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平成4年8月に行った「税関業務の運営等に関する行政監察の結果に基づく勧告」(以下「4年勧告」という。)に基づく改善措置状況をみると、下記ア及びイのとおり、改善に向けた措置が推進されている。しかし、今回の調査において、支署・出張所について、その通関部門の業務量を基本的な業務指標である輸出の許可及び輸入の許可・承認の件数(以下「輸出入許可等件数」という。)で比較してみると、下記ウのとおり、なお通関部門の要員配置を見直す余地がある面がみられる。また、支署間の共通管理部門の職員数の割合及び監視艇の乗組員の配置状況をみると、下記エ及びオのとおり、なお改善の余地がある面がみられる。 |
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ア |
全税関官署における通関部門と監視部門の要員配置 |
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(ア) |
全税関官署における通関部門の要員配置 |
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NACCS(通関情報処理システム:CIS(通関情報総合判定システム)のデータなどを用いて、輸出入通関等の税関手続を迅速かつ的確に処理することを目的としたシステム)の導入が進んだ結果、貨物ごとに問題のある可能性の大小を判断することによる選別的な通関処理が進展したため、全税関官署の通関部門の職員数は、平成3年(前回調査実施年)の2,242人から10年の2,107人へと135人(6.0パーセント)減少している。
このうち、前回調査した6税関本関の通関部門の職員数について比較してみても、261人から239人へと22人(8.4パーセント)減少している。 |
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(イ) |
全税関官署における監視部門の要員配置 |
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不正薬物など社会悪物品等の水際取締りの強化措置に対応して、全税関官署の監視部門の職員数は、平成3年の1,969人から10年の2,410人へと441人(22.4パーセント)増加している。
このうち、前回調査した6税関本関の監視部門の職員数について比較してみても、703人から792人へと89人(12.7パーセント)増加している。
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イ |
税関本関における共通管理部門の職員数の割合 |
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前回調査と同じ6税関本関において、本関の共通管理業務のほか、管内税関官署の職員の人事・研修や会計に係る指導・支援を行っている共通管理部門の職員数が管内の全職員数に占める割合をみると、平成10年の割合は
6.5パーセントであり、3年の6.9パーセントより0.4ポイント減少している。 |
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ウ |
支署・出張所間の通関部門の業務量の格差 |
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(ア) |
支署間の格差 |
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1. |
海上貨物のみの通関・保税・監視業務を実施する支署のうち、通関部門の職員が他部門の職員と区分できる7支署において、通関部門の職員1人当たりの輸出入許可等件数をみると、最大の支署(
9,303件)と最小の支署(4,499件)との間には約2.1倍の格差が生じている。 |
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2. |
通関部門の職員と調査保税部門の職員を区分できない12支署において、通関部門等の職員1人当たりの輸出入許可等件数をみると、12支署の平均を下回っている5支署にはNACCSが導入されておらず、平均を上回っている7支署にはNACCSが導入されており、NACCS導入7支署の平均(
3,590件)とNACCS未導入5支署の平均(1,718件)との間には約2.1倍の格差が生じている。
なお、平成11年10月には、全税関官署にNACCSが導入されたことから、NACCSの導入による業務の変化をも踏まえた要員配置の見直しを行うには、適当な時期となっているものと考えられる。
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(イ) |
出張所間の格差 |
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1. |
海上貨物のみの通関・保税業務を実施する出張所のうち、通関部門の職員が他部門の職員と区分できる8出張所において、通関部門の職員1人当たりの輸出入許可等件数をみると、最大の出張所(
6,605件)と最小の出張所(3,286件)との間には約2.0倍の格差が生じている。 |
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2. |
