郵政事業に関する行政監察
結果に基づく勧告


―施設整備、資材調達を中心として―












平成11年8月



総務庁































前書き

   郵政事業は、郵便事業、為替貯金事業及び簡易生命保険事業の3事業から成っている。これらの事業は、それぞれ独立採算で経理され、いずれも全国約2万4,700局の郵便局(簡易郵便局を含む。)を事業経営の基盤とし、約30万人の職員により一体として行われている。
   郵政省は、これらの事業を運営するため、郵便局舎等の施設の建設及び用地の取得に平成9年度で約1,440億円を、また、ユニフォーム、車両、備品、式紙・消耗品等の資材・物品及び機器類の保守等の役務の調達に同年度で約5,892億円を投じている。
   このような資材・物品等の調達及び施設建設に係る国が行う契約については、機会の均等及び公正性の保持を図る観点から、会計法(昭和22年法律第35号)等に基づき、一般競争契約が原則とされ、指名競争契約又は随意契約は限定された場合においてのみ認められることとなっている。したがって、随意契約によっているものについては、可能な限り競争契約に移行するとともに、競争契約によっているものについても、その実効を上げるよう努めることが必要である。また、郵政省が独自の仕様、規格等を設定して調達している特別仕様の物品については、調達経費の縮減、調達業務の効率化等を図る観点から、市販品で対応可能なものについては市販品採用の一層の拡大が必要となっている。
   さらに、郵便局の新設及び郵便局舎等の用地取得に当たっては、その効率的実施を図ることが求められているほか、事業用地として使用しなくなった未利用財産についても、国有地の有効活用を図る観点から、処分の一層の促進が必要となっている。
   加えて、これらの施設整備業務及び資材調達業務の実施体制についても、業務量の変化、情報システム化の推進等に対応した要員配置の見直し、民間委託の推進等による一層の要員合理化が求められている。
   この監察は、このような状況を踏まえ、郵政事業における施設整備及び資材調達に関する業務運営の実態を調査し、関係行政の改善に資するため実施したものである。




目次


1   施設の整備等
(1)    郵便局設置形態の在り方の見直し
(2)    用地取得の効率的実施及び未利用財産の処分促進 
2   資材調達、施設建設等に係る契約 
(1)    資材調達に係る契約事務等 
ア   資材調達の契約事務等 
イ   特別仕様物品の市販品への移行の推進 
(2)    施設建設等に係る契約事務  
3   業務の実施体制 
(1)    資材調達業務要員の合理化 
(2)    施設整備業務要員の合理化 




 施設の整備等
(1)   郵便局設置形態の在り方の見直し
  郵政省は、郵便、為替貯金及び簡易生命保険の郵政事業を実施するため、平成10年3月末現在、全国に2万4,693局の郵便局を設置している。この内訳は、普通郵便局が1,324局(5.4パーセント)、特定郵便局が1万8,764局(76.0パーセント)、簡易郵便局が4,605局(18.6パーセント)である。
  郵便局の設置数の大半を占める特定郵便局は、国の行政機関として位置付けられており、このうち、無集配特定郵便局(以下「無特局」という。)は、郵便物の集配業務を行わず、専ら郵便、為替貯金及び簡易生命保険の窓口事務を行う郵便局である。一方、簡易郵便局(以下「簡易局」という。)は、簡易郵便局法(昭和24年法律第213号)に基づき、郵政窓口事務を契約により地方公共団体、協同組合、個人、法人に委託して設置される郵便局である。
  郵便局の設置数の推移を、平成4年度から9年度までの5年間でみると、全体では390局の増加となっている。この内訳をみると、普通郵便局については9局の増加(新設が17局、廃止が3局、局種の変更による減が5局)、簡易郵便局については8局の増加(新設が110局、廃止が102局)とほぼ横ばいである。一方、特定郵便局については、この間、全体では373局の増加となっており、このうち、集配特定郵便局は114局減少(新設、廃止はなく、すべて局種の変更による減)に対し、無特局は487局増加(新設が447局、廃止が79局、局種の変更による増が119局)しており、取り分け、無特局(平成10年3月末現在で1万5,109局。郵便局全体の61.2パーセント)が大きく増加している状況にある。
