(1) |
本ガイドラインで使用する基本的用語を定めるものであるが、電気通信事業を行う者が取り扱う個人情報を広く対象とするため、電気通信事業法の用例とは必ずしも一致しない。 |
(2) |
「電気通信事業者」とは、電気通信事業法上は、電気通信事業を営むことについて、登録、届出という行政上の手続を経た者をいうが、同じサービスを提供しながら本来行わなければならない手続を経ていないという理由でガイドラインの対象外となるのは不合理であるので、本ガイドラインでは、こうした手続の有無にかかわらず、電気通信事業を営む者を対象とすることとした。なお、電気通信事業法の適用除外とされている同法第164条第1項各号に定める事業を営む者についても、同法第4条(秘密の保護)の規定の適用があり個人情報保護の必要性に差はないことから、本ガイドラインの対象とすることとした。また、営利を目的とせずに電気通信事業を行う者についても、個人情報を適正に取り扱うことは求められることから、本ガイドラインの対象とすることとした。 |
(3) |
電気通信事業者の事業の中心は、電気通信役務(電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の用に供すること。)を他人の需要に応じて提供することであるが、それ以外にもこれに付随するサービスを行っており(電話帳発行業務等はこれに当たる。)、これらの業務の過程において取り扱う利用者の個人情報についても適正な取扱いが要請されることから、これらを含めたものを「電気通信サービス」とし、ガイドラインの対象とすることとした。 |
(4) |
「利用者」とは、電気通信事業法上は、電気通信事業者との間に電気通信役務の提供を受ける契約を締結する者をいうが、加入電話にみられるように契約者でなくとも電気通信サービスの利用は可能であることから、これらの者の個人情報をも保護するため、単なる電気通信サービスの利用者を「利用者」としてガイドラインの対象とすることとした。 |
(5) |
「加入者」とは、電気通信事業法上の「利用者」に該当する者をいう。 |
(6) |
本ガイドラインは個人の権利利益を保護することを目的とするものであるから、個人に関する情報であっても特定の個人を識別し得ないものを対象とする必要性は認められない一方、個人を識別することができる情報を更に限定する合理性も認めがたい。そこで、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものを「個人情報」としている。
「個人」とは、日本国民に限られず、外国人も含まれる。また、公務員及び公人も「個人」に当たる。法人その他の団体は「個人」に該当しないため、法人等の団体に関する情報は個人情報に含まれない。ただし、法人等の役員に関する情報は個人情報に当たる。
「個人に関する情報」とは、氏名、性別、生年月日等個人を識別する情報に限られず、個人の身体、財産、社会的地位、身分等の属性に関して、事実、判断、評価を表すすべての情報をいい、評価情報といわれるものも含まれる上、公刊物等によって公にされているものも含まれる。
「その他の記述等」とは、氏名、生年月日以外の記述又は個人別に付された番号、記号その他の符号等をいう。映像、音声もそれによって個人の識別に至る限りは「等」に含まれる。
本ガイドラインは、個人の権利利益の保護を目的とすることから、個人を識別することができない情報は除く一方、他の情報と照合することによって個人を識別することができる場合は対象としている。もっとも、他の情報との照合が容易でない場合については、個人の識別が容易ではなく、個人の権利利益を侵害するおそれも小さいと認められることから、個人情報の範囲から除外している。具体的には、他の電気通信事業者への照会を要する場合のほか、内部でも取扱部門が異なる等の事情により照会が困難な場合がこれに当たる。
なお、本ガイドラインでは、死者に関する情報は、死者と生存する者の双方に関する情報を除き、対象としていないが、死者に関する情報についても適正に取り扱う必要があることは生存する者に関する情報と同様であり、死者に関する情報についても、安全管理措置の実施等基本的には生存する者に関する情報と同様に本ガイドラインに定める措置をとり適正に取り扱うことが求められる。また、電気通信事業法の通信の秘密の保護の対象は、生存する者に限定されていないことにも留意する必要がある。 |
