古民家改修など精力的に活動する浜野さん

古民家改修プロジェクト、農業支援、地域産業支援、イベント・地域行事等の支援など

  • 山梨

山梨県 市川三郷町 地域おこし協力隊 現役隊員(任期:2020年7月〜)
浜野雅子さん

アウトドア好きが高じて山梨県で地域おこし協力隊に

千葉県で革職人として10年ほど活動していた浜野さん。アウトドアが大好きで、週末は主に山梨県でキャンプやスポーツを満喫していた。

「いつか山梨に移住したいという思いはあったのですが、2020年に新型コロナウイルス感染症拡大の影響で仕事が激減してしまったこともあり、転職も視野に入れて移住を真剣に考えるようになりました。最初は移住して革職人を続ける道も検討しましたが、それも難しく感じられました。インターネットで検索しながら職探しをしていたところ、地域おこし協力隊の募集が目に留まりました。」

山梨県内でも複数の自治体で地域おこし協力隊の募集がされていたが、「観光地として知られた地域は競争率も高いのでは?」と考えた浜野さんは優先順位を見直し募集を吟味するという方法で自分に合うまちを探していった。

「そんななか、市川三郷町が自分の条件に合っているように思えました。正直なところ、市川三郷町のことはまったく知らなかったのですが、いわゆるフリーミッション型の募集ということもあり、自分で考えて具体的な活動内容を決められるという点が魅力でした。地域おこしの意義を考えながら、自分で考えて活動することができそうなところが最大の決め手になりました。」

性格的にも能動的なタイプで、フリーミッション型の方が自分を活かせると考えた浜野さんは、市川三郷町の地域おこし協力隊に応募。採用が決定し、2020年7月に着任した。

左)町の特産品である和紙工房 右)印鑑作りを体験する浜野さん

「プライベート花火」を企画してヒットさせる

着任にあたって、浜野さんは地域活性化に取り組む地域団体の所属となった。通常、同町の地域おこし協力隊は町役場で活動するケースが多いが、浜野さんはフリーミッション型の活動を選択したこともあり、自由な活動をするには地域団体に所属したほうがいいだろうという提案が役場からあったためだ。  そのため、まずは「自分が地域おこしのために何をすればいいか」を探すところからスタートした。

「町を隅々まで歩いて、市川三郷町の特産品である花火職人さんを訪問して花火作りを体験したり、さらに和紙作りや印鑑作りなども体験させてもらったりしました。そのようなリサーチを重ねながら、県外から来た私なりの視点で、具体的な提案をするようにしました。」

浜野さんのアイディアが実を結んだのが、『プライベート花火』だ。市川花火といえば、戦国時代の武田信玄が使った狼煙に由来するもので、同町の名物として有名だ。そんな名物花火をプライベートで打ち上げるというサービスである。

「この町に来て、あまりにも頻繁に花火が上がることにまず驚きました。花火師さんがテスト的に打ち上げることも多く、日常的に花火が上がっているので、個人で花火を打ち上げることができたら喜ばれるだろうと思いつきました。花火師さんに尋ねてみたところ可能だということで、私が企画と準備を進め、2020年の秋からサービスを開始しました。プロポーズや誕生日、そのほか人生の節目のお祝いをプライベート花火で演出できるというものです。」

プライベート花火は口コミなどで徐々に広がり、個人だけでなく企業が創立記念日などに打ち上げるなど、申し込みが絶えないそうだ。

左)浜野さんのアイディアから始まったプライベート花火 右)江戸時代には日本三大花火にも数えられた市川花火

大学生たちと取り組んでいる古民家改修プロジェクト

着任当初、協力隊の活動はイベントの企画や運営がメインになると思っていたという浜野さん。

「いくつかイベントの企画をしたのですが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で軒並み中止となってしまいました。そこで、なにかできることをと考え、古民家の活用を思いつきました。古民家を改修して魅力的なスペースを作り、人を呼び込んで、いずれはイベントにつなげていけたらと考えました。」

