|
[監察の背景事情等] |
○ |
船舶数の減少、船舶の大型化・近代化の進展等に伴い船員数が大幅に減少。船員を取り巻く環境は、雇用情勢を始め厳しい状況
このような状況の下で、船員に係る行政の組織、体制については簡素・効率化を図る観点からの見直しが、また、業務運営については効率的かつ効果的な実施が必要 |
○ |
本監察は、船員行政の実施体制、業務の実施状況を調査し、関係行政の改善に資するため実施 |
○ |
調査対象機関:運輸省(地方運輸局(海運監理部を含む。)(10)、海運支局(67)、海員学校(8)、海技大学校、航海訓練所)、沖縄開発庁(総合事務局、海運事務所(2))、関係団体等 |
○ |
担当部局 :行政監察局、管区行政監察局(7)、四国行政監察支局、行政監察事務所(8)
|
|
[主な勧告事項] |
1 |
船員行政の抜本的見直し |
(1) |
船員労務官の業務運営の見直し |
|
・ |
10地方運輸局、62海運支局及び沖縄総合事務局に船員労務官 146人(平11.3末)配置 |
|
・ |
船員労務官は、船員の労働基準等に関して船舶等の監査業務を行い、必要な勧告等を実施。船舶監査は、原則、前回監査から3か月以上経過のものが対象
|
○ |
監査対象船舶の選定に関する基準なし。船員労務官は、当日係留中の船舶を適宜選んで立入り |
|
・ |
毎年、船員法が適用される約2万隻の船舶に対して約1万件の監査を実施。船舶監査 (調査した32地方運輸局等の4,238件)の45%(1,896件)は同一船舶に対し1年間に複数回実施。中には、計5回の監査を受けている船舶(調査した3,144隻中8隻)あり。一方、3年以上監査を受けていない船舶が62%(調査した252隻中156隻)あり、中には、10年以上監査を受けていない船舶が27%あり
|
|
・ |
船舶監査のため船員労務官が港に出向いた年間延べ日数(調査した37地方運輸局等の6,930人日)の11%(787日)は、前回監査から3か月を経過していない等の理由により監査に至らず
|
|
・ |
外国船舶監督官が行う外国船舶の監督については、入港船舶情報の事前収集及び監督実施結果情報の共有を行い、これらを対象船舶の選定に活用。船員労務官が行う船舶監査にはこのような仕組みなし |
○ |
船員労務官について年間監査件数等の実績に基づく要員算定なし |
|
・ |
船員労務官1人当たりの年間監査件数について、地方運輸局間で最大 2.2倍の格差
〔37件(100):80件(216)〕 |
(2) |
船員職安の業務運営の見直し |
|
・ |
10地方運輸局、49海運支局及び沖縄総合事務局に船員職安を置き、93人(平11.3末)配置 |
|
・ |
船員職安では、船員職業紹介、船員保険の失業認定等を実施 |
○ |
船員職業紹介について、十分に機能しておらず、適正な事務処理が行われていない状況。このような状況の下、船員職安の紹介による雇用の成立は民間船員職業紹介所に比べ低調
|
|
・ |
調査した33船員職安の管内で求人条件と求職条件が適合したもの 230件のうち、求人者に紹介が60件(26%)にとどまり、紹介なしが11件(5%)、記録がなく不明が159件(69%)
|
|
・ |
船員職安法で要請されている求人開拓に関し、事務取扱要領に定めなし。求人開拓の余地があるにもかかわらず、これを積極的に行っていない状況(29船員職安中24船員職安) |
|
・ |
広域職業紹介について、紹介状の交付や採否結果の把握等について事務取扱要領に定めなし.採否結果の関係船員職安への連絡がないため、既に採用を決定した求人者に求職者を紹介した例(3船員職安) |
○ |
船員職安について取扱件数等に基づく要員算定なし |
|
・ |
要員1人当たりの年間取扱件数に 5.8倍の格差
定員4人の船員職安で要員1人当たりの年間取扱件数 67件(100)
定員3人の船員職安で要員1人当たりの年間取扱件数390件(582) |
|
・ |
他業務との兼務の職員が対応している船員職安より年間取扱件数が少ない船員職安に専任職員を配置している例(6船員職安) |
(3) |
海運支局の再編整理 |
|
・ |
10地方運輸局の下に67海運支局を置き743人(平11.3末)配置。海運支局は、行政需要と利便を考慮して主要港に設置されてきたもの。船員、船舶及び運航関係業務の全部又は一部を分掌
|
|
・ |
昭和57年以降、海運支局の設置数及び所在地に変更なし。一方、昭和57年から平成9年までに船員数は44%減少(22万人→13万人)
、船舶数は20%減少(2万4,000隻→1万9,000隻) |
○ |
船員関係業務について、海運支局の配置は、行政需要及び効率的な業務運営の要請に適切に対応したものとなっていない状況 |
|
・ |
遠距離(海運支局所在地から 100Km超)にある複数の重要港湾を1支局で管轄しているものがある一方、他の海運支局に近接して配置され、管轄している港が漁港のものあり
|
|
・ |
管轄する区域における行政対象がわずかな海運支局の例(定員3人)
|
船員数 67人
|
、船舶所有者数 11人
|
、船舶数 24隻 |
<(67支局の平均) |
船員数 1,501人
|
、船舶所有者数 124人
|
、船舶数 223隻> |
|
○ |
海運支局の定員は3人以上とする運用。船員関係業務を主に分掌している海運支局の中には、年間取扱件数から試算される要員数が1人に満たず、他の海運支局等に近接しているものあり。
|
2 |
船員教育機関の組織及び業務運営の簡素・効率化 |
(1) |
海員学校 |
|
・ |
8校を設置。入学定員の合計440人。教職員数161人(平11.3末) |
|
・ |
本科校6(入学定員30人〜40人、中卒3年制)。専修科校2(各80人、高卒2年制)で、うち1校は司ちゅう・事務科(60人、高卒1年制)を併設 |
|
・ |
平成4年度から内航職員養成の教育に重点(内航職員の養成規模80人→380人) |
○ |
本科の養成規模は現在では過大 |
|
・ |
平成4年度から9年度で内航船員数が19%減少 (5万5,000人→ 4万5,000人)、うち20歳未満の船員数は39%減少(883人→539人)
本科卒業者の内航船員としての就職実績は、平成7年度から9年度で38%減少(87人→54人) |
○ |
本科の養成規模の適正化に当たって、1校ごとの入学定員を見直す方法は、業務運営の効率化の観点から十分な効果が期待できない状況 |
|
・ |
本科校と専修科校で生徒の定員に最大 2.4倍の差があるが、教職員数はほぼ同数。生徒の定員の違いが教職員数に反映されにくい構造あり
|
○ |
司ちゅう・事務科の卒業者のうち、司ちゅう部員としての就職者は約半数で、養成規模が過大 |