(7) |
第6号の「本人」は、第5号で「個人情報」を、「個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」と定義した裏返しとして同号で定義される個人情報により識別されることとなる特定の個人を「本人」と定義し、本ガイドラインの規定により権利利益の保護が図られる対象として規定するものである。 |
(1) |
第1項は、電気通信事業者が、個人情報を取り扱うに当たり、前条の安全管理措置のうちの組織的保護措置の一環として、特に電気通信事業者は従業者に対して必要かつ適切な監督を行う責任があることを規定したものである。
「従業者」とは、電気通信事業者の組織内にあって直接間接に事業者の業務に従事している者をいい、電気通信事業者との間の雇用関係の有無は問わないので、雇用関係にある従業員(正社員、契約社員、嘱託社員、パートタイマー、アルバイト等)及び役員(取締役、執行役、監査役、理事、監事等)のほか派遣労働者も含まれる。
従業者に対する必要かつ適切な監督には、従業者との秘密保持契約の締結(派遣労働者については、派遣元との秘密保持契約の締結及び派遣元と派遣労働者の間の適切な秘密保持契約の締結の確保等の措置)等が含まれる。 |
(2) |
第2項は、安全管理措置の実施その他の個人情報の適正な取扱いの確保のため、電気通信事業者は、従業者に対し、必要な教育研修を実施することを規定している。教育研修の内容としては、安全管理に関する内部規程・マニュアルの周知等が考えられる。 |
(3) |
第3項は、電気通信事業者が個人情報の取扱いを他の者に委託する場合に、前条の安全管理措置のうちの組織的保護措置の一環として、特に電気通信事業者はその委託先に対して必要かつ適切な監督を行う責任があることを規定したものである。
「委託」とは、契約の形態・種類を問わず、電気通信事業者が他の者に個人情報の取扱いの全部又は一部を行わせることを内容とする契約の一切を含むものである。具体的な委託先としては、契約代理業者(電気通信事業者の電気通信役務の提供に関する契約の締結の媒介、取次ぎ又は代理を業として行う者)や電気通信事業者の顧客の個人情報の入力、編集、出力等の処理を行う者や料金の回収・決済を代行する者などがあげられる。 |
(4) |
第4項は、第3項の委託に当たって、個人情報を適正に取り扱うと認められる者を選定すること、及び、委託契約において、安全管理措置、秘密保持、再委託の条件(再委託を許すかどうか並びに再委託先を許す場合は再委託先に個人情報を適正に取り扱っていると認められることを選定すること及び再委託先の監督に関する事項等。なお、二段階以上の委託を許す場合は同様に再々委託先等の選任監督に関する事項を定める必要がある。)その他の個人情報の取扱いに関する事項を適正に定めることを規定したものである。 |
(5) |
第5項は、電気通信事業法第4条第2項において、電気通信事業に従事する者に対し、「通信に関して知り得た他人の秘密」を守るべき義務が課されているが、個々の通信に関係ない個人情報については、かかる守秘義務は及ばないと考えられる。しかし、個人情報保護の観点からは、同様に保護することが適当であることから、電気通信事業に従事する者(電気通信事業者及びその従業者)及び電気通信事業者から委託された個人情報の取扱いの業務に従事する者(受託者及びその従業者)について、個人情報を適正に取り扱うべき責務があることを明らかにしたものである。 |
(1) |
第1項は、個人情報は、原則として本人の同意なく、第三者に提供できないことを規定したものである。ただし、自己又は他人の権利利益や社会公共の利益のために第三者提供が要請される場合もあるので、そうした場合を第1項各号に例外として定めている。 |
(2) |
「本人の同意」については、個別の同意がある場合だけでなく、電気通信サービスの提供に関する契約約款において、個人情報の第三者提供に関する規定が定められており、当該契約約款に基づき電気通信サービス提供契約を締結している場合、当該規定が私法上有効であるときも、「本人の同意」がある場合と解される。
この理は、契約約款が変更される場合も変わりはないので、契約約款の変更により個人情報の第三者提供に関する規定が設けられた場合であっても、当該変更が私法上有効であり変更前に契約締結を行った当事者にも変更後の規定が効力を有すると判断される場合には、「本人の同意」がある場合と解される。
