部委託の拡大を図る余地がある。
2.  首都公団及び阪神公団は、出先機関である管理部に、交通情報収集の総括、交通調整に係る警察との協議等の管制業務を行う交通管理司令又は交通司令と管制業務の補助業務(以下「管制補助業務」という。)を行う要員を配置している。管制補助業務については、両公団の各3管理部のうち2管理部で、全面的に外部委託が行われている。しかし、残る各1管理部における外部委託の状況をみると、首都公団では、通行止め等の交通調整の頻度が多いなどの首都圏の特殊事情から、交通管理司令の養成には20年程度の管制補助業務の経験が必要であること、緊急時の危機管理に指導的立場を果たす必要があることなどを理由に外部委託を行っておらず、要員全員を公団職員としている。これに対し、阪神公団では、管制補助業務を経験していない者も交通司令に登用しており管制補助業務の経験年数は首都公団の4分の1程度となっており、要員の一部を公団職員としているほかは外部委託を行っている。これらのことから、首都公団において交通管理司令の養成に必要としている管制補助業務の経験年数は、首都圏の特殊事情を勘案しても長期に過ぎると考えられる。また、危機管理に指導的立場を果たすために要員全員が公団職員であることが必要とは考えられないことなどから、首都公団における管制補助業務については、交通管理司令の養成の在り方を見直すことなどにより、外部委託の拡大を図る余地がある。
3.  両公団は、本社及び出先機関に、庶務業務及び資料作成等の補助業務を担当する要員として、首都公団ではおおむね本社の3課に1人及び出先機関の2課に1人、阪神公団では本社の5部にそれぞれ1人及び出先機関のうち4部にそれぞれ1人ないし3人の職員を配置している。しかしながら、庶務業務及び資料作成等の補助業務には、出勤簿の整理、文書の発送・収受、消耗品の管理、簡易な計算、図面の作成補助等簡易かつ定型的なものがみられ、これらの業務については、非常勤職員を雇用することにより対応する余地がある。

 したがって、建設省は、首都公団及び阪神公団に対し、次の措置を講ずるよう指導する必要がある。
1.  両公団の建設部局が所掌する用地取得業務のうち交渉等業務については、業務遂行上の困難性が低いと認められる案件から外部委託の拡大を図るとともに、組織・要員の合理化を行うこと。
2.  首都公団の管制補助業務については、交通管理司令の養成の在り方の見直し等により、外部委託の拡大を図るとともに、要員の合理化を行うこと。
3.  両公団の庶務業務及び補助業務のうち、簡易かつ定型的な業務については、非常勤職員を雇用することにより対応し、当該業務を担当する職員の他業務への配置転換等を図り、要員の合理化を行うこと。
(2)  駐車場管理業務の合理化
 首都公団は、首都公団法第29条第1項第4号において、その利用について料金を徴収する路外駐車場で都市計画において定められたものの建設及び管理を行うことが規定されている。首都公団は、昭和37年から39年にかけ、当時不足していた自動車駐車場を供給するため、東京都の特別区内に5か所の駐車場を建設し、首都公団の駐車場管理部が当該駐車場の営業、保全その他の管理に関する事務を所掌している。

