年金福祉事業団の財務調査結果の概要

通知日:平成12年7月3日
通知先:厚生省

 

財務の構造

 事業の概要
  1.  事業団は、厚生年金保険等の被保険者等に対する還元策を実施する法人として昭和36年に設立
  2.

 資金運用事業(年金財源強化事業、資金確保事業)、貸付事業(住宅資金等の貸付け)、施設事業(大規模年金保養基地の設置・運営)を実施

 財務の概要
  1.  資産総額=34兆4,082億円 → 7割近くが運用資産で3割が貸付資産
  2.  主な財源は、財投資金(年金特別会計の積立金の一部)、年金特別会計からの出資金と交付金

 

事業内容とその課題

1 資金運用事業

 運用収益の国庫納付(年金財源強化事業)と事業資金への繰入れ(資金確保事業)が目標
 しかし、借入金の利払いを上回る運用収益が上がらず、利差損が生じ、累積欠損を計上も
 これまでのところ、国庫納付は 133億円(H4)、運用収益の事業団資金への繰入実績はなし

  1. 運用原資は貸付期間長期・固定金利の財投資金 → 金利低下局面では利払いが収支を圧迫する構造
  (H9 資金調達利回り 5.03% 新規財投平均金利 2.48%)
     
  2. 利差損が生じ、累積欠損を計上も (H9)
   
   
   
  3. 運用資産の構成割合には5:3:3:2規制
(国内債券等5割以上、国内株式3割以下、外貨建資産3割以下、不動産2割以下)
   
   
     
  4. 国庫納付等の状況
    ・ 年金財源強化事業 → 国庫納付はH4に133億円
    ・ 資金確保事業  → 収益の事業団資金への繰入れなし
     
    事業団を廃止し、同時に新法人(年金資金運用基金)を設立予定(平成13年4月)
    年金特別会計の積立金を財源とし、運用収益の国庫納付を目的とする新たな資金運用事業を実施
(年金財源強化事業と資金確保事業は終了)

 

(ポイント)
 新法人においては、事業団の事業実施から得られた経験を踏まえ、新たな資金運用事業を効果的に運用していくことが課題

 

2 施設事業

 委託先の運営費に事業団の費用を含めて損益をみると大幅な赤字
 保養施設の譲渡が進まない場合、資産価値が減少し、維持管理費の年金特別会計による負担が継続

  1. 大規模年金保養基地(保養施設)を13か所設置、その運営はすべて(財)年金保養協会と県に委託
     
  2. 公的資金の投入状況(累計)
   
  3. 事業の損益状況(累計)
    ・ 委託先 → 収益と費用はほぼ均衡
    ・ 事業団の費用を含めた損益
  → 費用合計(▲2,977億円)、事業収入(1,255億円)
    損益(▲1,722億円)
   
       
  4. 事業から撤退[H9.6.6閣議決定]
    事業団の解散までに譲渡できない保養施設については、新法人において事業を承継し、一定期間内に譲渡を行う方針
    雇用や地域経済等への影響に配慮する観点から、公的な利用を前提として、まず道県に譲渡を働き掛け
   
保養施設の管理運営を行う間、資産価値が減少し、また、年金特別会計による維持管理費の負担が継続
     
(H8:減価償却費=46億円、 維持管理費=10億円)

 

(ポイント)
 保養施設の譲渡については、雇用や地域経済等に与える影響を考慮しつつも、年金特別会計に与える影響を勘案し、速やかに行う必要