なお、同意は有効なものでなければならないので、民法第90条の公序良俗に反する場合や同法第95条の要素の錯誤がある場合、消費者契約法第10条の消費者の利益を一方的に害するものとされる場合など同意が私法上無効とされる場合は、有効な同意があるとは言えないので、同意がある場合とは言えないことは当然である。
また、無制限に第三者提供を認める規定等契約約款の規定が、利用者の利益を阻害していると認められるときは、電気通信事業法上の業務改善命令の対象となりうる。 |
(3) |
「法令に基づく場合」とは、例えば、裁判官の発付する令状により強制処分として捜索・押収等がなされる場合や法律上の照会権限を有する者からの照会(刑事訴訟法第197条第2項、弁護士法第23条の2等)がなされた場合である。前者の場合には、令状で特定された範囲内の情報を提供するものである限り、提供を拒むことはできない。これに対し、後者の場合には、原則として照会に応じるべきであるが、電気通信事業者には通信の秘密を保護すべき義務もあることから、通信の秘密に属する事項(通信内容にとどまらず、通信当事者の住所・氏名、発受信場所及び通信年月日等通信の構成要素並びに通信回数等通信の存在の事実の有無を含む。)について提供することは原則として適当ではない。他方、個々の通信とは無関係の加入者の住所・氏名等は、通信の秘密の保護の対象外であるから、基本的に法律上の照会権限を有する者からの照会に応じることは可能である。もっとも、個々の通信と無関係かどうかは、照会の仕方によって変わってくる面があり、照会の過程でその対象が個々の通信に密接に関係することがうかがわれる場合には、通信の秘密として扱うのが適当である。いずれの場合においても、本人等の権利利益を不当に侵害することのないよう提供等に応じるのは、令状や照会書等で特定された部分に限定する等提供の趣旨に即して必要最小限の範囲とすべきであり、一般的網羅的な提供は適当ではない。 |
(4) |
「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」とは、自己又は他人の権利利益を保護するため、個人情報を第三者に提供することが必要であるものの、本人の同意を得ることが困難である場合について手当てするものである。人の生命、身体又は財産といった具体的な権利利益が侵害されるおそれが高まっており、これを保護するために個人情報の利用が必要である場合には、個人情報を第三者に提供することに一定の合理性があると考えられる。一方こうした場合であっても、本人の権利利益侵害の予防という観点からは同意を得るべきとの原則が変わるものではないことから、本人の同意を得ることが困難である場合に限って本条の規定の適用を除外するものである。したがって、人の生命、身体又は財産の保護のために、他の方法によることが十分可能である場合にまで本人の同意なき第三者への提供を認めるものではない。
なお、通信の秘密に属する事項については、この場合も通信当事者の同意なき第三者提供が許されるのは、緊急避難の要件に該当する場合等違法性阻却事由がある場合に限られる。 |
(5) |
「公衆衛生の向上又は児童の健全な育成のために、特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難なとき」とは、個人情報保護法第23条第1項第3号と同様の規定であるが、これは個人情報保護法第16条第3項第3号及び第23条第1項第3号は、疾病の予防や、治療に関する研究や、心身の発達途上にある児童の健全な育成のため、社会全体の組織的な協力により個人情報を相互に提供して活用する必要がある場合の規定であり、具体的には、疾病の予防や治療に関する研究のために、病院や医療研究機関が情報を交換する場合や、児童虐待に対応するために、学校、施設、病院、警察等がネットワークを形成する必要がある場合等が想定されている。
これらの規定が、電気通信事業者にも適用されるかについては、個別具体的に判断する必要があるが、上記の趣旨を踏まえれば、これらの規定が電気通信事業者に適用されることは基本的には想定されないと考えられる。 |
(6) |
