1 少子高齢化への対応  平均寿命の伸びや出生率の低下により少子高齢化が急速に進んでいる。 我が国の合計特殊出生率は昭和50(1975)年前後からその低下が始まり、10(1998)年においては過去最低の1.38(図表1))となっている。また、「日本の将来推計人口」(中位推計)によれば、我が国の総人口は17(2005)年をピークに減少を続け(図表2))、27(2015)年には4人に1人が65歳以上となり、我が国はかつてない少子高齢化社会へ突入しようとしている。このままの状態で我が国の少子高齢化が進めば、社会を支える役割を中心的に担う働き手の数は当然少なくなる。この数が減れば、総生産が減り、1人当たりの国民所得(生活水準)を維持することも難しくなってくる。  このように、少子高齢化とこれに伴う経済停滞の克服は、21世紀の大きな課題である。  1人当たりの国民所得を維持するためには、労働生産性を高めていくことが考えられる。労働生産性を高めるためには、付加価値の高い分野に資源を重点的に投入することが重要である。また、企業内部においても、情報化を進めるなどし、労働者1人当たりの資本装備率を高め、さらに、装備された資本を効率的に活用することが重要である。そのためには、生産性の向上に必要な知識や情報を共有するとともに、時には組織内部を柔軟に変革していくことも必要となろう。  次に、労働参加率を高めていくことも考えられる。主要先進国における女性の労働力率を比較すると、我が国の25歳から39歳における女性の労働力率が、他の主要先進国の同じ年齢層と比較して特に低いことがわかる(図表3))。これは、我が国におけるこの年代の多くの女性が、育児・介護等の家族的な責任を中心的に担っているためであると考えられる。したがって、我が国においては、こうした家族的な責任を有する人でも、働く意欲があれば就労することができるようにしていくことが重要である。また、こうした環境づくりは、出生率の増加にもつながり、生産年齢人口の増加に寄与する可能性もある。このほか、働く意欲のある高齢者や障害者の就労の機会を拡大していくことも重要である。