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資料8−3−B



公共分野におけるアクセシビリティの確保に関する研究会 報告書(案)
誰でも使える地方公共団体ホームページの実現に向けて 第2部


公共分野におけるアクセシビリティの確保に関する研究会
報告書(案)
 誰でも使える地方公共団体ホームページの実現に向けて

(77ページ)
第2部
「みんなの公共サイト運用モデル」の策定

(79ページ)
1.ウェブアクセシビリティ維持・向上の取組の全体像

1−1 モデル構築の基本的な視点

 「みんなの公共サイト運用モデル」は、第1部でまとめた地方公共団体におけるアクセシビリティ配慮の現状と課題を踏まえ、できるだけ多くの地方公共団体で活用できるよう策定するものであり、その実践のために必要となる手順書とワークシート類を含んでいる。地方公共団体で実際にウェブアクセシビリティ維持・向上のための業務を行おうとする場合は、「みんなの公共サイト運用モデル」を下敷きとして、それぞれの地方公共団体の実務に合致したものとすることが望ましい。
 「みんなの公共サイト運用モデル」の検討、策定にあたっては、特に以下の点を考慮して内容の具体化を図った。

(1)JIS X 8341-3をベースとし、内容の整合性を確保する
  工業標準化法第67条には「国及び地方公共団体は、買入れる鉱工業製品に関する仕様を定めるとき日本工業規格を尊重しなければならない」とあり、公共ホームページ等の調達においてはJIS X 8341-3の内容を十分に踏まえる必要がある。また、公共ホームページ等においてはウェブページの追加・更新等も頻繁に行われることから、アクセシビリティ確保のためには調達だけでなく、日常的な運用の際にも十分な配慮が求められる。
 「みんなの公共サイト運用モデル」では、公共ホームページ等の調達等におけるウェブアクセシビリティの維持・向上のための具体的な検討項目を提示するが、それらの内容はJIS X 8341-3が求める要件と整合がとれたものとすることを心がけた。

(2)組織的かつ継続的なウェブアクセシビリティ維持・向上の取組モデルとする
 第1部のアンケート調査結果を見ると、地方公共団体におけるウェブアクセシビリティ維持・向上の取組は大規模地方公共団体を中心に広がりつつあるものの、ホームページ・リニューアル等に伴う一過性の取組に止まるケースが多いと考えられる。一方、JIS X 8341-3では、第6章「情報アクセシビリティの確保・向上に関する全般的要件」を設けて、企画・制作・保守・運用・検証というホームページ等のライフサイクル全体でのアクセシビリティ配慮を求めている。
  「みんなの公共サイト運用モデル」は、その名称からもわかるとおり、ウェブアクセシビリティ維持・向上の取組を個々のホームページ等の調達に限った一過性のものと捉えず、ホームページ等のライフサイクル全体を通じて継続的な改善を図る、ウェブアクセシビリティに関する組織的かつ継続的な品質管理・改善プログラムとして整理した。

(3)JIS X 8341-3との整合をとりつつ、できるだけ平易な表現、内容とする
  第1部の調査結果からも明らかなように、地方公共団体のホームページ等の運用の特徴は、多くの場合、専門的な知識を持たない職員が担当していることである。また、定期的な人事異動により、担当職員が知識を有したとしてもそれが引き継がれず、蓄積されにくい。
  「みんなの公共サイト運用モデル」は、こうした地方公共団体のホームページ等の運用の実情を踏まえ、JIS X 8341-3との整合確保に支障ない範囲で、ウェブアクセシビリティに関する専門的な知識を持たない地方公共団体職員でも理解できる平易な表現、内容を目指した。また、専門知識を持つ担当職員の有無等、各地方公共団体の実情に合わせて取組を進められるよう、検討項目のレベル分けを導入した。

(4)職員だけでなく利用者や制作業者の参加を重視した運用モデルとする
  ウェブアクセシビリティ維持・向上の取組を適切に実施するには、ホームページ制作に関する技術の知識とともに、障害者・高齢者ユーザーの利用についての理解が不可欠である。このことから、専門業者や利用者の参画により取組を適切に進めることが求められる。
  「みんなの公共サイト運用モデル」は、このようなウェブアクセシビリティ維持・向上の取組の特性を踏まえ、特にホームページ等の調達における制作業者の役割を明確にするとともに、調達プロセスの初期からの利用者参加を想定したモデルとした。

(81ページ)
1−2 「みんなの公共サイト運用モデル」の全体像

 地方公共団体におけるウェブアクセシビリティ維持・向上の取組は、個別のホームページやウェブシステムの調達において実施されるだけでなく、それらの運用を通じて、継続的にウェブアクセシビリティの改善を図るものである必要がある。「みんなの公共サイト運用モデル」の全体の狙いは、ホームページ等のアクセシビリティに関する品質管理プロセスの確立であり、継続的なPDCAサイクルの確立が基本的な形となる。
  地方公共団体では、各部署の職員がホームページの制作や運用に何らかの形で関わっているため、こうした品質管理の取組は全庁的・組織的に進める必要がある。こうした組織全体での品質管理・向上の取組モデルとして広く普及しているものには、ISO9000シリーズやISO14000シリーズがあり、参考になると考えられる。
  以上の考え方に基づき、ウェブアクセシビリティ維持・向上に必要と考えられる取組をPDCAサイクルとして整理すると、次のようなモデルが考えられる。

全体計画、体制整備(PLAN)
  全庁的なウェブアクセシビリティ維持・向上の最初のステップは、ウェブアクセシビリティの所管部署と役割を明確にし、また、ウェブアクセシビリティを維持・向上するための計画と達成目標を設定することである。さらに、具体的なウェブアクセシビリティ維持・向上の取組の業務プロセスの設定も必要となるが、これについては、この「みんなの公共サイト運用モデル」の手順書及びワークシート類を活用して設定することができる。

P-1 基本方針の策定:ウェブアクセシビリティ維持・向上に向けた、全庁的な方針を提示し、庁内に周知を図るとともに、対外的にも入手可能とする。
P-2 実施体制整備:全庁及び各部署での取組体制を整備する。
P-3 対象範囲の把握:ウェブアクセシビリティの配慮が必要となるコンテンツや業務を把握する。
P-4 目標・実施計画の策定:対象となるコンテンツや業務について、ウェブアクセシビリティの達成目標を定め、具体的な実施計画を策定する。

計画の実行(DO)
  設定した計画と達成目標をもとに、ホームページ等の調達や日常の運用の実施手順を進める。実施にあたっては、担当職員が実施手順の内容や必要な基礎知識・専門知識を習得するための研修、アクセシビリティ確保を容易にする各種ツールやリソースの導入等、様々な取組を並行して進めることになる。

D-1 関係者の教育・研修:ウェブアクセシビリティに影響を与える作業を行う職員に、必要な教育・研修等を行う。なお、「ウェブアクセシビリティに影響を与える作業」とは、ホームページに掲載する原稿作成等、幅広い業務が含まれることから、実際にはアクセシビリティ担当部署だけでなく、多くの職員が該当する。
D-2 企画・構築における配慮:提案要求、提案評価、仕様検討、納品検収等における実施手順を実行する
D-3 運用・更新における配慮:日常のページ追加・更新等における実施手順を実行する。また、利用者からの意見の処理手順を明確にしておく。
D-4 基盤、リソース整備:CMSや標準テンプレート、チェックツール等の共通基盤やリソースを整備する

実施成果の検証(CHECK)
  実施したウェブアクセシビリティ維持・向上の取組の効果確認あるいは運用の結果生じるウェブアクセシビリティの低下を把握するため、定期的にウェブアクセシビリティの測定や業務プロセスの実施内容の確認を行う。

C-1 ウェブアクセシビリティの定期評価:ウェブアクセシビリティの評価指標や測定方法を定め、定期的にウェブアクセシビリティの状況と目標達成度をチェックする。
   特に、第三者による定期評価(専門機関による評価、ユーザーによる評価)の導入を検討する。
C-2 業務プロセス等の定期評価:整備した業務プロセスやリソース、研修制度が適切に機能しているかの評価方法を定め、定期的に評価を行う。

プロセスの改善(ACTION)
  CHECKプロセスで実施した評価で得られた問題点の解決に向けた検討や取組を行う。発生している、あるいは把握されている問題の種類により、実施する見直しの範囲や対象、取組のレベルは様々となる。

