日本勤労者住宅協会の財務調査結果の概要

通知日:平成12年11月29日
通知先:建設省

 

 

財務の構造

 事業の概要
  1.  協会は勤労者に住宅・宅地の供給を行う法人として昭和42年3月に設立
  2.  住宅分譲事業を中心として、主に住宅生協へ業務を委託する方式で分譲事業を実施
 住宅生協に対し住宅金融公庫等からの公的資金を調達する役割を担う
 財務の概要
   資産総額は1,633億円。財源は住宅金融公庫、労働金庫等からの借入金

事業内容とその課題

 分譲事業
  1 事業の状況
 
事業実績は大幅に低下しており、市場シェア及び公的資金調達額は減少
近年、協会の収入は減少。固定費率は上昇しており、事業収支に余裕がなくなってきている状況
大規模用地を取得。今後、その事業動向によっては、全体として用地保有期間の長期化が予想
    1. 委託事業の低迷により、事業実績は大幅に低下 S54=5,418戸 → H10=896戸
      (1) 市場シェアは設立当初と比べ大幅に低下 S42=6.3% → H10=0.3%
        委託事業の事績と市場シェアの推移
      (2) 公的資金調達額はピーク時の56%に減少 S60=653億円 → H10=366億円
        公的資金調達額の推移
    2. 協会の収入は減少 H5=11億円→H10=8億円
      固定費率は上昇 H5=48%→H10=73%
        協会収入・固定費率の推移
      事業収支に余裕がなくなってきている。 H5=3億円→H10=1,300万円
        事業収支の推移
    3. 大規模事業用地(全保有用地の約4割)を取得
      今後、その事業動向によっては、全体として用地保有期間の長期化が予想
        保有用地の状況
      ※在庫住宅は73戸(H10末)。在庫期間3年以上の住宅は現地住宅生協に承継責任(原価で買取)
       
       
  2 委託事業に係るリスク管理の限界
 
委託事業のリスクは、委託先住宅生協等の負担。その負担能力超過分を協会が負担
一方、協会の負担能力(事業原価調整引当金、利益剰余金)には一定の限界
 → 委託事業の動向によっては、事業経営に影響が出るおそれ
    1.  委託事業のリスクについては、まず、委託先の現地住宅生協・労金の負担で損失を処理
      現地住宅生協等が負担しきれない損失については、最終的に協会が負担
(協会の負担状況:昭和61〜平成3年度:45億円、平成7〜8年度:10億円)
    2.  事業リスクに対応するための協会の負担能力は、損失が発生した場合に備えるため引当てられている事業原価調整引当金及び利益剰余金の合計額であるが、その額は約30億円(H10年度末)
      事業原価調整引当金は、分譲総利益の7%を繰り入れる扱い。
しかし、分譲総利益は、分譲戸数、在庫期間中の利息負担等により影響を受ける。
       → 近年、当該引当金の繰入額が減少傾向
        事業原価調整引当金の推移
      当期利益も生み出しにくい状況
        利益剰余金の推移
    3.  協会の負担能力には一定の限界があり、また、その負担額は現地住宅生協の経営内容や現地労金の負担能力に影響される。
      今後、委託事業の動向によっては、協会の事業経営に影響が出るおそれ

(ポイント)
 委託事業については、経営の安定化を図る観点から、事業申請に対する審査の厳格化、事業規模・内容の見直し、引当金の充実などリスク管理を徹底することが必要