4 福祉 (1)シニア・高齢者 インターネット利用により、新たな生きがいを見いだすことが可能に  インターネットは、時間や距離といった制約を克服し、便利で豊かなコミュニケーションと多種多様な情報への効率的なアクセスを可能にするため、これまで意欲があっても社会参加の機会が実質的に制限されてきた高齢者の社会参加を促進し、生活に変革をもたらすと考えられる。また、シニア・高齢者のインターネット利用が、他の世代との交流を深め、これまで培ってきた知恵と経験を社会が共有し、生活に活かす仕組みを構築していくことも可能になる。  ここでは、高齢化社会におけるシニア・高齢者のインターネット利用の現状と、インターネット利用によって新たな生きがいを見いだし、生き生きとした生活を送るシニア・高齢者の姿を紹介する。 1)シニア・高齢者ユーザーの現状  「シニア・インターネットユーザーアンケート」によれば、インターネット利用のきっかけは、「新聞や雑誌等で興味を持ったから」が57.2%と、「家族・知人・同僚等に勧められたから」の32.9%、「仕事で必要だったから」の25.9%を大きく上回り、自発的な動機でインターネットを始めたユーザーが多いことがわかる(図表1))。目的としては、「趣味・娯楽のため」(70.6%)、「情報収集のため」(59.1%)に次いで「高齢化に伴う心身の諸機能低下を防ぐため」を挙げたユーザーが53.4%に達している(図表2))。また、ほとんど毎日インターネットを利用するユーザーが81.2%で(図表3))、利用する機能としては、「電子メール」(93.9%)と「ホームページ閲覧・ネットサーフィン」(79.9%)が高いものの、「電子商取引(オンラインショッピング)」(10.9%)の利用率は低く(図表4))、シニア・高齢者のインターネット利用は、コミュニケーションと情報収集に限定した段階にとどまっていることがわかる。 2)シニア・高齢者ユーザーにみるインターネット利用の効果  「シニア・インターネットユーザーアンケート」によれば、インターネットを始めてよかった点として、7割以上のユーザーが「趣味・娯楽が増えた」(73.2%)、「情報収集がしやすくなった」(70.9%)を挙げ、当初インターネット利用に期待していた目的は、ほぼ達していることがわかる。また、「交流が拡大した」を挙げたユーザーは63.9%で、これを初期目的として挙げたユーザーの割合(46.6%)を上回った(図表5))。このほか、「高齢化に伴う心身の諸機能低下が防げるようになった」と回答したユーザーの年齢をみると、年齢が高くなるほど、インターネット利用の効果が得られたと感じるユーザーの割合が高い(図表6))。 3)シニア・高齢者ユーザーのインターネット利用事例 (i)「シニアネットワーク金曜サロン」  「シニアネットワーク金曜サロン」は、シニア・高齢者のパソコン初心者の集まりとして、6年12月に設立された。現在、京都を中心とした近畿地方在住の会員がパソコンの基本的な使い方を学び、電子メール交換や電子会議室での交流を楽しむ会として活動を行っているほか、シニアがシニアを教える学習センターを開設している。  会員の一人、宇治市在住の瀬田佐江子さんが金曜サロンを知ったのは、4年間の看病の後、ご主人を亡くし、途方に暮れる毎日を過ごしていた頃である。当時、心の空洞を埋めてくれるものを探し求めていた瀬田さんは、早速パソコンを買い、「どこにメールを送るの?」、「インターネットで何するの?」と周囲から陰口をたたかれながらも、金曜サロンに通い続けた。その結果、入会5か月を経て、金曜サロンで未知の分野に挑戦し、修得する満足感を味わい、パソコンやインターネットを通じて喜びを共有できる多くの友人ができたことで、瀬田さんの心の空洞は完全に埋めることができたという。金曜サロン代表を務める森田信治さんは、「パソコンやインターネットができるかどうかに年齢は関係ない。きっかけさえあれば誰もができる。そして、できるようになれば、たくさんの友人を作れるし、生活が潤い、これまでにない新鮮な楽しみを味わうことができる。おまけに生活も便利になる。」と効用を語っている。 (ii)「仙台シニアネットクラブ」  「仙台シニアネットクラブ」は、10年3月に仙台中央郵便局で開催された「60歳から楽しむインターネット教室」の修了者を中心に発足した。シニア・高齢者がインターネットに親しむことにより、情報弱者にならないように相互研鑽することなどを活動目的としており、受講者の中からサポーターと呼ばれる講師を養成するシステムを採用している点が特長である。11年度末までの修了者は約500人で、そのうち60人がサポーター登録できるまでの知識・技能を習得した。11年度からは、仙台市内の小学校、市民センター、老人福祉センターからの要望により、児童、高齢者、障害者、主婦を対象にしたパソコン授業の講師を引き受けている。サポーターとして、パソコン・インターネットを教えるシニア・高齢者は、地域に必要とされる存在として認められることの喜びを感じているという。