農業経営構造対策に関する行政評価・監視の勧告に伴う改善措置状況(回答)の概要



   【調査の実施時期等】
実施時期 平成15年8月〜平成16年10月
調査対象機関 農林水産省、都道府県(18)、市町村、関係団体等

【勧告日及び勧告先】 平成16年10月19日、農林水産省に対し勧告
   
【回答年月日】 農林水産省 平成17年9月16日

[行政評価・監視の背景事情]
 農業の持続的な発展を図るためには、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立することにより、生産性の高い農業を展開することが急務
  国は、地域の担い手となるべき農業経営の育成及び確保を図るため、「農業経営構造対策」を実施
  耕作放棄地の増加、農業従事者の高齢化等農業を取り巻く厳しい情勢の下で、農業経営構造対策の効果的かつ効率的な実施が必要

主な勧告事項 農林水産省が講じた改善措置状況
  経営構造対策推進事業の在り方の見直し
(勧告)
  合意形成事業の在り方に関し、
 経営構造確立構想(以下「確立構想」という。)が策定されていない事業地区等については、確立構想の策定、内容の適切化等に向けた改善措置を講ずること
 確立構想を策定したが施設等整備がすぐには伴わない事業地区及び対策事業以外の事業で施設等整備を行った事業地区についても、確立構想のフォローアップ等を行うこととすること。
   (説明)
 農業経営構造対策のうち経営構造対策推進事業(以下「推進事業」という。)は、地域における農業者等の合意形成のための支援(説明会、研修会など)を行う事業で、都道府県及び市町村等が実施(国は2分の1補助)。
 市町村推進事業のうち合意形成事業は、経営構造対策事業(以下「対策事業」という。)の円滑な実施と事業実施後の着実な効果の発現を図るため、地域の農業者を始め、地域農業にかかわる幅広い関係者の合意形成を図るために実施。
 合意形成事業の実施により、市町村等は、地域の農業構造の変革のための目標や施設整備計画等を内容とする確立構想を策定。

  18道府県の推進事業実施68地区を調査した結果、33地区(のべ38地区)において、
i1 )確立構想が未策定、内容が不備の地区(7地区)
ii2 )確立構想を策定したが施設等整備が行われていない地区(23地区)
 地域の農業構造の変革のための目標を達成したかどうかのフォローアップ等が行われていない。
iii3 )確立構想を策定したが対策事業以外の事業で施設等整備を実施している地区(8地区)
→:回答時に確認した改善措置状況

 「経営構造対策の適切な実施について」(平成16年11月5日付け16経営第4584号農林水産省経営局長通知。以下「指導通知」という。)を発出し、都道府県知事に対し次のとおり指導するとともに、都道府県知事は市町村等に対し指導通知の趣旨を踏まえ指導を行うよう要請。
 事業計画の審査や対象市町村等の指定に当たり、地域の農業情勢等を的確に把握し、地域ぐるみで農業構造の変革を図ろうとする内発的な機運が十分に醸成されていることの確認。
 16年度指定市町村等に対し、ヒアリングの実施やコンダクターの派遣等確立構想の策定に必要な支援、策定に向けた指導の強化。
 16年度に確立構想を策定したにもかかわらず、17年度に対策事業の導入を予定していない等の市町村等に対し、理由書の作成及び公表。
    なお、17年度からは、推進事業は、「強い農業づくり交付金」として交付金化された。事業実施主体は、地域の合意形成を踏まえ、「認定農業者等担い手育成の推進」のメニューの一つとして「経営構造対策推進」を選択し、成果目標等を記載した事業実施計画を作成して事業を実施することとし、確立構想の策定については、事務手続の簡素化、地域の自由度を拡大する観点から、経営構造対策を実施するに当たっての要件としないこととした。
  経営構造対策事業の見直し
(勧告)
1 )整備した機械及び施設等の利用が低調等となっている事業地区については、平成16年3月に改正された対策事業関係局長通知に沿って、事業実施主体に対して原因分析と改善計画の作成等を厳格に行わせるよう都道府県に対し助言するとともに、改善結果等についての情報を都道府県に提供すること。
2 )市町村マネジメント組織及び都道府県マネジメント組織において目標達成にかかる根拠資料等を確認するなど事業評価及び点検評価が厳正に行われるよう都道府県に対し助言すること。
   (説明)
 農業経営構造対策のうち対策事業は、合意形成が確立されている地域を対象に、地域の農業の担い手となるべき農業経営の育成及び確保に結びつく生産施設、加工施設等を整備する事業(国は2分の1補助)。
 事業実施に当たり、市町村長等は、認定農業者等の育成及び担い手への農地利用集積等の目標、施設整備計画等を記載した事業実施計画を策定。
 市町村マネジメント組織(市町村、農業委員会、農業協同組合等で構成)は、毎年度自ら事業評価を行い、都道府県知事に報告。都道府県知事は、その事業評価結果を点検評価し、都道府県マネジメント組織(都道府県、都道府県農業会議、都道府県農業協同組合中央会等で構成)の所見を付して、地方農政局長等へ報告。