  無特局と簡易局とを比較すると、いずれも窓口事務のみを行う点において類似のものである。簡易局の取扱業務の範囲は、簡易郵便局規則(昭和24年郵政省令第7号)により定められ、無特局の取扱業務と比べた場合、料金後納郵便を取り扱えない等一部に差異はあるものの、利用者の利便を図る観点から、近年、拡大されてきており、利用者にとって無特局との差異は少なくなってきている。また、簡易局については、無特局と比べた場合、経済的な郵便局経営が可能である。
  さらに、平成2年には、大都市において郵便局の設置が著しく困難になっていること等にかんがみ、簡易郵便局法の改正により、これまで郵政事業の役務を辺ぴな地方にまで広めることを目的としていた簡易局の位置付けを改め、簡易局を設置できる場合が拡大されている。
  このような経緯にかんがみれば、郵便局の設置に当たっては、簡易局で需要にこたえられる場合は、簡易局で対応することが合理的であると考えられる。
  今回、郵便局の設置、運営の実態を調査した結果、次のような状況がみられた。
.  住宅団地内や大学病院内等に設置されている無特局の中には、立地条件上、利用者が周辺住民等に比較的限られており、また、簡易局で取り扱えない業務に対する需要も少なく、必ずしも無特局である必要のないものがある。
.  大都市部のビル内に設置されている無特局の中には、利用者が当該ビル内の特定の事業所等に限られ、また、簡易局で取り扱えない料金後納郵便等の業務はあるもののその利用者は少なく、大規模な無特局が近接して設置されているため、それを利用することも可能であることから、新設の際に、簡易局の設置で需要にこたえられないかの検討を行うべきであったとみられるものがある。
  このように、無特局ではなく簡易局であっても利用者にとってはほぼ同様のサービスが提供されるものであり、一層、簡易局を選択する余地のある実態が認められる。しかし、現在、無特局について、郵政省は、局間距離と利用区域内人口を主要な判断要素としてその設置を行っている。
  また、郵政省は、利用人口の減少等地域の状況の変化により設置効果が著しく低下したと認められる無特局については、必要に応じて簡易局の代替設置の措置を講じつつ、廃止することとしているが、辺地等に設置されている無特局の中には、利用人口が著しく減少し、設置効果が低下しているものをなお存置している例がある。
  したがって、郵政省は、郵政事業の経営の効率化を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
.  郵便局の新設に当たっては、想定される利用形態、取扱業務量等、地域特性を十分勘案しつつ、簡易局の設置で需要にこたえられる場合は、簡易局で対応すること。
.  既定の方針に基づく無特局の見直しについては、利用状況等を全国的かつ定期的に把握し、計画的な推進を図ること。
(2)   用地取得の効率的実施及び未利用財産の処分促進
  郵政省は、郵政事業特別会計に属する郵便局舎、職員宿舎等の用地を、平成9年度末現在、約870万平方メートル(台帳価格で約3兆803億円)保有しており、9年度には、全国で58件、24万4,940平方メートル、約292億円の用地を取得している。郵政省は、通常、用地取得の翌々年度には、施設建設に着手している。
  また、郵政省は、保有している用地のうち、事業用地として使用しなくなった財産(未利用財産)については、「未利用財産の処分計画等について」(昭和62年3月27日付け郵建財第14号郵政大臣官房建築部長通達)により、毎年度、有効利活用の方策を勘案の上、留保財産、処分未定財産及び売払予定財産に区分した処分計画を策定している。平成10年度の処分計画における売払予定財産は227件、16万3,249平方メートルとなっている。
  今回、郵政省が取得した用地の利用状況及び売払予定財産に関する処理状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