A-1 全庁レベルでの計画見直し:ウェブアクセシビリティや業務プロセスの定期評価の結果等を踏まえ、基本方針や対象範囲、目標・実施計画、教育・研修その他の要素について必要な見直しを行う。
A-2 業務プロセス、リソースの見直し:整備した業務プロセスやリソースに問題がある場合や目標が見直された場合等には、関係する業務プロセスやリソースの見直しを行う。
図表1−1に、「みんなの公共サイト運用モデル」の全体像を表すPDCAモデルの構造を示す。

図表1−1 「みんなの公共サイト運用モデル」の全体像(PDCAモデル)

(全体像については、上記1−2の説明のとおり。)

(84ページ)
1−3 「みんなの公共サイト運用モデル」の検討テーマと本研究会での検討範囲

 前節で挙げたPDCAサイクルの各要素は、地方公共団体のヒアリングから得たウェブアクセシビリティ維持・向上に見られる課題と対応している。PDCAサイクルを実現しようとするときには、まずその構成要素それぞれを検討し、具体化する必要がある。そこで、PDCAサイクルの構成要素と、調査で明らかになった課題を付き合わせ、地方公共団体で実際に運用可能なPDCAサイクルを構築するために必要な検討テーマを抽出・整理した。
  検討結果を図表1−2〜図表1−4に示す。(PDCAサイクルのうち、ACTIONについては実施内容がPLANと重なるため、個別には示さない)

図表1−2 具体化に向けた検討テーマ(PLAN)

(図表1−2は、4つのPLANについて、P-1からP-4まで、それぞれ「想定検討テーマ」、「抽出した課題」の順にまとめたもの。「想定検討テーマ」は、丸=本研究会で検討・策定、三角=必要性等を検討し提言、点=現状調査での把握の3つに分類した。)

P-1.基本方針の策定
ウェブアクセシビリティ維持・向上に向けた、全庁的な方針を提示し、庁内に周知を図るとともに、対外的にも入手可能とする。
想定検討テーマ:丸=基本方針の要件、モデル案
抽出した課題:アクセシビリティの重要性が職員に浸透していない

P-2.実施体制整備
全庁及び各部署での取組体制を整備する。
想定検討テーマ:丸=取組体制モデル
抽出した課題:所管部署が明確でなく、役割も整理されていない

P-3.対象範囲の把握
ウェブアクセシビリティの配慮が必要となるコンテンツや業務を把握する。
想定検討テーマ1:丸=対象範囲調査票のひな型
抽出した課題:ガイドラインが関連機関のHPには適用されない、ウェブシステムの調達時にアクセシビリティ担当部署との情報共有がなされていない
想定検討テーマ2:点=モバイルサイトの提供状況

P-4.目標・実施計画
対象となるコンテンツや業務について、ウェブアクセシビリティの達成目標を定め、具体的な実施計画を策定する。
想定検討テーマ1:丸=目標設定の枠組みモデル
抽出した課題:提案要求に含むべきアクセシビリティ要求事項が整理されていない
想定検討テーマ2:HP、電子申請システム等の調達・運用手順モデル
抽出した課題:アクセシビリティに配慮した調達・運用業務手順が確立していない

(図表1−2の説明はここまで)

図表1−3 具体化に向けた検討テーマ(DO)

(図表1−3は、4つのDOについて、D-1からD-4まで、それぞれ「想定検討テーマ」、「抽出した課題」の順にまとめたもの。「想定検討テーマ」は、丸=本研究会で検討・策定、三角=必要性等を検討し提言、点=現状調査での把握の3つに分類した。)

D-1.関係者の教育・研修
ウェブアクセシビリティに影響を与える作業を行う職員に必要な教育・研修等を行う。
想定検討テーマ1:三角=職員スキル評価・認定
抽出した課題:職員の異動によってそれまでの知識やノウハウが継承されない
想定検討テーマ2:三角=標準研修プログラム・テキスト
抽出した課題:職員の異動によってそれまでの知識やノウハウが継承されない、アクセシビリティの重要性が職員に浸透していない
想定検討テーマ3:三角=アクセシビリティに関する情報共有の仕組み
抽出した課題:アクセシビリティの重要性が職員に浸透していない

D-2.企画・構築における配慮
提案要求、提案評価、仕様検討、納品検収等における実施手順を実行する。
想定検討テーマ1:丸=各種ワークシート(基本検討シート、対応方針回答シート、詳細検討シート、実施内容確認シート)
抽出した課題:提案要求に含むべきアクセシビリティ要求事項が整理されていない、受注業者のアクセシビリティ対応能力の確認手段がない、アクセシビリティに配慮した調達・運用業務手順が確立していない、制作方法やアクセシビリティ配慮が担当職員の力量や経験に依存し統一していない
想定検討テーマ2:三角=業者等のスキル評価・認定
抽出した課題:受注業者のアクセシビリティ対応能力の確認手段がない
想定検討テーマ3:丸=障害者・高齢者によるアクセシビリティ評価手法
抽出した課題:アクセシビリティに配慮した調達・運用業務手順が確立していない

D-3.運用・更新における配慮
日常のページ追加・更新等における実施手順を実行する。また、利用者からの意見の処理手順を明確にしておく。
想定検討テーマ1:丸=障害者・高齢者によるアクセシビリティ評価手法
抽出した課題:アクセシビリティに配慮した調達・運用業務手順が確立していない
想定検討テーマ2:丸=簡易アクセシビリティ確認手法
抽出した課題:制作方法やアクセシビリティ配慮が担当職員の力量や経験に依存し統一していない
想定検討テーマ3:丸=外部意見処理手順モデル
抽出した課題:制作方法やアクセシビリティ配慮が担当職員の力量や経験に依存し統一していない

D-4.基盤、リソース整備
CMSや標準テンプレート、チェックツール等の共通基盤やリソースを整備する。
想定検討テーマ1:点=チェックツール、CMSの導入状況
抽出した課題:制作方法やアクセシビリティ配慮が担当職員の力量や経験に依存し統一していない
想定検討テーマ2:三角=必要な共通基盤・リソース
抽出した課題:制作方法やアクセシビリティ配慮が担当職員の力量や経験に依存し統一していない

(図表1−3の説明はここまで)

図表1−4 具体化に向けた検討テーマ(CHECK)

(図表1−4は、CHECKのC-1、C-2について、それぞれ「想定検討テーマ」、「抽出した課題」の順にまとめたもの。「想定検討テーマ」は、丸=本研究会で検討・策定、三角=必要性等を検討し提言、点=現状調査での把握の3つに分類した。)

C-1.ウェブアクセシビリティの定期評価
ウェブアクセシビリティの評価指標や測定方法を定め、定期的にウェブアクセシビリティの状況と目標達成度をチェックする。特に、以下の第三者による定期評価の導入を検討する。
   ・専門機関による評価
   ・ユーザーによる評価
想定検討テーマ1:三角=アクセシビリティ定期評価の実施モデル(内部評価・第三者評価)
抽出した課題:サイト公開後の品質管理プロセスについてはあまり検討されていない
想定検討テーマ2:点=定期評価の実施状況
抽出した課題:障害者・高齢者を含む第三者評価については検討や対応が進んでいない
想定検討テーマ3:丸=障害者・高齢者によるアクセシビリティ評価手法
抽出した課題:障害者・高齢者を含む第三者評価については検討や対応が進んでいない
想定検討テーマ4:三角=NPO等専門機関のスキル認定
抽出した課題:第三者評価は有効だが、中小自治体では体制整備が難しい

C-2.業務プロセス等の定期評価
整備した業務プロセスやリソース、研修制度などが適切に機能しているかの評価方法を定め、全庁レベルで定期的に評価を行う。
想定検討テーマ:三角=業務プロセス等の評価手法
抽出した課題:無し

(図表1−4の説明はここまで)

以上のように、「みんなの公共サイト運用モデル」は非常に広範な範囲の取組を含んでいるが、本研究会ではウェブアクセシビリティ維持・向上に直接作用する部分に焦点を当て、内容の具体化を実施した。
  本研究会で設定した検討範囲を図表1−5に示す。

図表1−5 本研究会の検討範囲
●本研究会で策定し、実証評価を行うもの
・HP、ウェブシステム等の調達・運用手順モデル
・アクセシビリティ取組体制のモデル
・各種ワークシート (基本検討シート、詳細検討シート、実施内容確認シート)
・簡易アクセシビリティチェック手法
・利用者(障害者・高齢者)によるアクセシビリティ評価手法