 18道府県の対策事業実施60地区を調査した結果、27地区(のべ41地区)において、
 
i1 )整備した機械・施設等の利用が低調となっている事例(19地区)
 製もち機を導入、年間目標収益160万円→実際9.7万円
 コンバイン1台導入、作付け計画そば7haヘクタール、麦8ha ヘクタール
  →実際そば0.2haヘクタール、麦0.2haヘクタール
ii2 )事業評価及び点検評価が適切に実施されていない事例(5地区)
 事業評価結果では認定農業者が増加し目標は達成したとしているが、実際には認定農業者になっていない者が含まれ、目標は未達成
 点検評価において、水稲の一等米比率が下がっているにもかかわらず、目標達成と評価
iii3 )その他(17地区)
 事業地区の農業者の経営の安定化につながっていない例等

 
 
1 )指導通知において、都道府県知事に対し、「農業経営総合対策事業の実施について」(平成14年3月29日付け13経営第7052号農林水産省経営局長通知。以下「対策事業関係局長通知」という。)に基づき、次のとおり指導するとともに、都道府県知事は市町村等に対し指導通知の趣旨を踏まえ指導を行うよう要請。
   
 施設等の整備後の利用状況を把握し、利用計画に対する利用状況が3年間継続して70%未満等に該当する場合における市町村等への改善指導等の徹底。
 改善計画の作成が必要な場合には、原因分析結果を踏まえ、計画達成の確実性の十分な確認。

     整備した機械及び施設等の利用が低調等として指摘を受けた27地区について、平成17年1月から2月にかけて地方農政局等によるヒアリングを実施し、改善に関する助言を行った。改善事例については、取りまとめて都道府県知事に対し情報提供を行う予定。
   なお、「強い農業づくり交付金」においては、成果目標の達成阻害要因の分析や改善計画の作成などを行うとともに、改善結果等について都道府県等への情報提供を実施。

2 )指導通知において、都道府県知事に対し、点検評価については、根拠資料に基づき事業評価表の記載内容を確認することなどにより、確実かつ厳正に行うよう指導するとともに、都道府県知事は市町村等に対し指導通知の趣旨を踏まえ指導を行うよう要請。

 なお、「強い農業づくり交付金」においては、成果目標に対する事後評価を実施し、評価結果を以後の交付金の配分等に反映。

  補助金の適正な執行

(1) 市町村推進事業費
 (勧告)
 市町村等において合意形成事業費の執行が適正に行われるよう都道府県に対し指導すること。
 また、合意形成事業費が不適正に執行されているものについては、補助金の適正な執行を確保するため、早急に補助金の返還等厳格かつ適正な対応措置を採ること。
   (説明)
 18道府県の推進事業実施68地区を調査した結果、20地区(のべ22地区)において、
 
i1 )推進事業が完了しているにもかかわらず対策事業期間中の先進地視察等の経費に使用している例(17地区)
ii2 )本来使用が認められていない夕食代に使用している例(1地区)
iii3 )その他(4地区)
 整備する施設とは直接関係のない調査委託を行っている例(3地区)等