.  郵便局舎の増築用地として取得した土地が、5年間にわたり暫定駐車場用地としての使用にとどまっているもの(面積3,039平方メートル、取得金額約5億円)がある。これは、将来における郵便局舎の増築に備えて取得されたものであるが、用地の取得時においては、増築が不確定な状態にあったものであり、少なくとも平成11年度においては増築の予定はない。
.  郵便局舎の新設用地として取得した土地が、4年間にわたり使用されていないもの(面積4,892平方メートル、取得金額約17億円)がある。これは、用地取得後毎年度、地方郵政局が局舎建設を希望する計画を本省に上申しているが、本省はこれを認めていないことなどからみて、局舎建設の確度が低い状態で用地を取得したものと認められる。
.  郵政省は、売払予定財産に区分した土地については、まず地方公共団体に取得希望の有無を照会し、取得希望がない場合には、一般競争入札により売払処分を行うこととしている。
  しかし、i)財政事情等を理由として購入時期を明確にしていない地方公共団体に対し、期限を切ってこれを明確にすることを求める等の措置を採っていないため、長期間にわたって一般競争入札の手続に移行できないでいるもの、ii)地方公共団体から取得の希望がない旨の回答があった後、速やかに一般競争入札を実施していないものなど、売払いの促進のための措置が適正に講じられていないものがある。
  したがって、郵政省は、用地取得の効率的実施及び国有地の有効利活用を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
.  用地取得に当たっては、施設建設の緊急性、優先性が高く、利用の計画が明確になっているものその他先行取得の合理的な理由があるものに限定して行うこと。
.  売払予定財産に区分した土地については、地方公共団体からの取得希望のないものは所定の手続に沿って一般競争入札に付するなど、処分の促進を図ること。
 資材調達、施設建設等に係る契約
(1)   資材調達に係る契約事務等
 資材調達の契約事務等

(ア)  資材調達の契約事務
  国が行う契約は、機会の均等及び公正性の保持を図る観点から、会計法(昭和22年法律第35号)第29条の3に基づき、一般競争に付することが原則とされ、指名競争又は随意契約は限定された場合においてのみ認められることとなっている。
  具体的には、第29条の3第3項において、契約の性質又は目的により競争に加わるべき者が少数で一般競争に付する必要がない場合及び一般競争に付することが不利と認められる場合には、指名競争に付するものとされている。また、同条第4項において、契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合には、随意契約によるものとされている。
  また、第29条の3第5項において、契約に係る予定価格が少額である場合その他政令で定める場合においても、指名競争に付し又は随意契約によることができるとされており、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号。以下「予決令」という。)において、契約の種類ごとに予定価格が一定金額(製造契約は250万円、物品買入契約は160万円、役務契約は100万円)を超えない場合は、随意契約によることができるとされている。
  さらに、予決令第99条の6において、随意契約によろうとするときは、なるべく2人以上の者から見積書を徴さなければならないとされている。郵政省は、事務処理上支障がないと認められる場合において、予定価格が100万円を超えないもの等については、見積書の徴取を省略することができるとしている。
  今回、郵政省における資材調達に係る契約事務の実態について調査した結果、物品買入契約において、随意契約によるものとされている事由に該当しないにもかかわらず競争に付していない例、一般競争に付しているものの応札が1業者だけとなっている例、また、随意契約において、見積書徴取の省略事由に当たらないにもかかわらず見積書を徴していない例がみられる。

(イ)  調達計画の策定
  郵政省は、郵便、郵便貯金、簡易生命保険等各事業の運営に必要な資材の調達が適切なものとなるよう、品目ごとに品質、規格、調達数を定めた調達計画をあらかじめ策定した上でこれを行っている。
  今回、資材の調達の実態について調査した結果、次のような状況がみられた。
