農薬の使用、管理等に関する行政評価・監視の局長通知
に伴う改善措置状況(その後)の概要


〔調査の実施時期等〕  
 1 実施時期   平成13年12月〜15年2月
 2 調査対象機関   厚生労働省、農林水産省、道府県(14)、農業協同組合等

〔通知日及び通知先〕   平成15年2月7日、厚生労働省及び農林水産省に対し局長通知

〔回答年月日〕   厚生労働省:平成16年1月30日
   農林水産省:平成16年2月2日

〔その後の改善措置状   厚生労働省:平成17年11月18日
況に係る回答年月日〕   農林水産省:平成17年11月15日


 〔行政評価・監視の背景事情等〕
 農薬については、農作物の生産性の向上、品質の向上、労力の軽減等のため農業生産活動上極めて重要な資材であるが、農薬による中毒・死亡事故や農作物に係る被害が後を絶たず、適正な使用及び管理の徹底が強く求められている。また、ビニールハウス等に使用される農業用プラスチックの廃棄物については、不適正な焼却によるダイオキシン類の発生等の危険性もあることから、特に適正な処理が求められているところ
 総務省は、農林水産省等に対し、平成5年6月に「野菜の生産流通対策等に関する行政監察」結果に基づき農業用プラスチック廃棄物の処理対策の充実等について勧告、6年12月に「農業における環境保全対策に関する行政監察」結果に基づき農薬の適正使用の確保等について勧告
 この行政評価・監視は、農薬の使用及び保管管理の適正化を図り、また、農業用プラスチック廃棄物の適正な処理を推進する観点から、その実態を調査し、関係行政の改善に資するため実施


主な通知事項 関係省が講じた改善措置状況
1 農薬使用の適正化
農薬使用の適正化を図る観点から、以下の事項について、都道府県に対し技術的助言を行うこと。
1) 防除基準について総点検を行い、安全使用基準等に適合する内容に改訂すること。
(農林水産省)







 (説明)
 農林水産大臣は、農薬取締法(昭和23年法律第82号)に基づき、個々の農薬ごとに適用病害虫の範囲、使用方法等を定め、登録。また、農薬を使用する者が遵守することが望ましい基準として、農薬の成分ごとに、農作物名、剤型、使用方法、使用期間及び使用回数について、農薬の安全かつ適正な使用に係る組合せを示した農薬安全使用基準を制定
 都道府県は、農薬安全使用基準と農林水産大臣の登録を受けた農薬の使用方法等(以下、両者を合わせて「安全使用基準等」という。)を基に、当該都道府県における主要農作物ごとに、農薬の商品名、剤型、使用時期、使用回数、適用病害虫、希釈倍数等について、農薬の安全かつ適正な使用に係る組合せを示した防除基準を作成し、農業者等に対する技術指導に活用しているが、安全使用基準等と不適合
  •  14道府県の防除基準に掲載している農作物中、水稲及び当該道府県の主要農作物延べ91作物について農薬の使用方法等に係る掲載状況をみると、延べ4,926通りの農薬の使用に係る組合せのうち延べ49作物に係る延べ174通りの組合せ(3.5パーセント)の内容が安全使用基準等と不適合
→: 「回答」時に確認した改善措置状況
⇒: 「その後の回答」時に確認した改善措置状況









 【農林水産省】
→○  病害虫等の防除に当たって、農薬使用の一層の適正化を図る観点から、平成15年3月に通知(注1)を発出し、防除基準の適正化について総点検を実施し、農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(平成15年農林水産省・環境省令第5号)その他の農薬取締法に基づく農薬の使用に係る基準等(以下「農薬の使用基準等」という。)に適合した内容に改定するとともに、その内容を速やかに関係者に周知するよう、地方農政局等を通じ都道府県に対し、技術的助言を実施
 その後、一部の県で防除基準の記載の誤りが判明したため、平成15年6月、7月に通知(注2)を発出し、防除基準の総点検について再度徹底を図るよう、地方農政局等を通じ都道府県に対し、技術的助言を実施
 その結果、31都道府県の防除基準に誤記載があったが、誤記載についての正誤表等を関係者に配布することによる誤使用の防止対策を実施。誤記載により誤った使用が確認された都道府県においては、農作物の出荷停止、回収、農薬の残留分析等の安全確保措置を実施
 当省が指摘した14道府県の不適合事例については、すべての道府県が防除基準を改定・正誤表を配布する等により改善済み

