[総合評価] | |
1 国の水資源政策と水資源開発公団の位置付け | |
国は、水資源の開発、保全及び利用に関する総合的な施策を推進しており、広域的な用水対策を緊急に実施する必要がある地域について、水資源開発促進法(昭和36年法律第217号)に基づき、全国で7水系を指定し、水系ごとの水資源開発基本計画(以下「基本計画」という。)を定めている。国は、基本計画に基づき、ダム、堰、用水路等(以下「水資源開発施設」という。)の建設、管理等の事業を直轄事業として実施するとともに、限られた財政資源の下で水資源開発を円滑に進めるため、財政投融資資金等を活用した水資源開発施設の建設を推進している。 水資源開発公団(以下「水資源公団」という。)は、このような政策の下、広域的・大規模で、かつ、緊急性が高い水資源開発施設の建設及び管理を一貫して行う法人として昭和37年に設立された。水資源公団では、基本計画に基づき同公団の事業として定められたダム、河口堰、湖沼水位調節施設、用水路等の建設を行うとともに、旧愛知用水公団から承継した愛知豊川用水施設を含む既に完成した施設の管理等を実施している。 水資源公団の事業資金のうち、施設の建設に要する費用(実施計画調査費を含む。)は、その目的に従い、治水関係用途部分については国からの交付金等により、利水用途部分については国の補助金のほか財政投融資資金からの借入金及び同資金の引受けによる水資源開発債券により調達されている。また、施設の管理についても、管理に要する費用は、その目的及び用途に従い、国からの交付金等及び利水者等の負担金により賄うこととされている。 |
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2 建設事業資金と財務の構造 | |
水資源公団の建設事業の資金のうち、同公団が財政投融資資金からの借入金(水資源開発債券によるものを含む。以下同じ。)により調達している利水用途部分に係る建設資金については、事業完了後に、元本及びその利息の全額を受益者から負担金として通例割賦で徴収し、財政投融資資金に返済する仕組みとなっている。負担金は、都道府県、水道事業者、工業用水道事業者、土地改良区等に課せられているが、これまで、その徴収に滞りはない。 一方、借入金の償還条件(借入金は元金均等払い、公団債は10年満期一括払い)と割賦負担金の徴収条件(元利均等払い)の違いから、償還期間の前半は、借入金の償還額が割賦負担金の徴収額を上回り、後半は逆に、徴収額が償還額を上回ることとなる。この結果、前半においては、財政投融資資金への償還額が不足し、借換えが必要となることから、この借換えに伴う利息が費用として発生することとなる。 割賦負担金を徴収する際の金利は、内閣総理大臣及び主務大臣が定めることとされており、これまで、借入金の利子率と同率に定められてきた。このことは、償還に必要な資金の借換えを上記の徴収金利と同水準で行えば、最終的に収支の均衡が確保されることを意味している。しかし、実際の借換えは、その時々の金利変動の影響を受け、毎年度収支差が発生することとなることから、最終的に損失が生じないような方策の検討が必要である。 なお、昭和62年度以降10年間におけるこの収支差の状況をみると、毎年度差益が発生しているが、これは借換資金の金利が割賦負担金の徴収金利を下回っていることなどによるものとみられる。 |
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3 水資源開発施設の建設 | |
水資源公団における水資源開発施設の建設は、水系ごとに定められる基本計画及び事業実施方針に基づき進められており、この基本計画は、計画目標年度が到来する都度改定されてきている。これまでの基本計画によって水資源公団が建設することとされているのは64施設であり、そのうち、平成8年度末現在、40施設が完成し、22施設が建設中、2施設が調査中となっている。水資源開発施設の建設により新たに利用が確保される水量を開発水量として表しているが、水資源公団が建設する64施設の総開発水量(毎秒373.1立方メートル)は、平成12年度までの基本計画で定める7水系全体の開発水量の8割を占めている。また、水資源公団の建設事業の進ちょく状況をこの開発水量でみると、開発目標の85パーセント(毎秒316.7立方メートル)は既に開発が完了している。 水資源開発施設については、近年、降水量が減少する傾向がみられるため、河川審議会の提言により、安定的な水利用の確保に資する観点から、異常渇水対策機能が新たに追加され、平成4年以降、異常渇水時に緊急水を補給できる容量を備えたダムの建設が行われている。 一方、基本計画の開発水量を定める基となる水需要の動向をみると、各基本計画地域内の生活用水及び工業用水の需要の指標となる人口及び工業出荷額は、一部の地域を除き、現行基本計画の策定前の伸びに比べ策定後の伸びが鈍化している。また、耕地面積については、すべての地域において減少傾向にある。さらに、全国の水使用量をみても、全体として横ばい傾向が続いている。 このように、気候条件の変化を踏まえた安定的な水供給が求められている一方で、水需要を推計する際に勘案される各指標はこれまでのような伸びを示していないことから、新規事業の実施に際しては、水需要の動向等を十分見極めることが肝要である。 |