(1) | 資材調達に係る契約事務等
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ア | 資材調達の契約事務等
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(ア) 資材調達の契約事務
国が行う契約は、機会の均等及び公正性の保持を図る観点から、会計法(昭和22年法律第35号)第29条の3に基づき、一般競争に付することが原則とされ、指名競争又は随意契約は限定された場合においてのみ認められることとなっている。
具体的には、第29条の3第3項において、契約の性質又は目的により競争に加わるべき者が少数で一般競争に付する必要がない場合及び一般競争に付することが不利と認められる場合には、指名競争に付するものとされている。また、同条第4項において、契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合には、随意契約によるものとされている。
また、第29条の3第5項において、契約に係る予定価格が少額である場合その他政令で定める場合においても、指名競争に付し又は随意契約によることができるとされており、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号。以下「予決令」という。)において、契約の種類ごとに予定価格が一定金額(製造契約は250万円、物品買入契約は160万円、役務契約は100万円)を超えない場合は、随意契約によることができるとされている。
さらに、予決令第99条の6において、随意契約によろうとするときは、なるべく2人以上の者から見積書を徴さなければならないとされている。郵政省は、事務処理上支障がないと認められる場合において、予定価格が100万円を超えないもの等については、見積書の徴取を省略することができるとしている。
今回、郵政省における資材調達に係る契約事務の実態について調査した結果、物品買入契約において、随意契約によるものとされている事由に該当しないにもかかわらず競争に付していない例、一般競争に付しているものの応札が1業者だけとなっている例、また、随意契約において、見積書徴取の省略事由に当たらないにもかかわらず見積書を徴していない例がみられる。
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(イ) 調達計画の策定
郵政省は、郵便、郵便貯金、簡易生命保険等各事業の運営に必要な資材の調達が適切なものとなるよう、品目ごとに品質、規格、調達数を定めた調達計画をあらかじめ策定した上でこれを行っている。
今回、資材の調達の実態について調査した結果、次のような状況がみられた。
地方郵政局等(沖縄郵政管理事務所を含む。以下同じ。)に交付する保険契約申込書用紙の調達計画の策定について、本省では、地方郵政局等の郵便局への交付実績を考慮することなく、計画策定の時点で把握可能な直近の新規保険契約数に伸び率を乗じて得た新規保険予想契約数を基に所要数を算出しているが、予想契約数と契約実績数には大幅な乖離がみられる。さらに、本省からの交付予定数の提示に対して、更に増加要求するなど過大な要求をしている地方郵政局がみられる。
このため、本省からの受領数が必要数より過大となり、保険契約申込書用紙を廃棄処分している地方郵政局があり、中には受領数の3割近くを郵便局への交付前に廃棄処分している例がある。また、これらに加え、交付を受けた郵便局においても相当数を廃棄処分している状況がみられる。
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したがって、郵政省は、資材調達の契約事務の公正性及び資材調達の効率性の一層の確保を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
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. 契約に当たっては、可能な限り競争に付するものとし、その実効を上げるよう努めること。また、随意契約を締結する場合においても、法令に基づき適切に行うこと。
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. 資材の調達に当たっては、地方郵政局等の郵便局への交付実績を反映した需要見込みによるなど、調達計画を見込数量と実績との乖離を回避する合理的なものとすること。
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イ | 特別仕様物品の市販品への移行の推進
郵政省では、本省が仕様を統一して一括調達する一類物品の一部と各地方郵政局等が仕様を設定して調達する二類物品の一部について、市販品にない独自の仕様、規格等を設定した特別仕様の物品を調達しており、その理由として、同省は、郵政事業の特性、調達物品の標識性、耐久性、機能性等を挙げている。
このうち、二類物品では、特別仕様の割合が最も高い地方郵政局の場合、ユニフォーム及び備品の計203品目のうち41品目(平成8年度末現在)について、特別仕様を設けている。
各地方郵政局等が調達する特別仕様の物品について、郵政省は、「市販品の調達拡大について(通達)」(平成4年12月18日付け財計第259号郵政大臣官房財務部計画課長通達)により、その必要性を見直し、市販品の採用を推進するよう地方郵政局等に指示している。
