政策評価制度の法制化に関する研究会(第6回)議事概要

 

1.日時 平成12年11月1日(水)10:00〜12:10
 
2.場所 中央合同庁舎第4号館共用第3特別会議室
 
3.出席者 (研究会)
  工藤敦夫座長、宇賀克也、塩野宏、田辺国昭、吉田和男の各委員
  (総務庁)
  塚本行政監察局長、松村官房審議官、鎌田企画調整課長、
新井政策評価制度法制化担当室長、若生政策評価等推進準備室長

4.議題
   (1) 法制化についての基本的な論点について
  (2) その他

5.会議経過
  (1) 法制化全般に渡り、基本的な論点に関して事務局からの説明の後、出席者による自由討議が行われた。 討議の論点、概要は以下のとおり。
     
  <法制による政策評価の位置付け>
  政策評価の実施について柔軟に対応できるような仕組みにしなければ、各府省は実行できない。柔軟性をうまく理解してもらえるような法の規定振りを考えていくことになるのではないか。
  政策評価制度の目的として、説明責任と行政内部での活用が挙げられるが、行政内部(plan−do−see)での活用に寄り過ぎると説明責任が薄れてしまう恐れがある。やはりたとえば一回限りのものについても説明責任の観点からの評価は必要ではないか。
  企画立案と評価の関係について、ガイドライン案の検討にあたっては、評価という行為を企画立案の中に埋没させるのではなく、あえて明示的に取り出そうとした。その際、内部評価の方式だと同一主体であるからその活動自体を切り出しが難しいので、評価情報を作ってもらい、その情報を切り分けて、情報を公表し共有できるようにするという対処の仕方であった。つまり評価の部分を独立させておいて、後で利用の方法を考えるというスタンスであった。
  「マネジメントサイクル」といっても各省内での予算編成や意思決定の仕組みと関わってくるので、評価の部分だけを取り出して規定することも難しいし、各省ごとでかなりバリエーションがある。したがって「マネジメントサイクル」の部分は各省に委ねざるを得ないだろう。そのかわりオープンガバメントの理念を確保するために「公表」を義務付けることで結果を出してもらう、というシステムになるのではないか。
  政策評価は、結果についてフィードバックの仕組みをきちんと規定しておくことが重要であろう。その際、フィードバックといっても、行政内部の動きにとどまるものではなく、きちんと外に出して評価情報を共有するという仕組みが重要。
  <従来から行われてきている政策の評価との関係>
  企画立案の過程とは切り離されたものが、本法制で規定する評価ということになるであろう。ただ、従来の評価についても、各省が出す「白書」やその他情報公開で外に出しており、一応切り離されているとも言え、本法制でいう「評価」との違いをどうつけるかは考えなければならないのではないか。また、「判断」と「評価」の違いも念頭に入れておかないといけない。
  全ての企画立案に本法制の「評価」を義務付けていない以上、予算要求等の際に各省独自の評価をすることがあると言わざるを得ないのであろう。ただ、少なくとも本法制の「評価」を実施していたにも関わらず、実際にはその評価結果でなく別の評価結果を利用していたということにはならないようにしなければならない。
  <第5回の議論を踏まえた検討>
  政策評価を義務付ける範囲について、例えば「一定期間経過したものはすべて評価しなければならない」とすると順調に進んでいる公共事業なども評価が義務付けられることとなり、現実的ではない。また仮に公共事業、研究開発、政府開発援助の3類型だけを特に取り出して義務付けるとしても、その合理的な説明が必要である。ある程度評価手法の研究が進んでいて、現在既に評価を行っているということも理由として考えられるのではないか。その時々の政治的要請を、どこまで一般法に書き込むかという問題もある。ただ、あまり漠とした書き方であると、結局何が対象なのかが分からない法律になってしまうであろう。
  政策が決定される前の政策案の段階における評価と、政策が決定され実施段階に移行してからの評価で規定を分けるとわかりやすい規定になるのではないか。また、評価の目的に「企画立案への反映」と「説明責任」の2つの観点があることに留意することも重要。
  評価結果の政策の企画立案への反映の仕方には、各省ごとに事情が異なるであろうから、各省の独自性があってもいいのではないか。計画の中で各省が明らかにするという方法も考えられるのではないか。
  政策評価と企画立案、予算との機械的な連動は不可能であり、法律に規定するとしても「反映」「活用」という文言にならざるを得ないのではないか。政策評価の限度について理論的に整理しておく必要がある。また、ガイドライン案では「適時」「適切」に反映、活用とするとしているが、法律に書くとなると、きちんと説明する必要があるであろう。
  評価結果等の公表を考える際には、予算との関係で公表の時期が問題となってくる。各省レベルでは要求段階ということになるであろうが、実際にはその後に査定や与党調整があり、評価結果とどの程度つながっているのかという問題がある。「政府として」ということなら、公表の時期は政府案が固まった時とせざるを得ないような気もするが、それでは評価結果と予算との関係の説明がつかないのではないか。各省の判断で概算要求時に公表できる余地も考えてしかるべきであろう。各省レベルでは、「企画立案」と言えば「概算要求」と考えられる。ただ予算の作成の過程である「概算要求」について、国会の審議を待たずに国民にオープンしてしまうことが、国会との関係でどういう意味をもつのか、少し考えてみる必要があるとも思われる。
  地方公共団体との関係で、「協力を求めることができる」以上の規定を盛り込むと、地方自治法の「国の関与」の考え方との間でバッティングするのではないか。法律全体として政策評価制度が試行的なものであるとの前提に立っていることを考えると、現段階で、政策評価について、公法人、国民、私企業も含めて協力義務を課し、違反の場合にはサンクションを加えるというところまで踏み切ることは難しいのではないか。当面、協力でいけるであろうというのであれば、それで制度を動かしてみる方がいいのではないか。
  本法で示した政策評価の仕組みは、いろいろ考えられる仕組みの一つであり、地方公共団体でもいろいろな仕組みについて既に試みられている事情を考えると、本法で国の方から何らかの標準を示すのは無理があるのではないか。
  (2) 次回(第7回)研究会は、11月13日(月)に開催し、今回の議論を踏まえて、法制化に関する基本的考え方の整理について討議することとされた。
   
以上
   
(文責:総務庁行政監察局政策評価制度法制化担当室)

 


行政評価局トップページ 総務省トップページ  
行政評価局
トップページ

総務省
トップページ

政策評価トップページ