郵政事業に関する行政監察−郵便貯金事業を中心として−
の勧告に伴う改善措置状況の概要

【調査の実施時期等】  
 1 実地調査時期 :  平成7年12月〜平成8年3月
 2 調査対象機関 :  郵政省、貯金事務センター(17)、郵便局(80)、関係団体等
   
【勧告日及び勧告先】  平成9年4月24日、郵政省に対し勧告
【回答年月日】  平成10年6月26日
【その後の改善措置
 状況の回答年月日】
 平成11年7月7日
  【監察の背景事情等】

 近年の金融自由化の進展の中で、民間金融機関では工夫をこらした新たな商品が提供されるなど、郵便貯金事業を取り巻く内外環境条件は変化

   
 郵便貯金事業は、官業は民業を補完しつつ適切な役割を果たしていくとの公的金融の基本原則の下、経営の一層の合理化、効率化を推進するとともに、簡易で確実な少額貯蓄手段の提供という本来の目的に沿った適切な運営を行うことが重要
   
  (参考)
   郵政事業については、「中央省庁等改革に係る大綱」(平成11年1月26日中央省庁等改革推進本部決定)において、郵政事業庁の設置の日から起算して2年を経過する日の属する年に国営の新たな公社(郵政公社)に移行

 

主な勧告事項等
関係省庁が講じた改善措置状況
 経営の効率化・合理化等
  (1)  貯金事務センター
  ア 貯金事務センターの要員合理化
(勧告)
1.  業務量に対応した要員配置の見直しを行うこと。
(説明)

 

 貯金事務センターの業務運営の効率化・スリム化を図る観点から、次の措置を講じ、要員の合理化を図った。

 平成9年度に 311人、10年度に 339人の減員を実施し、11年度に預入申込書のマイクロフィルム化等により 259人を減員予定
 なお、第三次オンラインシステムの稼働を機に事務処理の実態調査を行い、平成12年度の要員算出から新算出標準を適用できるよう策定作業中
(勧告)
2.  キーツー入力業務について、民間委託を積極的に推進すること。
(説明)
 調査対象17センターのキーツー入力業務は、郵便振替払込データの入力等一部を民間委託しているだけで、ほとんど直営で実施

 

 平成12年度に貯金関係データのキーツー入力業務について、セキュリティー対策に配慮を要する業務等を除き、民間委託する予定
(勧告)
3.  給与預入及び自動払込みに関するデータの磁気媒体等での提出について、事業者への協力依頼を積極的に行い、その推進を図ること。
(説明)
 給与預入データの磁気媒体等による受入状況は低調。自動払込みデータの磁気媒体等による受入割合が低いセンターあり

 

→○  平成9年9月から11年2月までに約 5,500事業所と折衝し約 1,300事業所(約47万件/月)のデータの磁気媒体化を推進
  (参考)
 調査対象10貯金事務センターにおける平成7年の磁気媒体等による給与預入データは約75万件/月
  イ 貯金事務センターの再編整理
(勧告)

 事務の機械化、業務の集約化等により要員の合理化を推進しつつ、中長期的な見通しに立って新たなオンラインシステムの検討など各般の条件整備を進め、貯金事務センターの再編整理を図ること。

(説明)
 センターの業務は、交通手段の発達と業務のオンライン化により広域的な処理が可能
   地方郵政局の管轄区域を越えて処理しているセンター:仙台、長野等
   4地方郵政局は管内に1センター、7地方郵政局は管内に複数センター設置
   平成8年1月から郵便振替の口座所管庁事務の集約化を開始
 地方郵政局管内に複数設置されているセンターでは、事業要員1人当たりの年間取扱件数が少なく、事業要員に対する共通管理業務要員の割合が高い例あり

 

 第三次オンラインシステムの導入、計算センター業務の集約や郵便振替口座所管庁事務の集約など事務の機械化、業務集約化等による貯金事務センターの要員の合理化を推進しつつ、

   
 新たなオンラインシステムの検討の進ちょく等を踏まえ、貯金事務センターの再編計画の策定に着手
  (2) 郵便局の要員合理化(内務員及び外務員)
(勧告)

 業務運営の効率化・スリム化を図る観点から、業務量に対応した要員配置の見直しによる要員の合理化を図ること。  

 


(内務員)
   内務員については、平成9年度に 185人、10年度に 172人の減員を実施し、11年度に 241人を減員予定
  (外務員)
   外務員については、平成10年度に50人の減員を実施し、11年度に積立貯金の集金事務の減少に伴い 107人を減員予定
  (3) 預入制限額の管理の徹底
(勧告)
1. 本人確認については、適正に行うようその徹底を図ること。
(説明)
 任意団体名義の新規預入申込時の確認を書類によって行っていないなど本人確認が適正に行われていない例あり