●本研究会で検討し、モデル等の提示を行うもの
・アクセシビリティ基本方針の要件、モデル例
・アクセシビリティ配慮対象の調査票
・アクセシビリティ目標設定の枠組みモデル
・外部からの意見の処理手順モデル

●本研究会で必要性を検討し、提言を行うもの
・JISに関する包括的な情報提供(情報提供サイト、担当職員のオンラインコミュニティ等)
・職員向けの標準研修プログラム
・職員のアクセシビリティスキル評価・認定
・外注業者、NPO等のアクセシビリティスキル評価・認定
・必要な共通基盤・リソース(モデルテンプレート等)
・定期評価の実施内容モデル

(87ページ)
2.ウェブアクセシビリティ維持・向上のための事前準備

2−1 基本方針の策定
  地方公共団体は、ウェブアクセシビリティ維持・向上の取組を行うにあたり、まず基本方針を定め公開することが重要である。基本方針は内外に公開することにより、地方公共団体職員、ホームページ利用者の双方にとって、地方公共団体が目指しているホームページ等の方向性や取組姿勢を知るよりどころとなる。
  付録1「基本方針策定ガイド」は、地方公共団体が、ホームページやウェブシステムの制作・運営におけるウェブアクセシビリティ維持・向上に向けた基本的な方針を定める際に、参考となる情報を提供するものである。地方公共団体は、同ガイドを参考に基本方針を定める。また、基本方針は、ホームページ上で公開し、庁内だけでなく一般にも広く周知し、理解を求める。

(87ページ)
2−2 取組体制の考え方
  ウェブアクセシビリティは、ホームページ等の品質に関わるテーマであり、地方公共団体においてはウェブアクセシビリティの維持・向上をホームページ等の運営・管理業務のひとつとして位置づけ、担当部署(以後「アクセシビリティ担当部署」と呼ぶ)を明確に決定した上で、全庁的に業務を推進することが重要である。
  アクセシビリティ担当部署は、ウェブアクセシビリティ維持・向上を図るため、前章で示したPDCAサイクルを実施する。具体的な実施手順については、アクセシビリティ担当部署の職員が中心となって実施するが、アクセシビリティ担当部署だけで実施できるものではなく、関係する各部署との協力体制を作ることが重要である。この体制を構築するために示したのが付録2「取組体制構築ガイド」である。
  例えば、ウェブアクセシビリティ維持・向上のための企画・準備段階(PLANの段階)では、ウェブサーバーの管理を行う情報システム部門等の部署と、ホームページの全体管理を行うホームページ担当部署の協力が不可欠であるが、地方公共団体の職制、事務分掌によってアクセシビリティ担当部署は、このどちらかの部署が兼ねる場合が多いと考えられる。
  また、ホームページのリニューアルや更新・運用の段階(DOの段階)では、ホームページで情報提供を行う各部署の協力が必要になる。この段階ではウェブアクセシビリティ維持・向上はアクセシビリティ担当部署を中心に、全庁的な取組として進めることが必要になる。
  また、取組体制は庁内だけでなく、外部の関係者も含めて整備することが求められる。想定される関係者は、ホームページの制作やウェブシステムの開発を受注する制作業者と、障害者・高齢者を含むホームページ利用者(外部モニター)である。制作業者は、各コンテンツや機能の制作・開発にあたってアクセシビリティ担当部署と十分に連携をとって必要な配慮を行う。障害者・高齢者を含む外部モニターは、ウェブアクセシビリティ維持・向上の取組の各段階で参加し、必要な情報や意見をアクセシビリティ担当部署へ提供し、ホームページ等のアクセシビリティ評価を行う。このように、ウェブアクセシビリティ維持・向上の取組は、横断的な協力体制を作って進める必要がある。

(88ページ)
2−3 ウェブアクセシビリティに影響を与える対象の調査
  ウェブアクセシビリティに影響を与える対象は、地方公共団体が提供するホームページ、ウェブシステム全般に及ぶ。
  地方公共団体のホームページでは、定型的な行政情報の提供とは別に、個別のテーマを扱うものや、期間限定の情報を扱うものなど、いわゆる「サイト内サイト」が複数存在し、それぞれ別の担当部署により管理されているケースも多い。また、施設予約や申請書ダウンロード等、様々なウェブシステムが目的に応じて開発・提供されることも増えている。
  ホームページの利用者にとっては、庁内における担当の厳密な違いはあまり重要な問題でなく、このようなサイト内サイトやウェブシステムも含め、その地方公共団体ホームページの提供サービスであると一律に認識し利用していることが多い。地方公共団体においては、提供する様々な情報やサービスを利用者が安心して利用できるよう、ウェブアクセシビリティに影響を与える対象を幅広く設定するよう努力しなければならない。
  ウェブアクセシビリティに影響を与えるコンテンツや業務を把握するためには、付録3a)「対象調査票(例)」を参考に定期的な調査を行う。

(88ページ)
2−4 目標・実施計画の設定
  地方公共団体において、対応の具体的な目標や計画が設定され、その進捗や成果を適宜把握することは、ウェブアクセシビリティ維持・向上を図る上で重要である。
  付録3「目標・実施計画設定ガイド」は、地方公共団体がウェブアクセシビリティ維持・向上の取組の目標や計画を検討する際に、参考となる情報を提供するものである。
  地方公共団体は、このガイドを参考に、ウェブアクセシビリティに影響を与えるコンテンツや業務について、それぞれ個別に達成すべき目標、到達スケジュール等をできるだけ具体的に設定する。また、定期的にウェブアクセシビリティ確保状況をチェックする際に、設定した目標・計画を指標として達成度の定期評価を行い、定期評価の結果、必要に応じて目標・実施計画の見直しを行う。

(90ページ)
3.ウェブアクセシビリティ維持・向上の取組の実施

3−1 ホームページ・リニューアル等の実施手順

前章で設定した目標・実施計画に従って、実際にウェブアクセシビリティが確保されたホームページやウェブシステムを構築するために、調達の手順、日常的なウェブページの追加・更新の手順を策定した。各手順の詳細については、付録4「ホームページ・リニューアル等実施手順」で図示しているが、概要は次のとおりである。

(1)ホームページ等の調達の実施手順
  地方公共団体のホームページやウェブシステムを新規に構築、又はリニューアルする際には、外部委託で行われる場合が想定される。しかし、現状では発注担当者と制作業者の双方の理解が十分でないため、従来の手順で外部委託した場合、ウェブアクセシビリティが十分確保されていないホームページやウェブシステムができあがってしまうことがある。そこで本研究会では、調達の実施手順を示した。「ホームページ・リニューアル等実施手順」では、発注者である地方公共団体と受注業者が、調達のどの段階でどのような検討・対応を行うかを説明している。

1)ホームページ・リニューアル(提案コンペ方式)での実施手順
  提案コンペ方式によりリニューアル業務を委託する業者を選定する際に、受注希望業者に対してウェブアクセシビリティ対応の提案を求める。ウェブアクセシビリティ対応の詳細な方法については受注業者決定後に検討を行う。
  ホームページ全体の検収の前に、ウェブページのひな型となるテンプレートが作成された時点でウェブアクセシビリティの評価を行う。

2)ホームページ・リニューアル(競争入札方式)での実施手順
  競争入札方式では、受注業者が決定した後に、受注業者とウェブアクセシビリティ対応についての詳細検討を行う。この後の手順(テンプレート段階、最終的な検収段階の2回の評価等)は、提案コンペ方式の手順と同じである。

3)ウェブシステム調達での実施手順
  ウェブアクセシビリティの維持・向上はホームページだけでなく、HTML等の技術で作られるウェブシステムでも必要である。検索や予約といった様々な目的を達成するために開発されるウェブシステムでは、一般にホームページよりも多様な情報提供手段が用いられたり、利用者の情報入力や操作が複雑だったりすることが多く、ホームページと同様かそれ以上のウェブアクセシビリティに対する配慮が求められる。しかし現状では、ウェブアクセシビリティが考慮されずに開発され提供されることが多いのが現状である。地方公共団体が新規にウェブシステムを調達する場合には、この実施手順に基づき、受注業者ができる限りのウェブアクセシビリティ対応を行うよう求めなければならない。
  業者選定が提案コンペ方式の場合はホームページ・リニューアル(提案コンペ方式)と同様の手順で受注希望業者に対してウェブアクセシビリティ対応の提案を求める。表示画面のHTMLサンプルの制作時、プロトタイプ(注15)の表示画面制作時、最終的な検収時の3段階でウェブアクセシビリティの評価を行う。