海上貨物のみの通関・保税業務を実施する出張所のうち、部門別に職員を区分できない15出張所において、通関部門等の職員1人当たりの輸出入許可等件数をみると、最大の出張所(6,222件)と最小の出張所(1,639件)との間には約3.8倍の格差が生じている。 |
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(ウ) |
航空貨物のみを取り扱う税関官署間の格差 |
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航空貨物のみを取り扱う3税関官署において、通関部門の職員1人当たりの輸出入許可等件数をみると、最大の税関官署(4万2,024件)と最小の税関官署(1万6,609件)との間には約2.5倍の格差が生じている。 |
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エ |
支署間の共通管理部門の職員数の割合の格差 |
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支署の共通管理業務のほか、管内出張所の経理事務などの共通管理業務も行っているもので、共通管理部門の職員が他部門の職員と区分でき、かつ、規模が類似(管内職員数が15人以上50人未満)している14支署において、管内の全職員数に占める共通管理部門の職員数の割合をみると、最高の支署(25.0パーセント)と最低の支署(
9.1パーセント)との間には約2.7倍の格差が生じている。 |
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オ |
監視艇の乗組員の配置 |
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監視艇の乗組員は、海上パトロール、入港尋問及び船内検査を行う監視取締職員の輸送等に使用する監視艇の運航に従事している。これら乗組員の大部分を占める海事職俸給表(二)適用職員は、監視取締りの強化、効率化のため、複数の小規模監視艇を集約し大型監視艇を導入する際に合理化を行ってきたことなどにより、その数は、平成4年の
186人から10年の155人へと31人減少している。
しかしながら、乗組員の配置について、大蔵省は、当庁が行った「地方支分部局等総合実態調査の結果に基づく勧告」(昭和58年2月)に対する回答(昭和58年6月)において、監視艇の乗組員については、安全運航の確保の観点をも勘案し、大型艇、広域パトロール等使用艇、船舶のふくそうする港等危険海域で運航される艇を除き、今後は、原則3人の配置(大型艇は5人を配置)とすることとしているが、今回調査した6税関のうち3税関では、この原則を上回る配置を行っている。
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したがって、大蔵省は、今後の税関行政の方向を踏まえ、業務量に対応した、より一層適切な要員配置を行う必要がある。 |
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4年勧告に基づく改善措置状況をみると、下記アのとおり、改善に向けた措置が推進されているが、今回の調査において、共通役務職員の職種別の補充状況をみると、下記イのとおり、なお改善の余地がある面がみられる。 |
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ア |
全国ベースの共通役務職員の欠員不補充の状況 |
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共通役務職員の大部分を占める行政職俸給表(二)適用職員については、原則欠員不補充の措置を推進してきた結果、全税関官署におけるこれら職員の合計数は、平成10年度末現在で171人となっており、3年度の203人より32人(15.8パーセント)減少している。 |
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イ |
調査した税関における共通役務職員の欠員の補充状況 |
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上記アのとおり、共通役務職員の欠員不補充措置を推進してきた結果、在職者が皆無となっている職種(電話交換手、大工及び映写技師)や職員数が減少している職種(印刷工、用務員、巡視員、理容師及び電気工事技師)がある一方で、欠員を補充し職員数が横ばいの職種(調理師)や職員数が前回監察の調査時より増加している職種(寮務員(3人増加)及び自動車運転手(1人増加))がある。 |
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(ア) |
職員寮における共通役務職員の配置状況 |
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6税関が設置している31寮の中には、すべての寮務を寮生の活動に任せているものやパート職員の雇用又は清掃の外部委託のみで運営しているものが9寮ある一方、22寮では、共通役務職員として管理人、寮務員、調理師のいずれかを配置(うち3寮は、3職種すべてを配置)しており、このうち17寮は、これに加え、寮務・調理担当のパート職員を雇用している。
