高校時代から陸上競技に取り組んできた新田真未さん

フィットネス教室の企画運営、メディカルフィットネス施設の開設準備と運営補助など

  • 岩手

岩手県 矢巾町 地域おこし協力隊 現役隊員(任期:2019年4月〜)
新田真未さん

大好きな岩手県で、自分の学んできたことを活かしたい!

岩手大学大学院でスポーツ健康科学を学んだ新田さん。大学院時代には400mハードルで日本インカレ(日本学生陸上競技対校選手権大会)4位入賞を果たしたアスリートでもある。そんな新田さんは在学中から大学院修了後も大好きな岩手県に残って、陸上競技を続けたいと考えていたという。

「県内に残って生活していくためにはどんな仕事ができるだろうかと考えていたとき、矢巾町役場に勤めている先輩から、地域おこし協力隊の募集があることを聞きました。調べてみると、矢巾町がちょうど2019年1月に『スポーツのまちやはば』宣言をしたことを知り、この町でなら自分が学んできたことを活かせるのではないかと考え、応募しました。」

こうした思いを伝えた新田さんは役場と相談し、「スポーツを通じて町に貢献すること」をミッションとして2019年4月に矢巾町の地域おこし協力隊員として着任した。

ヨガの資格取得に向けて練習を積む新田さん

日本初の産学官連携によるメディカルフィットネス施設の開業準備にも関わる

協力隊として着任した新田さんは、「はじめに身近な人たちからスポーツを通じて健康にしていこう」と考え、町役場内にある多目的広場を借りて職員向けのフィットネス教室を開催することにした。

「ストレッチやマッサージ、筋トレなどテーマを決めて開催し、多いときは15人ほどの職員の方が参加してくれました。とても楽しく指導できたのですが、業務の都合上、残念ながら1か月で終了せざるをえなくなりました。」

その業務というのが、矢巾町に新たにオープンするメディカルフィットネス施設の開設準備だった。矢巾町は県庁所在地の盛岡市に隣接し、岩手医科大学があることから、これまでも健康増進に積極的に取り組んできた。2019年9月に岩手医科大学附属病院が盛岡市から矢巾町へ移転し、2020年には病院の敷地内に『ウェルベース矢巾』という日本初となる産学官が連携したメディカルフィットネス施設の開設が予定されていた。

「開設準備のメンバーとして内装や床の仕上げ、どんなフィットネスマシンを入れるか。などといったミーティングにも参加させていただきながら、いろいろと学ぶことができました。コロナ禍で開業が遅れましたが、施設も2020年5月に本格稼働し、店長として施設運営に関わらせていただいています。」

一方、新田さんはこの施設まで足を運べない遠隔地に住む方やお年寄りに向けて、町内を回ってヨガ教室を開くなどの活動も行っている。開設準備と並行して健康運動指導士の資格を取り、さらにヨガインストラクターの資格である「RYT200」の取得も目指して勉強中だという。

「町内にある16か所の自治公民館を回ってヨガ教室を行いましたが、最初の頃は町の広報誌で告知をしても、なかなか人が集まらなくて苦労しました。それを見た役場の方が地域コミュニティを通じて告知をしてくれて、そこから口コミでどんどん参加者が増えていきました。」

左)1年目に行った町役場の職員向けフィットネス教室の様子 右)自治公民館を巡回して行ったヨガ教室は次第に参加者も増えていった

町役場や先輩協力隊員によるサポートに助けられた日々

「役場の方々には本当に助けられています」と新田さん。協力隊の活動を行ううえで、町役場の人が親身になって話を聞いてくれるので、どんなことでも本音で相談できるそうだ。

「協力隊の先輩の方々も、私が社会人1年目ということもあったのでいろいろな活動現場やイベントなどに同行させてくれました。たくさんの方にあいさつする機会をつくっていただいたことで、地元にもスムーズに溶け込むことができたと思います。」

学生時代は盛岡市に住んでいた新田さんは、協力隊の着任とともに矢巾町に引っ越してきたのだが、暮らし始めた当初から地元の人たちが温かく迎え入れてくれたことがとても嬉しかったという。

「日々接する人たちがとても親切で、毎日笑顔を絶やさずに暮らしています。町内に生活に必要な施設などが揃っているので生活が完結できるところも気に入っています。でも中心部から少し離れればのどかな田園風景が広がっていて、まさに都市と田舎の魅力がギュッと詰まっている感じです。」

走ることが大好きな新田さんが日課としているのが、好きな風景を選べるジョギング。暮らしの中での貴重なリフレッシュの時間になっている。

「とにかくどこを走っても風景がきれいなので、ジョギングコースもその日の気分でいろいろ選ぶことができます。そんな風景のなかを走っていると、モヤモヤした気持ちも吹き飛びます。」

左)岩手医科大学附属病院に併設された「ウェルベース矢巾」 右)ウェルベース矢巾内のジムエリア。マシンの選定には新田さんも関わった

協力隊であることで、人脈を広げることができたと実感

新田さんは2022年3月末で地域おこし協力隊の任期を終えるが、その先の進路も見定めている。

「任期終了後も矢巾町に残って地域の人たちの健康と運動をサポートしていきたいと考えているので、町役場の職員採用試験に挑戦することにしました。採用されるかどうかはわかりませんが、ここに残るためにできることはなんでもやってみようと思います。もしダメだった場合は、岩手県内の別の自治体にあるスポーツ関係の仕事をやってみないかと知人に声をかけてもらっているので、矢巾町からは離れることになるかもしれませんが、大好きな岩手県内で頑張ってみようと思います。」

大学、大学院、そして地域おこし協力隊と、9年間に渡って過ごした岩手県の「のほほんとした感じが好き」という新田さんは、県内で働くことにこだわると言う。そんな新田さんにとって、地域おこし協力隊としての3年間はどのような時間だったのだろうか。

「まず、協力隊であることで地域の方々が信用してくれました。それによってさまざまな人が温かく迎え入れてくれて話をしてくださり、人脈を広げることができました。3年間、ひとつの町にいられることで、その町のことをよく知ることができます。いいところだけでなく、さらにもっとこうしたほうがいいのでは、というところにも気づけるのが、3年間という時間だと思います。もし自分が活動してみたいと思う市町村があるとしたら、そこに飛び込んでみて、自分から動いていくことで有意義な3年間を過ごして欲しいと思います。」

新田さんは今後も地域の人たちの健康と運動のサポートを続けたいという

Profile

岩手県 矢巾町 地域おこし協力隊 現役隊員
新田真未さん

1995年生まれ。東京都出身。岩手大学大学院時代には日本インカレの400mハードルで4位入賞した経験を持つ。大学院で学んだスポーツ健康科学の知識を活かすことができるのではないかと、矢巾町地域おこし協力隊に応募。メディカルフィットネス施設『ウェルベース矢巾』の店長を務めるかたわら、町民向けのヨガ教室を開催するなど精力的に活動している。