なお、第1項各号に該当する場合の本人の同意なき個人情報の第三者提供については、個人情報保護の要請が特に高い電気通信事業者としては、本人の同意を得ずに第三者提供を行うことが真に必要であると慎重に判断した上で行うこととすべきである。 |
(7) |
第2項及び第3項の規定は、個人情報保護法第23条第2項及び第3項と同様の規定であり、いわゆるオプトアウトの仕組みによる第三者提供を認めたものであるが、電気通信事業者が加入者の個人情報を第三者提供する場合は、契約約款により本人の同意を得て行うことが一般的に可能である(上記(2)参照)ので、基本的には本人の同意を得て行うこととすることが望ましいと考えられる。ただし、契約約款により本人の同意を得て行う場合でも、電話帳に掲載する場合など本人の意思をできるだけ尊重すべきものについては、本人の申出により提供を停止するという扱いにすることが望ましい。 |
(8) |
第4項第1号については、現在、民間企業等においては、顧客情報等大量の個人情報を利用するために必要となる編集・加工等の処理を他の企業に委託することが一般化しつつある。こうした取扱いを第三者提供とした場合、第1項に基づき、処理される個人情報の本人に対し個々に同意を取る必要が生じることとなり、事実上委託行為自体が不可能となるおそれがある。一方、電気通信事業者が個人情報の取扱いを委託した場合には、第12条により、適切な委託先を選定し、委託先に対し必要かつ適切な監督を行う責任が生じ、これらの責任を果たしていない結果、問題が生じた場合には委託元である電気通信事業者も責めを負うこととなる。これらの事情を勘案し、電気通信事業者が利用目的の達成に必要な範囲内で個人情報の取扱いを委託する場合には、電気通信事業者が行う取扱いの一部とみなし、委託先は第三者には該当しないこととしている。なお、一般に個人情報の処理を委託され、その成果物たる処理データを委託元に返すような場合は、そもそも第三者への提供であるとは解されない。 |
(9) |
第4項第2号については、合併や営業譲渡などにより事業の承継があった場合、通常その承継資産には顧客情報等の個人情報が含まれると考えられ、必然的に個人情報が移転する。仮にこれを第三者提供として第1項及び第2項を適用した場合、移転される個人情報の本人すべてから同意を取る必要が生じ、事実上事業承継が困難になるおそれがある。一方、事業承継に伴って個人情報が移転する場合には、第5条第2項により利用目的も引き継がれることとなるため、本人との関係においては、単に取扱いの主体となる事業者の名称が変更したに過ぎず、個人情報の取扱いに伴う権利利益の侵害のおそれが増大することは考えにくい。これらの事情を勘案し、事業を承継する者は本条の対象となる第三者には該当しないこととしている。 |
(10) |
第4項第3号及び第5項については、個人情報保護法第23条第4項第3号及び第5項と同様の規定であり、これらの規定を満たす形で特定の者との間で個人情報を共同利用することは本人の同意なく行うことができることを認めたものであるが、電気通信事業者が加入者の個人情報を共同利用する場合は、契約約款により本人の同意を得て行うことが一般的に可能である((2)参照)ので、基本的には本人の同意を得て行うこととすることが望ましいと考えられる。ただし、契約約款により本人の同意を得て行う場合でも、不払い者情報の交換の場合のように(第27条参照)、本人の権利利益に重大な影響を及ぼす可能性がある情報を交換する場合などには、第4項第3号に掲げられている情報をあらかじめ本人に通知又は本人が容易に知り得る状態に置くなどの措置をとり、本人の権利利益を不当に侵害することのないようにすることが求められる。なお、「本人が容易に知り得る状態に置く」とは、公表が継続的に行われている状態をいい、具体的には、ホームページへの掲載、官報・新聞等への継続的な掲載、事務所の窓口等への書面の掲示・備え付け等の措置をとっていることをいう。 |
(11) |
第6項の規定は、第1項から第5項までの規定の適用により第三者提供(第4項各号の規定により提供する場合を含む。)が認められる場合であっても、個人情報が通信の秘密にも該当する場合には、通信当事者の同意なき第三者提供(同上)は違法性阻却事由がある場合を除き許されないことについて念のため確認する趣旨の規定である。 |
(1) |
