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第3章 第6節

4 沖縄振興策の推進

アジア・太平洋地域における「情報通信ハブ」の実現

 米軍の施設・区域が沖縄県に集中し、住民の生活環境や地域振興に大きな影響を及ぼしている。こうした現状を踏まえ、沖縄県が地域経済として自立し、雇用を確保することによって、県民生活の向上に資するとともに、沖縄県が我が国経済社会に寄与する地域として発展することが重要な課題となっている。特に、沖縄県はその地理的条件、通信インフラ整備の諸計画等からみて、世界の情報通信ハブとして発展する可能性を有していることから、郵政省では、沖縄をアジア・太平洋地域における情報通信ハブとして形成するため、「沖縄マルチメディア特区構想」を提唱し、情報通信分野における1)情報通信基盤の整備、2)人材の育成・研究開発の推進、3)先進的なアプリケーションの展開、4)情報通信産業の集積、5)情報発信機能の強化を促進するための施策を実施しているところである。
 また、沖縄振興策については、「普天間飛行場の移設に係る政府方針」(11年12月28日閣議決定)に「沖縄県北部地域の振興に関する方針」等が盛り込まれ、12年7月には、九州・沖縄サミットが名護市で開催されるなど、政府としては北部地域の振興策に積極的に取り組んでいく方針が決定されており、郵政省も名護市を中心に様々な情報通信施策を展開している。
 11年度における郵政省の主な沖縄振興施策は以下のとおりである。
1)名護市マルチメディア館の整備
 名護市及び沖縄県北部地域での情報通信関連産業の立地促進、雇用の創出及びマルチメディア分野の人材育成の促進を図るため、情報通信関連企業等が利用できる設備・スペース及びマルチメディアを身近に体験できる研修施設等から構成される「名護市マルチメディア館」を整備し、11年3月に完成した。12年3月現在、NTT104番号案内センタの他7社の情報通信関連企業が入居している。
2)NTT104番号案内センタの移設
 沖縄県の雇用促進に資するため、NTTは、那覇市内に104番号案内センタを設置し、9年10月より業務を開始した。12年3月現在、約500名のオペレータが、一日当たり約10.3万コールを取り扱っている。また、10年5月に、名護市内にも番号案内センタを設置(11年4月に「名護市マルチメディア館」に移設)し、業務を開始している。12年3月現在、約100名のオペレータが、一日当たり約1.7万コールを取り扱っている。
3)北部地域難視聴解消事業
 沖縄本島北部地域の一部においては、放送局から遠く離れていることや地形的条件により、中波ラジオ放送やテレビ放送が良好に視聴できない地域が存在している。このため、10年度から、中波ラジオ放送の中継施設並びにテレビ放送の中継施設及び共同受信施設を設置し、当該地域の難視聴解消を図っているところである。具体的には11年度に、名護市の4か所に中継施設を設置し、テレビ放送の難視聴解消を図り、12年度以降、恩納村に中継施設を設置するとともに、名護市ほか4市町村の難視聴地区において、地元の要望を受けて共同受信施設の設置を行い、テレビ放送難視聴解消を図り、また、名護市及び国頭村の2か所に中継施設を設置し、中波ラジオ放送難聴解消を図ることとしている。
4)沖縄市におけるテレワークセンターの整備
 沖縄市において、テレワークを通じて、地域における新たな就労機会の創出、周辺地元商店街の再活性化、市民の情報リテラシーの向上等を図るため、12年1月、中心市街地の大型施設を改修し、必要な情報通信環境を整備した共同利用型のテレワークセンターを開設した。
5)沖縄情報通信研究開発支援センター北谷町共同利用センターの開設
 通信・放送機構は、通信コスト低減化に資する研究開発を目的に、12年4月、那覇市の沖縄情報通信研究開発支援センターの分室を北谷町に整備・開設する予定である。本センターにおいては、コンテンツ制作を目的とした最先端映像研究開発機材を整備し、研究開発用ギガビットネットワークを活用した高速映像伝送実験等に利用される予定である。
6)沖縄国際情報特区構想
 政府は、沖縄県の振興を推進するため、8年9月に沖縄政策協議会を設置して、沖縄に関連する基本施策に関し協議してきたところであるが、11年6月、沖縄政策協議会は「沖縄経済振興21世紀プラン」中間報告書を公表し、情報通信関連企業等の誘致による沖縄経済の活性化のための環境づくりをねらいとした「沖縄国際情報特区」構想の検討を提言した。郵政省ではこれを受けて、同構想の具体化に向けて、「沖縄国際情報特区構想の推進方策等に関する調査研究会」を11年9月より開催し、情報通信ハブ実現の加速化のための方策、国内、さらに海外からの情報通信関連企業等の誘致を促進するための方策等について検討を行った。12年4月には報告書が取りまとめられ、沖縄国際情報特区構想を具体化するためには、(i)アジア・太平洋地域の情報通信拠点の形成に向けたグローバルなIX(Internet Exchange:インターネットの相互接続点)の形成、(ii)地域情報通信ネットワークの高度化、(iii)国内外の情報通信関連企業、研究機関等の誘致促進・集積・育成、(iv)国内外のコンテンツ、アプリケーションの集積、(v)情報通信技術等に明るい人材の早期・大量育成、についての相乗的かつ重層的に展開されることが不可欠であると提言している。
 今後は、国際的なネットワークを目指す情報通信産業の育成、新規事業の創出支援体制の充実、研究開発と国際交流の促進、人材の育成と雇用の確保等を推進していく。
7)沖縄・高度コンテンツ創造システム開発事業
 通信・放送機構は、11年度より、地方公共団体、民間企業、大学等の協力を得て、沖縄県内の既存施設等をフィールドとして、これまでの通信・放送分野の技術開発成果を活用し、コンテンツ制作の高度化を促進する通信・放送システムの開発に資する研究開発を行うこととしており、先端技術の集積を図り、沖縄県におけるコンテンツ産業集積の呼び水となることが期待される。
8) 「沖縄発インフォメーション・イニシアティブ」の推進
 12年7月に沖縄県でサミット(主要先進国首脳会議)が開催されることを契機に、沖縄の全国、世界に向けた情報発信を支援するという観点から、子どもを主役とするインターネットを活用したイベントとして「沖縄発インフォメーション・イニシアティブ」を企画し、11年11月から、学界及び産業界と一体となって推進している。
 12年4月現在、沖縄と全国、世界の子どもたちが参加し国際交流を深める様々なオンラインイベントを実施又は実施を予定している他(「VOTE プロジェクト(21世紀カウントダウン・メッセージ・リレー)」、「アイランド・クエスト in 沖縄&屋久島」等)、インターネットと子どもたちの関わりをテーマとするシンポジウムの開催等も予定している。

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