(2)ウェブページ追加・更新の実施手順
  ホームページのウェブアクセシビリティを維持するためには、日常的なウェブページの追加・更新においても、実施手順を明確にし、実践する必要がある。特に、多くの担当者がウェブページの追加・更新に携わっている地方公共団体では、関わるすべての担当者が実施可能な手順を確立しなければならない。本研究会においては、公開前に行うべき対応、公開後に行うべき対応を「ウェブページの追加・更新」の手順として示した。

(脚注)
15.プログラムの試作版やハードウェアの試作機のこと。製品開発を進める上で、基本的な設計に問題がないかどうかをチェックするために作成する。

(92ページ)
3−2 ウェブアクセシビリティの維持・向上のためのワークシート

 「ホームページ・リニューアル等実施手順」では、地方公共団体が定めた基本方針に基づいて、最初にウェブアクセシビリティの達成目標を設定し、次にその目標に応じた対応を行うという段階を踏み、ウェブアクセシビリティの維持・向上を図っていく。
  本研究会では、地方公共団体がウェブアクセシビリティ対応のレベルの設定や、具体的な対応方法の決定を行うための4つのワークシート(「基本検討シート」、「対応方針回答シート」、「詳細検討シート」、「実施内容確認シート」)を策定した。これらのワークシートは、ホームページやウェブシステムの調達にあたって、発注者である地方公共団体と、受注又は提案を行う制作業者との間で必要な情報をやりとりし、段階的にウェブアクセシビリティの要件を検討できるように設計した。これらのワークシートの検討結果は、制作業者向けの調達仕様になるだけでなく、ホームページの運用段階で職員が用いるガイドラインを作成する際の基本情報となる。
  ホームページ等の調達やウェブページの追加・更新の際にどの段階で、誰がこれらのシートを使用するかについては、付録4「ホームページ・リニューアル等実施手順」で解説している。また、各ワークシート本体と使用方法等の詳細な説明も、付録4a)〜d)で示しているが、以下に概略を述べる。

(92ページ)
3−2−1 基本検討シート

(1)位置づけと目的
  ホームページ等の調達の際に、受注業者へウェブアクセシビリティ対応を求めるためには、その方針を調達の仕様としてできるだけ明確に示すことが重要である。現状では、仕様においてウェブアクセシビリティ対応を求めていなかったり、記述内容があいまいであることが多い。
  「基本検討シート」は、ホームページ等の調達の際に使用するワークシートである。地方公共団体はこのシートを活用し、自らの対応方針を決め、提案コンペや入札の説明の際に仕様として受注希望業者に示す。地方公共団体が対応方針を示すことにより、受注希望業者はホームページ等の制作にあたって必要となるウェブアクセシビリティ対応と地方公共団体が求めるレベルを知ることができ、確実な対応が進められる。
  この「基本検討シート」を活用して定められた対応方針は、ホームページ作成ガイドライン等にアクセシビリティ対応を盛り込む際に参考とする。

(2)使用するにあたって必要な知識等
  「基本検討シート」は、地方公共団体の職員が使用することを前提とした。「基本検討シート」に記述されている対応方針を理解するためには、「ウェブアクセシビリティの考え方」、「配慮のあるホームページ制作方法」についての基礎知識が必要である。下記ホームページ、HTML等関連情報に関する書籍やホームページ等を事前に参照した上で使用することが望ましい。

 *みんなのウェブ(http://www2.nict.go.jp/ts/barrierfree/accessibility/
  *みんなが使えるホームページの作り方
  (http://www2.nict.go.jp/ts/barrierfree/accessibility/minna/

(3)シートの構成
  検討項目を「レベル1(最低限の対応)」「レベル2」の2つに分け、各項目について、検討が必要な背景の「説明」とともにウェブアクセシビリティの「対応方針」を示した。一部の項目については、「選択のヒントと注意」を参考に、地方公共団体で「対応方針」を選択することとしている。

(4)使用の際の注意点
  調達の手順に沿って使用する場合、基本検討の段階で地方公共団体ではどうしても判断のつかない項目があることが想定される。その場合は当該項目の判断を保留し、受注業者決定後の詳細検討で方針を検討することとしている。提案コンペや入札の説明の際には、保留の項目については複数の方針を併記して示し、受注業者と協議の上いずれかに決定する旨を説明する必要がある。

(93ページ)
3−2−2 対応方針回答シート

(1)位置づけと目的
  提案コンペ方式により受注業者を選定する場合は、ウェブアクセシビリティへの対応方針も含め審査を行うことが求められる。
  「対応方針回答シート」は、ホームページ・リニューアルやウェブシステム調達において、提案コンペ方式により受注業者を選定する際に、提案コンペに参加する受注希望業者がウェブアクセシビリティの具体的な対応方針を提案するために使用するワークシートである。
  提案コンペに参加する業者は、提示された各項目について、提案する具体的な対応方針を記入して、提案資料のひとつとして地方公共団体に提出する。地方公共団体は提出された「対応方針回答シート」をその他のリニューアルやウェブシステム構築に係る提案と併せて審査して業者選定を行うことで、ウェブアクセシビリティが確保されたホームページやウェブシステムの構築が可能となる。

(2)シートの構成
  基本検討シートに準じた構成とし、レベル1、レベル2の区分と各項目の番号・順番は基本検討シートと同様とした。基本検討で地方公共団体が決定した対応方針に対して、提案コンペに参加する受注希望業者が「実施する対応の概要」欄や必要に応じて「参考資料」欄を記入する。

(3)使用にあたっての注意
  提案コンペの受注希望業者は、本シートで地方公共団体により示された「対応方針」と異なる対応を提案する場合には、「実施する対応の概要」欄に実施する対応の概要と併せてその理由も必ず記述する必要がある。

(94ページ)
3−2−3 詳細検討シート

(1)位置づけと目的
  ホームページやウェブシステムのアクセシビリティを確保するためには、様々な細かい制作ルールや技術的な対応方針、そのホームページ等の固有の要素への対応方針を定めることが必要である。調達においては、これらのルールや方針を、実際の制作に入る前に検討し、できる限り明確にしておくことが重要である。ルールや方針をあいまいにせず、細かく規定しておくことで、業者の到達目標が明確となり、検収において確認されるべき点も明確となる。
  「詳細検討シート」は、ウェブアクセシビリティ対応を具体的にどのように行うかを検討するためのワークシートである。
  ホームページ・リニューアルやウェブシステムの調達において、「基本検討シート」を活用し対応方針を決定した後、具体的な対応方法を決める際に使用する。
  また、「詳細検討シート」での検討結果は、ホームページ作成ガイドライン等にウェブアクセシビリティ対応を盛り込む際に参考とする。

(2)使用するにあたって必要な知識等
  ウェブアクセシビリティ対応のためには、制作技術に関わる問題と、地方公共団体の内部の運用体制等に関わる問題が、複雑に絡み合っている。
  制作技術に関わる問題の検討は、HTML及びウェブアクセシビリティに関する全般的な知識を必要とする。そのため、このシートを用いた検討は、必要な知識を有している受注業者が主導することを想定している。また、検討の際には、以下の資料等を参照した上で行うことが望ましい。特にJIS X 8341-3や技術解説については、必要に応じて参照することが求められる。

  *みんなのウェブ(http://www2.nict.go.jp/ts/barrierfree/accessibility/
  *みんなが使えるホームページの作り方
  (http://www2.nict.go.jp/ts/barrierfree/accessibility/minna/
  *JIS X 8341-3:2004「高齢者・障害者等配慮設計指針 − 情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス − 第3部:ウェブコンテンツ」
  (http://www.jisc.go.jp
  *JIS X 8341-3:2004「高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス− 第3部:ウェブコンテンツ」技術解説
  (http://www.jsa.or.jp/domestic/instac/index.htm

(3)シートの構成
  「基本検討シート」に準じた構成とし、各項目に必要な検討内容と具体的な対応方法の例や選択肢を示した。なお、「基本検討シート」を使用した検討によって、詳細検討が不要となった検討項目は省いて使用する。
  また、背景となる問題や詳しい技術等は、JIS X 8341-3の技術解説を参照することとした。

(4)使用にあたっての注意点
  このシートにしたがって対応方法を決定した後、「テンプレート制作」、「ページ制作」の段階で決定した対応方法と異なる方法で制作する必要が生じた場合は、対応方法の見直しを行う必要がある。

