高速道路に関する行政評価・監視−高規格幹線道路を中心として−の勧告に伴う改善措置状況(回答)の概要

 

【調査の実施時期等】 実施時期 :平成10年12月〜12年8月
調査対象機関:国土交通省、日本道路公団、本州四国連絡橋公団等
【勧告日及び勧告先】  平成12年8月8日、国土交通省に対し勧告
【回 答 年 月 日】  平成13年6月22日

【行政評価・監視の背景事情等】
 我が国の高規格幹線道路網の整備目標延長は、四全総等で約1万4,000キロメートル(概成目標は21世紀初頭)。平成10年度末現在、目標延長の53パーセント(7,377キロメートル)が供用
 高速道路や一般有料道路については、交通量の大きな伸びが期待できない状況にあり、今後の整備や管理に当たっては、国民・利用者の理解を得る観点からも一層の透明性・採算性の確保が課題。本州四国連絡道路については、3ルートが概成(平成11年5月)し、その維持管理に当たっては、同様の観点から安定的な整備費用の償還を行うとともに一層の透明性の確保が課題
 このような状況の下、これらの道路の整備や管理を行う日本道路公団(以下「道路公団」という。)及び本州四国連絡橋公団(以下「本四公団」という。)は、業務の一層の合理化・効率化の推進が課題
 このような高規格幹線道路をめぐる現状にかんがみ、また、閣議決定を踏まえ、高速道路、一般有料道路等の整備状況、道路公団及び本四公団の経営状況を調査


主 な 勧 告 事 項
関係府省が講じた改善措置状況
   国土交通省(建設省))は、次のとおり措置するとともに、平成12年8月22日、道路局長から日本道路公団(以下「道路公団」という。)総裁及び本州四国連絡橋公団(以下「本四公団」という。)総裁に対し、「高速道路に関する行政監察−高規格幹線道路を中心として−に基づく勧告について」(建設省総監道総発第123号)を発出し、勧告の趣旨を勘案して適切に対処するよう指導。これを受けて道路公団及び本四公団は、以下のとおり対処
1 有料道路事業の透明性・採算性の確保
(1) 高速道路事業の透明性・採算性の確保
(勧告)
1. 償還計画の達成状況が検証できるよう道路公団を指導すること。
(説明)
 高速道路は料金プール制。今後の新規整備区間(路線)には交通量の少ないものも見込まれているところ
 償還実績を償還計画に対応した形で明らかにしていないため、償還計画の達成状況の検証は現状では困難
(道路公団)
 平成11年度決算を12年8月に公表するに当たり、財務決算を償還計画と対比したところであるが、今後、決算の公表の際に、償還の計画と実績を対比するなど、償還計画の達成状況の検証を更に推進
(勧告)
2. 暫定施工方式により建設する区間の決定に当たっては、総建設費の節減の目安となる経済年数を算出し、これを考慮すること。
(説明)
 高速道路の完成車線は4車線以上。近年、工事実施計画の認可が行われた新規整備区間においては、供用当初に見込まれる交通量が少ないことから、初期投資額を節減した暫定施工方式による整備が大半
 平成9年度新規施行命令区間31区間中、暫定施工方式による整備区間は22区間(71パーセント)
 暫定施工方式により建設する区間の決定に当たっては、総建設費の節減効果が発現するまでの期間である経済年数の算出が重要
(国土交通省)
 今後策定される新規整備計画区間のうち暫定施工方式により建設する区間の決定に当たっては、総建設費の節減の目安となる経済年数を算出し、これを考慮
2) 一般有料道路事業等の透明性・採算性の確保
ア 道路公団の一般有料道路
(勧告)
1. 事業(事業変更)許可申請に当たっては、償還計画上の収入額の基礎となる計画交通量の推計精度の向上を図り、適正な事業投資限度額を算出するとともに、関連道路の整備等経年的な計画交通量の増減要因を明確にするよう道路公団を指導すること。
(説明)
 供用58道路の中には実績交通量が計画交通量を下回り、収支差損を生じているものがある。今後の事業許可申請に当たっては、事業投資限度額を適切に見積もる必要あり。