  地方郵政局等(沖縄郵政管理事務所を含む。以下同じ。)に交付する保険契約申込書用紙の調達計画の策定について、本省では、地方郵政局等の郵便局への交付実績を考慮することなく、計画策定の時点で把握可能な直近の新規保険契約数に伸び率を乗じて得た新規保険予想契約数を基に所要数を算出しているが、予想契約数と契約実績数には大幅な乖離がみられる。さらに、本省からの交付予定数の提示に対して、更に増加要求するなど過大な要求をしている地方郵政局がみられる。
  このため、本省からの受領数が必要数より過大となり、保険契約申込書用紙を廃棄処分している地方郵政局があり、中には受領数の3割近くを郵便局への交付前に廃棄処分している例がある。また、これらに加え、交付を受けた郵便局においても相当数を廃棄処分している状況がみられる。  
 したがって、郵政省は、資材調達の契約事務の公正性及び資材調達の効率性の一層の確保を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
.  契約に当たっては、可能な限り競争に付するものとし、その実効を上げるよう努めること。また、随意契約を締結する場合においても、法令に基づき適切に行うこと。
.  資材の調達に当たっては、地方郵政局等の郵便局への交付実績を反映した需要見込みによるなど、調達計画を見込数量と実績との乖離を回避する合理的なものとすること。
  特別仕様物品の市販品への移行の推進
  郵政省では、本省が仕様を統一して一括調達する一類物品の一部と各地方郵政局等が仕様を設定して調達する二類物品の一部について、市販品にない独自の仕様、規格等を設定した特別仕様の物品を調達しており、その理由として、同省は、郵政事業の特性、調達物品の標識性、耐久性、機能性等を挙げている。
  このうち、二類物品では、特別仕様の割合が最も高い地方郵政局の場合、ユニフォーム及び備品の計203品目のうち41品目(平成8年度末現在)について、特別仕様を設けている。
  各地方郵政局等が調達する特別仕様の物品について、郵政省は、「市販品の調達拡大について(通達)」(平成4年1218日付け財計第259号郵政大臣官房財務部計画課長通達)により、その必要性を見直し、市販品の採用を推進するよう地方郵政局等に指示している。
  今回、郵政省における調達物品の状況を調査した結果、次のとおり、なお市販品採用の余地があるものを特別仕様としているものがみられた。
.  調査した10地方郵政局等において、平成6年度から8年度までに調達実績のあった物品のうち、ユニフォーム4品目及び備品34品目の計38品目をすべて市販品で調達している地方郵政局がある一方、市販品の調達が38品目中11品目にとどまっている地方郵政局がみられる。
.  特別仕様としていた物品を市販品採用としたことにより、特別仕様品の調達時よりも安価な物品が購入でき、調達経費の縮減が図られている地方郵政局がみられる。また、特別仕様で調達している物品の契約において、随意契約で調達しているものの占める割合が約80パーセントとなっている地方郵政局がみられ、調達契約に参入し難い状況となっている。
  したがって、郵政省は、調達経費の縮減、調達業務の効率化等を図る観点から、特別仕様としている物品について、既往通達の趣旨を徹底し、市販品採用の一層の拡大を図る必要がある。
(2)    施設建設等に係る契約事務
  積算業務の委託契約
  郵政省は、施設建設等の工事に必要な材料等の数量を算出する積算業務の委託契約に当たり、当該業務が工事の予定価格を算出する行為の一部であり、正確性とともに守秘性が求められ、資力、信用、能力の最も優れた者に委託する必要があるとして、会計法第29条の3第4項における「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」の規定を適用し、随意契約により契約している。
  しかし、1.当該業務は、工事の予定価格の算出そのものを行うものではなく、工事に必要な材料等の数量を積算するにとどまり、積算した数量に単価を乗じる値入れ業務は職員が自ら行っていること、2.当該業務は、郵政省の定める積算要領等に基づき設計図面等を基に数量を算出する作業であり、受託者の能力により成果物に差異が生ずる性質のものではないこと、3.資力、信用、能力の観点は、当該業務に特有のものではないことから、当該業務の委託が契約の性質又は目的が競争を許さない場合に当たるとは考えられない。