 今回、首都公団の駐車場管理部における業務の実施状況を調査した結果、次のような問題がみられた。
 首都公団の駐車場経営については、駐車場法(昭和32年法律第 106号)に基づく附置義務駐車場等による駐車スペースの急増に伴って、利用台数は昭和47年度以降減少傾向に転じ、料金を値上げすることで料金収入の増加を図ってきた。しかし、平成3年5月に駐車場法が改正され、駐車施設の附置義務対象建築物の規模の下限が引き下げられたことに伴い駐車スペースが更に増加したことや、景気の長期低迷等により企業の定期駐車利用が全体的に減少しているという社会経済情勢もあって、利用台数は大幅に減少し、料金収入は4年度以降減少に転じ、6年度以降連続して赤字決算となっている。
 首都公団は、経営収支の改善を図るため、平成8年度に、料金収入の大幅な増加並びに自動料金精算機の導入に伴う収受員の削減等による業務委託経費の節減及び維持修繕費の節減等によって、9年度から11年度の3年間で赤字決算から脱却する経営改善計画を策定した。
 しかしながら、この経営改善計画の実施状況をみると、料金収入については、景気の回復の遅れに伴う駐車需要の伸びの鈍化や周辺の駐車スペースの増加等から、平成9年度の実績は計画額を下回っている状況にあり、10年度以降においても計画どおり料金収入の大幅な増加を確保できるか疑問がある。また、維持修繕費については、近年の経営収支の悪化に対応するため支出の抑制を行ってきたことから、今後、建物及び付属施設の老朽化の進行に伴い維持修繕費を増加せざるを得ない状況となっている。平成9年度の維持修繕費をみると、計画額を上回る支出が行われ、10年度以降もその増加は避けられないと見込まれる。これらの状況から、業務委託経費の節減を計画どおり実施したとしても、経営改善計画の実現は極めて厳しい状況にある。さらに、駐車場の改修工事についても、平成6年度から9年度にかけて実施された汐留駐車場の改修工事に伴う減価償却費及び支払利息は経営改善計画に盛り込まれているが、汐留駐車場以外の3か所の屋内駐車場については、2年から3年以内に耐用年数が経過することから今後改修工事の必要性が高まり、工事を実施した場合には、経営改善計画の計画期間後においても改修工事に係る経費負担の増加が駐車場経営の圧迫要因となるものとみられる。
 一方、駐車場管理業務に係る組織体制をみると、このような厳しい経営状況にあるにもかかわらず、駐車場管理部の要員は、平成4年度末に12人であったものが、9年度末では3人増の15人が配置されているほか、同部の間接管理部門についてみると、他の業務と併せて間接管理部門の総括業務を所掌する課長及び課長補佐を除いても、全体の40パーセントに相当する6人の要員が配置されているなど、組織体制の合理化は図られていない。

 したがって、建設省は、首都公団に対し、駐車場事業の経営改善を図る観点から、駐車場管理部の組織体制の合理化等を含む抜本的な経営合理化計画を策定し、計画的に経営の合理化を実施するよう指導する必要がある。

   
(3)  料金収受業務の監督業務等の合理化
 首都公団は、料金収受業務に対する社会的信頼を確保するため、受託会社の業務を詳細かつ厳格に審査する必要があるとして、料金収受業務の受託会社が常駐する料金計算所に隣接して、3管理部の出先機関である営業管理所12か所及び営業管理所分室9か所の計21か所を設置し、計33人の要員を配置している。営業管理所等は、外部委託に係る料金収受業務の監督業務を所掌し、あわせて、受託会社の業績評価業務、パーキングエリアの巡回点検業務、国賓の通行及び工事実施に伴う計画的な入路閉鎖による交通調整の指示業務を所掌している。
 一方、阪神公団では、首都公団と同様に料金収受業務を外部委託し、その監督業務等を実施しているが、首都公団が設置している営業管理所等に該当する組織はなく、3管理部の営業課が監督業務等を所掌している。
 今回、首都公団の営業管理所等における料金収受業務の監督業務等の実施状況を調査した結果、次のような問題がみられた。
1.  首都公団の営業管理所等は、交通量検出器により確認された通行台数を基に、受託会社から報告されたレーン別収入調書及び収入日計表の記載内容と関係証拠書類との照合を悉皆審査により行い、両者の内容に相違がある場合は、その場で受託会社から説明を求め、所要の修正を行った上で収入金額を確定し、受託会社が銀行に現金を引き渡している。一方、営業管理所等を設置していない阪神公団では、受託会社が各管理部営業課に報告を行う前に銀行に現金を引き渡し、その後に各管理部営業課が受託会社から報告された収入日計表の記載内容と関係証拠書類との照合を抽出審査により行い、収入金額を事後的に確定している。阪神公団においては、この方法によって特段の支障なく業務を遂行していることから、首都公団においても、営業管理所等における事前の悉皆審査を前提とした現行の営業管理システムを、出先管理部営業課における事後的な抽出審査により収入金額を確定する方式に変更することにより、料金収受業務の監督業務の合理化を図る余地がみられる。
2.  営業管理所等で実施している料金収受業務の監督業務以外の業務についてみると、受託会社の業績評価については、阪神公団は各管理部営業課で支障なく実施していることから、また、パーキングエリアの巡回点検については、必ずしも施設に隣接する営業管理所等で実施する必要はないと認められることから、これらの業務は、出先管理部営業課等で対応することが可能である。さらに、入路閉鎖による交通調整の指示については、営業管理所等を通さず出先管理部交通指令課から直接行う方が効率的である。
 以上の業務の合理化により、営業管理所等を設置しておく理由はなくなり、これにより要員を削減する余地がある。