第1項は、電気通信事業者は、個人情報に関し、本人の求めにより開示するものとすることを規定するものである。「開示」とは、開示を求められた個人情報の存否を含めてその内容を知らせることを指す。なお、電気通信事業者が開示すべき個人情報は、当該電気通信事業者が開示の権限を有している個人情報である。 |
(2) |
「遅滞なく」とは、事情の許す限り最も速やかにという意味であり、正当な又は合理的な理由に基づく遅滞は許されると解されている。したがって、例えば、同一主体からの大量の開示請求があった場合には開示が遅れてもやむを得ない。
|
(3) |
「本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合」とは、例えば、本人に関する情報の中に第三者の情報が含まれており、これを開示することが当該第三者の不利益となるような場合などが考えられる。
また、個人情報保護法施行令第3条第1項各号に該当するような場合、すなわち
1) |
当該個人情報の存否が明らかになることにより、本人又は第三者の生命、身体又は財産に危害が及ぶおそれがあるもの |
2) |
当該個人情報の存否が明らかになることにより、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがあるもの |
3) |
当該個人情報の存否が明らかになることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあるもの |
4) |
当該個人情報の存否が明らかになることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障が及ぶおそれがあるもの |
も、これに該当することとなると考えられる。 |
(4) |
「業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがあるとき」とは、例えば、開示の対象が特定されていない場合や個人データに該当しない個人データベース等を構成していない個人情報(Webサーバに一時的に保存されているクッキー情報である個人情報等)の開示が求められた場合などこれに応じて開示を行うことが電気通信事業者に過大な負担となるような場合や電気通信事業者において独自に付加した信用評価等の開示が求められた場合をいう。 |
(5) |
第3項は、電気通信事業者に対し、本人の求めにより訂正等を行うものとすることを規定するものである。なお、電気通信事業者が訂正等を行うべき個人情報は、当該電気通信事業者が訂正等の権限を有している個人情報である。 |
(6) |
訂正等を行うべきなのは、当該個人情報の内容が事実でない場合のほか、当該電気通信事業者が当該個人情報を第10条の規定に違反して保存期間経過後も消去しない場合、第6条の規定に違反して目的外に利用している場合、第15条の規定に違反して本人の同意なく第三者に提供している場合など本ガイドラインに違反した取扱いを行っている場合である。 |
(7) |
本ガイドラインに違反した取扱いを行っている場合には、本ガイドラインに違反している取扱いを是正すれば足り、必ずしも当該個人情報のすべての取扱いをやめる必要はない(例えば、第6条の規定に違反して目的外に利用している場合は目的外利用を停止すればよく、利用目的の範囲内の利用まで停止する必要はない。)。なお、「第三者への提供の停止」とは、新たな提供を停止することを意味し、既に第三者に提供された個人情報を回収することは含まれない。 |
(1) |
通信履歴は、通信の構成要素であり、電気通信事業法第4条第1項の通信の秘密として保護される。したがって、これを記録することも通信の秘密の侵害に該当し得るが、課金、料金請求、苦情対応、自己の管理するシステムの安全性の確保その他の業務の遂行上必要な場合には正当業務行為として少なくとも違法性が阻却されると考えられる。 |
(2) |
電気通信事業者は、利用明細(第24条第1項参照)作成のため必要があるときは、加入者の同意の有無にかかわらず、通信履歴を記録し保存することができると解される。電気通信事業者が利用明細を作成するために通信履歴を記録・保存することは、料金請求の根拠を示し得るようにするという点で、債権者たる電気通信事業者の当然の権利であり義務でもあると考えられるから、加入者の同意がなくとも、必要な限度で記録・保存することは正当業務行為として許されると考えられる。ただし、加入者が通信履歴を残さないことを特に望んだ場合には、これに従って記録・保存しない扱いをすることは可能であると考えられる。この場合、当該加入者は、信義則上、料金の明細について争うことはできなくなる。 |
