地域振興整備公団の工業団地等造成事業等に関する行政監察
勧告に対する改善措置状況の概要

 

【調査の実施時期等】  実地調査時期:(1次)平成7年12月〜平成8年3月、(2次)平成8年12月〜平成9年3月
 調査対象機関:国土庁、通商産業省
【勧告日及び勧告先】  平成10年1月9日に国土庁及び通商産業省に対し勧告
【回 答 年 月 日】  国土庁:平成10年5月26日、通商産業省:平成10年5月26日
【その後の改善措置
 状況の回答年月日】
 国土庁:平成12年5月30日、通商産業省:平成12年5月15日

【監察の背景事情】
 地域振興整備公団は、国の産業立地施策についての主要な実行機関として、工業団地等の造成事業、関連事業を行う会社への出資事業等の業務を担当。
 地域振興整備公団は、4種類の工業団地等造成事業(中核工業団地造成事業、産炭地域振興土地造成事業、業務用地造成事業及び産業業務施設用地造成事業)を開始して以来、平成8年度末までに197団地について事業を実施し、8年度末までに126団地を完売、8年度末現在で造成・分譲中の団地が66団地、計画中が5団地。
 しかしながら、地域振興整備公団の工業団地等造成事業等については、1.工業団地等造成事業の効率的な実施、2.出資会社に対する出資事業の適正な実施、3.組織・要員の合理化が求められている。
 この監察は、以上のような状況を踏まえ、地域振興整備公団の業務の効果的・効率的実施を図る観点から、これら業務の実施状況を調査し、関係行政の改善に資するため実施。

【勧告後の主な動き】
地域振興整備公団は、平成12年3月末までに198団地について事業を実施し、12年3月末までに129団地を完売、12年3月末現在で造成・分譲中の団地が64団地、計画中が5団地。
平成10年7月:  「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律」施行に伴い、地域振興整備公団は中心市街地活性化事業を新たに所管。
平成11年2月:  「新事業創出促進法」施行に伴い、地域振興整備公団は新事業創出基盤整備促進事業を新たに所管。
平成11年10月:  地域振興整備公団の新規融資業務は、日本政策投資銀行(平成11年10月、旧日本開発銀行と旧北海道東北開発公庫が合併)へ移管。

主 な 勧 告 事 項
関係省庁が講じた改善措置状況
 地域振興整備公団の工業団地等造成事業の見直し

 

<勧告>
1.  通商産業省は、地域振興整備公団(以下「地域公団」という。)の工業団地造成事業について、事業実施の必要性・緊急性の高いものに限定するなど需要と採算性に配慮した見直しを図る観点から、地域公団に対し、次の措置を講ずるよう指導すること。
  i)  新規事業採択の必要性・緊急性の検討を厳正に行うとともに、必要不可欠な団地について造成事業を実施すること。
  ii)  事業実施中の団地についても、定期的に造成工事実施・継続の必要性の検討を行うとともに造成規模の見直しを行う仕組みを確立すること。
  iii)  分譲区画の細分化、粗造成のままでの分譲等の分譲促進策を積極的に検討・実施すること。

(説明)
 周辺の経済域内の他団地の分譲が順調に進んでいない又は経済域内における団地に対する需要が相当減少しているにもかかわらず、新規造成に着手している例(2例)、着手を予定している例(1例)あり。
 事業実施中も継続造成の必要性と造成規模の見直しを定期的に行うこととなっていないことから、当初計画のまま継続造成又は追加造成を行っている例(3例)あり。
 粗造成のままでの分譲等の分譲促進策は積極的に講じられていない。
→○  通商産業省は、勧告の趣旨を踏まえ、通商産業省環境立地局長及び資源エネルギー庁長官連名通知(平成10年1月30日付け平成10・01・30立局第1号及び平成10・01・30資庁第3号)により、地域公団に対し、勧告の指摘事項について速やかに改善措置を講ずるよう指導。
 これを受けて地域公団は、以下の措置を講じた。
  i)  真に必要性・緊急性の高いものについて事業採択する予定。このため、新規事業採択に係る基礎調査等の実施及び造成計画の策定に当たっては、他の産業立地関連計画等を勘案し、周辺の経済域を適切に設定し、団地造成の動向、周辺の分譲状況等を的確に把握。
 平成10年度における「いわき四倉中核工業団地」の新規事業採択に当たっては、福島県長期総合計画等に基づく検討を行ったほか、新産業都市区域における経済圏域も対象として団地造成・分譲状況を的確に把握し、検討を行った上で採択の可否を判断。
     