 実績交通量が計画交通量を下回る道路
 58道路中42道路(72パーセント)
 うち収支差損が生じている道路
 42道路中26道路(62パーセント)
(道路公団)
 計画交通量の推計精度の向上を図り、適正な事業投資限度額を算出するために、計画交通量と実績交通量のかい離の要因分析を実施
 計画交通量の増減要因を明確にするため、平成12年8月の許可申請から、申請書の添付書面に関連道路の整備等経年的な計画交通量の増減要因を記載
【改善事例】
 「仙台北部道路」の事業許可申請書(平成12年8月23日付け営企第30号)の添付書面(推定交通量及びその算出の基礎を記載した書面)において、関連道路の整備等経年的な計画交通量の増減要因の記述を追加
(勧告)
2. 営業を継続しても未償還額が拡大する道路については、収支改善のための方策を検討し、未償還額の拡大の抑制に努めるよう道路公団を指導するとともに、その支援策について検討すること。
 また、道路別の償還計画の達成状況について、計画と実績とを対比するなど、より分かりやすい情報提供を行うよう道路公団を指導すること。
(説明)
 営業を継続しても未償還額が拡大すると推計される道路あり。
 推計対象とした20道路中、償還期間満了時に道路資産額を上回る未償還額が残るもの9道路
(国土交通省)
 未償還額の拡大抑制の支援策について検討中
(道路公団)
 一般有料道路の採算性の確保については、これまでも増収対策の実施及び経費節減等の収支改善や、関連道路の早期整備に向けた事業の進ちょくあるいは関係機関との調整に努めてきたところ。引き続き増収対策や経費節減を図るとともに、更なる収支改善の方策について検討中
(道路公団)
 平成7年度決算の公表から営業中の一般有料道路の道路別収支状況及び償還準備金の積立状況について情報公開に努めてきたところであり、直近の決算の公表から、道路別の償還計画の達成状況について、計画と実績を対比するなど、より分かりやすい情報提供を行う所存
イ アクアライン
(勧告)
 償還計画策定上の収入額の基礎となる計画交通量については、実績交通量の推移等を踏まえ、推計精度の向上を図ること。また、関連道路の整備等経年的な計画交通量の増減要因を明確にすること。
(説明)
 アクアラインの交通量は低迷。このまま推移すれば償還の先行きは極めて厳しい状況
平成10年度の計画交通量28,702台/日、実績交通量 9,996台/日(34.8パーセント)
 経営面では、開通後の利用実態等を踏まえ、交通管理業務における道路の定期巡回の頻度等を見直す余地あり。


(道路公団)
 平成12年7月の事業変更において計画交通量を見直した際に、景気低迷による開通後の利用交通の状況を調査・分析し、その実態を反映するとともに、最新の経済情勢等についての知見を基に推計を行い、精度を向上
 また、平成12年7月の事業変更以降の利用交通の状況についても調査しており、引き続き計画交通量の推計精度の向上に努めるとともに、今後、事業変更許可申請を行う機会があれば、申請書の添付書面に関連道路の整備等経年的な計画交通量の増減要因を記載
【参考】
 平成12年7月3日に事業許可の変更が行われ、この際、計画交通量の見直し、料金調整(値下げ)、償還期間の延長、新たなプールの形成などを実施
ウ 本州四国連絡道路
(勧告)
 償還計画上の収入額の基礎となる計画交通量及び償還計画の達成状況を検証し、償還が確実に図られるよう改善方策を検討すること。また、償還計画の達成状況について、計画と実績を対比するなど、より分かりやすい情報提供を行うこと。
(説明)
 昭和63年度以降償還計画を2回変更。その都度、償還計画上の収入額の基礎となる計画交通量を下方修正。しかし、実績交通量は常に計画交通量以下。利用実態を踏まえた計画交通量の検証が必要
(本四公団)
 これまでも計画交通量及び償還計画の達成状況を把握し検証してきたところであるが、有利子負債を計画的に縮減するため、これまでの出資金 800億円に加え、平成13年度予算において新たに国から無利子貸付 800億円が措置されたところであり、今後も、計画交通量及び償還計画の達成状況を検証しつつ確実な償還が図られるように努める所存
 また、平成11年度決算を12年8月に公表するに当たり、ルート別収支率を公表したほか、償還計画の達成状況について計画と実績を対比した分かりやすい資料により記者発表を行うとともに、公団のインターネットホームページへの掲示による情報提供を実施
 なお、これらの措置については今後も継続して行うとともに、より分かりやすい情報提供に努力
2 業務の合理化・効率化等
(1) 業務委託経費の節減
(勧告)
1. 道路公団は、維持修繕業務である作業員とトラックによる路面清掃について、清掃頻度を決定する目安として示している日平均交通量に基づく基準の見直しを行うとともに、清掃頻度の決定に際して、ごみの発生量及びその内容を把握・分析するなどにより、より合理的な清掃頻度の設定に努めること。
(説明)
 道路公団の路面清掃頻度は、現行の基準の下で同程度の交通量にもかかわらず管理事務所間で違いがあるなど、改善の余地あり。
[調査対象33管理事務所で9事例]
 
(道路公団)
 作業員とトラックによる路面清掃について、清掃頻度を決定する目安として示している日平均交通量に基づく基準の見直しを平成12年12月に行い、13年4月から適用。さらに、平成12年度からおおむね3年間でごみの実態を調査し、ごみの発生量及びその内容を把握・分析した上で、より合理的な清掃頻度の設定に努力

