○ | 総務省行政評価局は、次の行政相談を受け、行政苦情救済推進会議(座長:味村治)に諮り、その意見(別添要旨参照)を踏まえて、平成13年4月17日、法務省に対し、改善を図るようあっせん。 | |
○ | 行政相談の申出要旨は、「私は、17人で区分所有するマンションに住んでおり、現在、管理組合の理事長となっている。管理組合は、建物の区分所有等に関する法律において、マンション等の区分所有建物を区分所有者が全員で共同して管理する団体として位置付けられている。しかし、法律では法人格を取得できる管理組合は区分所有者が30人以上とされており、当組合は法人格を取得することができない。このため、1.マンションの修繕費積立金を管理する銀行預金の口座名義は、理事長の個人名を記載した「○○管理組合理事長○○○○」とせざるを得ず、理事長が交代の都度名義の書換えを行う必要が生じること、2.管理組合の事務所は、財産管理の便宜を考えると管理組合の所有名義とすることが望ましいが、法人格がないことから、管理組合名義で登記することができないことなどの不都合がある。区分所有者が30人未満の管理組合であっても、積立金や共用部分等の管理を行わなければならないことは、30人以上の管理組合と何ら変わらないので、当組合でも法人格の取得ができるようにしてほしい。」というもの。 | |
○ | 当省のあっせん内容は、以下の理由から、区分所有者が30人以上の管理組合と限定されている現行の法人格取得要件について緩和の方向で見直しを求めるもの。 | |
○ | 1) | 法人格を取得すれば各種の契約など対外的な取引行為において法律関係が簡明になるというメリットがあり、現時点において法人格を取得したいとする区分所有者が30人未満の小規模の管理組合(以下「小規模管理組合」という。)が現実にあることを踏まえた場合、小規模管理組合については、1.必要な意思決定が容易にできる、2.法定の規制・手続を遵守できるかどうか疑わしい、3.法人格を取得した場合の負担を看過できないといった点を考慮し、法人格取得要件を区分所有者が30人以上の管理組合と限定しておく必要性は小さいものと考えられ、これらの点については、法人格の取得を希望する管理組合の判断・選択にゆだねることで足りるものと考えられる。 |
2) | 平成13年3月に第 151回国会(常会)に提出された中間法人法案では、社員に共通する利益を図ることを目的とする中間法人について、社員の人数は2人以上であればよいとされている。管理組合は、中間法人と類似の性格を有するものと考えられ、管理組合について法人格取得要件を区分所有者数30人以上と限定しておく理由は乏しいものと考えられる。 |
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3) | 小規模管理組合のうち法人格の取得を希望する管理組合に対して、法人格という法律上の位置付けを与えることは、主体的に活動できる管理組合の育成に資するものと考えられる。 |
資 料 |
1) | 管理組合法人制度は、管理組合の活動を容易にするため、これに法人格取得の道を開くべきであるとする管理の実務に携わる関係者等からの要請にこたえて昭和58年に創設されたものである。 |
2) | 法人格取得の具体的メリットとしては、管理組合は、区分所有者から集めた管理費や修繕積立金等の資産を管理し、管理委託契約、エレベーターの保守契約、修繕・補修請負契約など対外的な取引行為を行うことが多いが、法人格を取得することにより、1.これらの法律関係が簡明になること、2.法人登記制度により、団体の存在や代表者を対外的に容易に証明することができることが挙げられる。 |
3) | しかし、小規模の管理組合にあっては、1.管理組合法人として理事及び監事を置かなくても管理組合として必要な意思決定が容易にできるなど妥当な運営が期待できること、2.法人としての法定の厳格な規制や手続を遵守できるかどうか疑わしいこと、3.法人格を取得した場合、代表者の変更の都度登記をする必要があるなど登記手続の負担を看過できないこと等から、法人格を取得できる管理組合を一定規模以上のものに限定したものである。 |
1) | 国土交通省は、主に分譲マンションの適切な管理の促進、建て替えの円滑化等を念頭に置いた管理組合に対する官民による支援の在り方について、平成11年10月以降マンション管理フォーラムを開催するなどにより、管理組合や管理受託業者の団体、管理組合からの相談に応じている弁護士等から意見を聴取し、対応策を検討している。 この中において、大規模な修繕や建て替えなどについて関係者の合意形成が非常に難しいといった問題を解決するためには、管理組合の主体的な活動を促進していくことが重要な課題の一つであると指摘されている。 |
2) | 日本弁護士連合会は、平成12年6月16日、区分所有法の改正に関する意見書を取りまとめ、その中で、管理組合の法人化要件について、次の理由から、区分所有法第47条の法人化の要件のうち区分所有者の数(30人以上)の要件は撤廃する必要があるとしている。
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3) | 法務省は、法制審議会における議論を踏まえ、社員に共通する利益を図ることを目的とし、かつ、剰余金を社員に分配することを目的としない社団について、法人格を付与する道を開く中間法人法案を平成13年3月に第
151回国会(常会)に提出している。 この法律案では、中間法人については、社員の人数は2人以上であればよいこととされ、定款の作成等を行った上で登記を行えば、法人格が付与されることとされている。 |
参 考 |
行政苦情救済推進会議における意見要旨
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座長 | 味村 治 大森 彌 加賀美幸子 加藤 陸美 塩野 宏 田村 新次 堀田 力 |
元内閣法制局長官、元最高裁判所判事 千葉大学法経済学部教授 千葉市女性センター館長 (財)健康・体力づくり事業財団理事長 東亜大学大学院総合学術研究科教授 中日新聞社論説顧問 さわやか福祉財団理事長、弁護士 |