(3) |
発信者を探知するための通信履歴の解析は、目的外利用であるばかりでなく通信の秘密の侵害となることから、違法性阻却事由がある場合でなければ行うことはできないと解される。例えば、インターネットのホームページ等の公然性を有する通信において、違法・有害情報が掲載され、その発信者に警告を行わないと自己のサービス提供に支障を生じる場合(自己のサービスドメインからの通信がアクセス制限される場合等)に、自己が保有する通信履歴などから発信者を探知することは、正当業務行為として行うことができるものと解される。 |
(4) |
通信履歴は、通信の秘密として保護されるので、裁判官の発付した令状に従う場合等、違法性阻却事由がある場合を除き、外部提供は行わないこととする。法律上の照会権限のある者からの照会に応じて通信履歴を提供することは、必ずしも違法性が阻却されないので、原則として適当ではない(第6条解説参照)。なお、電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法第234条の2)に該当するような大量の無差別のダイレクト・メールが送りつけられ、自社のネットワークやサービスが脅威にさらされており、自己又は他人の権利を防衛するため必要やむを得ないと認められる場合には、発信元の電気通信事業者に通信履歴(発信者のIPアドレス及びタイム・スタンプ等)を提供することは許されると考えられる。 |
(5) |
いったん記録した通信履歴は、第10条の規定に従い、記録目的に必要な範囲で保存期間を設定することを原則とし、保存期間が経過したときは速やかに通信履歴を消去(個人情報の本人が識別できなくすることを含む。)する必要がある。この保存期間については、提供するサービスの種類、課金方法等により各電気通信事業者ごとに、また通信履歴の種類ごとに異なり得るが、その趣旨を没却しないように限定的に設定すべきであると考えられる。また、保存期間を設定していない場合には、記録目的を達成後、速やかに消去する必要がある。ただし、法令の規定による場合その他特別の理由がある場合には例外的に保存し続けることができると考えられる。自己又は第三者の権利を保護するため緊急行為として保存する必要がある場合は、その他特別な理由がある場合として保存が許されると考えられる。 |
(1) |
「発信者情報」とは、発信者に関する情報であって、当該情報に含まれる電話番号、氏名、住所、生年月日その他の記述、個人別に付された番号、記号その他の符号、映像又は音声により当該発信者を識別できるものをいう。これには、発信電話番号通知サービスによって通知される発信電話番号や発信者名通知サービスによって通知される発信者名等が該当し、発信者の顔写真や発信者の位置等の情報が伝達される場合には、これらも含まれる。なお、「電話サービス」とは、加入電話、ISDN、携帯電話、PHSのほかIP電話なども含まれる。 |
(2) |
発信者情報は、通信の秘密に該当するが、発信者情報の通知を通信ごとに阻止する機能を設けて、発信者情報を通知するかどうかの判断を発信者に委ねることにより、発信者がこれを阻止しない場合には、発信者が発信者情報を相手方に対して秘密にする意思がないと認められるから、通信の秘密侵害には当たらないことになる。 |
(3) |
発信者が発信者情報を相手方に対して秘密にする意思がないと認められるためには、発信者が発信者情報通知サービスの内容について十分理解している前提となるため、電気通信事業者は、利用者の権利を確保するため、通知される情報、通知を阻止する方法等について利用者に十分周知を行う等の措置を講ずる必要がある。
なお、緊急通報については、発信者は、通常の場合は、緊急通報受理機関の迅速な対応を受けられるように、通報現場の位置や自らの所在位置を緊急通報受理機関に通知する意思があると考えられるため、緊急通報以外の一般の通話については発信者情報を原則非通知とする設定をしていたとしても、緊急通報については通常の場合は発信者情報が原則通知されるものとし、通信ごとに通知を阻止する機能を利用した場合のみ通知を行わないという取扱いとすることも認められると考えられる。しかしながらこのような取扱いを行う場合は、1) 緊急通報以外の一般の通話については発信者情報を原則非通知とする設定としていたとしても緊急通報については通常の場合は発信者情報が原則通知するという取扱いとしていること、2) 緊急通報において発信者情報の通知を通信ごとに阻止する方法について利用者に十分周知する必要がある。 |