これら31寮の中には、同一税関管内に設置され、収容定員が同程度の規模の寮であるにもかかわらず、寮務をすべて寮生が実施している寮がある一方、寮務を管理人、寮務員及びパート職員の雇用で対応している寮があるなど、寮務の運営方法に差異がある事例(2事例)がみられる。
また、当直制勤務が廃止され、業務量が減少していると考えられるにもかかわらず、職員寮の設置場所の問題による防犯上の必要があるとして、寮務員を新規採用しているもの(1寮)がある。
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(イ) |
宿泊施設における共通役務職員の配置状況 |
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6税関が遠隔地からの研修受講者又は出張者のために設置している7宿泊施設では、食事の提供等をパート職員の雇用のみで対応しているもの(3施設)がある一方、調理師を配置しているもの(1施設)や寮務員を配置しているもの(3施設)がある。 |
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(ウ) |
自動車運転手の補充状況 |
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税関では、監視取締業務、通関業務、保税業務を遂行する上での職員移動等に使用する車両については、行政職俸給表(一)適用職員が運転している場合もあり、必ずしもこれらの業務を目的とする車両運行を自動車運転手が実施しなくてもよい状況となっている。
しかしながら、原則不補充の職種である自動車運転手を前回調査時より増員しているもの(2税関)がみられる。 |
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したがって、大蔵省は、税関における共通役務職員については、真に必要な場合を除き欠員不補充の措置の徹底を図る必要がある。 |
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(3) |
当直制勤務官署の見直し |
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4年勧告に基づく改善措置状況をみると、外国貿易船(外国貿易のため本邦と外国との間を往来する船舶)の入港隻数が、年間100隻にも満たない小規模の海港に設置されていた出張所を廃止する一方、ロシアからの鮮魚介類輸入の増加などにより、外国貿易船の入港隻数等が増加している北海道内に出張所を設置するなど、平成3年7月以降11年7月までに、22か所の税関官署を廃止(出張所18か所、監視署4か所)する一方、17か所の税関官署を新設(出張所15か所、監視署2か所)している。この結果、全国の税関官署数は、216か所から211か所へと5か所減少しており、物流や交通事情等の変化を踏まえた税関官署の配置の見直しを行ってきている。
今回、税関官署における隣接官署との距離・時間、代表的な業務指標である輸出入許可等件数の状況等をみると、次のとおり、税関官署の配置のより一層の見直しの余地がある例がみられる。
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1. |
出張所の中には、次のようなものがある(下記事例のほかに類似事例3出張所)。 |
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(i) |
監視業務を実施している出張所であり、職員数は1人(平成10年)で、最寄りの出張所までは陸路で約18キロメートル(自動車で約30分)と近距離にあり、かつ、輸出入許可等件数は
185件(平成9年)で監視業務を実施している出張所の平均輸出入許可等件数約 4,600件(平均職員数約4人)と比較して少なく、外国貿易船に対する入港尋問及び船内検査の実施件数(平成9年)も22件で月1件から2件程度となっているもの |
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(ii) |
監視業務を実施していない出張所であり、職員数は1人(平成10年)で、最寄りの支署までは陸路で約10キロメートル(自動車で約20分)と近距離にあり、かつ、輸出入許可等件数は
4,061件(平成9年)で監視業務を実施していない出張所の平均輸出入許可等件数約12万6,100件(平均職員数約27人)と比較して少なく、また、当該出張所の職員が、保税地域に出張して現品検査を実施する場合には、当該出張所の通関等の窓口業務は最寄りの支署からの職員の出張で対応しており、既に当該出張所と最寄りの支署とが一体的に業務を運営しているもの |
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2. |
支署の中には、職員数が2人(平成10年)で、最寄りの支署までは陸路で約35キロメートル(鉄道で約50分)と近距離にあり、かつ、輸出入許可等件数は93件(平成9年)で調査した支署の平均輸出入許可等件数約6,900件(平均職員数約19人)と比較して少ないものがある。 |
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したがって、大蔵省は、税関官署の適正な配置を図る観点から、業務量の推移、隣接官署との距離、業務の実態等を総合的に勘案した税関官署の配置の見直しを引き続き推進する必要がある。 |