(注1 )「病害虫等の防除における農薬の適正使用の徹底について」(平成15年3月10日付け14生産第9797号生産局長通知。以下「平成15年生産局長通知」という。)
(注2 )「防除基準等の適正化について」(平成15年6月17日付け15生産第2130号生産局植物防疫課長通知)及び「防除基準等の適正化措置について(依頼)」(平成15年7月7日付け15消安第210号消費・安全局植物防疫課長通知)

⇒○  各地方農政局等に対し、平成16年8月に通知(注)を発出し、各都道府県における防除基準の適正化措置の推進状況を調査するとともに、都道府県が監修等を行っている防除暦についても、その適正化措置の推進状況を調査
 その結果、防除基準に誤記載があったのは14道府県と、平成15年度の31都道府県の半分以下に減少。これら誤記載のあった道府県では、直ちに正誤表の配布や県のホームページで最新の情報を公表する等により誤使用の防止対策を実施。
 都道府県が監修等を行っている防除暦について誤記載があったのは1県のみであり、当該県においては、誤記載について周知徹底を図るとともに、栽培講習会で誤使用の防止対策を実施

(注 )「防除基準等及び都道府県監修防除暦の適正化措置の推進状況について(依頼)」(平成16年8月2日付け16消安第3904号消費・安全局植物防疫課長通知。以下「平成16年植物防疫課長通知」という。)

2) 農業協同組合等作成の防除暦等について、改訂した防除基準に併せて見直すよう農業協同組合等に対し指導を行うこと。
(農林水産省)





 (説明)
 都道府県農業改良普及センター、市町村又は農業協同組合(以下「農協」という。)は、防除基準の内容を参考として農業者が利用しやすいよう、主要農作物別に主な病害虫の防除方法を一覧的に示した防除暦、防除指針等(以下「防除暦等」という。)を作成し、農業者に配布しているが、安全使用基準等と不適合
  •  35農協の128防除暦等について農薬の使用方法等に係る掲載状況をみると、延べ1,521通りの農薬の使用に係る組合せのうち54防除暦等に係る延べ127通りの組合せ(8.3パーセント)の内容が安全使用基準等と不適合






 【農林水産省】
→○  農協等作成の防除暦等については、平成15年生産局長通知により、防除暦等を見直し、農薬の使用基準等に適合したものとするとともに、病害虫の発生予察情報等に十分留意し、適時適切な防除を実施するよう農協等を指導することについて、地方農政局等を通じ都道府県に対し、技術的助言を実施
 その結果、当省が指摘した11道府県の農協等における防除暦等の指摘事例については、農薬の使用基準等に適合したものに改訂等するよう道府県から農協等に対して指導が行われ、すべて改善済み

⇒○  農協等が作成している防除暦等について、その適正化を引き続き推進するため、平成16年植物防疫課長通知により、総点検の実施等により指導を徹底するよう、地方農政局を通じ都道府県に対し、技術的助言を実施
 今後とも、都道府県等を通じて、農業協同組合等作成の防除暦等の適正化を推進する予定

2 農薬の保管管理等の適正化
 農薬の保管管理等の適正化を図る観点から、以下の事項について、都道府県に対し技術的助言を行うこと。
1) 農薬取締法所管部局は、立入検査実施要領を策定するとともに、立入検査を実施するに当たって、重点実施方針・実施計画を作成の上、立入検査の対象に農薬取扱量の多い農業者を選定すること。
(農林水産省)










 (説明)
 農林水産省は「農薬の保管管理の徹底について」(昭和62年6月10日付け62農蚕園芸局長通知)に基づき、厚生労働省は毒物及び劇物取締法(昭和25年法律第303号。以下「毒劇物取締法」という。)及び「毒物及び劇物の保管管理について」(昭和52年3月26日付け薬発第313号薬務局長通知)に基づき、農薬を適正に保管管理するよう販売業者、農業者を指導
 都道府県知事は、農薬取締法及び毒劇物取締法に基づき、販売業者、農業者を対象に立入検査を行い、農薬の保管管理の適正化を指導しているが、適切な立入検査が実施されていない状況
  •  14道府県の農薬取締法所管部局中、立入検査実施要領を定めていないもの(3道府県)
  •  立入検査の重点実施方針や実施計画を作成していないもの(10道府県)
  •  14道府県の農薬取締法所管部局中12道府県では、農業者に対する立入検査を未実施