(4) |
なお、発信者情報通知サービスについては、平成8年(1996年)に「発信者情報通知サービスの利用における発信者個人情報の保護に関するガイドライン」が策定されており、同サービスを提供するに当たっては、加入者に対し、その尊重を求める必要がある。 |
(5) |
「その他のサービスの提供に必要な場合」とは、例えば、電気通信事業者間で課金等の目的や通信網の運用等に必要な範囲で発信電話番号情報を送受信することや、コレクトコールにおいて着信者に対して発信者を特定できる情報を提供すること等が考えられる。 |
(6) |
発信者情報は、通信の秘密に該当するので原則として外部提供は適当ではないが、緊急行為としての逆探知等の場合には可能と解される。 |
(1) |
電話番号情報は、個人情報ではあっても、一般に公開が要請され、電話帳又は電話番号案内によって知り得るものとなっている。これは、ある人に電話をかけたいというときに電話番号が分からなければコミュニケーションをすることができないからである。ただし、こうした要請も加入者のプライバシーに優先するものではないので、電気通信事業者としては、加入者に対して電話帳への掲載又は電話番号の案内を省略するかどうかの選択の機会を与えるべきである。
なお、電話サービス以外の通信サービスにおけるID(電子メールアドレス等)については、電話番号ほどの公開の要請はないのが現状であるため、本条の対象とはしないこととした。したがって、これらの取扱いについては、第2章の共通原則によることとなる。 |
(2) |
電話帳には、加入者を特定するための最低限の情報は掲載されるべきであり、氏名、住所、電話番号については掲載される必要があるが、それ以上の個人情報を掲載するのは適当ではない(もとより、職業別電話帳に職業を記載するのは可能である。)。また、住所の一部を削除するなどのオプションを設けることなども検討に値する。 |
(3) |
従来、電話帳は紙媒体で、電話番号案内はオペレーターによりなされるのが通常であったが、電子計算機処理が進む中で、CD−ROMによる電話帳、パソコン通信やインターネットによる電話番号案内といった形態が出現しつつある。こうしたものは、利便性を向上させるという点では利用者の利益になるが、他方、加入者のプライバシーへの配慮が必要となる。例えば、50音別電話帳のCD−ROM化についていえば、電子データの加工・処理による個人情報の不当な二次利用の防止という観点から、データのダウンロードや逆検索の機能を設けないといったことが少なくとも必要であろう。他方、CD−ROM化に際して、改めて掲載の可否の意向を確認する必要があるかどうかについては、ヨーロッパ各国その他諸外国の動向にも注意しつつ、社会的コンセンサスの有無を判断していく必要がある。なお、職業別電話帳については、掲載情報が社会的に広まることについてメリットが大きく、また、同情報には個人情報として保護されるべき内容も多くはないことから既にCD−ROMでの提供やインターネット上での提供が実施されている。 |
(4) |
電話番号情報の外部提供については、外部提供の一般原則による。例えば、この通話における発信者電話番号に対応する加入者は誰かという照会の場合は、通信の秘密に属する事項に関するものなので裁判官の発付する令状等が必要であるが、この電話番号に対応する加入者は誰かといった照会であれば、通信の秘密を侵害するものではないので、法律上の照会権限を有する者からのものであれば、応じることも可能である。 |
(5) |
電話帳発行又は電話番号案内業務を行おうとする者に対して提供することは、目的の範囲内の行為として許されると考えられる。この場合における提供の媒体については、磁気媒体での提供も可能と考えられる。ただし、被提供者に対しては、情報の利用を電話帳発行事業又は電話番号案内事業に限定すること、本来の電話帳等と同等の形態を維持すること、情報流出防止のための措置を講ずること等、情報の取扱いに関する協定等を締結する必要がある。 |