 
 
 
 指導通知において、都道府県知事に対し次のとおり指導するとともに、都道府県知事は市町村等に対し指導通知の趣旨を踏まえ指導を行うよう要請。
 
 市町村推進事業(合意形成事業)事業計画の審査に当たり、活動内容の必要性、整備する施設等との関連性、経費の妥当性等の十分な確認。
 先進地視察等(海外研修を含む)については、その内容が整備する施設等と直接に関係するものであり、研修期間、研修地選定理由、研修者略歴、修得事項等が明確で効果の発現が十分に見込まれるものであることの確認。
 市町村推進事業(合意形成事業)費は、「経営構造対策事業等の附帯事務費補助金及び推進事業費補助金の取扱いについて」(平成12年3月29日付け12構改B第 337号構造改善局長通知)に基づき、単なる飲食費等として支出するなど、誤った支出がなされないよう厳に適正な執行を行う。

 合意形成事業費の執行が不明確、不適正等として指摘された事例については、都道府県の担当者を集めた会議(平成17年1月〜3月にかけて全国7ブロックで実施、以下「都道府県担当者会議」という。)開催等により厳に適正な執行を行うよう指導。事例のうち、本来使用が認められない夕食代の費用に使用した事例地区(1件)については、国庫補助金を返還。
(2) 附帯事業費及び附帯事務費
 (勧告)
 農林水産省は、補助事業の適切な実施を図る観点から、都道府県に対し、附帯事業を適切に実施するよう助言するとともに、附帯事業費及び附帯事務費の執行を適切に行うよう指導する必要がある。
 また、補助金が不適正に執行されているものについては、補助金の適正な執行を確保するため、早急に補助金の返還等厳格かつ適正な対応措置を採る必要がある。
   (説明)
 附帯事業費(対策事業費の中で、技術研修等を行う際の経費)
 18道府県、対策事業実施60地区を調査した結果、8道府県(のべ9道府県)、12地区(のべ13地区)において、
 
i1 )市町村推進事業の支援や対策事業の実施希望の把握のための経費(本来は推進事業費)に使用している例(7道府県)
ii2 )対策事業と直接関係のない施設の視察や研修等の経費に使用している例(9地区)
iii3 )その他(2道府県、4地区)
 合意形成に係る説明会等の経費(本来は推進事業費)に使用している例(3地区)等
 附帯事務費(都道府県及び市町村が使用する事業実施指導に要する経費)18道府県、対策事業実施60地区を調査した結果、1道府県、5地区において、
 
i1 )本来使用できない事業実施主体が使用するパソコン等の備品の購入の経費に使用している例(3地区)
ii2 )補助対象経費とされていない市町村職員の給与に使用している例(1地区)
iii3 )整備する施設とは直接関係のない先進地視察の経費に使用している例(1地区)
iv4 )事業地区を管轄していない道府県の出先機関において自動車の購入に使用している例(1道府県)
 
 
 指導通知において、都道府県知事に対し次のとおり指導するとともに、都道府県知事は市町村等に対し指導通知の趣旨を踏まえ指導を行うよう要請。
 
 附帯事業は、施設整備事業の効果的かつ円滑な実施を図るために必要な調整活動等を行うものであることから、市町村段階の附帯事業については、整備する施設等と直接的な関連性を有するものであることの十分な確認。
 また、都道府県段階の附帯事業については、当該事業実施地区以外における活動には活用しない。
 附帯事業と経営構造対策推進事業との経理区分を明確化し、会計経理を適切に処理する。
 附帯事務費は、経営構造対策事業の実施指導に要する事務費であり、直接的に事業の円滑かつ適正な実施に要する経費であることを十分に理解し、事業実施主体が使用するパソコンの購入や市町村職員の給与に支出するなど、誤った支出がなされないよう厳に適正な執行を行う。

 附帯事業費及び附帯事務費の執行が不明確、不適正等として指摘された事例については、都道府県担当者会議開催等により厳に適正な執行を行うよう指導。事例のうち、補助対象とされていない経費等に使用した事例地区(4件)については、国庫補助金を返還。