  ii)  平成10年度以降、地域公団の中核工業団地造成事業部門において、予算採択後一定期間を経過しても事業採択に至っていない地区について、周辺の既存団地の分譲状況、団地造成の動向等を再把握し、事業実施の適否を判断する仕組み(事業化が困難と判断されるような場合には、事業を中止することも含む)の導入について試行中。
 また、事業実施中の団地については、毎年度、定期的・継続的に周辺の分譲状況等の把握を行っているほか、事業の実施・継続の必要性の検討及び造成規模の見直しを行う仕組みの導入について試行中。
 今後、これらの試行結果を踏まえ、定期的に事業の実施・継続の必要性の検討及び造成規模の見直しを行う仕組みをできるだけ速やかに確立することとしている。
     
  iii)  顧客の需要を踏まえ、造成工事完了前の譲渡予約、分譲区画の細分化等、粗造成段階における譲渡に取り組むこととした。
 平成10年度においては、造成工事完了前の予約公募を大牟田テクノパークで行うとともに、顧客の要望等による分譲区画の細分化を豊岡中核工業団地等8地区で実施。
<勧告>
2.  通商産業省は、新規事業採択又は追加造成に係る造成計画の承認又は変更計画の承認に当たっては、同様に、厳正な審査を行うこと。
→○  通商産業省は、勧告の趣旨を踏まえ、地域公団に対し、新規事業採択又は追加造成に係る造成計画の承認又は変更計画の承認に当たっては、団地造成によって産業立地が促進されるべき周辺の経済域の適切な設定状況、経済域内の既存団地の分譲状況等を踏まえた事業実施の必要性・緊急性、造成規模の適正等について厳正に審査する旨、周知徹底。
 平成10年度以降、本方針に基づき、造成計画について厳正な審査の上、承認。
地域振興整備公団の出資事業等の適正化
 
<勧告>
1.  国土庁及び通商産業省は、地域公団の出資事業及び融資事業の適正化を図る観点から、地域公団に対し、次の措置を講ずるよう指導すること。
  i)  企業化が確実と見込まれるものにのみ出資すること。
  ii)  出資会社に対し、迅速・的確な経営指導を実施すること。
  iii)  出資会社に対する融資に当たっては、回収可能性に留意した厳正な審査を行うこと。(通商産業省)

(説明)
 平成8年度末現在、出資会社は33社。うち、設立後5年以上経過しているものは15社。その大多数は経営が悪化。
 企業化の可能性について厳正な審査が行われないまま出資が決定されている例、出資会社に対する指導・助言が的確に行われていない例あり。
 出資会社への融資には、回収可能性に留意した厳正な審査を行っていない例あり。
→○  国土庁及び通商産業省は、勧告の趣旨を踏まえ、上記連名通知及び平成10年1月30日付け10国官総第30号国土庁長官官房長通知により、地域公団に対し、指摘事項について速やかな改善措置を講ずるよう指導。
 これを受けて地域公団は、以下の措置を講じた。
  i)  新規出資に当たっては、平成10年度から、周辺地域における貸室需要の経年分析、貸与設備に係る利用希望の把握、販売予定価格・数量と市場価格・市場規模との比較等を充実することに加え、必要に応じて専門家等の意見を聴取する等により、事業計画、販売計画等の検討を一層厳正に行い、真に企業化が見込まれるもののみに出資。
     
  ii)  出資会社の経営状況については、年1回の経営ヒアリングに加え、特に経営が悪化していると判断される会社に対して、経営関係資料を四半期ごとに提出させて経営状況の把握に努めるとともに、株主総会又は取締役会とは別に地域公団及び他の出資者をメンバーとした「経営改善に係る連絡調整会議」を設置し、経営内容の早期改善に向けての意思統一、取組の強化を行うこととした。
 具体的な経営指導に当たっては、民間コンサルタントの活用について検討させるとともに、一般管理費等の一層の縮減など経営指導をより一層充実したほか、更なる経営改善を促進するため、他社の収益事業の事例を紹介するなど、新たな事業の取組についても指導。
     