 したがって、建設省は、首都公団に対し、営業管理所等が所掌する料金収受業務の監督業務等について、営業管理システムの変更等による合理化を行い、営業管理所等を廃止するとともに、要員の合理化を行うよう指導する必要がある。

 

 業務委託等契約の適切化
 首都公団及び阪神公団における契約は、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第 165号)等に準じ定めた首都高速道路公団会計規程第71条第1項及び阪神高速道路公団会計規程第72条第1項に基づき、原則として競争に付さなければならないこととされている。しかし、その特例として、 1. 競争に付することが不利と認められるとき、 2. 契約の性質又は目的が競争を許さないとき、 3. 災害応急復旧を行う場合その他緊急を要する場合において、競争に付する暇がないとき、 4. 業務の運営上特に必要があるときは、随意契約の方法によることができるとされている。
 また、政府は、「特殊法人等の整理合理化について」により、特殊法人等のすべてに共通する事項として、特殊法人等が、公益法人、株式会社等に業務を発注する場合、独占的契約を禁止し、小規模案件、緊急案件等を除き、競争入札とすることを、また、個別の法人に関する事項として、首都公団及び阪神公団は、建設、維持修繕及び料金収受の業務については、小規模案件、緊急案件等を除き、競争入札とすることを決定し、両公団における契約の一層の競争性の発揮を求めている。
 今回、両公団における業務委託等契約の実施状況を調査した結果、次のような問題がみられた。
1.  両公団における随意契約による業務委託等は、業務全般にわたっており、平成9年度の業務委託等契約の件数及び金額に占める随意契約の割合は、首都公団では、契約件数の30.4パーセント、契約金額の53.2パーセント、阪神公団では、契約件数の41.1パーセント、契約金額の72.3パーセントとなっている。しかしながら、両公団が随意契約により業務委託等を実施している業務の一部を調査した結果、施工管理業務、巡視点検業務、駐車場管理業務、広報業務、建物清掃業務、測量及び測定業務については、別紙「業務委託等契約の実施状況」のとおり、全部又は一部について、随意契約の相手方以外の者でも施行可能であり、競争入札によることが適当な状況がみられる。
2.  阪神公団は、阪神高速道路の営業データを管理する営業管理システムに係るデータ管理、システム管理、ソフトウェアの変更及び開発の業務委託契約について、営業管理システムの検討業務の受託実績があり、当該システムに精通していることを理由として、平成8年度以降、社団法人阪神有料道路サービス協会に随意契約により委託している。しかしながら、同協会は、阪神公団が上記の理由に基づき同協会と随意契約を締結したにもかかわらず、阪神公団との契約と同内容の契約で当該システムの開発者である民間企業に受託業務を請け負わせており、また、阪神公団は、同協会が民間企業に受託業務を請け負わせている事実を把握していたにもかかわらず、これを黙認している。
3.  指名競争入札を行う場合の参加資格要件は、その公平性、競争性を確保するため、入札に係る委託業務を支障なく実施する上で必要最低限のものに限定する必要がある。
 首都公団及び阪神公団では、料金収受業務の委託に係る指名競争入札について、駐車場業者等の類似異業種の業者であっても、両公団が定める資格要件を満たせば入札参加資格を有する業者として登録できることとしている。しかし、両公団は、円滑に料金収受業務を実施するためには現場代理人による料金収受員の適切な指導監督が必要であるとして、指名競争入札に参加を希望する者は、有料道路の料金収受業務の管理・監督職の経験者(2年以上)を現場代理人(事務取扱責任者)として配置できる者であることとしている。このため、駐車場業者等の類似異業種の業者は、有料道路の料金収受業務の管理・監督職の経験者を配置予定現場代理人として確保しない限り、両公団の料金収受業務の委託に係る指名競争入札に参加することができない状況となっており、現場代理人の資格要件の緩和について検討する余地がみられる。
4.  首都公団は、施工管理業務の委託に当たり、受託者における指揮命令上の独立性を確保する必要があるとして、公団職員が勤務する事務所に近接して受託業務を担当する管理員が常駐する「施工管理 事務所」を確保させ、その借上経費(平成9年度 3,900万円)を「管理事務所費」として委託費に計上している。しかし、公団職員から管理員に対する業務上の指示は、受託者が選任した管理技術員を介して行うことにより受託者における指揮命令上の独立性を維持する措置が講じられており、また、管理員の業務内容は、業務委託契約書及び仕様書において公団職員の業務とは明確に区分されていることから、公団職員が勤務する事務所に管理員を常駐させることも可能であり、阪神公団においては、同様の考え方から全事務所に管理員を常駐させている。
 したがって、建設省は、首都公団及び阪神公団に対し、業務委託等の契約について、次の措置を講ずるよう指導する必要がある。
1.  首都公団は、随意契約により委託等を実施している業務のうち、駐車場管理業務、施工管理業務のうち高速道路の改築工事の現場における業務、巡視点検業務のうち事業用不動産の定型的な保全・管理業務について、競争入札により委託等を実施すること。
 阪神公団は、随意契約により委託等を実施している業務のうち、駐車場管理業務、建物清掃業務、巡視点検業務のうち事業用不動産の定型的な保全・管理業務、広報業務のうち企画立案を除く工事広報業務等、測量及び測定業務のうち現地実測、図面作成等の測量業務及び振動・騒音測定業務について、競争入札により委託等を実施すること。
 また、首都公団及び阪神公団は、これらの業務以外で随意契約により委託等を実施している業務についても競争入札による委託等の推進を図ること。
2.  阪神公団は、営業管理システムに係る業務委託について、業務内容に即し真に施行能力のある者と契約を行うこと。
3.  首都公団及び阪神公団は、料金収受業務の委託に係る指名競争入札について、入札参加機会の拡大を図る観点から、現場代理人の資格要件の緩和について検討すること。
4.  首都公団は、施工管理業務の委託費の積算に当たっては、公団職員が勤務する事務所への管理員の常駐が物理的に困難な場合を除いて管理事務所費の計上を行わないこと。
 