 【農林水産省】
→○  立入検査を実施するための手続や考え方等を定めた「農薬取締法に基づく立入検査に関する業務実施要領」を新たに作成し、平成15年12月、地方農政局等に対し通知(注1)
 併せて、都道府県に対しては、別途、通知(注2)を発出し、立入検査実施要領、重点実施方針及び立入検査計画の作成、立入検査の対象に農薬の取扱量の多い農業者を選定すること等、立入検査の実施方法等について技術的助言を実施

(注1 )「農薬取締法に基づく立入検査等の実施要領の制定について」(平成15年12月17日付け15消安第2185号消費・安全局長通知)
(注2 )「農薬取締法に基づく立入検査等に係る技術的助言について」(平成15年12月17日付け15消安第4251号農林水産省消費・安全局長通知)

⇒○  立入検査の実施方法等については、平成16年5月に通知(注)を発出し、立入検査の実施方法等について、最近特に事故及び事件が発生している地区の販売者及び使用者等に対して重点的に指導を行うことなどを盛り込んだ重点実施方針を策定し、効率的かつ計画的に検査を行うよう、都道府県に対し、技術的助言を実施
 その結果、43都道府県において、立入検査の実施方法等を定めた実施要領、立入検査の年度計画の策定等が行われており、36都道府県において、立入検査の実施対象の選定方法等の方針を定め、計画的な立入検査を実施
 今後とも、立入検査の計画的かつ効率的な実施、重点実施方針の策定等について、都道府県に対し、技術的助言を行う予定

(注 )「平成16年度農薬危害防止運動の実施について(通知)」(平成16年5月31日付け薬食発第0531002号16消安第1852号厚生労働省医薬食品局長、農林水産省消費・安全局長通知。以下「平成16年農薬危害防止運動通知」という。)

2) 毒劇物取締法所管部局は、立入検査の実効性を確保するため、改善報告の徴収等を確実に行うこと。
(厚生労働省)





 (説明)
 都道府県知事は、毒劇物取締法に基づき、販売業者、農業者を対象に立入検査を行い、農薬の保管管理の適正化を指導しているが、立入検査の実効性の確保が不十分
  •  毒劇物取締法の立入検査結果に基づく指摘事項の改善状況は、指摘を行った業者すべてについて改善報告の徴収等を行っている道府県等における指摘事項の改善率は100パーセント(6事項中6事項)に対し、改善報告の徴収等を全く行っていない道府県等における指摘事項の改善率は45.5パーセント(22事項中10事項)






 【厚生労働省】
→○  立入検査の実効性を確保するため、平成15年2月に通知(注)を発出し、
i1)立入検査結果に基づく指摘事項について、再度立入検査、報告書の徴収を行うなどにより確実に改善されたことを確認すること、ii2)必要に応じ都道府県の農薬取締法所管部局と連携し、効率的・計画的に立入検査を実施すること等について、都道府県等に対し、技術的助言を実施
 その結果、指摘事例のあった9道府県においては、改善確認を実施済みないしは改善確認の実施を予定。また、確認の結果改善が不十分なものについては、再度の改善確認を実施予定

(注 )「毒物劇物の適正な保管管理等の徹底について」(平成15年2月28日付け医薬化発第0228004号厚生労働省医薬局審査管理課化学物質安全対策室長通知)

⇒○  平成16年農薬危害防止運動通知において、毒物劇物取締法に基づく立入検査にあっては、毒物劇物監視指導指針に基づき、過去に指導を行った者に対して重点的に指導を行うよう、都道府県、保健所設置市、特別区に対し、技術的助言を実施
 各都道府県の改善状況等を把握するため、平成17年2月、「毒物劇物監視指導に係る調査」を実施したところ、全47都道府県において、報告徴収や再立入検査が確実に実施されていることが判明