  なお、各省庁の中には、このような積算業務を委託するに当たり、指名競争を原則としているものがみられる。
  役務及び工事の契約
  役務契約及び工事契約については、会計法において、契約の性質又は目的が競争を許さない場合には随意契約によるものとされているほか、予決令において、契約の種類ごとに予定価格の上限を定め、これを超えない場合は、指名競争又は随意契約によることができるとされている。
  また、指名競争は、予決令第97条第1項において、競争に参加する者をなるべく10人以上指名しなければならないとされており、さらに、予決令第95条第1項において、契約の種類ごとに、その金額等に応じ、指名競争に参加する者に必要な資格を定めることとされている。郵政省は、施設の建設工事の場合、契約予定金額により工事の等級を区分し、指名競争の際には、過去の工事実績等を基に、競争参加の可能な工事等級に区分された工事業者の中から、当該工事の等級に応じて指名することとしている。
  今回、郵政省における役務及び工事の契約の状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
.  随意契約が可能な予定価格の上限である100万円を超える役務契約及び250万円を超える工事契約について、随意契約によるものとされている事由に該当しないにもかかわらず、競争に付されていないものがある。
.  指名競争契約の指名業者数について、参加資格者名簿の登録業者が27業者あり、予決令に基づく10業者以上の指名が可能であるにもかかわらず、常に3業者又は5業者しか指名されていないものがある。
     したがって、郵政省は、契約の競争性及び透明性を確保する観点から、次の措置を講ずる必要がある。
.  積算業務の委託契約については、競争契約に付すること。また、予決令に定める金額を超える役務契約及び工事契約についても、会計法の規定を厳正に適用し、競争契約の採用を徹底すること。
.  指名競争契約については、予決令に定める数の業者の指名を励行すること。
 業務の実施体制
(1)   資材調達業務要員の合理化
  郵政省は、郵政事業を運営するため、毎年度、ユニフォーム、車両、備品、式紙・消耗品等の資材・物品及び機器類の保守等の役務を調達しており、その金額は、平成9年度で約5,892億円となっている。
  これらの資材調達業務は、郵政事業を運営する上で必要とする物品の種類、品質、規格、数量を把握して、調達・配分計画を策定する計画部門、契約の予定価格の積算、契約の締結などを行う契約部門、調達する物品等の品質、数量等が契約内容に適合していることの確認を行う検査部門、調達した物品の保管及び郵便局等への供給を行う物流部門などに分かれて行われている。近年、資材調達業務については、情報システム化の推進、業務の民間委託等による要員の合理化が図られてきており、平成3年度末現在で本省に196人、地方郵政局等に689人配置していた職員が、10年度末現在では本省が116人、地方郵政局等が411人に減少している。
  今回、資材調達業務の実施体制及び実施状況について調査した結果、次のような状況がみられた。
.  調査した9地方郵政局の契約部門における職員1人当たりの契約件数に、地方郵政局間で格差が生じており、業務量に対応した要員配置となっていない。
.  調査した9地方郵政局の計画部門で、取り扱う物品の品種がほぼ同様の係における職員1人当たりの契約件数及び調達数量等に、地方郵政局間で格差が生じており、業務量に対応した要員配置となっていない。
.  本省及び調査した9地方郵政局の検査部門における検査業務の実施状況をみると、次のような状況がみられる。
) 予決令等に基づき品質検査の省略が可能な一般市販品であって、他の地方郵政局では品質検査を省略しても特段の支障が生じていないものについて、依然として品質検査を行っている地方郵政局がある。また、特定物品抜取検査を行っている物品の中には、書類検査とするなど検査方式の簡略化を図る余地のあるものがある。
ii) 検査業務について、業務の効率化を図る観点から、本省では、数量検査、書類検査等検査の大部分を民間委託している。一方、調査した9地方郵政局のうち7地方郵政局では、すべての検査業務を職員が自ら実施しており、民間委託の余地がある。