(96ページ)
3−2−4 実施内容確認シート

(1)位置づけと目的
  調達においては、ウェブアクセシビリティの配慮が当初設定した方針どおりになされているかどうかを、地方公共団体が確認の上で検収しなければならない。
  「実施内容確認シート」は、外部委託によるホームページ・リニューアルやウェブシステム調達の際、実施されたウェブアクセシビリティ対応の内容を地方公共団体が確認するために使用するワークシートである。
  ホームページ・リニューアルやウェブシステム調達の受注業者は、実施したウェブアクセシビリティ対応の概要を記入して、地方公共団体に報告する。地方公共団体は提出された「実施内容確認シート」を参照しながら、納入されたホームページ等を評価、検収する。
  また、「実施内容確認シート」での回答は、ホームページ作成ガイドライン等にアクセシビリティ対応を盛り込む際に参考とする。

(2)シートの構成
  「基本検討シート」、「詳細検討シート」に準じた構成とし、レベル1、レベル2の区分と各項目の番号・順番は各検討シートと同様とした。「基本検討シート」で地方公共団体が示した対応方針の各項目について、「詳細検討シート」により対応方法を検討・決定した内容と制作の際の実施状況を、受注業者が記入する。

(3)使用にあたっての注意
  受注業者が作成する際には、詳細検討シートで決定した対応方法と異なる方法で制作した場合には、必ず「対応内容の説明」欄に変更内容とその理由を記述する必要がある。

(97ページ)
4.ウェブアクセシビリティ対応状況の確認

4−1 簡易点検ガイド

(1)位置づけと目的
  障害者・高齢者ユーザーが利用しやすいホームページ等を提供するために、地方公共団体は、ホームページ等の企画・制作・運用の各段階でウェブアクセシビリティの対応状況を確認することが重要である。
  ウェブページ制作の際は、公開前に文法チェッカー、ウェブアクセシビリティ専用チェックツール、画面読み上げソフト等や配色のシミュレーションソフト等のツールを用いて、各ウェブページにウェブアクセシビリティ上の問題がないかを点検し、必要に応じた修正を行うことが重要である。
  しかし、地方公共団体においてツールを用いた点検は、ツール購入予算の有無、パソコンへのツールのインストールの可否、ツールを使いこなす技術の有無等の観点から実現が難しいことがある。簡易点検ガイドは、地方公共団体の職員がツールを用いずに手軽に点検できる手段を示したものである。

(2)使用にあたって必要な知識等
  簡易点検ガイドにより見つかった問題箇所の修正は、「詳細検討シート」に記載された作成方法や対処策の例、「JIS X 8341-3 技術解説」等を参照しながら行う。

 *JIS X 8341-3:2004「高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス− 第3部:ウェブコンテンツ」技術解説
  (http://www.jsa.or.jp/domestic/instac/index.htm

(3)シートの構成
  「基本検討シート」のレベル1、レベル2の検討項目のうち、ツールを用いずに点検できる方法を示した。各点検項目には「詳細検討シート」の該当番号を表した【詳細検討シート対応項目番号】を付記した。
  また、参考として、ツールを使った点検方法や、無償で提供されているツールの情報収集に役立つサイトを示した。
  なお、ウェブアクセシビリティ上の問題箇所の修正に活かすために、点検結果やその対応結果を記録するものとして、別途「簡易点検結果記入シート」を用意した。

(4)使用の際の注意点
  ツールを用いずに点検できる項目は一部であるため、可能な限り、ツールを使った点検にも取り組むことが望ましい。

(98ページ)
4−2 障害者・高齢者による評価手順

(1)位置づけと目的
  障害者・高齢者に利用しやすいホームページ等を提供するために、障害者・高齢者ユーザーにホームページ等を実際に閲覧・操作してもらうことによって、チェックシートやチェックツールではわからなかった問題点を把握し、ウェブアクセシビリティ維持・向上に役立てることが重要である。
  「障害者・高齢者による評価手順」は、専門家や専門の器材・設備に頼ることなく、利用者自身の利用環境を活用して、地方公共団体のアクセシビリティ担当職員自らが簡易にユーザー評価を準備・実施し、ウェブアクセシビリティ向上に役立てることのできる方法を示したものである。

(2)シートの構成
  地方公共団体の職員がユーザー評価を実施できるように、実施の概要だけでなく、操作課題の例やメールアンケートの文例等、具体例を示した。

(3)使用の際の注意点
  多様な利用者の特性や利用環境を理解し、ウェブアクセシビリティ維持・向上の必要性を認識するために、アクセシビリティ担当部署職員は、本手順に従い、必ず(最低1回以上は)利用者の評価現場に立ち会う経験が必要である。

(98ページ)
4−3 外部からの意見の処理手順

(1)位置づけと目的
  JIS X 8341-3の第6章「6.4 フィードバックに関する要件」では、利用者の意見を収集する窓口を用意し、利用者からの意見をウェブアクセシビリティの維持・向上に活かすことが求められている。地方公共団体のホームページ等においても、日常的に利用者の意見を募集し、それらに対応することが求められる。
  「外部からの意見の処理手順」は、利用者からの問い合わせや意見をウェブアクセシビリティの維持・向上に活かすための手順を示したものである。

(2)使用の際の注意点
  既に多くの地方公共団体のホームページには、利用者からの問い合わせや意見を受け付ける何らかの窓口が用意され、寄せられた多種多様な問い合わせや意見が、内容に応じて各担当部署に振り分けられているものと思われる。
  アクセシビリティ担当部署は、外部からの意見の処理手順を参考に、既存の問い合わせ窓口や体制を活用しつつ、利用者の意見の中からウェブアクセシビリティに関する要件を整理し、対応の優先順位づけを行い、必要に応じた修正や見直しを行うことが求められる。

(100ページ)
5.ホームページ・リニューアル等実施手順の効果

5−1 実証評価の概要

 「ホームページ・リニューアル等実施手順」と関連するワークシート類の有用性を検証するため、平成17年7月から9月にかけて、熊本県、高知県土佐清水市、東京都世田谷区の3つの地方公共団体において実証評価を実施した。

  実証評価では、研究会で検討中のワークシート類を用いて、実際にホームページのアクセシビリティ検討や評価等を行い、ワークシート類の効果や問題点の確認を実施した。

図表5−1 各地方公共団体での実施概要

(以下、地方公共団体名、試行した手順、検討を実施したアクセシビリティのレベル、対象ホームページの4項目の順に、表の中身を抜き出したものです)

・熊本県
・ホームページ・リニューアル(提案コンペ方式)、*テンプレート評価まで
・レベル2
・熊本県ホームページ内、ユニバーサルデザインのホームページ「UD21 くまもと」

・高知県土佐清水市
・ホームページ・リニューアル(提案コンペ方式)、*テンプレート評価まで
・レベル1
・市公式ホームページ「あったかウェブ土佐清水」全体

・東京都世田谷区
・ウェブページの追加・更新
・レベル2
・世田谷区ホームページ内「世田谷保健所」の一部

(表の中身はここまで)

次に、各地方公共団体での実施内容と経過について述べる。
(101ページ)

5−1−1 熊本県

(1)実施概要
  人口185万人(平成17年9月現在)の大規模地方公共団体であり、早くから「やさしいまちづくり」を目標に、バリアフリーに取り組んできた。平成14年には「くまもとユニバーサルデザイン振興指針」を策定し、県全体でユニバーサルデザインの取組を先進的に進めている。県の公式ホームページ内にも「くまもとユニバーサルデザインネット UD21くまもと」を開設しており、今年度中のリニューアルの実施が決まっている。
  実証評価では、既にウェブアクセシビリティ確保の取組を進めている地方公共団体がリニューアルでウェブアクセシビリティを向上させる場合の検証を行うため、リニューアル後の「UD21くまもと」のホームページが、レベル2のウェブアクセシビリティを確保することを目標に「ホームページ・リニューアル」の手順を試行した。

図表5−2 熊本県 「UD21くまもと」トップページ
http://www.pref.kumamoto.jp/ud/index.html

(2)実施経過
  ホームページ・リニューアル等実施手順「ホームページ・リニューアル(提案コンペ方式)」のプロセスのうち、基本検討からテンプレート評価までを試行した。実施にあたっては、情報企画課が主体となり、広報課、ユニバーサルデザインの主管課である政策調整課とともに実証評価の取組体制を整えた。基本検討の過程においては、既存ホームページの問題点を把握するために「簡易点検ガイド(実証評価時は「簡易点検表」)」を用いて評価した。なお、随意契約のため、今回の実証評価では「対応方針確認シート」による業者選定は実施していない。

