4.議事概要
(事務局から前回議論の要旨・今後の進め方案・過疎問題の捉え方について説明の後、意見交換)
・ 過疎対策はこれまでナショナルミニマムの保障に重要な意味があったし、事実その面で大きな成果を挙げ、社会政策的には成功したといえる。
・ 今後の政策としては国民欲求の多様化、低成長経済を前提としつつも経済政策を講じていくことが必要で、新たな開発金融を検討すべき。その場合、従来の過密対過疎、都市対農山村という捉え方ではなく、「ある種やる気のある地域への支援」として捉えるべき。それが21世紀の国土のグランドデザインでいう多自然居住地域の創造、地域連携軸の実現につながっていく。
・ 過疎地域の基盤整備は確かに進んだが、山村では人口減少が続き、町村がなくなるのではないかと思うほどだ。進んだとはいえ基盤整備、雇用などの面でまだ差がある。
・ 棚田は大変な状況にあり、耕作放棄地の増加により地滑りの原因にもなると言われている。国土を守る観点からも多自然居住地域の創造が必要。
・ 大きな意味での産業論も必要だが、過疎地域では1人でも2人でも雇用が創出されれば価値がある。道路工事のような日雇いでがんばっても年収2〜3百万円にしかならないが、規模は小さくてもベンチャーやニッチに注目し、1人当たりの取り分の大きい事業で自立して1人当たり4〜5百万円の年収が上げられるような職場を創ることが重要である。
・ そうしたところは、小さいながら産業を起こしているといえるのではないか。自然の豊かな地域でコンピューター等を使って生活しているような人も、産業としては過疎地域の資源を利用しているわけではないが、過疎地域を豊かな生活の空間として利用している。
・ 過疎地域でもその場でできることを色々と工夫して事業化することは可能であって、小さな産業創造に対する支援を体系化していくことが大事ではないか。
・ かつて多くの人が住んでいたが減ってしまったことから、残った人々に対して行う福祉施策のような過疎対策よりも、過去にかかわらず将来に向けての生産活動を創造するという対策が大切で、そうすると過疎対策から多自然居住地域の創造になっていく。
・ 新しい対策として加えるべきものをリストアップしてみるべき。例えば、人の暮らしがボーダーレス化している現実からは、広域化が大切である。生活拠点を複数持って、情報ネットワークで結ぶような生活も今後はあり得るので、こうしたことへの対策も必要。例えば図書館についても、全国や海外まで含めて地球的規模でのセールスポイントを持つようなものとして考えると、それ自体が知的集約産業に発展することもある。当該地域の住民の視点を離れ、異なる価値、多様性を容認すると新たな可能性が生まれることもあり、多様な価値観に対し開かれた地域社会づくりを進める必要があるのではないか。
・ 現在の過疎地域をみると、ゆるやかに人口減少しているものの、そこそこにやっている市町村がある一方、高齢者ばかりで、今後いったいどうするのか心配な市町村がある。
・ 地域としては住む人の年齢構造等がバランスよくなっていないと、高齢者に対する手当さえたちゆかない。1人でも新産業が可能とはいっても、何か条件がないと難しい。どうしようもない団体は福祉サービスだけでいくのか、難しい問題だ。
・ 過疎対策の目標は所得の平準化、生活の平準化であったが、過疎地域についても「自立」が求められている。これからは産業自立のための投資と生活平準化のための投資は明確に区別していくことが必要。しかし、過疎地域の産業的自立のためにも、やはり公的資金の投入は必要である
・ 地域政策の目的には2つある。「住民があらゆる意味で緊張を強いられない安心した生活を作ること」と「生活の中で創意、工夫を活かした自己実現の機会があること」である。前者については、高度経済成長の中で立ち遅れた地域について過疎対策が講じられた。これからは後者について行政がそのバックアップをすることが求められている。住民が経済活性化の参加者として、自ら業を創り出す活動をすることを行政として促すことが大事だ。
・ 人が減るのが困ると言っても、すう勢として人口減少は容認せざるを得ないし、もう昔に戻ることはあり得ない。そのことを認めた上で過疎地域の新しいビジョンを作り、誇りある地域づくりをする必要がある。
(事務局から産業・雇用からみた過疎地域について資料説明の後、意見交換)
・ 資料5p.1の「高生産性と魅力を兼ね備えた1次産業・2次産業」を実現するには少数精鋭しかなく、あまねく雇用の場を確保することとはかなりイメージが違う。行政として雇用の場の確保というと、建設業で年収2〜3百万円という世界になってしまう。本当に必要なことは、前者ではないか。
・ 製造業については、従来多かった縫製工場の立地などよりは、手作り豆腐を都市部へ直接卸すようなやり方、いわば「手作り的産業」の方が規模は小さいが自分の手取りが多くなる。多自然居住地域が成り立つために必要な産業は、むしろこうした形態のものではないか。
・ 「地域の自立」のためには産業あるいは企業を創る必要性がある。起業に必要な「資本」
・「知的資源(ノウハウなど)」・「市場の接近性」のそれぞれの要素について対策を講じるべきだ。