  iii)  出資会社に対する融資に当たって、他の金融機関からの意見聴取等を行うとともに、適正な債権保全措置を検討するなど、回収可能性に留意した厳正な審査を行うこととし、また、必要に応じ、民間信用調査機関を活用することとした。
 平成10年度には、出資者である地方公共団体に赴いて、出資会社への支援等対応状況について現地調査を行う等回収可能性に留意した厳正な審査を実施したほか、法人保証を徴求し、債権保全を確保。
<勧告>
2.  国土庁及び通商産業省は、公団の増資の認可又は出資計画の承認に当たっては、同様に厳正な審査を行うこと。
→○  国土庁及び通商産業省は、勧告の趣旨を踏まえ、地域公団に対し、増資の認可又は出資計画の承認に当たっては、販路の確保の可能性、設備貸与に対する需要の把握、貸室に対する需要の把握等を行うことにより、出資会社の企業化の可能性について厳正に審査する旨、周知徹底。
 平成10年度から、本方針に基づき、出資会社の企業化の可能性について厳正な審査を実施
<勧告>
3.  国土庁及び通商産業省は、出資会社の株式が売却困難となった場合の株式の評価損に関する適正な経理処理とディスクロージャーの在り方について、速やかに検討すること。

(説明)
 出資会社が倒産し、公団が保有する株式が売却困難となった場合における株式の評価損に関する経理処理規定が未整備。
→○  勧告の趣旨を踏まえ、平成10年2月以降、国土庁、通商産業省及び地域公団の実務担当者により、評価損についての適正な経理処理及びディスクロージャーの在り方について、外部の専門家の意見も求めて検討を継続中
 地域振興整備公団の組織・要員の合理化
 
<勧告>
 国土庁は、地域公団の地方出先機関における団地造成・分譲業務の効率化と組織・要員の合理化を図る観点から、次の措置を講ずるよう指導すること。
1.  開発所の組織・要員について定期的な見直しを行うこと。
2.  開発所の支部への統合あるいは開発所間の統合を推進すること。

(説明)
 平成8年度末現在、公団の組織は、本部のほか6支部、開発所50(うち工業団地の開発所34)。工業団地造成、出資、融資業務に従事する職員は、750名中542名。
 開発所については、要員一人当たりの業務量に約2倍の格差。同一ビル、同一フロアに複数の開発所を設置している例(4例)等あり。統合を推進することが可能。
 国土庁は、勧告の趣旨を踏まえ、平成10年1月30日付け10国官総第30号国土庁長官官房長通知により地域公団に対し、指摘事項について速やかな改善措置を講じるよう指導。
 これを受けて地域公団では、平成9年9月24日付け閣議決定「特殊法人等の整理合理化について」及び9年12月26日付け閣議決定「特殊法人等の整理合理化について」も踏まえて、組織・要員の在り方について検討を行っており、平成11年度の組織・要員については、次のとおりとした。
  i)  スクラップ・アンド・ビルドを基本として、地域公団全体の組織・要員を抑制。
  ii)  新規融資業務の日本政策投資銀行への移管に伴い、既存の融資担当2部門を貸付債権管理部門として統合するとともに、地方部局の新規融資担当課を廃止。
  iii)  事業の進ちょく状況、近接地方部局の有無等を勘案しつつ、地方部局を統合。
 また、新規着手事業のための組織・要員については、できる限り近接する地方部局の組織・要員の補充で対応し、新たな地方部局の新設は、事業地区が遠隔地にある場合等既存地方部局において対応することが不可能又は困難な場合に限定。
       
    この結果、地域公団の平成11年度末定員は、前年度比11名減の733名。
勧告以降における開発所の統合実績は以下のとおり。
   
開発所の支部への統合(2開発所)。
   
開発所間の統合(6開発所→3開発所)。