薬剤師国家試験の合格発表の年度内繰上げ(概要)

《行政苦情救済推進会議の検討結果を踏まえたあっせん》

あっせん日: 平成10年10月8日
あっせん先: 厚生省

 総務庁行政監察局は、下記の行政相談を受け、行政苦情救済推進会議(座長:茂串 俊)に諮り、その意見を踏まえて、平成10年10月8日、厚生省に対し、改善を図るようあっせん。
 行政相談の申出要旨は、「薬剤師国家試験は、例年、3月下旬に実施され、4月下旬に合格発表が行われている。多くの受験者は、大学を卒業し、4月初めから病院、製薬会社等で勤務することになるが、せっかく就職できても万が一不合格となった場合は退職せざるを得ないこともあり、不安を感じているので、試験を繰り上げて実施し、3月末日までに合格発表するようにしてほしい。」というもの。
 この申出に対する行政苦情救済推進会議の意見は、次のとおり。
 「薬剤師国家試験の合格発表が4月に行われていることにより、受験者のみならず、採用者にとっても不利益や支障が生じており、その解消が必要である。一方で、すべての薬学系大学が年度内繰上げに対応できる試験日程を組む必要があるので、試験実施時期を繰り上げることによる薬学教育カリキュラムへの影響を検討した上で、改善を図る必要がある。」
 当庁が、全薬学系大学(46大学)から合格発表を年度内に繰り上げることについて意見を聴取した結果、約8割の大学が賛成の意向。
 当庁のあっせんの内容は、関係省庁等とも協議の上、薬剤師国家試験の合格発表を年度内に繰り上げて実施することを検討するよう求めるもの。

資  料

薬剤師免許の要件及び同国家試験受験資格
 薬剤師法(昭和35年法律第 146号)に基づき、薬剤師になろうとする者は、薬剤師国家試験に合格し、合格者に対して与えられる厚生大臣の免許を受けなければならないこととされており、同国家試験の受験資格を有する者は、学校教育法に基づく大学(短期大学を除く。)において、薬学の正規の課程を修めて卒業した者等とされている。
薬剤師の試験実施及び登録等の流れ(平成10年の例)
薬剤師の試験実施及び登録等の流れ
最近3か年の試験日及び合格発表日

試 験 日 合格発表日 試験日から発表日までの期間
平成8 平成 8.3.29 〜3.30 平成 8.4.23 26日(試験初日を含む。)
平成9 平成 9.3.29 〜3.30 平成 9.4.23 26日(   〃    )
平成10 平成10.3.28 〜3.29 平成10.4.23 27日(   〃    )
試験地及び合格発表場所
 薬剤師国家試験は、北海道、宮城県、千葉県、東京都、富山県(又は石川県)、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、徳島県及び福岡県の全国11試験地において毎年実施されており、合格発表は、厚生本省及び大阪、福岡の各麻薬取締官事務所の3か所にその氏名を掲示して行われる。
最近3か年の受験者数及び合格者数
(単位:人、%)
新 卒 者 そ の 他 合 計
受験者 合格者 合格率 受験者 合格者 合格率 受験者 合格者 合格率
平成8 8,825 7,473 84.7 3,112 1,681 54.0 11,937 9,154 76.7
平成9 8,747 7,367 84.2 2,835 1,362 48.0 11,582 8,729 75.4
平成10 8,548 7,010 82.0 2,982 1,377 46.2 11,530 8,387 72.7
平成9年3月薬学系大学卒業者(8,391人) の主な就職先等(薬学教育協議会調べ)
 1.病院(22.1%)  2.薬局勤務(17.2%)  3.製薬会社(14.5%)  4.その他(46.2%)
合格発表の年度内繰上げについて、薬学系大学(46大学) に対する調査結果

調査結果 内   訳
賛 成 36(78.3%) 国公立10(58.8%) 私立26(89.7%)
反 対 8(17.4%) 国公立 5(29.4%) 私立 3(10.3%)
意見留保 2( 4.3%) 国公立 2(11.8%) 私立 −( −)
46(100 %) 国公立17(100 %) 私立29(100 %)
【反対の主な理由】
 国家試験の実施時期を繰り上げた場合、教育カリキュラムに影響(教育の質の低下を懸念)
合格発表の年度内繰上げを要望する病院・製薬会社等採用者側の事情
(1)  合格するまでは薬剤助手として仮採用し、合格したら薬剤師として本採用する必要があり、採用事務が二度手間となる(K大学医学部附属病院)。
(2)  採用後、合格しなかった場合は、薬剤師としての職務を行わせることができないため、解雇せざるを得ず、薬剤師の補充も困難である(日本薬剤師会、日本病院薬剤師会)。