 *7月:基本方針の策定(「基本方針策定ガイド」(実証評価時は「基本方針策定について」)を使用)、既存ホームページ評価(「簡易点検ガイド」(実証評価時は「簡易点検表」)を使用)、「基本検討シート」の作成(レベル2まで)
  *8月:契約、詳細検討シート作成(レベル2まで。受注業者が主体となり、熊本県職員と協議の上、作成)、テンプレート制作(受注業者)
  *9月:テンプレート評価(「障害者・高齢者による評価手順」を使用したユーザー評価)

図表5−3 熊本県の実施経過

(以下、実施経過の表について説明)

実施期間としては、7月、8月、9月以降の3つに分かれる。関係者は、総務省、熊本県、受注業者。
総務省による実証評価実施期間は、7月から9月上旬まで。7月1日に熊本県へのオリエンテーション、8月5日及び9月9日に熊本県へのヒアリングを実施。
7月は、熊本県において、「基本検討」として、取組体制構築、基本方針制定、既存サイト評価(簡易点検表、チェックツール)、基本検討シートの作成を行った。
8月は、熊本県と受注業者が契約し、両者で詳細検討シートの打合せを実施し、受注業者が主体となり詳細検討シートを作成する。その後、受注業者がテンプレート制作を行う。
9月以降、熊本県において、テンプレート点検(ユーザーテスト)を実施し、受注業者がテンプレートを修正する。その後、受注業者が対応確認シートを作成し、熊本県が対応確認シートの内容確認を実施。以降、受注業者がページ制作を行い、熊本県が検収として納品ページ点検を行い、公開。

(実施経過の表の説明は以上)

(103ページ)
5−1−2 高知県土佐清水市

(1)実施概要
  人口約18,000人(平成17年10月現在)の小規模の地方公共団体で、企画広報室情報企画係の係長以下3名の職員がホームページ、情報関連事務をすべて担当している。これまで担当職員個人のスキルに頼ってウェブアクセシビリティの配慮を実施してきたものの、明確な方針がなく、ウェブアクセシビリティ確保の取組が進んでいなかった。現行の土佐清水市ホームページは5年間が経過しており、平成18年度に全面リニューアルを計画している。今回の実証評価は、次期ホームページのガイドライン策定を視野に入れながら、最低限対応が必要なレベル1のウェブアクセシビリティ対応を目標として、「ホームページ・リニューアル」の手順を試行した。

図表5−4 土佐清水市ホームページ トップページ
http://www.city.tosashimizu.kochi.jp/

(2)実施経過
  土佐清水市では、リニューアルのための庁内ワーキンググループを設置しており、このワーキンググループで実証評価に取り組んだ。熊本県と同様、この実証評価では「ホームページ・リニューアル(提案コンペ方式)」手順の基本検討から、制作したテンプレート(サンプルページ)の評価までのプロセスを試行した。なお、全面リニューアルにあたり、既に実証評価の実施前に随意契約で業者が決定していたため、「対応方針確認シート」による業者選定は実施していない。

 *7月:基本方針の策定(「基本方針策定ガイド」(実証評価時は「基本方針策定について」)を使用)、既存ホームページ評価、「基本検討シート」の作成(レベル1まで)
  *8月:詳細検討シートを使用した検討(レベル1の項目について、土佐清水市職員と受注業者が協議)、テンプレート及びサンプルページ制作(受注業者)
  *9月:テンプレート(サンプルページ)評価及び既存ホームページ評価(「簡易点検ガイド」(実証評価時は「簡易点検表」)を使用した評価、「障害者・高齢者による評価手順」を使用したユーザー評価)

図表5−5 高知県土佐清水市の実施経過

(以下、実施経過の表について説明)

実施期間としては、7月、8月、9月、10月以降の4つに分かれる。関係者は、総務省、熊本県、受注業者。
総務省による実証評価実施期間は、7月から9月下旬まで。7月7日に土佐清水市へのオリエンテーション、8月5日及び9月16日に土佐清水市からの総務省へのメール報告、9月22日に土佐清水市へのヒアリングを実施。
7月は、土佐清水市と受注業者が契約を行い、土佐清水市において、「基本検討」として、取組体制構築(アクセシビリティ担当部署等決定)、基本方針制定、既存サイト評価、基本検討シートの作成。受注業者は基本検討シートの確認を実施、アクセシビリティに関する勉強、検討を開始する。
8月は、土佐清水市と受注業者で詳細検討シートの検討・協議を行い、その後、受注業者がテンプレート制作を行う。
9月は、受注業者が対応確認シートを作成、土佐清水市が対応確認シートの内容確認を行い、簡易点検、障害者及び高齢者によるユーザーテストを実施。なお、ユーザーテストには受注業者も同席。
10月以降、受注業者がテンプレート修正の上、ページ制作、その後、土佐清水市において検収として納品ページの点検を行い、公開。

(実施経過の表の説明は以上)

(105ページ)
5−1−3 東京都世田谷区

(1)実施概要
  人口81万人の大規模地方公共団体である。世田谷区のホームページは一部にCMS(注16)が導入されているが、今後全面的にCMSを導入してリニューアルすることが決まっている。今回の実証評価は、地方公共団体の職員が日常業務として行う更新作業における実施手順の有用性を検証するため、まだCMSを導入していない部分を対象に実施した。
  対象としたのは世田谷区ホームページの一部である「世田谷保健所」の「トップページ」、「健康危機情報」、「お知らせ」の3ページである。世田谷区でCMSが未導入の部分は、各主管課がそれぞれ独自にウェブページの作成・更新を実施しており、「世田谷保健所」のウェブページは主管課である健康企画課の職員がホームページ作成ソフトを使用して作成している。
  この実証評価では現行の作業手順を踏まえながら、研究会で検討中のワークシート類を使用して、「ウェブページの追加・更新」手順を試行したものである。

図表5−6 世田谷保健所 トップページ(修正更新後)
http://www.city.setagaya.tokyo.jp/topics/hokenjo/index.html

(脚注)
16.Contents Management Systemの略。ウェブページの自動生成、ホームページ全体の管理等を自動的に行うシステム。
(2)実施経過
  実証評価の実施にあたっては情報政策課が中心となり、ホームページ全体を管理する広報広聴課、世田谷保健所の主管課である健康企画課が互いに役割分担を明確にした上で各種ワークシート類を用いた作業を開始した。既存ホームページの問題点を把握するための評価、情報政策課・広報広聴課によるウェブアクセシビリティ検討の後、検討結果を踏まえて、広報広聴課・健康企画課で現行のホームページを修正し、修正後のウェブページを追加する際に使用するテンプレートを作成したものである。さらに、修正後のウェブページを更新する前に、障害者、高齢者によるユーザー評価も実施した。

 *7月:実証評価役割分担の決定、既存ホームページ評価(「簡易点検表」(実証評価時は「簡易点検表」)、チェックツールを使用した評価)、基本方針検討・案の策定(「基本方針策定ガイド」(実証評価時は「基本方針策定について」)を参照し、現行の指針にウェブアクセシビリティ対応を明確にするために追加する内容の案を検討。)、「基本検討シート」、「詳細検討シート」を使用した検討(現行の更新作業で対応可能な項目について対応を決定。)
  *8月:修正ウェブページ作成、公開前の評価(「障害者・高齢者による評価手順」を使用したユーザー評価)

図表5−7 東京都世田谷区の実施経過

(以下、実施経過の表について説明)

実施期間としては、7月、8月、9月の3つに分かれる。関係者は、総務省、世田谷区。
総務省による実証評価実施期間は、7月から9月上旬まで。7月7日に世田谷区へのオリエンテーション、7月28日及び8月31日に世田谷区へのヒアリングを実施。
7月は、「アクセシビリティ検討」として、取組体制構築(アクセシビリティ担当部署等決定)、既存サイト評価(簡易点検表、チェックツール)、基本方針検討・策定、基本検討シート・詳細検討シートを参考にした修正のためのアクセシビリティ検討を実施。
8月は、修正ページを作成、障害者・高齢者によるユーザーテストによる点検を行う。
9月は、点検結果に基づき修正を行い、新しいページに差し替えて、更新(公開)。以降、日々の更新作業として、原稿作成・HTML化・点検・修正・公開の手順で行う。

(実施経過の表の説明は以上)

