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適用業務の適正化 |
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厚生年金の的確な給付や年金保険料の負担の公平の観点から、適用事業所・被保険者の適用を的確に行うことが重要
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適用漏れ事業所の把握・適用業務の適正化 |
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適用事業所は、1)常時5人以上の従業員を使用する事業所(一部業種を除く)、2) 1)のほか、国、地方公共団体、法人であって常時従業員(共済組合員を除く)を使用する事業所等
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厚生省は、適用漏れ事業所の適用に努めるよう都道府県を指導。 |
○ |
調査した26社会保険事務所が平成8年度に新たに把握した未適用事業所数は、1事務所平均 238事業所あり、1事務所平均適用事業所数( 6,297事業所) の約4%を占める。 |
○ |
未適用事業所に対する適用状況を確認している3社会保険事務所では、把握した未適用事業所の69%は調査時点でも未適用のまま。積極的に適用勧奨を実施している事務所でも、把握した未適用事業所 849事業所中 348事業所(41%)は調査時点でも適用できていないなど、現行の適用勧奨の仕組みには限界。 |
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<勧告要旨>
職務権限により適用する仕組みの導入について検討すること。 |
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(2) |
適用漏れ被保険者の把握業務の適切化 |
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厚生年金の被保険者は、適用事業所に使用される65歳未満の者。ただし、日々雇い入れられる者、2か月以内の期間を定めて使用される者等は除外
○ |
短時間就労者(パートタイマー)は、近年、著しく増加し、雇用期間等就労実態も多様であるが、被保険者の適用については法令上明確な規定がなく、厚生省は課長名の文書により都道府県を指導。 |
○ |
課長名文書では、1)勤務時間及び勤務日数等が同種業務を行う一般従業員の概ね4分の3以上ある者を原則、2)これ以外であっても就労形態等を総合的に勘案して適用を判断することとされているが、26社会保険事務所中23事務所は、上記1)のみにより判断。 |
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<勧告要旨>
パートタイマーに係る被保険者の適用対象の範囲を明確にし、法令で規定すること。 |
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2 |
福祉施設事業の見直し |
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厚生年金福祉施設や年金保険施設については、国の負担額を極力縮減するため、既設の施設の必要性の再検討、厳しいコスト意識に基づく経営の合理化・効率化が重要
(1) |
厚生年金福祉施設事業の見直し |
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厚生年金保険料を財源とする厚生年金福祉施設の設置(10年4月現在 118施設)は、厚生省が実施。施設の運営は、(財)厚生年金事業振興団等に委託
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平成8年度、調査した31施設中13施設は赤字(うち、11施設は累積赤字)。
また、施設の部門別収支等経営分析を行っていないなど経営改善努力は不十分。 |
○ |
厚生省は、今後、施設の新設は行わない方針。一方、 118施設中建築後20年を経過し、今後建て替え等を見込んでいる施設が43施設。この中には赤字施設も含まれている。 |
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<勧告要旨>
- 外部の専門家を活用した経営分析の実施及びその結果を踏まえた経営コストの改善の徹底を図ること。
特に、赤字を計上している施設について、早急に収支改善を図り、収支均衡の見込みのない施設については廃止を検討すること。
- 施設の建て替えは、周辺地域における立地条件を十分勘案するとともに、事業の採算が確実に見込まれる場合に限定して実施すること。
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(2) |
年金保険福祉施設事業の見直し |
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厚生省は、厚生年金、国民年金及び健康保険の保険料を財源として、カルチャーセンターとスポーツセンターとの機能を有する社会保険センター(9年度末現在50施設)及び社会保険健康センター(同40施設)を設置。両センターは公益法人に運営委託(法人の独立採算)
厚生省は、両センターを用いて実施する健康づくり・生きがい対策に関する事業等に対して、委託費を交付(8年度交付額:約43億円)
○ |
社会保険センター及び社会保険健康センターにおける事業(講座等)実施に係る利用者の受講料は、近傍類似施設の7割程度の額に設定。厚生省は、各センターに1施設当たり 4,000万円程度の委託費を交付。
なお、調査した20施設とも累積黒字を計上(1億円以上11施設、最高2億6千万円)。 |
○ |
受講料を類似施設の7割程度に設定していること、原則として一律に委託費を交付していることの合理性は乏しい。 |
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<勧告要旨>
施設運営の合理化、効率化を推進し、事業委託費について廃止を含め、その在り方を見直すこと。 |
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厚生年金基金に対する支援の充実 |
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厚生年金基金(平成8年度末 1,883基金)は、厚生年金を上回る年金給付等を行うことが目的
近年の経済金融情勢による資産運用成績の悪化等から、小規模基金を中心に基金の財政が悪化しており、基金経営の安定化が急務
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平成8年度、基金の掛金算定の基礎である予定運用利率は 5.5%であるが、小規模基金を中心に調査した24基金の平均運用利回りは1.88%(全基金の平均運用利回り2.73%)。 |
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厚生年金基金連合会(連合会の運用資産約3兆円。8年度運用利回り4.94%)は、運用のノウハウを有しているが、個別基金に対する資産運用に係る具体的指導・支援までは未実施。 |
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<勧告要旨>
小規模基金等における資産の運用について、厚生年金基金連合会による新たな支援措置等効果的な運用方策について検討すること。 |
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年金福祉事業団の事業の見直し |
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年金福祉事業団は、1)大規模保養基地の設置及び運営、2)被保険者等に対する各種資金の貸付等、3)資金運用部からの借入金を原資とする資金の運用を実施
年金福祉事業団については、平成11年の財政再計算に合わせ、年金資金の運用の新たな在り方につき結論を得て廃止することが閣議決定されており、それに伴って、大規模保養基地業務及び貸付等事業から撤退するものとされていることから、これらの円滑かつ確実な実施が必要
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大規模保養基地施設事業(全国13施設)については、厚生省は、施設所在道県に譲渡する方針。
年金福祉事業団は、具体的な譲渡条件の提示に至っていないが、赤字施設の増加、土地面積の規模 (100万坪以上)等から、譲渡には困難が見込まれる状況。 |
○ |
貸付等事業については、閣議決定に基づく撤退方策は、部内検討段階。
年金担保貸付事業については、借入期間中、借入者の年金支給額の全額が返済に充てられる仕組みとなっているため、返済期間中に生活が破綻し、生活保護を受けている例。 |
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資金運用事業については、資金運用委託機関(信託銀行、生命保険会社等)の評価基準を策定し、評価結果に基づき、運用委託額を定めているが、当該評価基準、評価結果等についてのディスクロージャーは不十分。 |
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<勧告要旨>
- 施設事業については、(i) 施設の土地・建物について、施設所在道県に対し、早急に具体的な譲渡条件を提示・協議することによりその速やかな処分を図ること、 (ii)施設所在道県等地方公共団体からの譲渡要望のないものについては、民間等への売却による処分を検討することについて年金福祉事業団を指導すること。
- 貸付等事業については、事業の廃止について早急に検討するとともに、それまでの間における年金担保貸付事業に係る貸付条件の緩和について速やかに検討すること。
- 資金運用事業については、運用委託機関の評価基準、評価結果等に関するディスクロージャーを推進するよう年金福祉事業団を指導すること。
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その他の勧告事項 |
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厚生年金福祉施設、年金保険福祉施設の業務運営の適正化等 |