別紙 業務委託等契約の実施状況    

業務名 契約の実施状況 調査結果
施工管理業務  首都公団は、平成9年度に、建設工事の請負業者から提出された施工計画書等の書類審査、工事現場における立会い、施工検査、材料検査、工程管理等の補助に係る施工管理業務の委託について、競争入札を導入したが、高速道路の改築工事、緊急環境対策工事及び施設工事の現場における施工管理業務については、既設構造物に対する十分な知識、工事の緊急性、施設に対する総合的な技術力等を必要とすることを理由として、財団法人首都高速道路技術センターに随意契約により委託している。                高速道路の改築工事の現場における施工管理業務については、民間の建設コンサルタントにおいて施行可能であり、また、阪神公団では競争入札により委託している。
巡視点検業務  両公団は、取得した事業用不動産の巡視点検業務について、住民の苦情又は問い合わせに対応するためには、両公団の事業内容及び管理地の地域事情について精通しており、両公団と同等の信用が必要であることを理由として、首都公団は財団法人首都高速道路補償センターに、阪神公団は財団法人阪神高速道路協会及び財団法人阪神高速道路利用協会に随意契約により委託している。 
 巡視点検業務のうち、事業用不動産の除草、清掃、保全柵の設置等の業務については、定型的な保全管理業務であり、民間企業において施行可能である。
駐車場管理業務 
1.  首都公団は、管内5か所の駐車場の料金収納、場内整理等の現場管理業務について、首都高速道路と一体となった特殊な駐車場であり、当該業務に係る十分な知識が必要であること、多額の公金の的確な収受及び適切な管理が必要であること等を理由として、特定の民間企業に随意契約により委託している。
2.  阪神公団は、パーキングエリア内の駐車場管理業務について、利用者の利便に資するものであることを理由として、財団法人阪神高速道路協会及び財団法人阪神高速道路利用協会に随意契約により委託している。
1.  駐車場の管理業務については、その内容が料金収納、場内整理等であり、他の駐車場業者等においても施行可能である。
2.  パーキンングエリア内の駐車場管理業務については、その内容が駐車場に出入りする車の誘導、施設の損傷を発見したときの報告、利用者の案内、施設の警備等の事務的かつ定型的なものであり、民間企業において施行可能である。 
広報業務  阪神公団は、工事の実施期間、工事内容等を周知する工事広報業務について、きめ細かな広報を行うための企画立案が必要であること、地方公共団体、都道府県公安委員会等の関係機関との調整、協議の進捗状況をみながら作業を進めていく必要があることを理由として、社団法人阪神有料道路サービス協会に随意契約により委託している。
 また、阪神公団は、パーキングエリア等の施設を紹介するパンフレットの作成の広報業務について、阪神公団に係る種々の広報業務の活動実績、信頼性等があることを理由として、社団法人阪神有料道路サービス協会に随意契約により委託している。
 工事広報業務のうち、企画立案を除く、チラシ及びポスターの作成、ラジオCMの製作及び放送等の業務については、広告業者等民間企業において施行可能であり、また、首都公団はこれらの業務のすべてを民間企業に委託している。
 また、パンフレットの作成についても、企画立案を除く、デザインの検討、写真撮影、印刷等の業務は民間企業において施行可能である。
建物清掃業務  阪神公団は、阪神公団の管理所の清掃業務について、当該管理所を使用している料金収受業務の受託者が清掃業者でもあり、防犯上の観点からも当該受託者に随意契約により請け負わせている。  清掃業務については、その内容が庁舎建物内の床の除塵、カーペット洗浄等であり、他の清掃業者においても施行可能である。
