3.地方税制の課題
(1) 税源移譲を含めた地方税源の充実確保
国・地方ともに極めて苦しい財政事情の下、少子・高齢化の進展等により今後も更に多くのお金が必要となってくることが予想される中で、国民が安心して暮らせる活力のある地域社会をできる限り効果的・効率的に創っていくためには、地方公共団体が行う仕事について、自ら決定し、自らが責任を持つ体制を確立する必要があります。
現在の地方財政の状況をみると、地方の歳入に占める地方税の収入の割合は3分の1前後に留まっており、地方の歳出規模と地方税の収入との乖離は、国庫補助負担金や地方交付税など、国から移転して受け入れるお金により補てんせざるを得ない状態が続いています。また、国と地方の歳出の規模を比較すると、おおむね4:6であるのに対して、国民が負担した税金を国と地方へそれぞれ分配していくうえでは、6:4と逆転しています。その結果、地方公共団体の行政サービスに対する住民の受益と負担との対応関係が不明確となり、国庫補助負担金などを通じた国の地方への種々の関与と相まって、コスト意識が希薄となりがちな行財政活動につながる恐れがあります。
そのため、この地方における歳出規模と地方税の収入との乖離をできる限り縮小するという観点に立って地方税の充実確保を図ることが重要です。すなわち、歳出の徹底した見直し、削減等に努めた上でなお必要な額については、極力、自主財源である地方税の充実強化により賄うこととすれば、受益と負担の対応関係が明確となり、住民の選択による財政の自己規律の向上や、運営面での効率化が図られやすくなると考えられます。
(2)法人事業税における外形標準課税の円滑な実施
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法人事業税への外形標準課税の導入については、以下の4つの重要な意義を有してます。 |
1) |
税負担の公平性の確保
課税標準に外形基準が導入されれば、欠損法人を含め、各法人が事業活動規模に応じて税を負担することとなり、応益原則による地方税の負担を薄く広く、かつより公平に分担する税制の構築につながります。
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2) |
応益課税としての税の性格の明確化
法人事業税は、法人の事業活動と地方の行政サービスとの幅広い受益関係に着目して、事業に対して課される税であることから、その課税標準は、法人の事業活動の規模をできるだけ適切に表すものであることが望まれます。
所得を課税標準とする現行の法人事業税は、事業活動の規模との関係が適切に反映されず、本来の応益課税の性格から見て望ましいあり方になっていないことから、外形標準課税の導入は、税の性格の明確化を図る観点からも、大きな意義を有する改革となります。
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3) |
地方分権を支える基幹税の安定化
地方の行政サービスは、安定的に供給されることが必要です。地方団体がその責任を十分に果たすためには、自主財源の根幹をなす地方税は、できるだけ安定的で、変動の少ないものであることが望まれます。
法人事業税への外形標準課税の導入は、税収の安定性を向上させるとともに、地方税としての自主性を高めることとなり、地方分権を支える地方税体系の構築に重要な役割を果たすことが期待されます。
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4) |
経済の活性化、経済構造改革の促進
外形標準課税の導入は、薄く広く税負担を分担する仕組みに改革していくことです。このことは所得に係る税負担を相対的に緩和することとなり、より多くの利益をあげることを目指した事業活動を促し、企業経営効率化や収益性の向上に資すると考えられ、経済構造改革に資することが期待できます。
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(3) その他
1) 個人住民税
個人住民税は、地域社会の費用を住民がその能力に応じ広く負担を分任するという独自の性格(負担分任の性格)を有するとともに、地方公共団体が少子・高齢化に伴い提供する福祉等の対人サービスなどの受益に対する負担として、対応関係が明確に認識できるものであり、また、税収入の面で見れば、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えていることなどを踏まえ、地方税の基幹税として充実確保を図る必要があります。
所得割の各種控除、課税最低限の在り方については、広く公平に負担を分かち合うとの観点から検討する必要があり、また、均等割の税率は、これまで数次にわたり改正が行われてきましたが、国民所得等の推移と比較すると、なお低い水準にとどまっており、その負担水準の見直しについて検討する必要があります。
2) 地方消費税
地方消費税は、現行の地方税の主要税目の中で、税収の偏在性が少なく安定性を備えた税であり、地方分権の推進、地域福祉の充実等のために創設された趣旨からも、福祉、教育などの幅広い行政需要を賄う税として、今後その役割はますます重要となることから、その充実を図っていく必要があります。その際、消費行為が市町村の区域にとらわれず行われることや地域における消費行為の奨励策等の税源涵養努力との関連などを考え併せると、都道府県の基幹税目として更に充実することが望ましいと考えています。
3) 固定資産税
固定資産税は、平成18年度の評価替えに伴い、課税の公平の観点から負担水準のばらつきの解消に向けて、負担水準の均衡化を促進する措置を引き続き実施することとしたところでありますが、市町村の基幹税目であり、安定性に富み偏在性も少ない税であることから、今後とも負担水準の均衡化・適正化を基本としつつその安定確保を図っていく必要があります。
4) 法定外税
平成12年4月の地方分権一括法による地方税法の改正により、法定外普通税について許可制から同意を必要とする協議制に改められ、協議の際の要件も従来より縮小されるとともに、法定外目的税制度が創設されました。法定外税は、地方公共団体にとって課税の選択の幅を広げるものであり、また、特に法定外目的税については、住民にとって受益と負担の関係が明確となるものであり、制度改正を受けて、多くの地方公共団体において、法定外税の創設に向けた取組みが行われています。このような取組みは、それぞれの地方公共団体が地域の実情に応じた財源確保を目指すものであり、基本的に歓迎すべきものですが、条例制定など具体化に当たっては、租税に対する信頼を確保し、地方分権の推進に資するものとなるよう、税の意義を十分理解のうえ、慎重かつ十分な検討が行われることが必要です。
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