3 農業用プラスチック廃棄物の適正処理の推進
 農業用プラスチック廃棄物の適正処理を推進する観点から、以下の事項について、都道府県に対し技術的助言を行うこと。
1)  農業用プラスチック廃棄物の適正処理を具体的に推進するための適正処理推進計画を策定し、基本方針等により定めるとされている回収範囲・回収処理経費の徴収方法等の事項を適正処理推進計画に盛り込むこと。
(農林水産省)










 (説明)
 農業者は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)に基づき、農業用プラスチック廃棄物を自らの責任において適正に処理することが義務
 農林水産省は、農業者だけでは農業用プラスチック廃棄物の適正処理が困難であるため、「園芸用使用済プラスチックの適正処理に関する基本方針」(平成7年10月23日付け7食流第4208号農林水産省食品流通局長通達)等に基づき、都道府県段階、市町村段階において、適正処理推進協議会等を設置し、組織的に回収、処理するよう都道府県を指導
 上記基本方針等に基づき、都道府県協議会は、回収範囲・回収処理経費の徴収方法等の事項を盛り込んだ適正処理推進計画を策定し、回収及びその処理を推進することとされているが、適正処理推進計画の策定が不適切
  •  4道府県協議会中、農業用プラスチック廃棄物の適正処理についての指針となる適正処理推進計画を策定していないもの(2道府県協議会)
  •  回収範囲・回収処理経費の徴収方法等の事項を適正処理推進計画に盛り込んでいないもの(8道府県協議会)












 【農林水産省】
→○  農業用プラスチック廃棄物については、平成15年2月に通知(注)を発出し、適正処理推進計画が未策定の都道府県協議会にあっては早急に適正処理推進計画を策定するよう、また、適正処理推進計画の内容に不備がある都道府県協議会にあっては回収範囲・回収処理経費の徴収方法等、基本方針等に定める事項を確実に適正処理推進計画に盛り込むよう、地方農政局等を通じ都道府県に対し、技術的助言を実施
 その結果、適正処理推進計画が未整備であった2県の協議会については、1県が適正処理推進計画の策定を完了、1県は策定に向け協議会が関係機関・団体と調整中。適正処理推進計画の内容に不備があった8道府県協議会については、4協議会が不備事項の改善を完了、4協議会が改善に向け関係機関・団体と調整中

(注 )「農業用プラスチック廃棄物の適正処理の推進指導の徹底について」(平成15年2月27日付け14生産第9259号農林水産省生産局生産資材課長通知。以下「平成15年指導通知」という。)

⇒○  適正処理推進計画が未整備であった1県の協議会については、適正処理推進計画の策定が完了。適正処理推進計画の内容に不備があった4道府県協議会の適正処理推進計画については、2県は必要事項を盛り込んだ改訂を完了しており、残りの2道府については、平成17〜18年度に必要事項を盛り込む改訂予定
 今後とも、全国の都道府県協議会における適正処理推進計画の策定、整備等について、ブロック会議の開催等により都道府県への働きかけを行う予定

2) 市町村協議会等が未設置である市町村に対しては、協議会等の設置を指導すること。
(農林水産省)





 (説明)
 農業用プラスチック廃棄物の適正処理を進めるための市町村協議会等は、農業用プラスチックフィルム等の利用が今後とも見込まれる1,118市町村のうち203市町村が未設置(18.2パーセント)






 【農林水産省】
→○  市町村協議会等が未設置の市町村を有する都道府県については、平成15年指導通知を発出し、市町村協議会等の設置を促進するよう、地方農政局等を通じ都道府県に対し、技術的助言を実施
 その結果、市町村協議会等が未設置であるなど回収体制が未整備であった11道府県の203市町村については、8府県の131市町村が新たに市町村協議会の設置等による回収体制を整備、6道府県の72市町村が回収体制の整備に向け関係機関・団体と調整中

⇒○  市町村協議会等が未設置であるなど回収体制が未設置であった6道府県の72市町村のうち、5道府県の35市町村が協議会等の設置等による回収体制を整備し、5市町村が17年度中に設置予定。残り32市町村については、i1)協議会の設置に向け検討中(8市町)、ii2)県協議会が広域適正処理システムで対応(14町)等の状況。
 今後とも、市町村協議会の設置、農業用プラスチック廃棄物の回収体制の整備等について、ブロック会議の開催等により都道府県への働きかけを行う予定