今回、郵政省における調達物品の状況を調査した結果、次のとおり、なお市販品採用の余地があるものを特別仕様としているものがみられた。
1 |
. 調査した10地方郵政局等において、平成6年度から8年度までに調達実績のあった物品のうち、ユニフォーム4品目及び備品34品目の計38品目をすべて市販品で調達している地方郵政局がある一方、市販品の調達が38品目中11品目にとどまっている地方郵政局がみられる。
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2 |
. 特別仕様としていた物品を市販品採用としたことにより、特別仕様品の調達時よりも安価な物品が購入でき、調達経費の縮減が図られている地方郵政局がみられる。また、特別仕様で調達している物品の契約において、随意契約で調達しているものの占める割合が約80パーセントとなっている地方郵政局がみられ、調達契約に参入し難い状況となっている。
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したがって、郵政省は、調達経費の縮減、調達業務の効率化等を図る観点から、特別仕様としている物品について、既往通達の趣旨を徹底し、市販品採用の一層の拡大を図る必要がある。
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(2) | 施設建設等に係る契約事務
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ア | 積算業務の委託契約
郵政省は、施設建設等の工事に必要な材料等の数量を算出する積算業務の委託契約に当たり、当該業務が工事の予定価格を算出する行為の一部であり、正確性とともに守秘性が求められ、資力、信用、能力の最も優れた者に委託する必要があるとして、会計法第29条の3第4項における「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」の規定を適用し、随意契約により契約している。
しかし、1.当該業務は、工事の予定価格の算出そのものを行うものではなく、工事に必要な材料等の数量を積算するにとどまり、積算した数量に単価を乗じる値入れ業務は職員が自ら行っていること、2.当該業務は、郵政省の定める積算要領等に基づき設計図面等を基に数量を算出する作業であり、受託者の能力により成果物に差異が生ずる性質のものではないこと、3.資力、信用、能力の観点は、当該業務に特有のものではないことから、当該業務の委託が契約の性質又は目的が競争を許さない場合に当たるとは考えられない。
なお、各省庁の中には、このような積算業務を委託するに当たり、指名競争を原則としているものがみられる。
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イ | 役務及び工事の契約
役務契約及び工事契約については、会計法において、契約の性質又は目的が競争を許さない場合には随意契約によるものとされているほか、予決令において、契約の種類ごとに予定価格の上限を定め、これを超えない場合は、指名競争又は随意契約によることができるとされている。
また、指名競争は、予決令第97条第1項において、競争に参加する者をなるべく10人以上指名しなければならないとされており、さらに、予決令第95条第1項において、契約の種類ごとに、その金額等に応じ、指名競争に参加する者に必要な資格を定めることとされている。郵政省は、施設の建設工事の場合、契約予定金額により工事の等級を区分し、指名競争の際には、過去の工事実績等を基に、競争参加の可能な工事等級に区分された工事業者の中から、当該工事の等級に応じて指名することとしている。
今回、郵政省における役務及び工事の契約の状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
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. 随意契約が可能な予定価格の上限である100万円を超える役務契約及び250万円を超える工事契約について、随意契約によるものとされている事由に該当しないにもかかわらず、競争に付されていないものがある。
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. 指名競争契約の指名業者数について、参加資格者名簿の登録業者が27業者あり、予決令に基づく10業者以上の指名が可能であるにもかかわらず、常に3業者又は5業者しか指名されていないものがある。
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したがって、郵政省は、契約の競争性及び透明性を確保する観点から、次の措置を講ずる必要がある。
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1 | . 積算業務の委託契約については、競争契約に付すること。また、予決令に定める金額を超える役務契約及び工事契約についても、会計法の規定を厳正に適用し、競争契約の採用を徹底すること。
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2 | . 指名競争契約については、予決令に定める数の業者の指名を励行すること。
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