(107ページ)
5−2 「ホームページ・リニューアル等実施手順」で得られた効果

 「ホームページ・リニューアル等実施手順」を実施したことにより、各実証評価実施団体のホームページのアクセシビリティ上の問題が発見、改善された。熊本県、土佐清水市はテンプレートやサンプルページ段階までの実施であったため効果の最終的な確認には至らなかったが、世田谷区では高齢者によるユーザー評価で修正後のホームページが使いやすくなったことが評価されており、ウェブアクセシビリティの向上が確認できた。さらに各地方公共団体で実施に携わった職員のウェブアクセシビリティへの認識の深まり等の効果が見られた。
  以下、試行した「ホームページ・リニューアル等実施手順」ごとに得られた効果と、実証評価から浮かび上がった今後の課題について述べる。

(107ページ)
5−2−1 「ホームページ・リニューアル」手順の実施による効果

(1)地方公共団体における効果
  リニューアルを行い、誰もが使えるホームページを構築するためには、リニューアルの契約仕様書にウェブアクセシビリティ対応のための業務を盛り込む必要がある。この場合、仕様として何が必要となるのかを職員がホームページ作成方針や予算、その他の様々な状況に応じて判断・決定する必要が生じる。
  調達の際に適切な仕様を作成するためにはウェブアクセシビリティやJIS X 8341-3に関する知識を職員が有することが必要となる。しかしながら、一般行政職で定期的な人事異動によりホームページ等の担当として配属される職員が、HTMLやウェブアクセシビリティに関する専門的知識を有していることは稀であり、また配属後に十分な知識・スキルを習得しても、そのノウハウを異動後に引き継いでいくことは難しい。「ホームページ・リニューアル」手順を実施することで、仕様の中にウェブアクセシビリティ対応を行うことが明確に示され、その具体的な方法については受注業者と協議することができ、目標とするホームページ等が実現しやすくなるといえる。
  仕様書作成段階で有用性が高いというだけでなく、職員のウェブアクセシビリティの認識を高めるという観点からもこの手順は効果的である。今回実証評価を実施した熊本県、土佐清水市で実証評価に携わった職員の多くも、ウェブアクセシビリティの概念は理解しているが、実務上の対応に必要な技術的な知識は有しておらず、本研究会で検討中であった「基本検討シート」「詳細検討シート」の内容を理解するのが困難な状態であった。「基本方針策定ガイド」にも、使われている用語等が難しい、との指摘があった。
  しかし、これらに何が書かれているのかを理解しようと、職員が自ら関連資料を読むなどして勉強しており、基本方針策定や基本検討作業を通して、ウェブアクセシビリティ対応の具体的なイメージを掴むことができた。
  これに対して「簡易点検ガイド」は、実証評価を実施した各地方公共団体で「わかりやすい」という評価であった。ウェブアクセシビリティ上の問題は漠然と画面を見ているだけでは把握できないことが多い。このガイドは、ウェブアクセシビリティを意識していないと気付くことができない問題点を発見でき、職場環境の中で随時行うことができるため、職員にとって有用性が高い。
  また、障害者・高齢者によるユーザー評価については、テンプレート・サンプルページ段階での評価ではあったが、現場に立ち会った職員は、想像していなかった利用者の操作の様子を目の当たりにし、新鮮な驚きを覚えている。
  一連の「ホームページ・リニューアル」手順を実施することにより、新たに構築されるホームページのアクセシビリティが確保されるだけでなく、この手順に携わること自体が職員のウェブアクセシビリティへの認識を深めることに大きな効果を生むと期待される。
  土佐清水市は実証評価実施後の感想として、「この実施手順が示されなければ、ウェブアクセシビリティを確保したリニューアルを行うことは困難だろう」としている。「ホームページ・リニューアル等実施手順」で示されたリニューアルの手順とそれに関連するワークシート類は、特に現在取組が遅れている小規模な地方公共団体にとって、有効な手引きとなると考えられる。

(2)リニューアルの受注業者における効果
  リニューアルの調達の際、発注者である地方公共団体が十分な理解のないまま作成し、ウェブアクセシビリティの対応内容が漠然とした仕様書を業者に示してしまうと、受注業者にとっては、コストの見積りや作業工程に不確定要素が多くなり、業務が進めにくい。「ホームページ・リニューアル」手順の実施により、発注者の求めるウェブアクセシビリティ対応が具体的に示され、制作後にその結果を発注者とともに評価することは、受注業者にとって業務が進めやすくなるというメリットがある。
  熊本県の実証評価においては、レベル2の難度の高い対応を求めたが、受注業者は「詳細検討シート」の内容を理解した上で制作に臨むことができた。レベル1の対応を目標とした土佐清水市においても、「詳細検討シート」をもとに、市と受注業者が十分な協議を行いながらスムーズに作業を進めることができ、実証評価でも効果が認められた。
  制作業者によってはいまだ十分な知識やスキルを有していないケースも想定されるが、今後公共分野のホームページ等の制作に携わる際に必須となることであり、この実施手順を行うことにより、それまでウェブアクセシビリティに対する意識の低かった制作業者のスキルアップも期待できる。
  また、この実施手順を行わず、漠然とした仕様により調達した場合、その成果物は受注業者のウェブアクセシビリティに関する理解度、知識、スキルによってウェブアクセシビリティの確保の度合いが大きく異なってくると考えられる。納品・検収時、あるいはテンプレート段階等の制作の途中でウェブアクセシビリティ上の問題が発見され、その対応を求められたとき、契約変更等が発生することも考えられる。「基本検討シート」「詳細検討シート」では一部に制作の過程で発注者と協議しながら対応を決定する項目があるが、コスト面も含めた十分な発注者との協議を行うことによって、契約後の仕様変更に伴うリスクを減らすことができ、この点についても業者にとって効果があると考えられる。

(3)「ホームページ・リニューアル」手順の効果を高めるための課題
  今回の実証評価では検討作業に伴う受注業者の負担を減らす工夫が今後の課題として挙げられた。土佐清水市での試行では、受注業者が実施手順における検討作業に伴うコストとして、全体コストの5%〜10%を想定したが、これは業者により様々であると考えられる。熊本県からは、特に障害者の方が利用する特殊ソフトウェア等の支援技術について、受注業者がすべての情報を得ることは困難であり、評価のために新たにソフトウェアの導入が必要となれば、業者の負担が増えてしまうため、支援技術や対応方法に関するナレッジデータベースを構築し無償公開するような取組が行えないかとの提案があった。
  また、ユーザー評価について、今回は実証評価という期間が制約された中、テンプレート評価時のみの実施となったが、特にリニューアルの際には基本検討段階で取り入れることが重要である。リニューアルの方向性を定めるには、前提として多様な利用者を理解することが必要であり、方向性が定まったものを後から修正することは困難である。また、土佐清水市では実施後に、「基本検討でユーザー評価を実施していれば、そこで有益な情報が得られ、基本検討での職員の作業の負担も軽くなっただろう」と考えている。基本検討段階、評価段階、それぞれの段階の適時にユーザー評価を実施するよう、特に注意する必要がある。