 

 預入制限額の管理の適正化を図る観点から、次の措置を講じた。

1.  本人確認の徹底について、i)ポスター等による利用者への周知、ii)新規預入時における本人確認及び預入申込書の記載事項チェックの徹底、iii)全郵便局を対象とした講習会による職員指導を実施
  (本人確認徹底のための指導講習会の開催状況)
   第1回目: 平成9年5月〜6月に全国の郵便局(1局1名)を対象に開催
   第2回目: 〃 9年10月〜10年3月に全国の普通郵便局(外務員を中心に1局2名)を対象に開催
   第3回目: 〃 10年5月〜8月に全国の郵便局を対象に開催
(勧告)
2.  名寄せについては、預入制限額を超過している貯金の早期・的確な把握が可能となるよう速やかにその仕組みの改善・充実を図ること。
(説明)
 名寄せを行っているが、預入制限額超過から減額通知書発送(郵便局あて)までに1年以上を要している例あり

 

2.  名寄せについては、平成9年度からシステムを改善し、貯金事務センターにおいて行う同名異人のチェック等の作業を省力化・迅速化
 さらに、貯金事務センターにおいて手作業により実施していた減額通知書の作成等について、10年度から機械出力することにより事務を省力化・迅速化
(勧告)
3.  預入制限額を超過している貯金については、預金者への通知に書面交付の方法を取り入れるとともに減額について的確な進行管理を行い、減額の徹底と迅速化を図ること。
(説明)
 郵便局の減額処理方法は、預入制限額超過の預金者を訪問し、口頭で減額を要請
 減額の進行管理を行っていないセンターが、調査対象16センター中7センターあり

 

3.  預入制限額を超過している貯金については、平成9年6月、預金者への減額通知の際に書面を交付するよう通達を発出し、郵便局及び貯金事務センターを指導し、書面交付による減額通知を実施
 さらに、貯金事務センターにおける減額の進行管理については、平成9年5月及び10年9月に開催した地方郵政局貯金部業務サービス課長会議において的確に行うよう指導
郵便貯金会館に係る運営の見直し及び財務内容のディスクロージャー
(勧告)
1.  振興会に対して、郵貯会館の収支を改善するよう指導すること。
(説明)
 施設の利用料金は、同種の公共施設及び民間の同業種と同程度の水準。会館運営(宿泊等)は利益が上がりやすい構造
 調査した7会館中4会館は赤字。このうち2会館は平成2年度より利用者が減少している中で費用支出額は増大
 郵貯会館運営の健全性と透明性を確保するとともに郵便貯金利用者の理解を得る観点から、次の措置を講じた。

1.  郵貯会館の収支改善については、平成9年12月、要員の効率的配置、事務委託の促進による経費の抑制などにより郵貯会館の収支改善を図るよう振興会を文書指導
 これを受けて、振興会においては、要員の効率的配置等により一層の収支改善に取組
   

【個別事例の改善状況】
 赤字として指摘された4会館について、平成9年度、赤字は1会館に減少

(勧告)
2.  振興会の費用負担を拡大するなど、郵貯会館の運営に係る費用、収入又は収益に関する現行の仕組みを見直すこと。
(説明)
 郵貯会館運営に関し、通常必要とする費用は振興会の負担とし、生じた収入は振興会の収入。振興会は、昭和50年度以降損失を生じておらず、利益を累積。郵貯会館の減価償却費は郵貯特会で負担していること、会館運営の収益性、利益の累積状況を踏まえ、現行の仕組みの見直しが必要

 

2.  振興会の費用負担の拡大については、平成11年度から国が負担する更改物品の単価を200万円から400万円に引上げたことにより実施
(勧告)
3.  振興会に対して、郵貯会館運営に関する財務諸表等財務内容を開示するよう指導すること。
(説明)
 振興会は、財務諸表を広く一般に開示しておらず、振興会の業務運営について郵便貯金利用者が知り難い状況


3.  財務諸表等財務内容の開示については、ディスクロージャー冊子を作成し、振興会本部、郵貯会館等に備え付ける措置を速やかに講じるよう振興会を文書指導
 これを受けて、振興会においては、平成8年度決算を内容とするディスクロージャー冊子を新たに作成(9年11月)し、財務内容を開示
 さらに、平成10年9月、9年度決算について勘定区分を設けることにより財務内容を充実した冊子を作成し開示