【目安としての基準の見直し(日平均交通量が10,000〜25,000台の場合)】
 ・従来:3回/週( 156回/年)改正後:2回/週( 104回/年)
(勧告)
2. 本四公団は、料金収受業務について、現場代理人補助者及び事務長の配置基準を明確にすること。
(説明)
 本四公団の料金収受業務について、現場代理人補助者及び事務長の配置基準が不明確。このため、業務量見合いの要員配置となっているか否か疑問のある料金所あり。
   
(本四公団)
 平成12年度に「料金収受業務委託実施基準」の中の「料金収受業務委託人員算定基準表」を改正し、現場代理人補助者及び事務長の職位と位置付けの見直しを行い、これらの配置基準を明確化

【注】
 「「料金収受業務委託実施基準」の一部改正について」(平成12年3月1日付け業営第1号)により配置基準を明確化
(2)競争性導入の促進
(勧告)
 維持管理業務のうち、随意契約により業務委託等を実施している業務について、i)道路公団は、そのすべての業務(交通統計等作成業務、職員宿舎等点検業務、料金収受機械等技術管理業務、料金収受機械等保守整備業務、通行券検札業務及び計数管理業務)について、ii)本四公団は、料金収受機械等保守整備業務及び計数管理業務について、競争入札への移行を早期に図ること。
(説明)
 道路公団の料金収受機械等技術管理業務等全6業務、本四公団の料金収受機械等保守整備業務等2業務については、随意契約の相手方以外の者でも実施可能
 
 
 
(道路公団)
 交通統計等作成業務については、平成12年9月までに競争入札への移行を完了
 職員宿舎等点検業務についても、平成13年度中に競争入札への移行を完了する予定
 料金収受機械等技術管理業務及び料金収受機械等保守整備業務については、平成12年度に料金収受機械等保守整備業務として整理・統合し、13年3月から競争入札に移行
 通行券検札業務については、平成13年度中に競争入札に移行予定
 計数管理業務については、平成15年度予定の新コンピューターシステムの構築に合わせ、競争入札に移行予定
(本四公団)
 料金収受機械等保守整備業務については、平成13年3月から競争入札に移行。また、計数管理業務については、競争入札への移行に当たり汎用性を持つコンピューターシステムの構築が必要であり、それを前提として平成15年度を目途に競争入札に移行予定
(3)組織・要員の合理化
ア 組織・体制の見直し
(勧告)
1. 指摘した管理事務所については、担当道路及び地域の特性に留 意しつつ、配置の見直しを検討すること。(道路公団)
(説明)
 管理事務所の中には、設置基準等からみて配置の見直しを検討すべきものあり。
(道路公団)
 指摘された3管理事務所のうち、小松管理事務所及び糸魚川管理事務所については、平成12年11月までに、隣接する管理事務所との統合により廃止。残る延岡南道路管理事務所については、管理する道路が飛び地であるなど道路及び地域の特性に留意しつつ、配置の見直しに関して検討中
【参考】
 小松管理事務所は金沢管理事務所に、糸魚川管理事務所は上越管理事務所にそれぞれ統合

(勧告)
2. 本社・管理局・管理事務所を通じた機能分担の在り方を含め、現行の管理体制の合理化を検討すること。(本四公団)
(説明)
 本四公団については、長大橋を主体とする管理であるなどの事情があるものの、ルートごとに管理局を設置しているため、その平均管理延長(約58キロメートル)は短い。

(本四公団)
 本社・管理局・管理事務所を通じた機能分担の在り方を含め、公団の現行の管理体制の合理化について検討中
イ 要員管理の適正化
(勧告)
1. 管理事務所等現場組織について、数値化が可能な業務指標に数値化が困難なその他考慮すべき要因を加味した要員配置基準を策定し、これらを踏まえた要員配置とすること。(道路公団)
(説明)
 管理事務所の要員1人当たりの主要業務の指標を比較すると、管理事務所間で不均衡が発生
(道路公団)
 要員の配置については、管理延長等の指標と、道路、地域及び事案ごとにそれぞれ異なった特性をもつため容易に指標化することが難しい特殊要因(地方自治体や警察・消防等との協議・調整、お客様や地域住民からの苦情対応、騒音・振動等の環境対策及び不法占用者対策など)とを総合的に勘案した要員配置基準の策定について検討中




(勧告)
2. 閣議決定(平成7年2月24日)に基づく要員の削減を着実に実施すること。(本四公団)
(説明)
 閣議決定の趣旨を踏まえ、平成13年度までに8年度末定員(722人)の約3分の1(240人)を削減するためには、12年度と13年度の2年間で127人の削減が必要

(本四公団)
 平成13年度予算において、12年度末定員546人を64人削減して13年度末定員を482人とすることとしており、これにより8年度末定員722人の3分の1に当たる240人の削減計画を達成する予定