測量及び測定業務  阪神公団は、高速道路の測量業務の委託について、そのほとんどを競争入札としているが、他の事業者との調整、地域住民への協力要請が必要な一部の契約については、財団法人阪神高速道路補償センターに随意契約により委託している。
 また、工事に係る振動、騒音の測定業務の委託についても、そのほとんどを競争入札としているが、一部の契約については、環境対策上業務を迅速に執行する必要があることを理由として、測定対象路線を熟知している民間企業に随意契約により請け負わせている。
 測量業務のうち、現地実測、図面作成等の業務については、測量コンサルタントにおいて施行可能である。
 また、振動、騒音の測定業務については、業務の迅速な執行は他の環境計測コンサルタントにおいても可能であると考えられる。

 

 組織・要員の合理化
(1)  組織の合理化
 都市高速道路事業は、財政投融資資金等の借入金で道路を建設し、利用者から徴収する料金による収入でその償還を行う有料道路制度の下に整備されており、両公団は、都市高速道路の建設、管理の主体として、事業の効率的実施による建設費及び管理費の節減並びに組織体制の効率化が求められている。また、都市高速道路事業については、近年、建設費が増加する一方、新規路線を供用しても交通量が伸び悩んでおり、従来ほど料金収入の増加が期待できない状況となっている。このような現状を踏まえ、政府は、「特殊法人等の整理合理化について」において、首都公団及び阪神公団の組織について、採算性の厳しい見通しに照らし、抜本的な見直しを行い、管理・保全部門の統合により事業執行体制の効率化を図ることを求めている。また、道路審議会も平成9年1月の中間答申「今後の有料道路制度のあり方について」において、建設、管理の各段階に応じ、両公団の組織体制を最も効率的なものとなるよう弾力的に変更していく必要があるとの指摘を行っている。
 両公団は、本社のほか、出先機関として、都市高速道路の建設業務を所掌する建設局又は建設部等、管理・保全業務を所掌する管理部及び保全部等を設置している。
 今回、両公団における組織体制及び業務の実施状況を調査した結果、次のような問題がみられた。
1.  首都公団の湾岸線建設局と神奈川建設局及び阪神公団の神戸第一建設部と神戸第二建設部については、以下のとおり、組織の合理化を図る余地がある。
(i)  首都公団の湾岸線建設局と神奈川建設局については、所掌する湾岸線(3期、4期)の竣(しゅん)功に伴い、ピーク時に比較して業務量が減少しており、業務量に対応した組織体制の効率化を図る観点から、今後の新規路線の事業化に伴う業務量を勘案しつつ両局の統合等の組織の再編・合理化を図る余地がある。
(ii)  阪神公団の神戸第一建設部と神戸第二建設部については、神戸第一建設部の所掌する路線の大部分が近い将来竣功する一方で、神戸第二建設部において新規路線を所掌しており、その事業の着実な実施を図るためには当該事業に重点的に取り組むことが効率的であることから、所掌事業の進捗状況を踏まえ、両部の統合を図る余地がある。
2.  首都公団は、東京第一管理部及び東京第一保全部を統合する構想を有している。しかし、いまだ統合後の移転先の選定、組織体制の検討等統合のための条件整備が行われておらず、両部の統合のめどが明らかになっていないことから、速やかに条件整備を行い、計画的な取組を図ることにより両部の統合の円滑な実現を図る余地がある。
3.  首都公団の本社経理部管財課については、阪神公団が同内容で同程度の業務量を独立した課を設置せずに問題なく処理している状況からみて、廃止する余地がある。

