平成18年12月11日
手話と字幕の番組「目で聴くテレビ」について
特定非営利活動法人 CS障害者放送統一機構
理事長 高田 英一
1 設立の経過
CS障害者放送統一機構(以下、統一機構)は、阪神淡路大震災(以下、大震災)の聴覚障害者の痛切な体験に基づき、全日本ろうあ連盟、全日本難聴者・中途失聴しゃ 団体連合会など聴覚障害者を主体に、民間企業の協力を得て設立されました。
1998年9月、統一機構はその愛称を「目で聴くテレビ」とする初放送(法的には通信)を開始、本年で9年目を迎え、現在、全国9,000世帯のきこえない人たちに、ほぼ毎日、番組を配信しています。
大震災の直前まで、NHK教育テレビは「手話と字幕」を付与した『手話ニュース』を放送しており、私たちの唯一の情報源でもありました。しかし、大震災直後にその時間は、被災者の安否確認の問い合わせに対応する内容に変更され、他に「手話と字幕」を付加する放送もなく、私たちは全くテレビ情報から遮断されました。
その時、私たちが被災地を救援し、また被災地はその救援を受けるため、真っ先に必要としたのは情報であり、そのため厚生省、郵政省(いずれも当時)など関係官庁、NHK、民放、報道関係機関にテレビ放送に対して『手話と字幕』付与の再開もしくは新設の要請を行いました。その結果、相当時間の経過の後、『手話ニュース』は復活しました。
聴覚障害者に情報を保障し、救援するためには、それに対応できる手話通訳者また手話のできる同障者が必要です。神戸市内ではそれらの人たちが被災していたため、震災圏外の全国から救援活動を組織する必要がありました。しかし、電話やファクスを含む情報通信システムは混雑のため、容易に救援体制が作れませんでした。被災現地と支援側をつなぐ情報保障には一方的に情報を大多数に発信できるテレビが効果的です。
その教訓から私たちは独自の情報確保の手段を講じる必要を痛感しました。折からCS放送が普及しつつあり、民間企業の協力で回線の利用が可能となったので、次の大震災に備えようと統一機構を設立したのです。
その後、有珠山噴火、臨界事故、中越地震などの災害に当たっては、現地に放送スタッフを派遣、取材し、現地及び全国の聴覚障害者及び関係者に「字幕と手話」を付与して放送するなど、有効に利用できました。
厚生労働省はその意義を認め、「目で聴くテレビ」放送の受信装置である「アイ・ドラゴンII」を「聴覚障害者用情報受信装置」として、身体障害者日常生活用具に認定していただきました。それにより聴覚障害者は無料または一部負担金で容易に入手できるようになり、「目で聴くテレビ」を視聴できるようになりました。
2 私たちの放送は、全国および国際的なネットワーク
一方、全国各地には身体障害者福祉法に基づき設置された聴覚障害者情報提供施設があります。最終的には全都道府県、全政令指定都市での設置が期待されていますが、今は全国で
聴覚障害者情報提供施設は、手話通訳・要約筆記者の派遣及び養成、聴覚障害者にかかわる生活相談、支援、さらに「字幕と手話」を付与したテレビ番組の制作をおこなっています。それらの作品は、最初はビデオとして聴覚障害者に貸し出されることもありましたが、最近は「目で聴くテレビ」に提供されるようになりました。その結果、聴覚障害者はいちいち聴覚障害者情報提供施設に出向かなくても、自宅の「目で聴くテレビ」で、それらの作品を視聴できるようになってきています。
また、統一機構はイギリス、スペイン、フィンランドなどの聴覚障害者向けの放送局と交流しています。国外の聴覚障害者放送局、正確には聴覚障害者を主体として健聴者が協力するテレビ放送局、それは統一機構も同じですが、これらの外国の放送局と日本が違うのは、外国の放送局は政府、もしくは自治体の補助金によって運営され、その制作する番組は全て「字幕と手話」が付与され、独自回線もしくは一般回線を通じて放送されていることです。そこでそれらの作品とこちらの作品を交換して、日本では日本語、日本手話による「字幕と手話」を付与して「目で聴くテレビ」で放送することもあります。一昨年は、イギリスBBCの聴覚障害者向け人気番組「See Hear」を、昨年からはスペインの聴覚障害者放送局「テレシグノ」の番組を放送しています。
さらに、私たちは聴覚障害者に限らず、全ての国の障害者と国際的な交流があり、各国の障害者からそれぞれが制作した
デジタル時代を迎えた今、それに対応できるようにシステム全体の見直しを行うことが急務として私たちの目の前にあります。
3 緊急災害情報保障
冒頭に述べたように、統一機構の設立の動機は大震災でした。それゆえ、私たちは緊急災害情報保障を重視しています。
それゆえ、2003年から継続して独立行政法人福祉医療機構(以下、福祉機構)から助成金を受けて、厚生労働省、総務省、
4 今後の課題
テレビ放送を視聴するためには、聴覚障害者は音声がきこえないがゆえに「字幕と手話」が必要であり、視覚障害者はテレビ画像が見えないがゆえに「解説放送」が必要です。私たちは聴覚障害者ですから、これまで「手話と字幕」にだけ関心がありましたが、聴覚障害者緊急災害情報保障調査・訓練事業の過程で、少数の障害者が別個に、ばらばらに対策を立てることは効率的でない、「手話と字幕」「解説放送」を統一した放送方式を確立してはどうか、という関係者の助言もあり、今、統一機構は日本盲人会連合と協力して「解説放送」の開発について福祉医療機構の助成を得て調査・研究事業を実施しています。
「手話と字幕」「解説放送」を保障したテレビで聴覚障害者と視覚障害者に対応できれば、情報障害者を対象とした情報保障は基本的に解決するものです。
緊急災害発生の時点で障害者を特定した情報保障は、
統一機構は、さる
以上