(110ページ)
5−2−2 「ウェブページの追加・更新」手順の実施による効果

 日々更新されるホームページのアクセシビリティを確保し、それを維持し、さらに向上を図るためには一定のガイドライン等が必要となる。「ウェブページの追加・更新」手順の実施により、各地方公共団体が有している、あるいは今後策定するホームページ作成のガイドライン等でウェブアクセシビリティ対応を明確にし、実効性のあるものにすることができる。
  世田谷区には、「世田谷区ホームページ利用のガイドライン」、「ホームページ作成マニュアル」があり、この中にはウェブアクセシビリティへの対応についても示されている。これらに基づき各課にホームページの作成が任されているが、HTMLの知識・スキルが十分でない各課の職員が、ウェブアクセシビリティ対応に係る項目をすべて理解して実施するのは困難である。今回の実証評価の対象となった「世田谷保健所」のウェブページは、主管課の職員がホームページ作成ソフトを使用して日常のウェブページを作成しているが、マニュアル内で注意が促されているウェブアクセシビリティ上の問題点が含まれている状態であった。
  今回の実証評価では、「簡易点検ガイド」とチェックツールを用いて、現行のホームページの問題点を洗い出したが、この作業で主管課の職員がそれまでウェブページを作成していながら気付いていなかったウェブアクセシビリティ上の問題点を発見することができた。リニューアル手順で実証評価を実施した熊本県・土佐清水市と同様に、「簡易点検ガイド」は予備知識のない職員にも使える手引書として有効であることが確認できた。
  ウェブアクセシビリティ維持・向上のための対応については、「基本検討シート」、「詳細検討シート」を使用して検討した。この検討はHTMLやウェブアクセシビリティについて一定の知識を持った情報政策課と広報広聴課の職員が行い、現行のホームページ作成ソフトを使用した更新手順で可能な範囲に限られたが、検討の結果を踏まえて修正されたウェブページは高齢者によるユーザー評価で好意的な評価を得られた。
  一連の手順の実施によりウェブアクセシビリティの向上効果が得られたことが確認できたが、世田谷区では、特に有意義だったのがユーザー評価であった。操作を見てわかること、設問以外のことでも現場にいて全体的な印象から受けることが、職員のウェブアクセシビリティへの認識を新たにすることとなった。
  今回の実証評価で手順を試行した結果を踏まえ、世田谷区ではこれまで実施していなかったユーザー評価というステップをガイドラインの中に加えていこうと考えている。また、「基本方針策定ガイド」を参考に、指針の中に盛り込むウェブアクセシビリティに関する基本方針の案も策定した。
  リニューアルの手順を試行した熊本県でも、「基本検討シート・詳細検討シートはガイドラインの策定や見直しの際に多くの地方公共団体で参考になるだろう」との感想を述べている。検討結果をもとにガイドラインを整備すれば、リニューアル調達のたびに専門的知識やスキルを要する詳細検討を行う必要もなくなり、ホームページのアクセシビリティを維持することができる。
  なお、「基本検討シート」「詳細検討シート」は、専門的知識が十分でない職員が対応を選択・決定するには難しい内容ではあるが、事前に参照するべき資料等を示したことによって、ガイドライン等の策定のために勉強する際の参考資料として活用できるようにした。また、ホームページの作成・更新を外部委託によって実施している場合には、受注業者へのウェブアクセシビリティ対応の仕様として、「ホームページ・リニューアル」手順と同様に使用できるものである。
  また、ユーザー評価等の一連の手順を職員が経験することでも、「ホームページ・リニューアル」手順を実施した熊本県、土佐清水市と同様に職員の意識改革の面での多大な効果が見られた。今回実証評価を実施した世田谷区はCMSの導入が決定しており、今後他の地方公共団体でもCMSの導入が進むことが考えられるが、適切な画像の代替テキストの設定等、ウェブアクセシビリティの対応は機械的に対応できないものがある。更新作業によりウェブアクセシビリティを低下させず、維持・向上していくためには、「ウェブページの追加・更新」手順の実践が求められる。

(112ページ)
6.今後の取組

6−1 課題と検討の方向性

(1)職員研修プログラム等の充実
  地方公共団体におけるウェブアクセシビリティ配慮の大きな課題のひとつが、人事異動によって担当職員が定期的に入れ替わり、知識や技術の継承が難しいことである。この点を補うには、新任の担当者が必要な知識を短期間に修得できる研修プログラムや教材の充実が求められる。
  現在、地方公共団体職員向けのウェブアクセシビリティに関する研修については、地方公共団体の情報化等に関する研修等を実施している(財)地方自治情報センター(LASDEC)において、既存の研修に取り込むなどの動きが始まっているところである。具体的には、本年度セミナーにおいてウェブアクセシビリティに関する内容が盛り込まれ、また、月刊誌では「Webアクセシビリティ&ユーザビリティ講座」の連載が行われているところであり、今後も積極的なウェブアクセシビリティに関する研修の実施に期待したい。
  将来的には、eラーニングプログラムとしてオンラインで提供するなど、地方公共団体の職員が必要に応じていつでも利用できる環境があればより効果的であろう。
  加えて、ウェブアクセシビリティを担当する職員が最新の技術情報の入手や知識や経験の共有・蓄積が可能となるよう、情報共有の仕組みを用意することも有効であろう。

(2)関係者のウェブアクセシビリティスキル評価手法の整備
  ホームページのリニューアル等では多くの場合、制作を外部業者に発注するが、制作業者のアクセシビリティに関する知識や技術レベルが事前に発注側で把握しにくいという課題がある。この課題に対しては、「みんなの公共サイト運用モデル」における各種ワークシート(基本検討シート、対応方針回答シート、詳細検討シート、実施内容確認シート)を活用することはもちろんだが、それに加えて、制作業者の技術者向けにウェブアクセシビリティに関する認定試験が行われ、ウェブアクセシビリティに関する知識・技術レベルの認定等が実施されることにより、さらに客観的に制作業者のアクセシビリティに関する知識や技術レベルを把握することが可能となるであろう。

(3)共通基盤・リソースの整備
  ウェブアクセシビリティの確保のためには、共通の基盤やリソースが整備されていたほうが、コスト面で、より効率的に対処できることから、将来的にはこのような共通の基盤やリソースが整備されることが望まれる。
  例えば、ホームページ作成の際のひな型(テンプレート)がウェブアクセシビリティの観点から十分に検討し設計されている場合、そのテンプレートを使って作られる実際のウェブページについても、容易にウェブアクセシビリティを維持することが可能となる。大規模で財政的に余力のある地方公共団体では、その地方公共団体独自のテンプレートをホームページ・リニューアルの受注業者に作成させることができるだろうが、中小規模の地方公共団体等も考えると、既成の安価なテンプレートが用意されていたほうが、よりウェブアクセシビリティ対応の敷居が低くなるだろう。

(4)障害者・高齢者を含めたウェブアクセシビリティ評価環境の整備
  ウェブアクセシビリティ対応において、障害者・高齢者の参加を得ることは特に重要だが、適切な障害者・高齢者モニターを見つけることが難しい場合も多い。
  今後は、様々な条件や経験を持つ障害者・高齢者モニターを登録し、障害者・高齢者が地域内の地方公共団体のウェブアクセシビリティの評価に活躍できるような環境が整うことが期待される。

(5)ウェブアクセシビリティや業務プロセスの定期評価手法の検討
  「みんなの公共サイト運用モデル」のPDCAサイクルのうちCHECKプロセスでは、アクセシビリティ定期評価や、ウェブアクセシビリティ維持・向上のための業務プロセスの定期評価を行う必要がある。これに対して、本研究会ではその大枠を検討し本報告書に示した。
  今後、中長期的には、ウェブアクセシビリティに関する適切な指標を設定し自動チェックツール等を用いた効率的な評価手法や、ウェブアクセシビリティ水準を適切に定量化(ベンチマーク)する手法、業務プロセスの評価項目や業務見直し内容の導き方等適切な業務プロセス評価手法等についても検討を進めていくべきであろう。

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6−2 「みんなの公共サイト運用モデル」の普及

 本研究会で実施したアンケート調査でも明らかになったとおり、地方公共団体でのウェブアクセシビリティ維持・向上の取組は、昨年6月のJIS X 8341-3の制定以降、一定の広がりを見せているものの、まだまだ大きな動きにはなっていない。
  本研究会で検討した「みんなの公共サイト運用モデル」は、地方公共団体におけるウェブアクセシビリティ対応の現状と課題を踏まえて、中小の地方公共団体で実践可能なウェブアクセシビリティ維持・向上の取組モデルを示したものであり、「みんなの公共サイト運用モデル」を広く普及させることは、様々な規模の地方公共団体でのウェブアクセシビリティ維持・向上の取組を促進する上で、非常に有益である。
  今後、この「みんなの公共サイト運用モデル」の普及のため、本研究会の成果物を全地方公共団体に送付し、インターネット上でも公開することにより、地方公共団体の担当者が容易に参照できるものとすべきである。加えて、全国各地で地方公共団体の担当者向けセミナー等を開催し、「みんなの公共サイト運用モデル」の利用方法等を紹介するなどして、「みんなの公共サイト運用モデル」の積極的な活用を促すための取組を継続的に実施していくことによって、全国的にウェブアクセシビリティ維持・向上の気運を高めていくことが重要である。
  なお、今回の実証評価において、地方公共団体の担当者は、高齢者や障害者が一体どのようにしてホームページ等を利用しているのか、実際に見たことがなかったが、ユーザー評価によって高齢者や障害者の利用シーンを実際に見ることで、ウェブアクセシビリティ維持・向上の取組の必要性を強く実感することができた。こうしたことを踏まえると、今後の「みんなの公共サイト運用モデル」の普及に向けた取組の過程において、高齢者や障害者の方々が実際にホームページ等を利用しているシーンを映像等で紹介することは、地方公共団体の担当者の意識を大いに高める効果があることが期待できるだろう。

(以上)





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