(2)Uターン・Iターン SOHOで、豊かな自然とゆとりある環境の下での就労が可能に  東京への一極集中は、首都圏における過酷な通勤(学)事情、慢性的な交通渋滞等を招くなど、生活への悪影響をもたらし、その一方では、地方における過疎化が懸念されている。  このような中、近年では首都圏の生活を避け、出身地に戻るUターンや地縁のない地方で暮らすIターンに対する関心が高まっている。この要因としては、自然志向及び健康志向の高まり、地方公共団体による積極的な誘致活動、Uターン・Iターン希望者向けの情報誌の発刊などとともに、パソコンとインターネットの普及が挙げられる。 1)地方移住型のSOHO  須玉町(山梨県)在住の佐藤良晴さん、世知原順子さん夫妻は、8年7月から当地でSOHOで仕事をしている。仕事の内容は、米国のコンピュータソフトの日本語化、マニュアル制作・翻訳、オンライン教材の制作等で、それ以前も東京近郊においてSOHOで仕事をしていたこと、かねてから自然環境豊かな場所での居住を考えていたことから、移転にはさほど抵抗はなかったという。それでも、インターネット利用環境には気を使い、移転先決定に当たっては、導入予定であったNTTのインターネット常時接続サービスの動向を調査したとのことである。仕事に関する連絡は、ほとんどが電子メールで済むが、遠方のSOHO、しかもインターネットで仕事を依頼することを不安に感じる顧客もいて、当初は仕事の依頼も減り、地方在住のSOHOとはいっても、いつでも東京に出かけて打ち合わせができるような対応は必要だという。  現在では仕事も順調で、今後とも自然の中で仕事をして行きたいとのことである。 2)脱都心型のリモートオフィス  片品村(群馬県)で、ホームページ制作、インターネット関連のコンサルティング業務を行う、「情報デザイン」社長笠松亮氏は、「ホームページ制作には、パソコンと通信回線さえあればよい」という。9年9月、自然環境のよい当地にログハウスを建て、ここを本社として同社を設立し、同時に自宅も東京から引っ越した。週に数日はプレゼンテーション等のため東京に出向くが、これはビジネスのために必要と割り切り、この間は都内の賃貸マンションを生活の拠点としている。通常、住まいの近くに設けるサテライトオフィスを、逆に東京都内に置くというスタイルである。  一方、10年度においてテレワークセンター施設整備事業(3-5-2参照)を実施した岩見沢市(北海道)は、自動車で札幌からは30分、新千歳空港からは1時間と交通至便の立地条件と豊かな自然環境を活かしたテレワーク事業を推進している。従来の中心街型サテライトオフィスに加えて、11年度に開設した自然共生型テレワークセンターは、静かな環境の中で長期滞在することも念頭に、宿泊設備を備えたレンタルオフィスである。岩見沢市における地域情報化推進の拠点となる自治体ネットワークセンターと光ファイバで結ばれ、インターネットだけでなく衛星通信による大量のデータの蓄積や受発信を利用することができる。移転まではしないものの、一定期間、豊かな自然環境、しかも情報通信利用環境の整備された場所で落ち着いて仕事をすることを希望する都市在住の研究開発担当者、クリエーター、デザイナー等を対象にしている(写真)。