以前から、「空き家が増えているので、何とかできないか」という相談が町役場に多く寄せられていた。古民家の活用法を考えてほしいという依頼が、町役場からあった。

「地域の人たちからも事情を聞いて空き家を紹介してもらい、具体的に動き出すことになりました。コワーキングスペースを作り、そこに地域の人や県外の人がやってきて、みんなのコミュニティスペースになれば、新しい何かが生まれるはずです。」

こうして、古民家改修プロジェクトがスタートした。浜野さんは、できる限り手作りで完成させたいと、県内の大学生たちに声をかけてみた。

「山梨大学をはじめ、多くの大学生たちが賛同してくれました。山梨出身で東京の大学に通っている学生も含めて総勢十数名がプロジェクトに参加してくれました。作業をする際に、その都度6、7名が集まってくれます。改修費用を出資してくれる会社が見つかったので、その会社に大工さんを紹介してもらい、作業の監修もしてもらっています。私自身は大工仕事の経験はまったくなかったのですが、チーム名やロゴも作って、学生たちと楽しみながら作業しています。」

左)改修作業のために集結した地元の大学生たち 右)チーム名は「point」。そろいのユニフォームも作った

将来は全国の地域おこし協力隊のつなぎ役になりたい

着任前は自分が地域に受け入れてもらえるのか不安もあったそうだが、杞憂に終わった。町の人に声を掛けてもらえる機会が増え、地域に溶け込めたことを実感しているという。

「役場の人が私を色々な方に紹介してくれたことが大きかったです。役場が主催する講演会で自己紹介する場を設けていただくなど、地域に馴染めるようにサポートしてくれました。また、所属する地域団体の代表者にもたくさんのサポートを受けました。意見が衝突したこともありましたが、何度も話し合いながらお互いを理解し、様々な活動をともにしました。もし、彼らがいなかったら、途中で辞めていたかもしれません。」

地域の人の中でも、農家民宿のオーナーはとくに浜野さんの活動に賛同し、励ましてくれたそうだ。

「改修作業をしている古民家を紹介してくれたのも、農家民泊のオーナーでした。着任したばかりの頃は知り合いがいないことがつらく、ホームシックにもなりましたが、徐々に地域に溶け込むことができましたし、いまは農作業も大工仕事も楽しくてたまりません。趣味の登山や狩猟、オフロードバイクや釣りなど、いろいろな休日の楽しみ方ができました。」

古民家の改修が終わった後は、登山や狩猟のイベントなども開催したいと意気込む浜野さん。さらに任期終了後は、全国で活動している地域おこし協力隊のマネージャー的な役割を果たしたいという。

「活動を通して自分が体験したことを伝えたいです。全国にいる協力隊の活動をサポートするような仕事ができたらいいなとも考えています。私はこの制度の恩恵を受けたと感じているので、今後はこれから協力隊になる人たちの力になって還元できたらいいなと思います。ここに定住することは決めていますし、いつかは山梨県内の他の地域にもコワーキングスペースを作ってみたいと考えています。」

苦労もあったが、地域おこし協力隊になったことの意義をかみしめているという浜野さん。「ここでの活動は楽しいことばかり。自分で考えて行動するフリーミッション型だったこともよかった。」と語る。地域おこし協力隊として地域に入る良さを実感しているそうだ。

左)猟銃免許も取得し、シカ猟を行う浜野さん 右)登山も楽しむ。写真は西穂高岳登頂時

Profile

山梨県 市川三郷町 地域おこし協力隊  現役隊員
浜野雅子さん

1983年生まれ。大阪府出身。千葉県で革職人として活動していたが、コロナ禍を機に移住を決意。アウトドアが趣味でしばしば訪れていた山梨県で移住先を探していたところ地域おこし協力隊制度を知り、市川三郷町の地域おこし協力隊に応募。採用され、2020年7月に着任。古民家改修プロジェクト等に取り組む。