 したがって、建設省は、首都公団及び阪神公団に対し、経営合理化の観点から、組織体制をより効率的なものとするよう、上記で指摘した出先機関の統合等及び本社の課組織の廃止等の組織の合理化を図るよう指導する必要がある。

   
(2)  要員の合理化
 首都公団及び阪神公団の要員については、その経営の現状を踏まえ徹底した合理化が求められているところであるが、政府は、特殊法人の定数管理について、「行財政改革に関する当面の基本方針」(昭和56年8月25日閣議決定)により、国家公務員の定員削減計画に準じて措置することとし、また、「特殊法人等の整理合理化について」により、両公団を含め、事業活動を財政支出に依存して行っている特殊法人の要員を、国家公務員についての現行の定員管理方式に準じた方式の下で、10年間に10パーセント削減する等大幅な要員の合理化を求めている。両公団においても、これらの閣議決定を受け、昭和56年度から計画的に要員の削減を行ってきている。しかし、その一方で、新規路線の建設・管理などの事業の拡大を理由に新規の増員も行ってきており、平成9年度末現在の職員の定員は、計画的な削減が始まる前の55年度末現在に比べ、首都公団が22人純増の1,422人、阪神公団が51人純増の908人となっており、当庁調査日現在、首都公団で 1,425人、阪神公団で902人の要員が配置されている。
 なお、両公団の定員については、首都公団法第33条(予算等の認可)第1項及び阪神公団法第33条(予算等の認可)第1項に基づく両公団の申請による建設大臣の認可により定まるものとなっている。

 今回、両公団における要員の配置及び業務の実施状況を調査した結果、次のような問題がみられた。
 両公団の本社及び出先機関においては、次のとおり、基本的な業務指標を基に、同内容の業務を所掌している組織間で要員1人当たりの業務量を比較すると、他の組織を下回っており、業務量に対応した要員配置となっていないものがある。

1.  首都公団の本社の組織の中には、基本的な業務指標を基に、同内容の業務を所掌している阪神公団の組織と要員1人当たりの業務量を比較すると、経理部契約課、工事検査担当調査役等、阪神公団を下回っているものがある。
2.  首都公団の建設局及び建設部の組織の中には、基本的な業務指標を基に、同種の業務を所掌する組織間で要員1人当たりの業務量を比較すると、環境対策課、工事課等、他の組織を下回っているものがある。また、管理部及び保全部の組織の中には、同様に、同種の業務を所掌する組織間で要員1人当たりの業務量を比較すると、経理課、交通管理課等、他の組織を下回っているものがある。
3.  阪神公団の建設部の組織の中には、基本的な業務指標を基に、同種の業務を所掌する組織間で要員1人当たりの業務量を比較すると、工事第一課等、他の組織を下回っているものがある。また、管理部の組織の中には、同様に、同種の業務を所掌する組織間で要員1人当たりの業務量を比較すると、道路管理課等、他の組織を下回っているものがある。
 
 したがって、建設省は、首都公団及び阪神公団に対し、経営合理化の観点から、上記で指摘した組織を含め組織全般について業務量に対応した要員配置となるよう見直しを行い、要員の合理化を図るよう指導する必要がある。