宇宙開発事業団の財務調査結果の概要

通知日: 平成12年3月30日
通知先: 科学技術庁、運輸省、
郵政省


財務の構造
 事業の概要
 
1.  事業団は、実利用を目指して行われる宇宙開発活動の中核機関として、昭和44年に設立
2.  事業は、人工衛星・ロケット開発、打ち上げ及び追跡管制、観測データの受信等
 財務の概要
 
1.  国からの出資金(開発費に充当)及び補助金(一般管理費に充当)により事業を実施
2.  出資金累計2兆 3,000億円 → 累積欠損金1兆 8,000億円
 
     研究開発成果等が企業会計原則に照らし資産として計上されないため

事業内容とその課題
 ロケット事業
 
 ロケット開発には多額の出資金等が投入されており、技術の国産化等に一定の成果
 H−IIロケットの打ち上げコストは海外の約2倍から3倍の水準
 H−IIロケットの打ち上げは、最近相次いで失敗
 
1.  ロケットの開発には累計 8,100億円、打ち上げには累計 1,200億円の出資金等を投入
2.  初期のN−Iロケットと現在運用中のH−IIロケットの性能等を比較すると
 
i.  技術の国産化比率は 60% → 100% 、 打ち上げ可能重量は 130kg → 2,000kg(15倍)
ii.  輸送コストは5,400万円/kg → 950万円/kg(約6分の1)
 
3.  打ち上げコスト(静止衛星2tクラス)は海外より割高
 
   H−IIをベースに低コスト化、高性能化を
 図るためのH−IIAを開発中
1機当たりの製造・打ち上げ費
日本
米国
欧州
ロシア
H-II
デルタIII
アリアンIV
プロトン
190億円
90億円
108〜132億円
43〜67億円
 
4.  H−IIロケットの打ち上げは、平成10年、平成11年と相次いで失敗
     → 現在、事故原因究明中
   
 人工衛星事業
 
1.  人工衛星の開発には累計 5,700億円の出資金等を投入 : 1機当たり150億円〜500億円 (平成2年度以降)
   → 自主技術の蓄積が進展 : 気象衛星を除き、国産化比率は100%
2.  平成6年の「きく6号(技術試験衛星VI型)」、8年の「みどり(地球観測プラットフォーム技術衛星)」と相次いで事故が発生
 国の研究評価指針(平8内閣総理大臣決定)に沿って、研究開発の目的・目標、波及効果等につき、事前・中間・事後の評価を行う実施要領を策定(平9年12月)、10年度から同要領に基づく評価に着手
   
 今後の課題
  (ポイント)
 
 ロケット事業、人工衛星事業とも一層の開発コスト低減に努めるとともに、一連の事故により損なわれた両事業の信頼の回復のための対策を講ずることが急務
 両事業は多額の公的資金の投入が必要とされる事業であり、費用対効果等の観点から評価を行うとともに、その結果を明らかにしつつ、開発の妥当性について不断に論議していくことが必要