  したがって、郵政省は、資材調達業務の効率化を図る観点から、次の措置を講じ、要員の合理化を図る必要がある。
.  契約部門及び計画部門の要員配置を見直し、その縮減を図ること。
.  検査部門について、現行業務を見直し、品質検査の省略についての取扱いを統一しつつその拡大を図ることにより、検査業務の簡素合理化を推進するとともに、検査業務の民間委託について、未実施の地方郵政局等における導入を始めとして、積極的に推進すること。
(2)   施設整備業務要員の合理化
  郵政省は、郵便局舎等国有施設の整備(新増築、既存施設の改修など)に係る設計、工事監理等の施設整備業務を行うため、平成9年度末現在、本省に83人、地方郵政局等に354人の計437人の職員を配置している。
  今回、施設整備業務の実施体制及び実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
.  調査した10地方郵政局等における郵便局舎等の施設の整備のうち、既存施設の改修などを除いた新増築に係る整備実績について、平成4年度と8年度とを比較すると、施設数で40パーセント、延べ床面積で約28パーセントそれぞれ減少しているが、この間の新増築業務に係る要員数をみると、約16パーセントの減少となっている。
  また、地方郵政局の中には、新増築業務に係る要員1人当たりの施設数を平成4年度と8年度で比較すると、半減しているものがあり、要員を縮減する余地があるものがみられる。
.  官庁営繕業務については、郵政省を含め、「臨時行政調査会の最終答申後における行政改革の具体化方策について」(昭和58年5月24日閣議決定)により、民間委託を促進することとされている。
  郵政省における当該業務の民間委託は、設計業務及び工事監理業務のうち、実施設計業務(工事の請負契約に必要な設計図面の作成等の業務)におおむね限られているが、次のとおり、一層の民間委託の余地がある。
) 郵政省は、国有郵便局舎の基本設計業務(実施設計委託用の図書作成等の業務)については、職員が自ら行うことを原則とし、その民間委託は、延べ床面積が500平方メートル未満の国有特定郵便局舎の新築工事に限定している。
  しかし、借入特定郵便局舎については、民間の設計業者が、郵政省の指導を受けながら基本設計を行っており、延べ床面積についても863平方メートルの規模の局がみられる。こうしたことから、郵政省が指導等を行うことにより、少なくともこの程度の規模の国有特定郵便局舎の基本設計業務については、民間委託による支障が生ずるとは認められない。また、普通郵便局であっても、この程度の規模のものであれば、同規模の特定郵便局と設計基準に大きな差異はないことから、基本設計業務を委託することは可能と考えられる。ちなみに、地方郵政局等が平成4年4月から9年12月末までの間に新築工事を行った国有郵便局舎285局中151局(53パーセント)がこの規模を下回るものである。
  なお、建設省の官庁営繕部においては、建築基準法(昭和25年法律第201号)に基づく関係機関との調整業務等を除き、基本設計業務について、原則として民間委託している。
ii) 工事監理業務には、施工業者への設計意図の伝達、施工業者の作成する施工図と設計図書との照合等の補助業務があるが、郵政省は、これらの補助業務もすべて職員が行っている。
  その理由について、郵政省は、郵便局舎の新築工事の場合、これらの職員が実施設計の受託業者に対する指導を担当し、設計内容の全体を把握しているため、設計意図の伝達等の補助業務が効率的に実施できることを挙げている。
  しかし、実施設計の設計意図の伝達等の補助業務については、実施設計の受託業者においても当該設計の内容の詳細を把握しており、当該業者に委託しても同様の業務効率を確保することができるとみられる。
  さらに、同様の理由により、基本設計の設計意図の伝達等の補助業務についても、基本設計の受託業者に委託することができると考えられる。
  なお、建設省は、このような補助業務については、原則として民間委託している。
  したがって、郵政省は、施設整備業務の効率化を図る観点から、基本設計業務の民間委託の対象範囲を拡大し、工事監理補助業務について民間委託を導入するとともに、要員の合理化を図る必要がある。